Archive for the ‘刑事事件’ Category
ストーカー事件を示談で解決
ストーカー事件を示談で解決
先月まで男性Vさんと交際していたAさんは、Vさんから別れを告げられたことを受け入れられず、Vさんとなんとか復縁したいと考えました。
そこで、Aさんは、Vさんから拒まれていたにも関わらず複数回に渡りLINEで面会を迫るメッセージを送付しました。
LINEメッセージが「既読」にならないことから,直接会って自分の思いを伝えようと、Vさんの勤務先を見張る、Vさん宅付近でVさんの帰りを待ち伏せする等の行為をしたところ、通報を受けて駆け付けた宮城県仙台北警察署の警察官に,ストーカー規制法違反の容疑で逮捕されました。
(フィクションです。)
~ ストーカー行為 ~
ストーカー行為をした者は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます(ストーカー規制法18条)。
ストーカー行為とは、同一の者に対し,②つきまとい等を③反復してすることと定められています(ストーカー規制法2条3項)。
① 同一の者
ストーカー行為と言えるためには、同一の者に対する②つきまとい等の③反復である必要があります。
② つきまとい等
つきまとい等とは,(1)特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を満たす目的で,(2)当該特定の者又はその配偶者,直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対して,(3)ストーカー規制法2条1項各号に定める行為をすることをいいます。
つきまとい等とされる行為には,つきまといの他に,監視していると告げる行為,面会・交際の要求,乱暴な言動,無言電話等,汚物などの送付,名誉を傷つける行為,性的羞恥心を害する行為があります。
平成28年のストーカー規制法改正によって,(1)住居等の付近をみだりにうろつくことと,(2)拒まれたにもかかわらず,連続して,SNSを用いたメッセージ送信等を行うことや,ブログ,SNS等の個人のページにコメント等を送ることが新たにつきまとい等として規制対象になりました。
② 反復して
反復というためには、1回のつきまとい等では足りず、少なくとも2回以上のつきまとい等が必要です。
判例では、ストーカー規制法2条1項各号に掲げるつきまとい等のうち,いずれかの行為をすることを反復することをいい,特定の行為あるいは特定の号に掲げられた行為を反復する場合に限るものではないと判示しています(最決H17.11.25)。
(なお,つきまとい等を1回行った限りでは,ストーカー規制法による「ストーカー行為」にはあたらないため罰則対象にはなりませんが,警察署による警告等を受ける可能性はあります。)
~ 示談 ~
ストーカー事件では、被害者との示談が,刑事処分や量刑を決める上で重要な要素となります。
事例のAさんは、逮捕されてしまっていますが、示談をすることで釈放される可能性もあります。
示談によって早期の学校復帰・社会復帰を目指すことができます。
当事者間で示談が成立している場合、被害者の被害感情が一定程度収まっていること、行為者が一定の金銭の支出という「制裁」を受けているといったことを検察官が評価して、「不起訴処分」とすることがあります。
不起訴処分とは、今回の事件については裁判にかけることはしない、という処分のことです。
不起訴処分では済まずに何らかの刑事処罰は免れない場合でも、当事者間で示談が成立していると刑事処罰の内容を決める上で大いに影響します。
示談が成立していない場合に比べて、かなり刑事処罰の内容が軽くなることが多いです。
示談交渉は、捜査や刑事手続きに応じて迅速に進める必要があります。
示談交渉は、豊富な知識と経験を有する弁護士に依頼するのがお勧めです。
ストーカー事件で示談をご検討中の方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご用命ください。
逮捕・勾留による身柄拘束をご家族等が受けている場合は、初回接見サービスをご利用ください。
(宮城県仙台北警察署までの初回接見費用:34,600円)
無許可の産業廃棄物処理で廃棄物処理法違反
無許可の産業廃棄物処理で廃棄物処理法違反
宮城県多賀城市で廃品回収業を営むAさんは、無許可で、同市内の会社敷地内に産業廃棄物を処理した廃棄物処理法違反の容疑で、宮城県塩釜警察署に呼び出されて取調べを受けています。
Aさんは、警察官から今後も何度か取調べのために呼び出すと言われています。
取調べへの対応方法に不安を感じたAさんは、廃棄物処理法違反などの刑事事件に強い法律事務所の弁護士に無料法律相談をすることにしました。
(フィクションです。)
~廃棄物処理法~
廃棄物処理法とは「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の略称です。
廃棄物処理法は、廃棄物を適正に処理することで、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的として、廃棄物処理に関して、国民、事業者、国や地方公共団体の責務と廃棄物処理方法を定めた法律です。
この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによって汚染された物を除く。)をいいます(2条)。
廃棄物は、大きく分けて、事業者が排出するゴミのうち、プラスチックゴミや工場などの出す木くず・廃油・汚泥など、法令で指定された20種類の廃棄物である「産業廃棄物」と、家庭の日常生活で排出されたゴミや事業者が出す廃棄物のうち産業廃棄物以外のものである「一般廃棄物」に分けられ、その処理方法も異なります。
廃棄物処理業の無許可営業の禁止に関しては、廃棄物処理法第25条で定められています。
廃棄物処理法第25条は、
・廃棄物処理業の無許可営業
・行政からの命令(「事業停止命令」や「措置命令」など)への違反
・無許可業者への処理委託
・廃棄物の不正輸出
・廃棄物の「野焼き」や「不法投棄」
等を禁止しています。
これらに違反した場合の罰則規定は「5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金、またはこれの併科」と規定されており、廃棄物処理法の中では最も重い罰則となっています。
~取調べの受け方~
事件の被疑者や被告人は、事件についての取調べを受けます。
取調べには、逮捕されていない者に対してなされる任意でのものと、逮捕・勾留により身柄拘束を受けている被疑者・被告人に対して行われるものがあります。
前者は被疑者・被告人に限らず、事件について何らかの事情を知っている者などを広く対象にしており、あくまで任意で行われるものです。
実際に、刑事訴訟法198条1項但書には、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができると定められています。
つまり、取調べを受ける者が、明確に拒否しているのにも関わらず、取調室に引き留めることはできないということです。
もっとも、何度も出頭を拒むと逃亡のおそれありと判断されて逮捕されてしまうおそれがありますから、何の連絡もなく出頭しないのは危険です。
やむをえない事情で都合がつかないときはその旨伝えて日程を変えてもらうなどした方が良いでしょう。
また、何時でも退去できると定められていますが、退去しようにもとどめようと説得されたり、出入り口に警察官を置かれたりして、結局退去できない場合がほとんどだと思われます。
これに対して、後者は容疑者を裁判にかけるかどうか等の処分を決定するために強制的になされます。
供述を強制されることはありませんが、取調べ自体を拒否することは困難です。
取調べは密室で行われ、ときには長時間にわたって厳しく追及されることもあります。
そのため、思いもよらず不利な供述をさせられたり、知らず知らずのうちに捜査官に都合の良い調書を作成されたりすることがあります。
取調べで話したことは、供述録取書という形で書面化され、全て証拠となり得るため、注意して取調べに臨むことが必要です。
取調べがご不安な場合、あらかじめ弁護士に相談することで、取調べに関する具体的なアドバイスを受けることができます。
刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士は、警察や検察でどのような取調べが進められるのかということを熟知しています。
無料法律相談で、個別の事件に応じて、取調べにどのように対応することがベストであるかをアドバイスすることができます。
廃棄物処理法などの取調べでお困りの場合は、まずはお気軽に無料法律相談をご利用ください。
なお、お身内が逮捕・勾留されている場合は、初回接見サービスのご利用をご検討ください。
(宮城県塩釜警察署への初回接見費用:38,800円)
青少年深夜連れ出しで検挙
青少年深夜連れ出しで検挙
30代男性Aさんは,援助交際する目的で出会い系サイトを通じて15歳のVさんと出会い,深夜午前1時に宮城県丸森町内のコンビニエンスストアで待ち合わせして合流しました。
Vさんを乗せてAさんが車を運転していたところ、宮城県角田警察署の警察官から職務質問を受けて、18歳未満のVさんを深夜連れ出し同伴した容疑で宮城県青少年健全育成条例違反(深夜同伴の罪)として検挙されました。
宮城県角田警察署からの取調べを控えているAさんは、刑事事件に強い弁護士に無料法律相談を申し込みました。
(フィクションです。)
~青少年深夜連れ出しによる刑事処罰とは~
青少年深夜連れ出し事件においては、各都道府県の制定する青少年健全育成条例や、刑法の「未成年者略取誘拐罪」が成立するおそれが考えられます。
宮城県においては、青少年の深夜連れ出し等の禁止について宮城県青少年健全育成条例で以下のように規定しています。
【宮城県青少年健全育成条例 第36条2項 (深夜外出の制限)】
何人も、保護者の委託を受けないで、又は同意を得ないで前項に規定する時間中に青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめてはならない。ただし、正当な理由がある場合は、この限りでない。
上記の条文中の「青少年」とは「6歳以上18歳未満の者(婚姻により成年に達したものとみなされる者を 除く。)のことをいいます。
「前項に規定する時間」とは午後11時~翌日午前4時の時間帯をいいます。
「正当な理由がある場合」とは,本人又は保護者の急な病気や事故等により保護者に確認することが不可能な場合,青少年が親の虐待を受けており直ちに保護の必要がある場合、事件や事故等に遭遇した青少年を助ける等偶発的な理由により結果として同伴することになった場合等が挙げられます。
同伴とは青少年と同一の行動を取っていることをいいます。
上記の条文に違反して、保護者の委託を受けないで、又は同意を得ないで6歳以上18歳未満の者を午後11時~翌日午前4時に連れ出し、同伴し、又はとどめた者は、宮城県であれば「10万円以下の罰金又は科料」という刑事処罰を受けます。
なお、36条1項は保護者に対して,「保護者は,特別の事情がある場合のほか、午後十一時から午前四時までの間 青少年を外出させないように努めなければならない。」と規定していますが、深夜に青少年を外出させないよう努力義務を定めたもので,罰則はありません。
青少年の深夜外出が制限された理由は,青少年を援助交際などの児童買春,児童ポルノ,淫行などの犯罪から守り,青少年の健全な育成を図るためです。
「10万円以下の罰金又は科料」という罰則ですので、罰則自体は,他の犯罪と比べたら比較的軽微ですが,発覚すれば逮捕・勾留されるおそれはもちろんあります。
今回の事例のVさんは15歳ですので、宮城県青少年健全育成条例の青少年に該当し,Aさんの連れ出し行為は36条2項に該当する可能性が高そうです。
なお、暴行・脅迫や欺罔・誘惑を手段として、未成年者を連れ出した場合には、「未成年者略取略取罪」か「未成年者誘拐罪」が成立する可能性があります。
刑事罰はいずれも「3月以上7年以下の懲役」という法定刑です。
また、青少年との性行為や性交類似行為があった場合には、宮城県青少年健全育成条例違反(みだらな性行為又はわいせつな行為の禁止)に当たるとして、「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」という刑事処罰を受ける可能性があります。
対償を供与し、又はその供与の約束をして、18歳未満の児童に対し、性交等をした場合は、児童買春の罪として「5年以下の懲役又は300万円以下の罰金」という刑事処罰を受ける可能性があります。
青少年深夜連れ出し事件で検挙された場合、検挙前に当該青少年・児童と淫行,児童買春をしているケースがあります。
その場合、青少年深夜連れ出し事件の検挙がきっかけで,淫行・児童買春等他の罪の立件,逮捕につながることがあります。
余罪捜査で,児童買春,児童ポルノ,淫行等他の罪にあたる事実が発覚すれば逮捕,勾留されるおそれが高まるので注意が必要です。
青少年深夜連れ出しに関する罰則は軽微ですが、児童買春,児童ポルノ,淫行の罪の発覚のきっかけとなりかねません。
不安な場合は、軽い犯罪だと思って甘くみずに刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に一度ご相談されることをご検討ください。
24時間受付の無料法律相談・初回接見サービスは0120-631-881までお電話ください。
(宮城県角田警察署への初回接見費用:44,200円)
空き巣で示談
空き巣で示談
宮城県村田町在住のAさんは、同じアパートに住むVさんがたびたび家を施錠せずに外出していることに気付きました。
AさんはVさんが外出した隙を見計らってV宅へ忍び込み、ブランド物の鞄、DVDプレーヤー、ゲーム機、V宅の合鍵等を盗みました。
Vさんが被害届を提出して宮城県大河原警察署が捜査した結果、Aさんは住居侵入罪と窃盗罪の容疑で逮捕されました。
Aさんの逮捕を知らされたAさんの両親は、刑事事件専門の法律事務所に初回接見サービスを申し込みました。
(フィクションです。)
~住居侵入窃盗事件~
宮城県警察の統計によると、宮城県で平成29年の1年間に住居侵入窃盗事件は852件認知されており、そのうち287件が検挙されています。
住居への侵入窃盗の手口には、空き巣、忍込み、居空きの3種類があります。
「空き巣」とは住人の不在時に侵入し金品を盗むこと、「忍込み」とは夜間の就寝時に侵入し金品を盗むこと、「居空き」とは住人が在宅中でありながら食事や昼寝などをしている隙に侵入し金品を盗むことを指します。
この3つのうち、最も多くを占めるのが空き巣です。
~空き巣で住居侵入罪と窃盗罪に~
今回のAさんは、住居侵入罪と窃盗罪の容疑がかけられて逮捕されています。
【住居侵入等(刑法130条)】
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
【窃盗罪(刑法235条)】
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
Aさんは、他人であるVさんの住居に許可なく侵入してVさんの鞄、DVDプレーヤー、ゲーム機、V宅の合鍵等を盗んで(=窃取して)いますので、住居侵入罪と窃盗罪が成立する可能性は極めて高いでしょう。
空き巣など住居侵入窃盗事件の場合、住居侵入罪と窃盗罪という二つの犯罪が成立します。
2つの犯罪が成立するから、刑罰に関しては、住居侵入罪と窃盗罪の2つの法定刑を足すべきだと考える方もいらっしゃるかもしれません。
刑法ではどのように考えるかというと、例えば、今回のAさんの場合、V宅に忍び込んだのはVさんの財物を盗むための手段です。
つまり、住居侵入罪は窃盗罪を犯すための手段として行ったと考えることができます。
このように、二つの犯罪が成立し、その関係が手段と結果というかたちになっているときは「牽連犯」と呼ばれます。
牽連犯 刑法第54条1項
「一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為がほかの罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する」
牽連犯の場合、裁判では法定刑の最も重い刑により処断されます。
つまり、住居侵入罪と窃盗罪の牽連犯の場合は、窃盗罪の法定刑である「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」により処断されることになります。
~不起訴や軽い刑にしたい~
空き巣など住居侵入窃盗事件では、窃盗だけでなく住居侵入行為も行っているため、窃盗罪のみを起こした場合よりも当然処分が厳しくなります。
起訴不起訴や量刑が決められる際は、犯行態様や犯行動機、被害額や前科の有無、被害者との示談の有無など様々な事情が考慮されます。
その中で特に重要な要素となるのが、被害者への謝罪や被害弁償によって示談を成立させることです。
示談といってもその内容は様々であるため、どのような内容の示談を被害者と締結するかによって今後の流れに大きな影響を与える可能性があります。
例えば、被害者が加害者に寛大な処分を求める旨の条項が示談書に入っていれば,被疑者側にとってより有利な事情として作用します。
住居侵入窃盗事件では、住居に侵入されていることから被害者の恐怖心が大きく被害者の処罰感情が厳しいことが多いので,示談交渉に慣れた弁護士に依頼されることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、示談交渉に長けた弁護士が多数所属する法律事務所です。
窃盗事件の示談交渉についての相談も多数いただいていますので、まずはお気軽に無料法律相談または初回接見サービスをご利用ください。
(宮城県大河原警察署への初回接見費用:41,600円)
勾留中脱走で逃走罪
勾留中脱走で逃走罪
宮城県栗原市に住むAさんは、強制わいせつ罪の容疑で逮捕され、宮城県築館警察署の留置場に勾留されて、捜査を受けていました。
Aさんは、宮城県築館警察署の留置場からの脱走を企て、脱走に成功しました。
しかし、翌々日、Aさんの捜索のために動員されていた警察官によって発見され、Aさんは単純逃走罪の容疑で逮捕されました。
(フィクションです。)
前回のコラムでは、犯人隠避罪について解説しました。
犯人隠避罪は、犯人の発見や身柄の確保を妨げる罪であり、「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。」と規定されている罪です。
今回は、犯人隠避罪との関連もある逃走罪について解説します。
~逃走罪~
昨年、大阪府の警察署に留置されていた被告人が、弁護士との接見終了後に接見室のアクリル板をこじ開けて脱走する逃走事件が発生し、連日報道されていました。
警察は顔写真等を公開して被告人を加重逃走罪で指名手配し、結局、被告人は山口県で食料品を万引きした窃盗容疑で山口県警察に現行犯逮捕され、1か月半にわたる逃亡劇に幕を閉じました。
また、昨年は、愛媛県今治市の松山刑務所大井造船作業場から受刑者が逃走して後に単純逃走罪で逮捕された事件も起きています。
逃走罪は、刑法第六章の逃走の罪の章に規定された犯罪です。
刑法第六章 逃走の罪
(逃走)
刑法第九十七条 裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは、一年以下の懲役に処する。
(加重逃走)
刑法第九十八条 前条に規定する者又は勾引状の執行を受けた者が拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し、暴行若しくは脅迫をし、又は二人以上通謀して、逃走したときは、三月以上五年以下の懲役に処する。
逃走の罪は、基本類型として逃走罪(単純逃走罪とも呼ばれます。)があり、態様が悪質なものについては加重逃走罪という、より刑罰の重たい犯罪類型として取り扱われています。
両罪は、刑務所や警察署の留置場などのような拘束されている場所から逃走するという点は同じですが、主体となる者や逃走の方法によって区分され、法定刑にも違いがあります。
なお、単純逃走罪や加重逃走罪の犯人を助けて犯人の発見や身柄の確保を妨げる人がいれば、その方は、犯人隠避罪若しくは犯人蔵匿罪に抵触する可能性があります。
~単純逃走罪~
「単純逃走罪」は、「裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者」が逃走すると成立します。
「裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者」とは、具体的にいうと以下のようになります。
既決の者:懲役刑や禁錮刑といった実刑判決によって刑務所に拘禁されている受刑者、死刑判決の執行を待つ者、罰金や科料が払えず労役場に留置されている者
未決の者:勾留中の被疑者、勾留中の被告人、鑑定留置に付されている者
「未決の者」に該当する勾留中の者が勾留期間中に取調べを受けていて、取調室から逃げると逃走罪が成立します。
しかし、「未決の者」には、逮捕中の人は含まないとされているため、逮捕期間中に取調べを受けている際、取調室から逃げても逃走罪は成立しません。
また、逃走の罪は,「拘禁された者」が対象であるため,保釈中の者が逃げても逃走の罪にはなりません。
(ただし、保釈中の者が逃走して裁判に出席しなかった場合は、保釈金が没収されます。)
単純逃走罪で起訴されて有罪が確定すれば、1年以下の懲役が科せられます。
~加重逃走罪~
加重逃走罪の対象は、単純逃走罪の対象に加え、拘引状の執行を受けた者も含まれます。
拘引とは被告人等を指定の場所に強制的に連れていくことを指します。
加重逃走罪は、ただ逃亡するだけでなく、拘禁場・拘禁器具を破壊し、暴行・脅迫を行った場合、もしくは、2人以上で通謀して逃走した場合に罪に問われます。
加重逃走罪は、その手段、態様が単純逃走罪に比べて悪質で、国家の拘禁作用に対する侵害の度合いが強いため、その法定刑は「3月以上5年以下の懲役」と、単純逃走罪と比べて厳しいものになっています。
単純逃走罪と加重逃走罪には、
1.単純逃走罪は拘禁されている者のみ⇔加重逃走罪は逮捕状で逮捕された者等も含む
2.加重逃走罪には拘禁に関するものの破壊が必要(手錠を外すことは破壊ではないので含まれない)
3.加重逃走罪には暴行・脅迫が必要
などの違いがあります。
上記事例のAさんは、このうち裁判の執行により拘禁された「未決の者」にあたります。
Aさんは、強制わいせつ罪の容疑で宮城県築館警察署に勾留中ですから、「未決の者」にあたるのです。
そのAさんが、宮城県築館警察署から脱走しているのですから、単純逃走罪に該当すると考えられます。
ただし、もしAさんが、刑務所から脱走する際に器具等を損壊していたり、暴行や脅迫を用いていたり、2人以上で共謀していた場合、刑法98条の加重逃走罪になる可能性があります。
また、逃走中に犯した犯罪は、別の事件として扱われるので、逃走中に逃走資金や車を盗んだり、空き家に侵入したりすれば、窃盗罪や建造物侵入罪等によっても刑事罰を受けることとなります。
逃走罪だけで考えるとそれほど重い罰則が規定されているわけではありませんが、逃走中に起こした事件も含めて刑事罰を受けることになれば、長期間の実刑など非常に重い刑事罰が言い渡される可能性があるため、刑事事件専門の弁護士に依頼することが望ましいでしょう。
逃走罪でお困りの場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までお問い合わせください。
(宮城県築館警察署への初回接見費用:46,880円)
無免許運転ひき逃げの身代わりで犯人隠避罪2
無免許運転ひき逃げの身代わりで犯人隠避罪2
~前回からの続き~
先日2月8日、仙台市青葉区で、追突事故を起こしながら現場から逃走した女性と、その身代わりとして警察に名乗り出た交際相手の男性の2人が宮城県仙台北警察署に逮捕される事件が起きました。
警察によると、女性は、仙台市青葉区の県道において無免許で乗用車を運転中にバイクに追突し、バイクを運転していた大学生にけがを負わせたにも関わらず、その場から逃走したひき逃げなどの疑いが持たれています。
女性はひき逃げ直後、電話で交際相手の男性を呼び出し、無免許運転の自分の身代わりになることを依頼したと報道されています。
助けを求められた交際相手の男性は、事故処理中の現場に2人で現れ、捜査中の警察官に「自分が運転して事故を起こした」と嘘の供述をした犯人隠避罪の疑いが持たれているそうです。
2人は容疑を認めていて、女性は「無免許が発覚するのを恐れた」などと供述しているそうです。
前回は、事例の女性について、無免許運転でひき逃げをした場合の罪と罰則、女性が犯人隠避罪を教唆したとして犯人隠避罪の法定刑である「3年以下の懲役または30万円以下の罰金」が適用される恐れがあることをご説明しました。
今回は、犯人隠避罪についてご説明します。
~身代わり出頭で犯人隠避罪~
身代わり出頭とは、真犯人に代わって別人が警察署などに出頭し、供述などをすることです。
交通事故においては、飲酒運転や今回の事例のような無免許運転の発覚を隠蔽するために、身代わり出頭が比較的行われやすいようです。
身代わり出頭をして真犯人の発見を妨げた場合、犯人隠避罪に問われる可能性があります。
犯人隠避罪は、犯人の発見や身柄の確保を妨げる罪であり、犯人蔵匿罪と共に刑法103条に規定されています。
刑法が犯人隠避罪および犯人蔵匿罪を通して保護しているのは、国家の刑事司法作用(犯罪捜査や刑事裁判など)の安全です。
犯人隠避罪 刑法第百三条
罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
~罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者~
「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」とは、法定刑として罰金刑又はそれ以上の刑罰が規定された犯罪を犯した者で、その者の犯した犯罪が警察等の捜査機関に発覚しているか否かは関係ありません。
また、実際に罪を犯した者だけでなく、その疑いが持たれている者も含まれると考えられています。
今回の事例の女性は、報道されている内容からすると、無免許運転をしてひき逃げ事件を起こしているとされており、該当する犯罪の法定刑はいずれも「罰金以上」に該当するので、今回の事例の女性は「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」となる可能性が高いです。
なお、「拘禁中に逃走した者」とは、法令に基づき国家の権力により拘禁を受けた者が、不法に拘禁から脱した場合です。
裁判の執行によって拘禁された既決、未決の者や、勾引状の執行を受けた者に加えて、現行犯逮捕若しくは緊急逮捕されて令状が発せられる前の者、調査、審判のために少年鑑別所に収容されている少年もこれに当たります。
~「蔵匿」「隠避」とは~
続いて「蔵匿」「隠避」という行為について説明します。
蔵匿 : 犯人の発見又は逮捕が妨害されることを認識した上で、検挙を免れるような場所を提供して犯人を匿う行為
(自分の家に匿ったり、潜伏する部屋を用意したりする行為)
隠避 : 蔵匿以外の方法によって捜査機関による犯人の発見又は逮捕を免れさせる一切の行為
(逃走資金援助や逃走用の車や衣類、携帯電話機等を用意する行為etc)
今回の事例では、人身事故時の運転者で犯人である女性に捜査が及ばないように、女性の交際相手の男性が身代わり出頭を行ったとされています。
身代わり出頭、つまり、他人の犯罪を自己の犯罪であるかのように虚偽の申し立てをして、その他人の犯罪の発見を妨げる行為は、犯人隠避罪でいう「隠避行為」に当たります。
そのため、女性に代わって出頭した男性は、犯人隠避罪に問われる可能性が高いと思われます。
犯人隠避罪で起訴されて有罪となった場合、「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金」が科せられますが、量刑は、逃走犯の犯した犯罪や社会的反響の大きさ、隠避の犯行態様等によって左右されると言われています。
女性はひき逃げ直後、電話で交際相手の男性を呼び出し、無免許運転の自分の身代わりになることを依頼したと報道されています。
報道通り、女性が隠避行為を交際相手の男性に頼んでいた場合、女性は交際相手の男性の犯人隠避行為を教唆したとして、犯人隠避罪の教唆犯とされる可能性があります。
「教唆」とは、犯罪の意思がない人をそそのかして、犯罪を実行することを決意させて実行させることをいい、刑法第61条に規定されています。
教唆犯は、正犯(実際に犯罪を実行した人)の刑が科せられるので、もし女性が、犯人隠避罪の教唆犯として起訴されて有罪が確定した場合は、犯人隠避罪の法定刑である「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金」が適用されます。
無免許運転でひき逃げをしてしまった、身代わりで犯人だと名乗り出て犯人隠避罪の疑いをかけられているという場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
(宮城県仙台北警察署への初回接見費用:34,600円)
放置していて死体遺棄罪?
放置していて死体遺棄罪?
宮城県女川町在住の60歳女性Aさんは、同居の高齢の母親が死亡したのを放置していたとして宮城県石巻警察署に逮捕されました。
Aさんは、同じ敷地内の離れに暮らす母親と仲が険悪になり、数年間連絡を取らないまま生活していました。
Aさんの母親と連絡が取れないことを不審に思った町役場の職員がAさんの家を訪問に訪れて、亡くなっていたAさんの母親を発見しました。
Aさんは、家族の依頼で初回接見に来た弁護士に、自身の行為が死体遺棄罪に当たるのか、これからどうなるのか刑事事件に強い弁護士に相談しました。
(フィクションです。)
~ 死体遺棄罪 ~
死体遺棄罪は、刑法190条の「死体損壊等罪」に規定されています。
死体や遺骨などを、損壊したり、そのまま放置(遺棄)した場合には、刑法190条の死体損壊罪や死体遺棄罪に当たるとして、刑事処罰を受けることになります。
刑法190条 (死体損壊等)
「死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する」
死体遺棄罪は、死体、遺骨、遺髪、納棺物を遺棄した場合に成立し、法定刑は、3年以下の懲役です。
今回のAさんは、母親の遺体を放置しただけで、積極的にどこかへ捨てに行ったわけではありませんが、「遺棄」に当たるのでしょうか。
「遺棄」とは、習俗上の埋葬と認められる方法によらないで放棄することをいいます。
死体遺棄罪は一般人の死体に対する信教上の信念を保護する犯罪ですので、宗教上の埋葬として認められない方法で放棄することが「遺棄」に当たることになるのです。
「遺棄」と聞くと「捨てる」行為をイメージするかと思いますが、そうではありません。
家族などの法律上葬祭をする義務を負う者については、単に死体を現場に放置する場合でも「遺棄」にあたります。
そのため、同居の親族が自宅で老衰や病気により死亡した場合に、その死体を死亡時の状態のまま放置すれば、死体遺棄罪が成立する可能性が高いです。
一方で、殺人犯人などが人に見つからない場所で人を殺して放置した場合でも、必ずしも死体遺棄罪には問われません。
死体遺棄罪は、殺人罪と併合罪になるケースが多く見られますが、殺人犯人などの場合、死体遺棄罪が成立するためには、死体を他の場所に移動させたり,隠したりする作為が必要となります。
今回のAさんのように同居の親族の死体を放置したと疑われている事件では、死体遺棄罪で依頼を受けた弁護士は事件状況を詳細に調べ上げます。
死体を放置したと疑われている方が葬祭義務を持つ者に当たるのか、その放置行為が「遺棄」に当たるのか等様々な事情を総合的に検討いたします。
放置を疑われている方が死体を放置(遺棄)するつもりはなかった等の事情がある場合、故意を否認する形での弁護活動をおこなうことが考えられます。
死体遺棄罪で起訴された場合には、3年以下の懲役が科されるおそれがあります。
しかし、判決で言い渡される刑罰が3年以下の懲役であれば、執行猶予が付されることがあります。
もちろん、執行猶予となれば犯罪自体は成立しますが、刑の執行が猶予されるため、実刑を回避できるので刑務所に行かなくて済みます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、死体遺棄事件をはじめとする刑事事件専門の法律事務所であり、多数の執行猶予判決を獲得してまいりました。
刑事事件で執行猶予を獲得したいとお困りの場合は、刑事事件専門の弁護士に時間制限なく直接相談可能な無料法律相談をご利用ください。
逮捕されている事件では、弁護士が警察署まで接見(面会)に向かう、初回接見サービスのご利用もいただけます。
まずは、フリーダイヤル0120-631-881までお気軽にお問い合わせください。
(宮城県警察石巻警察署までの初回接見費用:43,200円)
偽造免許証提示で無免許運転、有印公文書偽造、同行使の罪に
偽造免許証提示で無免許運転、有印公文書偽造、同行使の罪に
人身事故を起こして運転免許が取消になったトラック運転手のAさんは、仕事を続けていくために、運転免許証を偽造しました。
ある日、宮城県大和町内においてトラックを運転している際に、自動車検問で交通取り締まり中の宮城県大和警察署の警察官に偽造した運転免許証を提示しました。
警察官に偽造免許証であることを見抜かれたAさんは、在宅捜査されることになり、無免許運転の罪と有印公文書偽造・同行使の罪で書類送検されました。
Aさんは、刑事事件・交通事件に強い弁護士に、弁護を依頼することにしました。
(フィクションです。)
~無免許運転の罪~
無免許運転とは、運転免許を受けないで、自動車又は原動機付自転車を運転することをいい、道路交通法違反にあたる行為です。
運転免許の停止中や取消後、失効後にも関わらず運転した場合、一度も運転免許証の交付を受けたことが無い場合(純無免)など、運転免許がないにもかかわらず自動車等を運転した場合は、道路交通法の無免許運転の罪に該当し、刑罰を受けることとなります。
無免許運転のうち純無免であるケースは少なく、多くは、運転免許の停止中や取消・失効後に,車両を運転し,発覚したケースであると言われています。
なお、運転免許はあるものの免許証を携帯していない場合は、無免許運転の罪には当たらず、「免許証不携帯」として別の罰則が適用されます。
無免許運転の罪は、2013年の道路交通法の改正によって厳罰化されており、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」という法定刑が定められています。
「元々運転していた車だから大丈夫」などと軽く考えて無免許運転する方が稀にいらっしゃいますが、無免許運転は重大な交通違反であり、交通違反の中ではかなり重い罰則となっているため、絶対にしないようにしましょう。
~有印公文書偽造・同行使の罪~
文書偽造事件は、偽造した文書の種類、印章または署名の有無、偽造か変造かによって区別されています。
刑法では、文書の種類を、公文書と私文書の2種類に分類しています。
・公文書:公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画
・私文書:権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画
公文書偽造罪は、刑法第155条に定められており、私文書偽造罪は刑法第159条に定められています。
公文書偽造罪と私文書偽造罪は、印章または署名の有無、偽造か変造かによってそれぞれ区別され、
・有印公文書偽造罪、有印公文書変造罪、無印公文書偽造(変造)罪
・有印私文書偽造罪、有印私文書変造罪、無印私文書偽造(変造)罪
に分かれます。
事例のAさんが偽造した運転免許証は、上記のうちどの文書になるのでしょうか。
運転免許証をお持ちの方は、運転免許証をご覧いただくと、「〇〇県(府・都・道)公安委員会」という記載とその印章があると思います。
このことから、運転免許証の発行(作成)者が公務所であること、印章もあることから、運転免許証が有印公文書である事がわかります。
有印公文書の偽造・変造の場合、法定刑は1年以上10年以下の懲役となります。
そして偽造文書を使用する事によって、行使罪が適用されます。
「行使」とは、偽造した文書を使用する事を意味し、偽造文書を他人に提出したり、偽造免許証を警察官に提示する行為が「行使」に当たります。
以上のことから、Aさんの行為は、無免許運転の罪、有印公文書偽造・同行使の罪にあたる可能性が極めて高いと言えます。
無免許運転の罪には、罰金刑が定められており、無免許運転(のみ)の初犯であれば略式裁判による罰金処分で済むことが多いと言われています。
一方、有印公文書偽造罪には罰金刑が定められていません。
そのため、運転免許証の偽造によって無免許運転の罪と有印公文書偽造・同行使の罪に問われている場合は、起訴されて正式裁判になる可能性が高くなります。
しかし、弁護士を選任して刑事弁護活動を依頼することで、起訴を免れたり、執行猶予付きの判決を獲得して刑務所への服役を免れたりすることが可能です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では交通事件・刑事事件を専門とする法律事務所です。
偽造免許証を警察官に提示して、無免許運転・有印公文書偽造・同行使罪に問われた方の弁護活動のご依頼もいただいています。
弁護士に依頼するか迷っているという場合は、まずは、無料法律相談または初回接見サービスをご利用ください。
(宮城県大和警察署の事件の初回法律相談料:無料)
薬剤師の業務上過失致死傷罪
薬剤師の業務上過失致死傷罪
仙台市若林区在住の薬剤師Aさんは、業務上過失致傷罪の疑いで宮城県仙台東警察署により任意出頭を要請され、取調べを受ける予定です。
同署によると、薬剤師としてAさんが勤務中、患者Vさんに調剤した際に薬の取り違えを起こして、その結果Vさんに健康被害が起こったという疑いがかけられているそうです。
同署は、調剤したAさんの不注意による調剤過誤が原因とみて捜査を進めています。
宮城県仙台東警察署の取調べに不安を感じているAさんは、仙台市内の刑事事件専門法律事務所の弁護士に無料法律相談をしました。
(フィクションです。)
~調剤過誤~
日本薬剤師会では、「調剤事故」、「調剤過誤」について、以下のように定義しています。
調剤事故: 医療事故の一類型。調剤に関連して、患者に健康被害が発生したもの。
薬剤師の過失の有無を問わない。
調剤過誤: 調剤事故の中で、薬剤師の過失により起こったもの。
調剤の間違いだけでなく、薬剤師の説明不足や指導内容の間違い等により健康被害が発生した場合も、「薬剤師に過失がある」と考えられ、「調剤過誤」となる。
もし、薬剤師が調剤過誤を起こしてしまった場合、刑法211条の業務上過失致死傷罪に問われる可能性があります。
~業務上過失致死傷罪~
業務上過失致死傷罪は、刑法211条前段に定められている犯罪です。
「業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する」と規定されています。
業務上過失致死傷罪の成立要件は、「一定の業務を反復継続して行う地位にある者」が、「業務上課せられる必要な注意を怠り、人を死傷させた場合」とされています。
ここでいう「業務」とは、判例によれば、「社会生活上の地位に基づき、反復継続して行う行為であって、生命身体に危険を生じうるもの」をいいます。
他人の生命や身体に危険が生じるような業務を実施している際に,過失行為(注意義務を怠って)によって人を死傷させた場合,その行為者自身や現場監督者などは業務上過失致死傷罪に問われる可能性があります。
業務上過失致死傷罪で起訴されて有罪が確定すれば「5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」が科せられます。
薬剤師の調剤過誤により業務上過失致死傷罪が問われた裁判例としては、処方箋の文字を読み間違えたケースや、投与量や効果の似ている他の薬剤と勘違いをして調剤したケースがあります。
前者に関しては。業務上過失致傷罪の成立が認められて、禁錮1年執行猶予3年とされている裁判例(福岡地判昭和52年3月31日)があります。
後者に関しては、業務上過失致死罪の成立が認められて罰金25万円が科されている裁判例(沖縄簡略式平成7年1月5日)があります。
~取調べ前に弁護士に相談を!~
警察に業務上過失致死傷罪で捜査されている場合、Aさんのように任意出頭を要請されて、取調べを受けることがあります。
取調べでは、調剤過誤が発生した経過等について聴取すると考えられます。
ところで、業務上過失致死傷罪は、罪名からもわかるように,過失犯です。
この場合の過失とは,業務上必要な注意義務を怠ることです。
過失の有無は、状況証拠と共に,取調べでの供述内容で過失が立証されることとなります。
事案によっては過失がないとの主張をすることにより,罪の成立を否定することが考えられます。
・充分な注意を尽くしていたとしても,傷害・死亡結果の発生は避けられるものではなかったという主張
・事故の発生は被害者側の過失によるものであって,本人には過失はなかったなどの主張
をする必要がある場合もあります。
取調べでは,自分の言いたいことがしっかり主張できない,主張が正確に取調官に伝わらない,取調官が言い分を受け入れてくれない,言い分が取調官によって曲解されるなどの理由から、思いがけず自分に不利な供述や虚偽の自白をさせられて、取り返しのつかないことになることもあります。
そのような事態にならないよう、取調べをうけることになった場合は,事前に刑事事件に強い弁護士に相談して、取調べ対応についてアドバイスを受けておくことをお勧めします。
また、業務上過失致死傷罪では、関係者からの取調べの他、現場や本社等に対し家宅捜索をする傾向があります。
家宅捜索などの刑事事件の手続や対応方法、刑事処分の見通しなど、刑事事件に巻き込まれた方にとって不安や心配事が尽きないでしょう。
そのような場合こそ、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談下さい。
刑事事件に関する不安や心配事,疑問点など何でもご相談いただけます。
(宮城県仙台東警察署への初回接見費用:36,900円)
通貨偽造事件で裁判員裁判
通貨偽造事件で裁判員裁判
仙台市若林区に住むAさんは、お金に困って、自宅のカラープリンターで偽の一万円札20枚を製造し、このうちの1枚を同区内のスーパーで使用して商品を購入しました。
後からAさんの使用した一万円札が偽物であることに気付いた店員が宮城県仙台南警察署に通報し、店内の防犯カメラの映像によりAさんが犯人と特定されました。
Aさんは、通貨偽造・同行使の罪の疑いで、宮城県仙台南警察署により逮捕されてしまいました。
Aさんの両親からの依頼で、Aさんの初回接見に訪れた刑事事件に強い弁護士は、通貨偽造・同行使の罪は、「無期又は3年以上の懲役」という厳しい罰則が定められている罪だとAさんに説明しました。
(フィクションです。)
~通貨偽造・同行使の罪~
今回の事例のAさんが逮捕された通貨偽造・同行使の罪は、行使の目的で貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、偽造された貨幣等を行使する罪です。
刑法148条は、1項で通貨偽造等罪を、2項で偽造通貨行使等罪を規定しています。
刑法148条1項は、「行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は3年以上の懲役に処する。」と規定しています。
「通用する貨幣、紙幣又は銀行券」とは、日本で流通し、私たちがお金として使用しているお札や硬貨のことで、Aさんが使用した偽一万円札は、これに該当します。
作成された物は、一般人が、本物の通貨であると誤解してしまうような外観である必要があります。
一般人が注意して見れば偽物だとわかるような場合は、通貨偽造罪の「偽造」とはなりません。
今回の事例では、Aさんが偽一万円札を使用した際、その場ではスーパーの店員は偽造紙幣と気付いていません。
そのため、製造された偽一万円札は、一般人が、本物の通貨であると誤解してしまうような外観の程度に至っていると思われます。
権限のないAさんが通貨に似た外観のものを作成したとして、「偽造」にあたると考えられます。
「行使の目的」で「偽造」するとは、偽の通貨を真正な通貨として流通に置く目的、つまり、本物の通貨のように使用しよう、流通させようとして「偽造」することです。
教材用や作成技術の興味で作成した場合は行使の目的があるとはいえません。
事例のAさんに関しては、スーパーで商品を購入する際、真正な通貨として偽造の一万円札を使用し、これを流通に置いているという事情から、「行使の目的」も認められると思われます。
以上から、Aさんは「行使の目的で、通用する…紙幣…を偽造…した」として、Aさんには通貨偽造罪が成立する可能性が高いと思われます。
加えて、偽造した一万円札をスーパーで商品を購入するため使用した行為は、偽造通貨行使罪(刑法148条2項)。にあたり、Aさんには通貨偽造罪と同行使罪が成立すると思われます。
なお、少し難しい話にはなってしまいますが、通貨偽造罪と同行使罪は牽連犯(刑法54条1項)として処理されるため、Aさんの処断刑は無期又は3年以上の懲役となります。
通貨偽造・同行使の罪は、通貨に対する公共の信用と、取引の安全といった社会的法益を保護法益としていますが、同時に、国家の通貨発行権という国家法益に対する罪としても捉えられています。
そのため、通貨偽造・同行使の罪には、厳しい罰則が定められているのです。
通貨偽造・同行使の罪には無期懲役刑があるため、裁判員裁判の対象事件となります(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条1号)。
通貨偽造・同行使の罪は、厳しい処罰が定められている犯罪であり、起訴されれば裁判員裁判となってしまいます。
このような事件こそ、刑事事件専門の弁護士に依頼して、万全な弁護活動を行ってもらうことをお勧めします。
通貨偽造罪などの刑事弁護のご依頼は、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご用命ください。
(宮城県仙台南警察署への初回接見費用:34,800円)