Archive for the ‘暴力事件’ Category

アパート放火で重罰

2019-06-06

アパート放火で重罰

宮城県亘理町のとあるアパートに住むAさん。
同じアパートに住むVと長年のトラブルがあり、恨みが募っていました。
ある日、再びVと喧嘩になり、暴言を浴びせられたAさん。
カッとなって、Vが死んでしまえばいいと思い、アパートに放火してしまいました。
幸いVら住人は逃げることができ、けが人もいませんでしたが、アパートは全焼してしまいました。
Aさんは亘理警察署の警察官によって逮捕されました。

~成立する罪~

Aさんの行為には、現住建造物放火罪殺人未遂罪が成立するでしょう。

刑法第108条(現住建造物等放火)
放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
第199条(殺人)
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
第203条(未遂罪)
第百九十九条及び前条の罪の未遂は、罰する。

現住建造物等放火罪は、人が死亡する可能性が十分に考えられる危険な行為であることから、殺人罪と同じ刑罰が定められています。
また、放火することによって人を殺そうという意図があったのであれば、現住建造物等放火罪に加えて、実際に人が死亡すれば殺人罪が、死亡しなければ殺人未遂罪も成立します。

Aさんにも重い刑罰が下されることが予想されます。

~現住建造物等でなければ?~

仮にAさんが放火したのが、現住建造物等以外の建物や物であったらどうなるでしょうか。
たとえばVさんが所有している倉庫などの建物に放火した場合、放火時に中に人がいなければ、非現住建造物放火罪が成立します。

第109条1項(非現住建造物等放火)
放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、二年以上の有期懲役に処する。

人が死亡する可能性が低くなる分、定められている刑罰(法定刑)は軽くなっています。
ちなみに有期懲役とは、原則として最大20年です(12条1項参照)。

また、Vさんの車などの物に放火した場合には、建造物等以外放火罪または器物損壊罪が成立します。

第110条1項(建造物等以外放火)
放火して、前二条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
第261条(器物損壊等)
前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

両者は、「公共の危険」を生じさせたか否かによって区別されます。
公共の危険とは、不特定または多数人の生命・身体・財産に脅威を及ぼす状態をいいます。

簡単に言えば、車以外に延焼する可能性がなければ、被害や危険性の大きさが車を叩き壊した場合と同じなので器物損壊罪に、延焼する可能性があれば危険性が大きいので建造物等以外放火罪になります。

~弁護士に接見を依頼する~

逮捕された場合、最大23日間の身体拘束がされた後に、刑事裁判を受けることが考えられます。
刑事裁判が始まると、保釈が認められない限り、さらに身体拘束が続くことになります。
また、現住建造物等放火罪や殺人罪、殺人未遂罪では裁判員裁判となります。

逮捕されると、本人やご家族は、今後どのような刑事手続きが進んでいくのか、どの程度の刑罰を受ける可能性があるのか、取調べにはどう受け答えしたらよいのか等々、わからないことが多く不安だと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする弁護士事務所です。
ご家族などからご依頼いただければ、拘束されている警察署等にすみやかに接見に伺います。
仮に逮捕されていない場合には、事務所での法律相談を初回無料でお受けいただけます。

接見や法律相談では、上記の不安点にお答えいたします。
現住建造物等放火罪逮捕された場合などには、ぜひご連絡ください。

客引きをして中止勧告を受ける

2019-05-31

客引きをして中止勧告を受ける

宮城県仙台市に住むAさんは、同市中心部にある居酒屋の店員をしています。
この居酒屋近くにあるアーケードでは以前から、居酒屋店員による客引きが多く行われており、Aさんも数年前から客引きを行っていました。
しかし最近になって客引きを規制する条例が制定されたことから客引きの数は減っていました。
ある日、Aさんは店長に指示され、このアーケード内で客引きをしていたところ、警察官に声を掛けられました。
警察官からは、条例が制定されたことを説明され、氏名や店の名前等を聞かれた上で、客引きをしないよう勧告というものを受けました。
翌日、不安になったAさんは弁護士に相談してみることにしました。

~仙台市客引き行為等の禁止に関する条例の概要~

仙台市中心部のアーケードや歓楽街では、以前から居酒屋などの店員が客引きをしている人が数多くいました。
必ずしもぼったくりをするような店だけではなく、健全な営業をしている店による客引きも多くありました。

しかし、中には悪質な店があるほか、通行の妨げや不快な声掛けになる例もあることから、仙台市は「仙台市客引き行為等の禁止に関する条例」を制定し、今年4月に完全施行されました。

この条例では、禁止区域において、相手方を特定して客引きをすることの他、相手方を特定してキャバクラ等のキャストになることの勧誘をする行為、これら客引きや勧誘の相手方を待つ行為を禁止しています(2条1号、6条)。
また、経営者が従業員に対し、これらの行為をさせたり、客引きが連れてきたお客を店舗に入れることも禁止しています(6条、7条)。

なお、禁止されるのは「相手方を特定して」客引き行為等をする場合ですので、不特定多数の者に対して呼びかける行為や、道路使用許可を取得して、ティッシュ・チラシ等を配布したり、看板を掲げて宣伝する行為は禁止されません。
一方、客引き等をする目的で相手方となる者を待つ(探す)だけでも禁止の対象ですので、注意が必要です。

これらの禁止事項の違反者には、違反行為をしてはならない旨の「勧告」がなされます(10条)。
それでも違反した者には、違反行為をしてはならない旨の「命令」がなされます(11条)。
この命令にもかかわらず、さらに違反した者には、5万円以下の過料の他、違反者の氏名や住所などが公表される可能性があります(13条1項、17条1号)。

また、市長(の指示を受けた職員等)は、違反者に対し、勧告・命令に必要な報告をさせたり、店舗への立ち入り調査を行うことができ、これに協力しなかった場合も5万円以下の過料となる可能性があります(12条1項2項、17条2号3号)。

なお、従業員が過料に処せられた場合、使用者には勧告や命令を経ずに過料が科される可能性があります(18条)。

なお、過料とは、刑罰である罰金や科料とは別物であり、前科もつきませんが、金銭を徴収されるという意味では同じです。

この条例の詳しい内容は、仙台市ホームページをご覧ください。
https://www.city.sendai.jp/shiminsekatsu/kurashi/anzen/anzen/mewaku/kyakuhikijourei.html

~ぼったくりをすると犯罪が成立しうる~

この条例に違反しただけであれば、氏名等の公表により影響は未知数ですが、過料の金額は5万円以下なので、弁護士に依頼するという展開にはなりにくいかもしれません。
しかし、客引きをしてぼったくりをするような店だと、様々な犯罪の成立が考えられます。

まず、客引き時や入店時に虚偽の説明をし、支払段階で高額な料金を請求して支払わせた場合、詐欺罪(刑法246条1項)が成立する可能性があります。

また、支払いを渋るお客に対して暴行・脅迫を用いて支払わせた場合、恐喝罪(249条1項)や傷害罪(204条)が成立する可能性もあります。

さらに、帰ろうとするお客を帰さずに支払いを要求した場合、監禁罪(220条)が成立する可能性もあります。

~不安があれば弁護士に相談を~

仙台市の条例違反で勧告を受け、今後が不安という方もいらっしゃるでしょう。
また、ぼったくりをしている、あるいはぼったくりに加担させられた場合には、逮捕されたり、懲役罰金の刑罰を受ける可能性があるので、不安が大きいかもしれません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする弁護士事務所です。
事務所での法律相談は初回無料となっております。

条例違反詐欺罪恐喝罪傷害罪監禁罪などでご相談されたいことがある方は、ぜひご連絡ください。

ツイッターで悪口を書き込み取調べ

2019-05-30

ツイッターで悪口を書き込み取調べ

宮城県石巻市に住むAさんは、友人のVさんとツイッターを相互フォローしていました。
仲の良かったAさんとVさんでしたが、ちょっとしたすれ違いからケンカをし、険悪な関係になってしまいました。
やがてAさんはツイッターで、Vさんの悪口を書くようになりました。
その内容は、「あいつはバカだ」といったものから、10年以上前のVの前科・前歴の話や、Vが浮気していた話などに及びました。
ある日、石巻警察署からAさんに連絡が入り、ツイッターへの書き込みの件で話を聞きたいから、警察署に来るように言われました。
不安になったAさんは、弁護士の無料相談を受けることにしました。
(フィクションです)

~名誉棄損罪~

はじめに、AさんがVさんの前科・前歴浮気のことを書き込んだ行為については、名誉棄損罪が問題となります。

刑法
第230条1項
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

「公然」とは、不特定または多数人が認識できる状態を言います。
ツイッターでつぶやくと、全世界の人が見ることができるので、不特定または多数人が認識できる状態と言えるでしょう。
仮に、鍵付きのアカウントでつぶやいたとしても、Aさんのツイートを見ることができるフォロワーが多ければ、多数人が認識できる状態といえます。
また、鍵付きアカウントでフォロワー数も少ないとしても、そのフォロワーから不特定又は多数人にツイート内容が伝わる可能性があるのであれば、「公然」にあたります。

次に、摘示される「事実」は、人の社会的評価を害するものである必要があります。
前科・前歴浮気の事実は、明らかに人の社会的評価を害するものと言えるでしょう。

また、条文上は「人の名誉を棄損した」という過去形が使われていますが、実際にこのツイートにより名誉が毀損されたかどうかは問いません。
実際に名誉が毀損されたか否か(社会的評価が害されたか否か)を裁判で証明することは難しいので、名誉を毀損するに足りる事実の摘示してさえいれば、名誉棄損罪が成立しうるのです。
したがって、Vさんの社会的評価が実際に害されたかどうか、Aさんのツイートを実際に多くの人が見たかどうか、といった点は関係なく、名誉棄損罪が成立する可能性があります。

さらに、条文には「その事実の有無にかかわらず」とあります。
本当のことであれば言っても問題ないと勘違いされている方もいらっしゃいますが、真実か否かには関係なく、名誉棄損罪は成立するので注意が必要です。

以上により、Aさんの行為には名誉棄損罪が成立する可能性があります。

なお、議員に関する事実など、公共の利害に関する事実を公益目的で摘示したのであれば、犯罪が成立しない可能性もあります(刑法230条の2参照)。

~侮辱罪~

Aさんの「あいつはバカだ」といった、具体的な事実の指摘のないツイートには、侮辱罪が成立する可能性があります。

第231条(侮辱)
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

~弁護士に示談を依頼~

名誉棄損罪侮辱罪は、被害者の告訴がなければ刑事裁判を行えない犯罪(親告罪)です。

第232条1項(親告罪)
この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

Aさんの件は警察が動いているので、すでにVさんが警察に告訴していると思われます。
しかしVさんと示談することによって、告訴を取下げてもらえる可能性があります。
一度告訴されても、告訴の取下げがなされれば、刑事裁判は開かれません。

ただ、適切な示談交渉の方法がわからないという方も多いと思います。
また、被害者との関係がこじれて、加害者本人とは示談交渉してくれないと言った場合もあります。
そこで、示談交渉を弁護士に依頼してみるという方法も考えられます。

他にも、自分のツイートや発言が名誉棄損罪侮辱罪が成立するのか、成立するとしたらどのくらいの刑罰を受けそうなのか、逮捕される可能性はないのか、取調べにはどのように受け答えしたらよいのかなど、多くの不安があると思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする弁護士事務所です。
事務所での法律相談は初回無料となっております。
上記のような不安に対する弁護士の見通しなどをご説明させていただきます。

名誉棄損罪・侮辱罪などで捜査を受けたら、ぜひ一度ご連絡ください。

泥酔して傷害事件を起こし逮捕

2019-05-29

泥酔して傷害事件を起こし逮捕

宮城県岩沼市に住むAさんは、友人と居酒屋で酒を飲んだ帰り、見知らぬ通行人と肩がぶつかったことが原因でケンカになりました。
しかし、当時Aさんは泥酔しており、気が付いたら岩沼警察署留置所にいるという状況。
事件のことは全く覚えていません。
一緒にいた友人によると、Aさんは相手を殴り、骨折の重傷を負わせたとのことでした。
A自身も顔面にあざができていたことから、相手からも殴られていたようです。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は慌てて弁護士に相談しました。
(フィクションです)

~傷害罪と責任能力~

Aさんの行為には傷害罪が成立します。

刑法第204条
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

ただし、Aさんは事件の記憶がないほど酔っていたことから、犯行時に心神喪失または心神耗弱状態で、責任能力がなかったのではないかという問題は生じえます。

刑法第39条
第1項 心神喪失者の行為は、罰しない。
第2項 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

心神喪失(39条1項)とは、自分の行為の良し悪しを判断する能力と、その判断に従って自己の行動を制御する能力のどちらかを欠いた状態をいいます。
心神耗弱(39条2項)とは、これらの能力が著しく弱っている状態をいいます。
心神喪失と判断された場合は犯罪不成立、心神耗弱と判断された場合には刑罰が軽くなります。

しかし、記憶をなくすくらい酔っぱらってしまえば、何をやっても刑が軽くなったり、罰しないとされるのは違和感があります。
実際に、単に記憶がなくなっている程度では、責任能力が著しく弱っているとまではいえないとして、刑の減免は認められない可能性も十分あるでしょう。

また、仮に暴行時に心神喪失・耗弱であったと認められても、普段から酔うと粗暴になることがわかっていたのに、それでも酒を飲んで暴力事件を起こしたという場合には、酒を飲んだこと自体が非難されるべきなので、刑は減免されない可能性があります(「原因において自由な行為」と呼ばれます)。

~正当防衛~

Aさんは相手にも殴られているようですから、正当防衛の成立も問題となりえます。

刑法第36条第1項
急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
第2項
防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

Aさんはケンカのことを覚えていないので、友人や被害者の供述等によって事実を探ることになります。
被害者がいきなり殴ってきたのであれば、正当防衛(36条1項)が成立し、無罪となる可能性はあります。
ただし、結果としてAよりも被害者の方が重症なので、結果が全てではないものの、過剰防衛(同条2項)により刑が軽くなるにとどまることも考えられます。

一方、Aさんが先制攻撃した場合には正当防衛過剰防衛が成立する可能性は低いでしょう。
また、どちらからともなくケンカになった場合にも、喧嘩両成敗ということで両者とも正当防衛過剰防衛は成立する可能性は低いでしょう。

~刑事手続の流れ~

逮捕されたAさんは、まずは最大72時間の身体拘束を受ける可能性があります。
その後、検察官勾留請求し、それに対して裁判官が許可した場合、最大で20日間、勾留と呼ばれる身体拘束が続く可能性があります。

検察官が勾留請求するのか、勾留請求せずに釈放するのか、あるいは裁判官が勾留を許可するのか否かの判断の際は、事件の重大性や犯行を認めているか否か、反省態度、被害者と示談が成立しそうか、前科の有無、証拠隠滅のおそれや逃亡のおそれの有無などが考慮事項となります。

勾留がされた場合はその最終日までに、勾留されていない場合は適宜の時期に、検察官が被疑者を刑事裁判にかけるか否かを判断します。
ここで起訴猶予処分(不起訴処分)となれば、刑事裁判にかけられず、前科も付かなくてすむますが、起訴となれば刑事裁判が始まります。

勾留中の被疑者が起訴となれば身体拘束が続くので、保釈請求をして身柄解放を目指すことが考えられます。

~弁護士に相談を~

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事弁護を専門とする弁護士事務所です。
逮捕中あるいは勾留中の場合には、ご家族などからご依頼頂ければ、留置されている警察署等に、すみやかに接見に伺います。
また、逮捕・勾留されていない場合には、事務所で初回無料の法律相談を受けることもできます。

犯罪をして逮捕されたり捜査を受けた場合、今後どのような手続が進んでいくのか、取調べではどのように受け答えしたらよいのか、どの程度の刑罰を受けることになりそうか、どうやって示談したらよいか等々、わからないことが多く不安だと思います。

接見法律相談ではこれらの疑問にお答えしますので、ぜひ一度ご相談ください。
(岩沼警察署への初回接見費用38,400円)

脅迫文を送りつけ逮捕

2019-05-28

脅迫文を送りつけ逮捕

岩手県一関市に住むAさんは、交際相手のBさんに浮気され、別れることになりました。
しかしAさんは、浮気されたことはもちろん、まだBへの好意が消えないという感情の裏返しにより、Bさんへの怒りが日に日に増していきました。
Bさんに直接連絡を取ろうとしたところ、電話やラインなど全てが着信拒否。
さらにBさんが主任を務めるスーパーに直接会いに行きましたが、相手にされませんでした。
怒りが頂点に達したAさんは、
「連絡をよこせ。さもないとお前の身が危ないぞ。店の商品にも針を入れてやるぞ。」
と書いた脅迫文をスーパーに送りつけました。
その後、スーパーから被害届の提出を受けた山形警察署の警察官により、Aさんは逮捕されました。
(フィクションです)

~強要未遂罪~

今回問題となる犯罪としては、強要(未遂)罪威力業務妨害罪が考えられます。

刑法223条(強要)
第1項
生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。
第2項
親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
第3項
前二項の罪の未遂は、罰する。

Aさんが送った脅迫文のうち、「さもないとお前の身が危ないぞ。」の部分は、223条1項の「生命、身体、自由…に対し害を加える旨を告知して脅迫し」たといいうるでしょう。
そして、「連絡をよこせ。」の部分は、「人に義務のないことを行わせ」ようとしたといえます。
その結果、BさんがやむなくAさんに連絡したのであれば強要罪、連絡しなかったのであれば第3項の強要未遂罪が成立する可能性があります。

~威力業務妨害罪~

脅迫文には、「店の商品にも針を入れてやるぞ。」と書かれていました。
この部分には威力業務妨害罪が成立する可能性があります。

刑法第233条(信用毀損及び業務妨害)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第234条(威力業務妨害)
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

234条の「威力を用いて」とは、人の意思を制圧するような勢力を示すことを言います。

スーパーは、針の入った商品を売るわけにいきません。
したがって、商品に針を入れるなどと言われると、商品に異常がないかチェックしたり、警備体制を強化するなどの対応をせざるを得なくなる可能性があります。
このような対応は時間や費用がかかるのでやりたくはないけども、せざるを得なくなるという意味において、Aさんは人の意思を制圧するような勢力を示しているといえるわけです。

なお、誰も真に受けないような脅迫文、すなわち、わざわざ対応しないような現実味のない内容の脅迫文であれば、本罪は成立しません。
しかし、判例によれば、実際にスーパー側が上記のような対応をしなかったとしても、対応していてもおかしくなかったといえるような、現実味のある内容の脅迫文だったのであれば、本罪は成立することになります。

~強要・威力業務妨害で逮捕されたら弁護士に相談を~

逮捕されたAさんは、その後の勾留と呼ばれる期間も含め、最大で23日間の身体拘束がされ、取調べ等の捜査を受ける可能性があります。
その後、検察官がAさんを裁判にかけると判断すれば(起訴)、刑事裁判がスタートし、保釈が認められない限り身体拘束が続く可能性があります。

逮捕されると、どのような罪が成立するのか、どれくらい身体拘束が続くのか、どれくらい重い刑罰を受けるのか、取調べにはどう受け答えしたらいいのか、などの心配が大きいと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする弁護士事務所です。
ご家族などからご依頼頂ければ、すみやかに留置されている警察署等に接見に伺い、その後ご家族に接見のご報告を行います。
その際に、上記のような不安・疑問に対する見通しもお答えいたします。

また、仮に逮捕されていない場合には、事務所での法律相談を初回無料でお受けいただけます。

強要強要未遂罪威力業務妨害罪などでご家族が逮捕されたり、ご自身が捜査を受けた場合には、ぜひ一度ご相談ください。
(一関警察署への初回接見費用44,680円)

カッターを振りかざして殺人未遂

2019-05-27

カッターを振りかざして殺人未遂

宮城県村田町に住むAさんはある日、妻のVさんと口論になりました。
最初は口で怒鳴るだけでしたが、怒りが治まらなくなったAさんは、脅すつもりでカッターナイフを持ち出し、Vさんの方に向けて振りかざしたところ、Vさんの肩付近に当たり、全治2週間の切り傷を負わせました。
Vさんの悲鳴を聞いた隣人が駆け付け、救急車と警察を呼び、Aさんは殺人未遂罪の現行犯で大河原警察署逮捕されました。
(フィクションです)

~成立する犯罪は?~

AさんはVさんを脅すつもりでカッターを振りかざしていますが、Vさんを殺すつもりはもちろん、ケガを負わせるつもりもありませんでした。
しかしAさんは殺人未遂罪逮捕されています。
Aさんにはどういった罪が成立するでしょうか。

今回、問題となるのは犯罪は、暴行罪傷害罪殺人未遂罪です。

刑法
第208条(暴行)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
第204条(傷害)
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第199条(殺人)
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
第203条(未遂罪)
第百九十九条及び前条の罪の未遂は、罰する。

~暴行罪~

まず、Vの近くでカッターを振りかざした時点で、少なくとも暴行罪は成立すると考えられます。
暴行罪における「暴行」とは人に身体に対する不法な有形力の行使をいいます。
仮にカッターがVに当たらなくても、体の近くで振りかざせばVがケガをしてしまうおそれが出てくるので、人の身体に対する不法な有形力の行使に当たるといえます。
したがって暴行罪が成立するわけです。

~傷害罪~

次に、本件ではVに全治2週間の切り傷を負わせているので、ケガをさせるつもりがなくても傷害罪が成立すると考えられます。

一般に犯罪が成立するためには、故意があること、すなわち、わざとやったことが必要とされえています(刑法38条1項参照)。
しかし、ある犯罪を行うと、より重い犯罪結果が生じる危険が一般的に生じるという関係にある場合に、軽い犯罪を行う故意さえあれば、重い犯罪についても成立する場合があります(「結果的加重犯・けっかてきかちょうはん」と呼ばれます)。

暴行罪を犯すと、相手にケガまでさせてしまう危険も一般的に生じるといえるので、暴行罪傷害罪は結果的加重犯と呼ばれる関係にあります。
したがって軽い方の暴行の故意があれば、重い方の傷害の故意がなくても、傷害罪が成立します。

~殺人未遂罪~

さらに本件では傷害罪にとどまらず、殺人未遂罪まで成立するのでしょうか。
両者の区別は、被疑者の故意の内容によって行います。
つまり、殺すつもりでカッターを振り回したが殺すまでは至らなかった場合が殺人未遂罪、殺すつもりがなかった場合は傷害罪となります。

殺すつもりの有無は、事件当時の被疑者の内心の出来事なので、客観的に判断することができません。
そこで、外部的な状況を総合的に考慮して判断します。
たとえば、使った凶器が殺傷能力の高い大きなナイフであれば、小さなカッターナイフを使った場合よりも、故意があったと判断される確率が高まります。

その他、被害者の人体のうち命にかかわりやすい部分を傷つけたのか(足や腕よりも頭・首・腹などの方が殺すつもりだったと推測しやすい)、傷が深いかどうか(深ければ殺すつもりで強く刺したと推測しやすい)、殺人をするほどの動機があったのか、といった点などが考慮されます。
もちろん、事件後の取調べで被疑者が故意の有無についてどう供述しているのかも考慮されます。

Aさんの場合もこれらの諸事情を考慮して判断されます。

~弁護士に相談を~

殺人未遂罪傷害罪などで逮捕された場合、最終的に何罪で有罪となる可能性があるのか、刑罰の重さはどの程度になりそうか、どのような刑罰を今後どのような手続が進んでいくのか、取調べではどのように受け答えしたらよいのか等々、わからないことが多く不安だと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事弁護を専門とする弁護士事務所です。
逮捕中あるいは勾留中の場合には、ご家族などからご依頼頂ければ、留置されている警察署等に、すみやかに接見に伺います。
また、逮捕勾留されていない場合には、事務所で初回無料の法律相談を受けることもできます。

接見法律相談では上記のような疑問にお答えしますので、ぜひ一度ご相談ください。
(大河原警察署への初回接見費用41,600円)

見張り役の少年が傷害罪に

2019-05-25

見張り役の少年が傷害罪に

宮城県大崎市に住む高校生のAくん。
やんちゃな性格で、度々けんかをして相手にケガをさせたり、自分もケガをしたりすることがありました。
ある日、いつもつるんでいるグループのリーダー格の少年Bから、「Vをこらしめるから、今日の夜9時に集まれ」と言われました。
集合場所に行き、BやグループメンバーのCと打ち合わせをした結果、Aくんは見張り役をすることになりました。
その後、Vが現れたことから、BとCはVをボコボコにし、傷害を負わせました。
Vが古川警察署に被害届を提出したことから、BとCはもちろん、Aくんも傷害罪の疑いで逮捕されました。

~暴行行為の実行犯には傷害罪の共同正犯が成立~

実際にVに暴行を加えて怪我をさせたBとCには、傷害罪の共同正犯が成立します。

刑法204条(傷害罪)
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第60条(共同正犯)
二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。

複数の人が共謀の上、その共謀に基づき実行行為をすれば、その人たちは共同正犯(60条)となります。
共同正犯になると、犯行の一部のみを実行した人であっても、他の人が実行した犯行部分についても責任を負います(一部実行・全部責任の原則)。

たとえば、リーダー格のBの暴力によってVが傷害を負ったが、CはVを押しただけでケガはさせていないという場合(つまり、Cの行為だけを見ると暴行罪にとどまる場合)であっても、Cも傷害罪の共同正犯となります。
ただし、犯行内容やグループでの役割に応じて刑罰の重さ(量刑)などに差が出ることはあります。

~見張り役のAくんにも傷害罪の共同正犯が成立?~

Aくんは見張り役をしていただけで、暴行自体には加わっていません。
しかし、Aくんにも傷害罪の共同正犯が成立する可能性はあります。

さきほど、一部実行・全部責任の原則をご紹介しました。
誰からもバレずにVに暴行を加える上で、Aくんの見張りも重要な役割となっている可能性があります。
そうすると、Aくんも今回のVへの傷害事件の犯行を「一部実行」したと判断され、傷害罪の共同正犯が成立し、「全部責任」を負う可能性があるわけです。

もちろん量刑がBやCよりも軽くなる可能性はあります。
また、見張り役の重要性が低かったり、AくんはVへの暴行に乗り気でなく嫌々付いていっただけといった事情がある場合には、傷害罪の幇助犯にとどまり、刑が軽くなる可能性はあります。

刑法第62条
第1項 正犯を幇ほう助した者は、従犯とする。
第2項 従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する。
第63条 従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。

~少年事件のおおまかな流れ~

逮捕されたAくんは20歳未満の少年なので、成人の事件とは異なる手続が進められることになります。

逮捕勾留により最大23日間の身体拘束をされ、その間に取調べなどの捜査を受ける可能性があるのは成人の場合と同じです。
その後、成人の場合は地方裁判所や簡易裁判所で刑事裁判となりますが、少年の場合は家庭裁判所に事件が送致されます。

家庭裁判所では、犯行の内容や少年の性格、生い立ちなどが調査されます。
この調査には、4週間程度、少年を少年鑑別所に収容する観護措置という手続が伴うこともあります。
調査の結果は、家庭裁判所の裁判官と共に少年事件と向き合う家庭裁判所調査官がまとめます。

裁判官は、調査官の意見も参考にしながら、少年審判で少年の処分を決めます。
少年審判の処分内容としては、事件の重大さやご本人の反省度合い、家庭環境等に応じて、少年院児童自立支援施設に入れるといった処分や、保護観察(成人事件における執行猶予に近い)、不処分(無罪判決または不起訴(起訴猶予)に近い)といった処分まで様々考えられます。

もちろん、比較的軽微な事件ではそもそも逮捕されずに、呼び出しに応じて警察・検察の捜査や家庭裁判所の調査を受ける場合もあります。
また、事件の重さやご本人の反省度合いによっては、家庭裁判所の審判が開かれずに終わる(審判不開始)ということもあります(こちらも成人の事件における不起訴(起訴猶予)に近いものといえます)。

~弁護士に相談を~

少年事件逮捕されると、ご本人はとても動揺するでしょうし、ご家族としてもとても心配でしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする事務所です。
事務所での法律相談は初回無料となっております。
また、逮捕されている場合にはご家族から依頼頂けば、すみやかにご本人が留置されている警察署等に接見に伺います。

法律相談や接見では、今後の手続の流れや考えられる処分内容についてご説明したり、取調べにどのように受け答えしたらよいのかアドバイスさせていただきます。

その後、正式に弁護活動をご依頼頂いた場合には、少年の身柄が解放されるように、また、軽い処分が下されるように活動致します。

傷害罪の共同正犯などで捜査を受けたら、ぜひ弊所の弁護士にご相談ください。
(古川警察署への初回接見費用:0120-631-881にお問い合わせください)

自転車で歩行者と接触しケンカ

2019-05-20

自転車で歩行者と接触しケンカ

宮城県大河原町に住むAさんは、歩道を自転車で走行していました。
すると前方に、Aさんと同じ方角に向かって歩いているBさんの背中が見えてきました。
「邪魔だな…ちょっと狭いけどすり抜けてしまおう」と考えたAさん。
Bさんの横をすり抜けようとしましたが、案の定、Bさんに接触。
Bさんは転倒して左手を骨折してしまいました。
ぶつかられたことに腹を立てたBさんは、痛みも忘れて、「あぶねえだろ!」とAさんを怒鳴りつけました。
するとAさんは、「チンタラ歩いて邪魔なんだよ!」と言い返してしまいました。
さらに腹を立てたBさんは、Aさんの顔面を右手で一発殴り、出血や打撲の傷害を負わせました。
AさんとBさんはそれぞれどのような罪に問われるでしょうか。
(フィクションです)

~自転車のAさんの罪~

まず、自転車で歩行者をケガさせてしまったAさんは、過失傷害罪重過失傷害罪に問われる可能性があります。

刑法
第209条1項(過失傷害)
過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。
第211条(業務上過失致死傷罪・重過失致死傷罪)
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

過失傷害罪にとどまるのか、過失の程度が甚だしいとして重過失傷害罪になるかの判別は難しいところです。
ポイントとしては、たとえば接触して傷害を負わせることになることが容易に予測できたか否かが挙げられるでしょう。

また、これとは別に、道路交通法にも違反する可能性があります。
例えば、
①自転車が通行できない歩道を通行していた場合、三月以下の懲役又は五万円以下の罰金(17条1項、119条1項2の2号参照)、
②自転車が通行できる歩道であっても、徐行や一時停止等をしなかったとして、二万円以下の罰金又は科料(63条の4、121条1項5号参照)、
となる可能性があります。

なお、②自転車が歩道を通行できるのは、道路標識等で通行可能とされている場合、運転者が13歳未満もしくは70歳以上、身体障害者である場合、安全確保のためやむを得ない場合となっています(63条の4第1項、道路交通法施行令26条参照)。

~殴ったBさんの罪~

Bさんは事故の被害者であり、Aさんの態度が悪かったという事情もありますが、殴ってはいけませんでした。
当然ながら傷害罪が成立すると考えられます。

刑法第204条
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

もちろん、Aが殴りかかってくるような状況でなければ正当防衛(刑法第36条1項)も成立しません。
正当防衛は、暴行などの侵害が現に存在するか、少なくとも間近に差し迫っていることが要件の一つだと考えられているからです。

~刑事手続~

犯罪をした場合、逮捕勾留といった身体拘束がされることがあります。

ただ、自転車のAさんは、あくまでわざとではなく過失により傷害を負わせてしまったにとどまることから、身体拘束されず在宅のまま捜査される可能性も高いでしょう。
その後、軽微な事件だとして不起訴(起訴猶予)となり刑事裁判を受けずに済めば、罰則を受けなくて済みますし、前科も付きません。
起訴されても罰金刑にとどまる可能性も高いでしょう。

一方、Bさんはわざと殴ってけがをさせていることから、Aさんよりも重い処分となる可能性もあります。
もちろん、事故の被害者であること、Aさんの態度が悪かったことなどを考慮し、Aさんと同じような軽い処分となる可能性もあります。

~弁護士にご相談ください~

このように、犯行の内容の違いの他、前科があるか否かといったことにより、その後の流れが変わってくることになります。

身体拘束されなければ仕事や学校に通い続けることができますし、前科が付くか否かは就職活動や国家資格の取得の可否に関わるなど、その後の人生に大きく影響してきます。

弁護士であれば、事件の見通しをお示ししたり、取調べを受ける際のアドバイスをしたり、軽い処分で済むよう弁護活動をすることができるので、まずは一度ご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事弁護を専門とする弁護士事務所です。
事務所での法律相談は初回無料となっております。
刑法や道路交通法違反で捜査を受けたら、ぜひ0120-631-881までご連絡ください。
(大河原警察署までの初回接見費用:41,600円)

威力業務妨害事件の自首

2019-05-07

威力業務妨害事件の自首

ある日、宮城県石巻市役所に「○月〇日○時に爆弾をしかけて石巻市役所を爆破する」という内容の手紙が届きました。
石巻市役所では、職員や市民が避難して多数の警察官が警戒に当たりましたが、実際には上記日時前後には何も起きませんでした。
爆発物も見つからなかったため、宮城県石巻警察署では威力業務妨害罪の容疑で捜査を開始しました。
犯人はまだ特定されていません。
(フィクションです)

~威力業務妨害罪~

威力を用いて人の業務を妨害した場合、「威力業務妨害罪」が成立します。
威力業務妨害罪で起訴された場合は、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」になる可能性があります。
「威力」とは、人の意思を制圧するに足る勢力のことで、暴行・脅迫にとどまらず、そこまでに至らない行為であっても、およそ人の自由な意思を制圧するような勢力の一切を含んでいます。
そのため、上記事例のような場合は、偽計業務妨害罪との判別が難しい所ですが、爆破予告は、「威力」であるとされることが多く、威力業務妨害罪にあたる可能性が高いです。

~自首~

上記事例では、爆破予告に対して捜査機関による捜査が開始されることになるでしょう。
しかし、上記事例では、まだ犯人が特定されていません。
このようなケースで、犯人が名乗り出た場合には、「自首」が成立するのでしょうか?

罪を犯した人が、自ら捜査機関に対して、自分が犯した罪を自発的に申告し、その処分を求める意思表示をすることを「自首」といいます。

(自首等)
第四十二条 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。

自首の成立要件は、実務では、以下の4点となっており、これらの要件を充たしている場合に、はじめて自首が成立するとされています。
(1)犯罪を起こした本人自らが自発的に犯罪事実を申告していること
(2)犯罪を行った本人が自身の罰則や処分を求めていること
(3)捜査機関に申告していること
(4)捜査機関が犯罪事実や犯人を特定していない段階で申告していること

刑の減軽については刑法第68条が定めています。

第六十八条 法律上刑を減軽すべき一個又は二個以上の事由があるときは、次の例による。
一 死刑を減軽するときは、無期の懲役若しくは禁錮又は十年以上の懲役若しくは禁錮とする。
二 無期の懲役又は禁錮を減軽するときは、七年以上の有期の懲役又は禁錮とする。
三 有期の懲役又は禁錮を減軽するときは、その長期及び短期の二分の一を減ずる。
四 罰金を減軽するときは、その多額及び寡額の二分の一を減ずる。
五 拘留を減軽するときは、その長期の二分の一を減ずる。
六 科料を減軽するときは、その多額の二分の一を減ずる。

上記事例のケースで、犯人に対して威力業務妨害罪が成立する場合について考えてみます。
有期懲役なら長期及び短期の2分の1に、罰金なら多額及び寡額の2分の1に減軽されるので、1年6か月以下の懲役又は25万円以下の罰金の範囲内で刑罰が科される可能性があることになります。

刑事事件を起こしてしまった場合、自首が成立すると刑が軽くなる可能性があるため、自首することもひとつの選択肢です。
法律上は、必ず刑が軽くなるという規定ではありませんが、実際の裁判では、自首が成立する場合には情状面で相当程度斟酌され、自首が成立しない場合よりも少なからず刑が軽くなるのが一般的です。
加えて、自首することにより、逮捕や勾留のリスクを下げることができます。
自ら犯罪を捜査機関に申告するということは、逃亡する意思や証拠隠滅を行う意思がないものと評価され、逮捕・勾留といった身体拘束の必要性がないと判断されることにつながるためです。

自首にはメリットも多いですが、自首の各々の要件については、法律的な判断が必要です。
例えば、ご自身に嫌疑がかかった後に自ら捜査機関に出向いても、「自首」にはなりません
(裁判になって自首の成立を主張する場合、しばしば「捜査機関に発覚する前」であったかどうかが争いになります。)
また、自首は犯人である事を名乗り出るわけですから、取調べや、逮捕・勾留と言った刑事手続きが開始されることになります。
そのため、自首の前には、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の無料法律相談をご利用ください。
刑事事件専門の弁護士が、自首のリスクや刑事手続きの流れを説明し、取調べの際のアドバイスをすることも可能です。
初回法律相談は無料ですので、威力業務妨害罪でお困りの方はまずはフリーダイヤル0100-631-881までお電話ください。
(宮城県警察石巻警察署までの初回接見料:43,200円)

暴行罪から傷害罪に切り替え?

2019-04-24

暴行罪から傷害罪に切り替え?

仙台市泉区内の居酒屋において飲酒と食事をしていた自営業50代男性Aさんは、同店のホールスタッフVさんの接客態度に腹を立てて、「お前のその態度はなんだ!」と怒鳴って突然Vさんに向かって自分の飲みかけの味噌汁をかけました。
同店の店長の通報により駆け付けた宮城県泉警察署は、Aさんを暴行罪の容疑で逮捕しました。
その後、病院を受診したVさんは全治一週間のやけどと診断され、Vさんは担当の警察官に診断結果を伝えました。
そのため、警察は、Aさんの容疑を傷害罪に切り替えて捜査しています。
Aさんの家族は、暴行罪から傷害罪に容疑が切り替えられたのはなぜか、切り替わるとどうなるのか刑事事件の経験豊富な弁護士に問い合わせをしました。
(フィクションです。)

~暴行罪から傷害罪へ罪名が切り替わる?~

今回の事例のAさんは、当初、暴行罪の容疑で逮捕されましたが、その後、傷害罪に切り替えられて捜査されています。
Aさんが容疑をかけられていた暴行罪と現在捜査を受けている傷害罪について、刑法がこれらの犯罪をどのように規定しているのかを確認してみましょう。

第204条(傷害)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

第208条(暴行)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

暴行罪傷害罪も人の身体に不法な力を加えた時に成立する犯罪ですが、人の身体に傷害を負わせたかどうかという点で異なります。

「暴行」とは人の身体に対する不法な有形力の行使を意味します。

「傷害」とは,人の生理機能に障害を与えることを言います。
暴力を振るって怪我をさせることや、失神させる,飲酒させて急性アルコール中毒にさせる,騒音を鳴らし続けて頭痛を起こさせるといったことが傷害行為に当たると判断されています。
また,PTSD(心的外傷後ストレス障害)にさせることも傷害に当たる場合があります。

暴行罪は「人を傷害するに至らなかったとき」に成立するため,傷害が未遂に終わった場合の多くは暴行罪に当たります。

今回の事例のAさんの場合を見てみましょう。
Aさんは、Vさんに突然味噌汁をかけるという行為をしています。
この行為をした時点で、Vさんの身体に不法な有形力を行使している=暴行罪が成立していることになるため、Aさんは暴行罪の容疑で逮捕されたと考えられます。
その後、病院を受診したVさんは全治一週間のやけどと診断され、Vさんは担当の警察官に診断結果を伝えています。
つまり、VさんがAさんの暴行により全治一週間のやけどを負っている=傷害を負わされているということが捜査機関に発覚しているということになります。
(なお、傷害罪の「傷害」の定義は生理機能を害することなので,たとえ全治1週間のやけどであっても,「傷害」であることには変わりありません。)
以上のような流れで、Aさんに傷害罪の成立が疑われ、被疑罪名が暴行罪から傷害罪に切り替わったのだと考えられます。

今回のAさんは、居酒屋で飲酒と食事をしているときに事件を起こしてしまっています
酒に酔って気が大きくなった状態で,つい手が出てしまうこともあり得ます。
酒によって気が大きくなっていることが犯罪の成立に影響を及ぼすのではないかと疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、確かに、飲酒は犯罪が成立するために必要な責任能力に影響を及ぼすことがあります。
しかし、通常見られる単純酩酊では,犯罪の成立に影響は生じません。
そのため、酔ったうえでつい手を出してしまい相手を怪我させてしまえば,それはれっきとした傷害罪になることが多いでしょう。

暴行罪の場合は約30パーセントが起訴されて裁判を受けることになりますが、傷害罪の場合は、約40パーセントが起訴されて裁判をうけることになります。
暴行罪傷害罪は、被害者との示談を進めることが,起訴を回避するうえで重要になります。
仮に起訴されてしまっても、示談の成立は容疑をかけられている方にとって有利に働きます。
それゆえ、暴行罪傷害罪で捜査・逮捕されている場合は、すぐに弁護士に依頼することをお勧めします。

上記で見てきました通り、捜査が進んだことで、逮捕された時点で容疑をかけられていた犯罪名から、別の犯罪名に容疑が切り替わることがあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門で示談交渉に長けた弁護士が多数所属しており、罪名の切り替えについても対応が可能です。
暴行罪傷害罪でお悩みの方は、まずはお気軽に無料法律相談または初回接見サービスをご利用ください。
(宮城県泉警察署までの初回費用:34,800円)

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