Archive for the ‘暴力事件’ Category

殺人を思いとどまる

2019-06-18

殺人を思いとどまる

宮城県大河原町に住むAさんは、認知症を抱えた母親を自宅で長年介護しています。
最近は認知症の症状も進み、コミュニケーションも難しく、汚物の処理なども含め、介護の負担は壮絶なものとなっていきました。
あるとき限界に達したAさん。
母親を殺してしまおうと思い、首を絞めてしまいました。
我に返ったAさんは、慌てて救急車を呼ぶなどの措置を取り、母親は一命をとりとめました。
母親の首に絞めたられた形跡が残っており、Aさんも犯行を認めたことから、Aさんは殺人未遂の容疑で大河原警察署の警察官により逮捕されました。
(フィクションです)

~成立する罪~

Aさんの行為には殺人未遂罪が成立します。

刑法
第199条
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
第203条
第百九十九条及び前条の罪の未遂は、罰する。

~刑が軽くなる?~

ある罪を犯した人に対し、どれくらいの期間や金額などの範囲で刑罰を受けさせることができるのかが、刑法などの法律には書かれています。
これを法定刑といいます。
殺人罪の場合は上記199条にあるように、死刑または無期懲役、もしくは5年以上の懲役となります。

しかし、ある事情が存在するときは、一般的に刑罰を軽くすべき、あるいは重くすべきといえる場合があります。
この場合には、法定刑から軽くした、あるいは重くした範囲で刑罰が決められることがあります。
これは処断刑と呼ばれ、裁判官は処断刑の範囲で、被告人の刑罰の重さを決めることになります。

以下、Aさんに関係のある範囲で、具体例を説明いたします。

~未遂に終わったこと~

今回、Aさんの母親は一命をとりとめており、Aさんは殺人罪ではなく殺人未遂罪に問われることになります。
未遂で済むと、法定刑よりも処断刑を軽くすることができます。

刑法第43条
犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。

この条文の1文目をみると、刑を軽くすることが出来る旨が書かれています。
未遂に終われば被害が少なくなったり、あるいは未遂に終わるような弱い犯行方法であったから悪質性が低いという場合があることから、処断刑を軽くしうるというものです。

ただし、偶然にも未遂に終わっただけで、結果が生じていてもおかしくなかったという場合もあります。
たとえば殺人罪でいえば、被害者が死亡しなかったのは偶然にすぎず、犯行方法からすると死亡してもおかしくなかったといえるような場合です。
この場合に刑を軽くすべきでないといえる場合もあることから、未遂の場合には必ず処断刑が軽くなるわけではなく、裁判官の判断で軽くすることも出来るにとどまります。

~自ら犯行を止め、救命措置をしたこと~

Aさんは途中で我に返り、救急車を呼ぶなどしています。
この場合、前述の刑法43条ただし書きの「自己の意思により犯罪を中止した」ものとして、処断刑が軽くなる可能性があります。
中止犯、あるいは中止未遂と呼ばれます。

「自己の意思により犯罪を中止した」といえるか否かの判断は難しいですが、簡単に言うと、自発的に犯行を止めたのか人に見つかったなどの外部的理由により止めたのか、死亡などの結果発生を防ぐ努力をしたか否か、といった点を考慮して判断されます。

中止犯となれば、必ず処断刑が軽くなります。
たまたま最悪の結果を免れた場合よりは悪質性が低いですし、刑罰を軽くしておくことによって犯行を思いとどまらせようという狙いもあると言われています。

~酌量減軽~

事件の特殊性から、刑を軽くすべきという場合も、酌量減軽により処断刑が軽くなる可能性があります。

第66条 犯罪の情状に酌量すべきものがあるときは、その刑を減軽することができる。

介護疲れからの殺人の場合、介護の壮絶さを考慮して、酌量減軽がされる可能性があります。

~どれくらい減刑される?~

未遂中止犯酌量減軽が認められると、どれくらい刑が軽くなるのかは刑法68条から72条に記載があります。

第68条
法律上刑を減軽すべき一個又は二個以上の事由があるときは、次の例による。
一 死刑を減軽するときは、無期の懲役若しくは禁錮又は十年以上の懲役若しくは禁錮とする。
二 無期の懲役又は禁錮を減軽するときは、七年以上の有期の懲役又は禁錮とする。
三 有期の懲役又は禁錮を減軽するときは、その長期及び短期の二分の一を減ずる。
(以下略)

殺人の場合に即して簡単に説明すると、まずは死刑の可能性がなくなります。

また、本来有期懲役は20年以下なので(12条1項参照)、殺人罪有期懲役になると5年以上20年以下の懲役となりますが、未遂や中止犯となると半分の2年半以上10年以下となります。
これに酌量減軽が加われば、さらに半分の1年3カ月以上5年以下となります。

なお、執行猶予(25条以下参照)は3年以下の懲役の言渡しを受けた場合にのみ付けることが出来るます。
殺人罪のように法定刑が5年以上の罪の場合には、減刑がなされてはじめて執行猶予にしうるので、この意味でも大きなポイントになります。

~弁護士に相談を~

犯罪をして逮捕された場合、減刑がされるのか、されるとしてもどの程度されるのか、わからない点が多いと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする弁護士事務所です。
ご家族などからご依頼いただければ、留置されている警察署等にすみやかに接見に伺います。
また、逮捕されていない場合には、事務所での法律相談を初回無料で受けていただけます。
接見や法律相談の際には上記疑問点の他、刑事手続の逃れ等も丁寧にご説明いたします。

殺人未遂罪や他の犯罪で逮捕された場合にはぜひご相談ください。

花火で過失傷害

2019-06-16

花火で過失傷害

仙台市青葉区に住む19歳大学生のAさんとBさん。
サークル棟の部室で酒を飲み、酔った状態で部室のベランダで花火を始めました。
地面に置いて火花を散らせるタイプの花火を、ベランダの柵のヘリ部分に置いて火を付けるなど、危ない使い方をしていたAさんとBさん。
途中で火のついた状態の花火がベランダから落下してしまい、下を歩いていたVさんの頭部にやけどを負わせてしまいました。
救急車やパトカーが駆け付ける騒ぎとなり、AさんとBさんは仙台中央警察署の警察官に取調べを受けました。
彼らはどうなってしまうのでしょうか。

~成立する犯罪~

Aさん・Bさんの行為には過失傷害罪または重過失傷害罪共同正犯が成立する可能性があります。

刑法第209条(過失傷害)
第1項
過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。
第2項
前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
第211条(業務上過失致死傷等)
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
第60条(共同正犯)
二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。

209条が過失傷害罪で、211条の2文目に重過失傷害罪が規定されています。
今回どちらが成立するかは微妙ですが、不安定なところに花火を置いていることから、落下して人にケガを負わせてしまうことも容易に予見できたとして、重過失傷害罪が成立する可能性もあるでしょう。

また、60条の共同正犯が成立すると、他の共犯者が行った行為についても責任を負う可能性が出てきます(一部実行全部責任の原則)。
たとえば、ベランダの柵のヘリに花火を置くという危険な行為をしたのがAさんであっても、BさんもVさんの傷害結果について責任を負う可能性があるということです。

なお、未成年なのに飲酒をしていた点について犯罪は成立しませんが、(重)過失傷害罪を犯してしまった経緯として、裁判官らが悪い方向に考慮する可能性は否定できません。

~少年事件の手続~

AさんとBさんは20歳未満ですので、少年事件の手続がとられることになります。

一般論としては、少年事件の場合も成人事件と同様に逮捕され、まずは最大3日間拘束され、取調べ等の捜査を受ける可能性があります。
その後、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断されれば、さらに最大20日間、勾留と呼ばれる身体拘束期間が続く可能性があります。
勾留の代わりに、少年鑑別所での観護措置が採られ、少年の非行の原因の調査や、更生に向けていかなる措置を採るべきかといった調査がなされることもあります。

その後、家庭裁判所に送られ、家庭裁判所調査官が中心となって、さらに少年の非行の進み具合、家庭環境、更生のために必要な処遇等の調査を行います。

なお、逮捕されていない少年や途中で釈放された少年についても、家庭裁判所に出向いて家庭裁判所調査官による面談を受けるなどの調査が行われます。

~少年審判とは?~

調査官等による調査の結果、比較的軽い事件であり、本人も反省しているなどの事情があれば、少年審判の不開始決定がなされ、前科も付かずにここで手続が終了となることもあります。
成人の事件における不起訴(起訴猶予)処分に近いものといえます。

そうでない場合は、少年審判が開始されます。
少年審判は、成人事件における刑事裁判にあたるものです。
審判内容としては、不処分・保護観察・児童自立支援施設送致・少年院送致などが考えられます。

~不安点解消のため弁護士に相談を~

とはいえ、似たような行為をしてしまった場合に、どのような犯罪が成立するのか、どのような手続が進んでいくのか等々、わからない点が多く不安だと思います。

また、被害者の方に損害賠償をして示談締結をすることは、審判不開始になるかといった点に影響する可能性がありますが、実際にいくら賠償すればよいのか、示談交渉をどう行えばよいのかはわかりにくいところかと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする弁護士事務所です。
事務所での法律相談は初回無料となっており、上記のような不安点や疑問点に対し、弁護士の見通しをお伝えいたします。

また、正式にご依頼いただければ、被害者の方と示談交渉を行ったり、審判不開始決定や軽い処分がなされるよう家庭裁判所の裁判官に働きかけたりといった活動を行います。

過失傷害、重過失傷害、少年事件などでお困りの方は、ぜひ一度ご相談下さい。

酔って公務執行妨害と傷害

2019-06-14

酔って公務執行妨害と傷害

宮城県女川町に住むAさんは、居酒屋で友人と酒を飲んだ後、徒歩で自宅に向かっていました。
しかし泥酔していたAさんの足取りはおぼつかなく、交番の近くを通りかかったところで転倒してしまいました。
その様子に気付いた警察官はAさんに、「大丈夫ですか」と声をかけました。
Aさんは、「大丈夫だ」と言っていますが、立ち上がろうとしてもふらふらでうまく立ち上がれず、とても大丈夫には見えません。
警察官は、「危ないので家まで送りますよ」と言いましたが、Aさんは拒否。
とはいえ放っておくわけにもいかない警察官は、家まで送り届けるのでパトカーに乗るよう説得しました。
しかしAさんは、「警察の世話にはならん!」などと大声で叫びだし、手に負えない状況に。
その後、警察官はAさんを抱きかかえて立ち上がらせようとしました。
するとAさんは、「触るな!」と大声で叫び、警察官の顔面をこぶしで殴打。
現行犯逮捕されてしまいました。
(フィクションです)

~公務執行妨害罪・傷害罪~

Aさんが警察官を殴った行為には、公務執行妨害罪傷害罪が成立する可能性があります。

刑法95条1項(公務執行妨害)
公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
第204条(傷害)
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

Aさんに殴られた警察官がケガをしなかった場合は、公務執行妨害罪のみが成立します。
一方、警察官がケガをした場合には、公務執行妨害罪傷害罪の両方が成立します。
ただし、1つの行為で2つの犯罪が成立する場合、最も重い罪で処罰されるので、今回はより重い懲役刑罰金刑が定められている傷害罪で処罰されることになります。

第54条1項
一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。

~今後の刑事手続~

逮捕されると、最大3日間身体拘束されます。
逃亡や証拠隠滅のおそれがあるとされれば、さらに勾留(こうりゅう)と呼ばれる身体拘束が最大20日間続き、その後に刑事裁判がスタートするという流れになる可能性があります。
勾留検察官が請求し、裁判官が許可すれば行われます。

ただ、酔って過ちを犯すことは、犯罪の中では軽い部類に入ることが多いです。
したがって、罪を認めて反省の態度を示せば、警察官の傷害の程度によっては、検察官勾留請求せず、逮捕翌日に釈放されることも考えられます。

しかし、釈放されたとしても、自宅から検察庁に出向いて取調べを受けるなどした後、被疑者刑事裁判にかけるか否かの決定権限を持っている検察官が刑事裁判にかけると判断すれば(起訴)、刑事裁判を受けることになります。
裁判も自宅から裁判所に出向いて受けることになります。

~弁護士に相談を~

逮捕された場合、自分の行為にどんな罪が成立するのか、刑事裁判を受けることになるのか、どのくらいの刑罰を受けるのか、身体拘束がいつまで続くのか、会社は解雇されるのか等々、不安が大きいと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事弁護を専門とする弁護士事務所です。
ご家族などからご依頼いただければ、留置されている警察署等にすみやかに接見に伺います。
また、すでに釈放されている場合には、当事務所での法律相談を初回無料でお受けいただけます。
接見や法律相談では上記の不安点に対する見通しなどをご説明いたします。

その後、正式に弁護をご依頼いただいた場合には、検察官勾留請求起訴をしないように、あるいは軽い判決で済むように弁護活動をしてまいります。

公務執行妨害罪傷害罪で逮捕されたら、ぜひ一度ご相談ください。

傷害事件での正当防衛

2019-06-11

傷害事件での正当防衛

Aさんは宮城県気仙沼市内で車を運転中、後方から来たVさんにあおり運転をされました。
「何だアイツ…」
頭にきたAさんは車を止め、後ろに停車したVさんに文句を言いに行きました。
すると車を降りてきたVさんと口論になり、カッとなったVさんから殴られました。
この時点でAさんが負った傷は打撲程度でしたが、Vさんはなおも追撃しようとしています。
「このままではやられてしまう。」
そう考えたAさんはVさんが動けなくなるまで反撃し、Vさんに骨折の重傷を負わせました。
Aさんは駆け付けた気仙沼警察署の警察官により傷害罪逮捕されました。
(フィクションです)

~傷害罪~

AさんがVさんを骨折させた行為は、それを単独で見ると、「人の身体を傷害した」 (刑法204条)ものとして、傷害罪が成立しそうです。
傷害罪が成立すると「十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」(同条)に処せられてしまう可能性があります。
しかしAさんの行為はVさんの殴り掛かってきた行為に触発されたものです。そこで正当防衛は成立しないのでしょうか。

~正当防衛~

正当防衛が成立するためには、

①急迫不正の侵害に対して
②自己又は他人の権利を防衛するため
③やむを得ずにした行為

に当たる必要があります(刑法36条1項)。

①急迫不正の侵害については、Vさんが殴り掛かってきているので認められると思われます。
ただしAさんが、自分の身を守る目的ではなく、この機会に乗じてVさんを痛めつける目的のみで反撃したといった場合には、急迫不正の侵害が認められません。

②自己又は他人の権利を防衛するためについては、Aさんが「このままではやられてしまう。」と考えて反撃していることから、自己の権利を守るために反撃したものと認められる可能性が高いです。

③やむを得ずにした行為については、(1)防衛行為に出る必要性(2)防衛行為の相当性が認められるかがポイントになります。

(1)防衛行為に出る必要性については、例えば容易に助けを呼べる状況にあったり、逃げ出すことが出来る状況にあれば認められる可能性が低くなります。Aさんもケースでもそのような事情があれば防衛行為の必要性が認められる可能性が低くなります。
「けんかで逃げ出すなんてプライドが許さない」と思っても、むやみに反撃に及ばない方が良いでしょう。

(2)防衛行為の相当性については、反撃の方法や量が問題となります。
反撃の方法については、例えば相手が素手で攻撃してきたのに対しナイフなどの武器を用いて反撃した場合に相当性が否定されやすくなります。
自分が負った傷害よりも重い傷害を相手に与えたとしても、ただちに相当性が否定されるわけではありません。
Aさんの場合も相手により重い傷害を与えていますが、反撃方法は素手なので、ナイフで反撃した場合などに比べると有利だと考えられます。
ただし、AさんがVさんよりも体力面で大きく勝る場合などには、素手での反撃でも相当性が否定される可能性はあります。

反撃の量については、Aさんの反撃によってVさんが攻撃不可能になっているにもかかわらず、さらに反撃を続けていた場合には、反撃の量が多すぎるとして相当性が認められない可能性があります。

以上のような検討をした結果、正当防衛の成立が認められればAさんは無罪となります。
一方、正当防衛が認められなかった場合は傷害罪が成立します。
しかし緊迫した場面ではついついやりすぎてしまうということも理解できるため、過剰防衛(刑法36条2項)として、懲役や罰金が軽くなったり、免除される可能性があります。
また、今回のケースはVのあおり運転が根本的な原因なので、この点もAに課せられる刑罰の重さを判断するうえで有利に働くかもしれません。

~弁護士に相談を~

このように傷害罪正当防衛を主張して無罪を勝ち取る、または過剰防衛として刑罰を軽くするためには様々な点を考慮する必要があります。
起訴を免れたり、起訴されたとしても有利な判決が得られる可能性が上げるためにも、刑事事件に強い弁護士に相談することをおすすめ致します。
刑事事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は初回相談無料ですので、ぜひ一度ご相談ください。

アパート放火で重罰

2019-06-06

アパート放火で重罰

宮城県亘理町のとあるアパートに住むAさん。
同じアパートに住むVと長年のトラブルがあり、恨みが募っていました。
ある日、再びVと喧嘩になり、暴言を浴びせられたAさん。
カッとなって、Vが死んでしまえばいいと思い、アパートに放火してしまいました。
幸いVら住人は逃げることができ、けが人もいませんでしたが、アパートは全焼してしまいました。
Aさんは亘理警察署の警察官によって逮捕されました。

~成立する罪~

Aさんの行為には、現住建造物放火罪殺人未遂罪が成立するでしょう。

刑法第108条(現住建造物等放火)
放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
第199条(殺人)
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
第203条(未遂罪)
第百九十九条及び前条の罪の未遂は、罰する。

現住建造物等放火罪は、人が死亡する可能性が十分に考えられる危険な行為であることから、殺人罪と同じ刑罰が定められています。
また、放火することによって人を殺そうという意図があったのであれば、現住建造物等放火罪に加えて、実際に人が死亡すれば殺人罪が、死亡しなければ殺人未遂罪も成立します。

Aさんにも重い刑罰が下されることが予想されます。

~現住建造物等でなければ?~

仮にAさんが放火したのが、現住建造物等以外の建物や物であったらどうなるでしょうか。
たとえばVさんが所有している倉庫などの建物に放火した場合、放火時に中に人がいなければ、非現住建造物放火罪が成立します。

第109条1項(非現住建造物等放火)
放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、二年以上の有期懲役に処する。

人が死亡する可能性が低くなる分、定められている刑罰(法定刑)は軽くなっています。
ちなみに有期懲役とは、原則として最大20年です(12条1項参照)。

また、Vさんの車などの物に放火した場合には、建造物等以外放火罪または器物損壊罪が成立します。

第110条1項(建造物等以外放火)
放火して、前二条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
第261条(器物損壊等)
前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

両者は、「公共の危険」を生じさせたか否かによって区別されます。
公共の危険とは、不特定または多数人の生命・身体・財産に脅威を及ぼす状態をいいます。

簡単に言えば、車以外に延焼する可能性がなければ、被害や危険性の大きさが車を叩き壊した場合と同じなので器物損壊罪に、延焼する可能性があれば危険性が大きいので建造物等以外放火罪になります。

~弁護士に接見を依頼する~

逮捕された場合、最大23日間の身体拘束がされた後に、刑事裁判を受けることが考えられます。
刑事裁判が始まると、保釈が認められない限り、さらに身体拘束が続くことになります。
また、現住建造物等放火罪や殺人罪、殺人未遂罪では裁判員裁判となります。

逮捕されると、本人やご家族は、今後どのような刑事手続きが進んでいくのか、どの程度の刑罰を受ける可能性があるのか、取調べにはどう受け答えしたらよいのか等々、わからないことが多く不安だと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする弁護士事務所です。
ご家族などからご依頼いただければ、拘束されている警察署等にすみやかに接見に伺います。
仮に逮捕されていない場合には、事務所での法律相談を初回無料でお受けいただけます。

接見や法律相談では、上記の不安点にお答えいたします。
現住建造物等放火罪逮捕された場合などには、ぜひご連絡ください。

客引きをして中止勧告を受ける

2019-05-31

客引きをして中止勧告を受ける

宮城県仙台市に住むAさんは、同市中心部にある居酒屋の店員をしています。
この居酒屋近くにあるアーケードでは以前から、居酒屋店員による客引きが多く行われており、Aさんも数年前から客引きを行っていました。
しかし最近になって客引きを規制する条例が制定されたことから客引きの数は減っていました。
ある日、Aさんは店長に指示され、このアーケード内で客引きをしていたところ、警察官に声を掛けられました。
警察官からは、条例が制定されたことを説明され、氏名や店の名前等を聞かれた上で、客引きをしないよう勧告というものを受けました。
翌日、不安になったAさんは弁護士に相談してみることにしました。

~仙台市客引き行為等の禁止に関する条例の概要~

仙台市中心部のアーケードや歓楽街では、以前から居酒屋などの店員が客引きをしている人が数多くいました。
必ずしもぼったくりをするような店だけではなく、健全な営業をしている店による客引きも多くありました。

しかし、中には悪質な店があるほか、通行の妨げや不快な声掛けになる例もあることから、仙台市は「仙台市客引き行為等の禁止に関する条例」を制定し、今年4月に完全施行されました。

この条例では、禁止区域において、相手方を特定して客引きをすることの他、相手方を特定してキャバクラ等のキャストになることの勧誘をする行為、これら客引きや勧誘の相手方を待つ行為を禁止しています(2条1号、6条)。
また、経営者が従業員に対し、これらの行為をさせたり、客引きが連れてきたお客を店舗に入れることも禁止しています(6条、7条)。

なお、禁止されるのは「相手方を特定して」客引き行為等をする場合ですので、不特定多数の者に対して呼びかける行為や、道路使用許可を取得して、ティッシュ・チラシ等を配布したり、看板を掲げて宣伝する行為は禁止されません。
一方、客引き等をする目的で相手方となる者を待つ(探す)だけでも禁止の対象ですので、注意が必要です。

これらの禁止事項の違反者には、違反行為をしてはならない旨の「勧告」がなされます(10条)。
それでも違反した者には、違反行為をしてはならない旨の「命令」がなされます(11条)。
この命令にもかかわらず、さらに違反した者には、5万円以下の過料の他、違反者の氏名や住所などが公表される可能性があります(13条1項、17条1号)。

また、市長(の指示を受けた職員等)は、違反者に対し、勧告・命令に必要な報告をさせたり、店舗への立ち入り調査を行うことができ、これに協力しなかった場合も5万円以下の過料となる可能性があります(12条1項2項、17条2号3号)。

なお、従業員が過料に処せられた場合、使用者には勧告や命令を経ずに過料が科される可能性があります(18条)。

なお、過料とは、刑罰である罰金や科料とは別物であり、前科もつきませんが、金銭を徴収されるという意味では同じです。

この条例の詳しい内容は、仙台市ホームページをご覧ください。
https://www.city.sendai.jp/shiminsekatsu/kurashi/anzen/anzen/mewaku/kyakuhikijourei.html

~ぼったくりをすると犯罪が成立しうる~

この条例に違反しただけであれば、氏名等の公表により影響は未知数ですが、過料の金額は5万円以下なので、弁護士に依頼するという展開にはなりにくいかもしれません。
しかし、客引きをしてぼったくりをするような店だと、様々な犯罪の成立が考えられます。

まず、客引き時や入店時に虚偽の説明をし、支払段階で高額な料金を請求して支払わせた場合、詐欺罪(刑法246条1項)が成立する可能性があります。

また、支払いを渋るお客に対して暴行・脅迫を用いて支払わせた場合、恐喝罪(249条1項)や傷害罪(204条)が成立する可能性もあります。

さらに、帰ろうとするお客を帰さずに支払いを要求した場合、監禁罪(220条)が成立する可能性もあります。

~不安があれば弁護士に相談を~

仙台市の条例違反で勧告を受け、今後が不安という方もいらっしゃるでしょう。
また、ぼったくりをしている、あるいはぼったくりに加担させられた場合には、逮捕されたり、懲役罰金の刑罰を受ける可能性があるので、不安が大きいかもしれません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする弁護士事務所です。
事務所での法律相談は初回無料となっております。

条例違反詐欺罪恐喝罪傷害罪監禁罪などでご相談されたいことがある方は、ぜひご連絡ください。

ツイッターで悪口を書き込み取調べ

2019-05-30

ツイッターで悪口を書き込み取調べ

宮城県石巻市に住むAさんは、友人のVさんとツイッターを相互フォローしていました。
仲の良かったAさんとVさんでしたが、ちょっとしたすれ違いからケンカをし、険悪な関係になってしまいました。
やがてAさんはツイッターで、Vさんの悪口を書くようになりました。
その内容は、「あいつはバカだ」といったものから、10年以上前のVの前科・前歴の話や、Vが浮気していた話などに及びました。
ある日、石巻警察署からAさんに連絡が入り、ツイッターへの書き込みの件で話を聞きたいから、警察署に来るように言われました。
不安になったAさんは、弁護士の無料相談を受けることにしました。
(フィクションです)

~名誉棄損罪~

はじめに、AさんがVさんの前科・前歴浮気のことを書き込んだ行為については、名誉棄損罪が問題となります。

刑法
第230条1項
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

「公然」とは、不特定または多数人が認識できる状態を言います。
ツイッターでつぶやくと、全世界の人が見ることができるので、不特定または多数人が認識できる状態と言えるでしょう。
仮に、鍵付きのアカウントでつぶやいたとしても、Aさんのツイートを見ることができるフォロワーが多ければ、多数人が認識できる状態といえます。
また、鍵付きアカウントでフォロワー数も少ないとしても、そのフォロワーから不特定又は多数人にツイート内容が伝わる可能性があるのであれば、「公然」にあたります。

次に、摘示される「事実」は、人の社会的評価を害するものである必要があります。
前科・前歴浮気の事実は、明らかに人の社会的評価を害するものと言えるでしょう。

また、条文上は「人の名誉を棄損した」という過去形が使われていますが、実際にこのツイートにより名誉が毀損されたかどうかは問いません。
実際に名誉が毀損されたか否か(社会的評価が害されたか否か)を裁判で証明することは難しいので、名誉を毀損するに足りる事実の摘示してさえいれば、名誉棄損罪が成立しうるのです。
したがって、Vさんの社会的評価が実際に害されたかどうか、Aさんのツイートを実際に多くの人が見たかどうか、といった点は関係なく、名誉棄損罪が成立する可能性があります。

さらに、条文には「その事実の有無にかかわらず」とあります。
本当のことであれば言っても問題ないと勘違いされている方もいらっしゃいますが、真実か否かには関係なく、名誉棄損罪は成立するので注意が必要です。

以上により、Aさんの行為には名誉棄損罪が成立する可能性があります。

なお、議員に関する事実など、公共の利害に関する事実を公益目的で摘示したのであれば、犯罪が成立しない可能性もあります(刑法230条の2参照)。

~侮辱罪~

Aさんの「あいつはバカだ」といった、具体的な事実の指摘のないツイートには、侮辱罪が成立する可能性があります。

第231条(侮辱)
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

~弁護士に示談を依頼~

名誉棄損罪侮辱罪は、被害者の告訴がなければ刑事裁判を行えない犯罪(親告罪)です。

第232条1項(親告罪)
この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

Aさんの件は警察が動いているので、すでにVさんが警察に告訴していると思われます。
しかしVさんと示談することによって、告訴を取下げてもらえる可能性があります。
一度告訴されても、告訴の取下げがなされれば、刑事裁判は開かれません。

ただ、適切な示談交渉の方法がわからないという方も多いと思います。
また、被害者との関係がこじれて、加害者本人とは示談交渉してくれないと言った場合もあります。
そこで、示談交渉を弁護士に依頼してみるという方法も考えられます。

他にも、自分のツイートや発言が名誉棄損罪侮辱罪が成立するのか、成立するとしたらどのくらいの刑罰を受けそうなのか、逮捕される可能性はないのか、取調べにはどのように受け答えしたらよいのかなど、多くの不安があると思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする弁護士事務所です。
事務所での法律相談は初回無料となっております。
上記のような不安に対する弁護士の見通しなどをご説明させていただきます。

名誉棄損罪・侮辱罪などで捜査を受けたら、ぜひ一度ご連絡ください。

泥酔して傷害事件を起こし逮捕

2019-05-29

泥酔して傷害事件を起こし逮捕

宮城県岩沼市に住むAさんは、友人と居酒屋で酒を飲んだ帰り、見知らぬ通行人と肩がぶつかったことが原因でケンカになりました。
しかし、当時Aさんは泥酔しており、気が付いたら岩沼警察署留置所にいるという状況。
事件のことは全く覚えていません。
一緒にいた友人によると、Aさんは相手を殴り、骨折の重傷を負わせたとのことでした。
A自身も顔面にあざができていたことから、相手からも殴られていたようです。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は慌てて弁護士に相談しました。
(フィクションです)

~傷害罪と責任能力~

Aさんの行為には傷害罪が成立します。

刑法第204条
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

ただし、Aさんは事件の記憶がないほど酔っていたことから、犯行時に心神喪失または心神耗弱状態で、責任能力がなかったのではないかという問題は生じえます。

刑法第39条
第1項 心神喪失者の行為は、罰しない。
第2項 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

心神喪失(39条1項)とは、自分の行為の良し悪しを判断する能力と、その判断に従って自己の行動を制御する能力のどちらかを欠いた状態をいいます。
心神耗弱(39条2項)とは、これらの能力が著しく弱っている状態をいいます。
心神喪失と判断された場合は犯罪不成立、心神耗弱と判断された場合には刑罰が軽くなります。

しかし、記憶をなくすくらい酔っぱらってしまえば、何をやっても刑が軽くなったり、罰しないとされるのは違和感があります。
実際に、単に記憶がなくなっている程度では、責任能力が著しく弱っているとまではいえないとして、刑の減免は認められない可能性も十分あるでしょう。

また、仮に暴行時に心神喪失・耗弱であったと認められても、普段から酔うと粗暴になることがわかっていたのに、それでも酒を飲んで暴力事件を起こしたという場合には、酒を飲んだこと自体が非難されるべきなので、刑は減免されない可能性があります(「原因において自由な行為」と呼ばれます)。

~正当防衛~

Aさんは相手にも殴られているようですから、正当防衛の成立も問題となりえます。

刑法第36条第1項
急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
第2項
防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

Aさんはケンカのことを覚えていないので、友人や被害者の供述等によって事実を探ることになります。
被害者がいきなり殴ってきたのであれば、正当防衛(36条1項)が成立し、無罪となる可能性はあります。
ただし、結果としてAよりも被害者の方が重症なので、結果が全てではないものの、過剰防衛(同条2項)により刑が軽くなるにとどまることも考えられます。

一方、Aさんが先制攻撃した場合には正当防衛過剰防衛が成立する可能性は低いでしょう。
また、どちらからともなくケンカになった場合にも、喧嘩両成敗ということで両者とも正当防衛過剰防衛は成立する可能性は低いでしょう。

~刑事手続の流れ~

逮捕されたAさんは、まずは最大72時間の身体拘束を受ける可能性があります。
その後、検察官勾留請求し、それに対して裁判官が許可した場合、最大で20日間、勾留と呼ばれる身体拘束が続く可能性があります。

検察官が勾留請求するのか、勾留請求せずに釈放するのか、あるいは裁判官が勾留を許可するのか否かの判断の際は、事件の重大性や犯行を認めているか否か、反省態度、被害者と示談が成立しそうか、前科の有無、証拠隠滅のおそれや逃亡のおそれの有無などが考慮事項となります。

勾留がされた場合はその最終日までに、勾留されていない場合は適宜の時期に、検察官が被疑者を刑事裁判にかけるか否かを判断します。
ここで起訴猶予処分(不起訴処分)となれば、刑事裁判にかけられず、前科も付かなくてすむますが、起訴となれば刑事裁判が始まります。

勾留中の被疑者が起訴となれば身体拘束が続くので、保釈請求をして身柄解放を目指すことが考えられます。

~弁護士に相談を~

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事弁護を専門とする弁護士事務所です。
逮捕中あるいは勾留中の場合には、ご家族などからご依頼頂ければ、留置されている警察署等に、すみやかに接見に伺います。
また、逮捕・勾留されていない場合には、事務所で初回無料の法律相談を受けることもできます。

犯罪をして逮捕されたり捜査を受けた場合、今後どのような手続が進んでいくのか、取調べではどのように受け答えしたらよいのか、どの程度の刑罰を受けることになりそうか、どうやって示談したらよいか等々、わからないことが多く不安だと思います。

接見法律相談ではこれらの疑問にお答えしますので、ぜひ一度ご相談ください。
(岩沼警察署への初回接見費用38,400円)

脅迫文を送りつけ逮捕

2019-05-28

脅迫文を送りつけ逮捕

岩手県一関市に住むAさんは、交際相手のBさんに浮気され、別れることになりました。
しかしAさんは、浮気されたことはもちろん、まだBへの好意が消えないという感情の裏返しにより、Bさんへの怒りが日に日に増していきました。
Bさんに直接連絡を取ろうとしたところ、電話やラインなど全てが着信拒否。
さらにBさんが主任を務めるスーパーに直接会いに行きましたが、相手にされませんでした。
怒りが頂点に達したAさんは、
「連絡をよこせ。さもないとお前の身が危ないぞ。店の商品にも針を入れてやるぞ。」
と書いた脅迫文をスーパーに送りつけました。
その後、スーパーから被害届の提出を受けた山形警察署の警察官により、Aさんは逮捕されました。
(フィクションです)

~強要未遂罪~

今回問題となる犯罪としては、強要(未遂)罪威力業務妨害罪が考えられます。

刑法223条(強要)
第1項
生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。
第2項
親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
第3項
前二項の罪の未遂は、罰する。

Aさんが送った脅迫文のうち、「さもないとお前の身が危ないぞ。」の部分は、223条1項の「生命、身体、自由…に対し害を加える旨を告知して脅迫し」たといいうるでしょう。
そして、「連絡をよこせ。」の部分は、「人に義務のないことを行わせ」ようとしたといえます。
その結果、BさんがやむなくAさんに連絡したのであれば強要罪、連絡しなかったのであれば第3項の強要未遂罪が成立する可能性があります。

~威力業務妨害罪~

脅迫文には、「店の商品にも針を入れてやるぞ。」と書かれていました。
この部分には威力業務妨害罪が成立する可能性があります。

刑法第233条(信用毀損及び業務妨害)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第234条(威力業務妨害)
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

234条の「威力を用いて」とは、人の意思を制圧するような勢力を示すことを言います。

スーパーは、針の入った商品を売るわけにいきません。
したがって、商品に針を入れるなどと言われると、商品に異常がないかチェックしたり、警備体制を強化するなどの対応をせざるを得なくなる可能性があります。
このような対応は時間や費用がかかるのでやりたくはないけども、せざるを得なくなるという意味において、Aさんは人の意思を制圧するような勢力を示しているといえるわけです。

なお、誰も真に受けないような脅迫文、すなわち、わざわざ対応しないような現実味のない内容の脅迫文であれば、本罪は成立しません。
しかし、判例によれば、実際にスーパー側が上記のような対応をしなかったとしても、対応していてもおかしくなかったといえるような、現実味のある内容の脅迫文だったのであれば、本罪は成立することになります。

~強要・威力業務妨害で逮捕されたら弁護士に相談を~

逮捕されたAさんは、その後の勾留と呼ばれる期間も含め、最大で23日間の身体拘束がされ、取調べ等の捜査を受ける可能性があります。
その後、検察官がAさんを裁判にかけると判断すれば(起訴)、刑事裁判がスタートし、保釈が認められない限り身体拘束が続く可能性があります。

逮捕されると、どのような罪が成立するのか、どれくらい身体拘束が続くのか、どれくらい重い刑罰を受けるのか、取調べにはどう受け答えしたらいいのか、などの心配が大きいと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする弁護士事務所です。
ご家族などからご依頼頂ければ、すみやかに留置されている警察署等に接見に伺い、その後ご家族に接見のご報告を行います。
その際に、上記のような不安・疑問に対する見通しもお答えいたします。

また、仮に逮捕されていない場合には、事務所での法律相談を初回無料でお受けいただけます。

強要強要未遂罪威力業務妨害罪などでご家族が逮捕されたり、ご自身が捜査を受けた場合には、ぜひ一度ご相談ください。
(一関警察署への初回接見費用44,680円)

カッターを振りかざして殺人未遂

2019-05-27

カッターを振りかざして殺人未遂

宮城県村田町に住むAさんはある日、妻のVさんと口論になりました。
最初は口で怒鳴るだけでしたが、怒りが治まらなくなったAさんは、脅すつもりでカッターナイフを持ち出し、Vさんの方に向けて振りかざしたところ、Vさんの肩付近に当たり、全治2週間の切り傷を負わせました。
Vさんの悲鳴を聞いた隣人が駆け付け、救急車と警察を呼び、Aさんは殺人未遂罪の現行犯で大河原警察署逮捕されました。
(フィクションです)

~成立する犯罪は?~

AさんはVさんを脅すつもりでカッターを振りかざしていますが、Vさんを殺すつもりはもちろん、ケガを負わせるつもりもありませんでした。
しかしAさんは殺人未遂罪逮捕されています。
Aさんにはどういった罪が成立するでしょうか。

今回、問題となるのは犯罪は、暴行罪傷害罪殺人未遂罪です。

刑法
第208条(暴行)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
第204条(傷害)
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第199条(殺人)
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
第203条(未遂罪)
第百九十九条及び前条の罪の未遂は、罰する。

~暴行罪~

まず、Vの近くでカッターを振りかざした時点で、少なくとも暴行罪は成立すると考えられます。
暴行罪における「暴行」とは人に身体に対する不法な有形力の行使をいいます。
仮にカッターがVに当たらなくても、体の近くで振りかざせばVがケガをしてしまうおそれが出てくるので、人の身体に対する不法な有形力の行使に当たるといえます。
したがって暴行罪が成立するわけです。

~傷害罪~

次に、本件ではVに全治2週間の切り傷を負わせているので、ケガをさせるつもりがなくても傷害罪が成立すると考えられます。

一般に犯罪が成立するためには、故意があること、すなわち、わざとやったことが必要とされえています(刑法38条1項参照)。
しかし、ある犯罪を行うと、より重い犯罪結果が生じる危険が一般的に生じるという関係にある場合に、軽い犯罪を行う故意さえあれば、重い犯罪についても成立する場合があります(「結果的加重犯・けっかてきかちょうはん」と呼ばれます)。

暴行罪を犯すと、相手にケガまでさせてしまう危険も一般的に生じるといえるので、暴行罪傷害罪は結果的加重犯と呼ばれる関係にあります。
したがって軽い方の暴行の故意があれば、重い方の傷害の故意がなくても、傷害罪が成立します。

~殺人未遂罪~

さらに本件では傷害罪にとどまらず、殺人未遂罪まで成立するのでしょうか。
両者の区別は、被疑者の故意の内容によって行います。
つまり、殺すつもりでカッターを振り回したが殺すまでは至らなかった場合が殺人未遂罪、殺すつもりがなかった場合は傷害罪となります。

殺すつもりの有無は、事件当時の被疑者の内心の出来事なので、客観的に判断することができません。
そこで、外部的な状況を総合的に考慮して判断します。
たとえば、使った凶器が殺傷能力の高い大きなナイフであれば、小さなカッターナイフを使った場合よりも、故意があったと判断される確率が高まります。

その他、被害者の人体のうち命にかかわりやすい部分を傷つけたのか(足や腕よりも頭・首・腹などの方が殺すつもりだったと推測しやすい)、傷が深いかどうか(深ければ殺すつもりで強く刺したと推測しやすい)、殺人をするほどの動機があったのか、といった点などが考慮されます。
もちろん、事件後の取調べで被疑者が故意の有無についてどう供述しているのかも考慮されます。

Aさんの場合もこれらの諸事情を考慮して判断されます。

~弁護士に相談を~

殺人未遂罪傷害罪などで逮捕された場合、最終的に何罪で有罪となる可能性があるのか、刑罰の重さはどの程度になりそうか、どのような刑罰を今後どのような手続が進んでいくのか、取調べではどのように受け答えしたらよいのか等々、わからないことが多く不安だと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事弁護を専門とする弁護士事務所です。
逮捕中あるいは勾留中の場合には、ご家族などからご依頼頂ければ、留置されている警察署等に、すみやかに接見に伺います。
また、逮捕勾留されていない場合には、事務所で初回無料の法律相談を受けることもできます。

接見法律相談では上記のような疑問にお答えしますので、ぜひ一度ご相談ください。
(大河原警察署への初回接見費用41,600円)

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