介護職員の高齢者虐待で傷害罪2

介護職員の高齢者虐待で傷害罪2

~前回からの続き~
宮城県登米市の特別養護老人ホームで介護職員として働く40代女性Aさんは、入所中のお年寄りに暴行し怪我をさせた傷害罪の疑いで、宮城県佐沼警察署逮捕されました。
同署によると、Aさんは、入所するお年寄りVさんに対して、叩く蹴るといった暴行を加えて、重傷を負わせたとされています。
Aさんは最近、Aさんの夫に対して「職員がどんどん辞めて人手不足で、業務の負担が大きくてつらい」と話していました。
Aさんの夫は、最近のニュースで、グループホームで入所者のお年寄りに暴行して傷害罪に問われていた介護職員が懲役2年の実刑判決を言い渡されたと耳にしたことから、刑事事件専門の弁護士にAさんの刑事弁護を依頼することにしました。
(フィクションです。)

高齢者を介護し守るべき養介護施設従事者等による虐待行為は全国各地で後を絶たず、増加傾向にあります。
厚生労働省によると、平成28年度の養介護施設従事者等による虐待については、相談・通報件数は 1,723 件、虐待判断件数は 452 件(前年度比44件増)と過去最悪を更新しているそうです。
介護職員でつくる労働組合が実施したアンケートでは、虐待の原因を尋ねる設問に対し、ほぼ半数が「業務の負担が大きい」「仕事上のストレス」と回答したそうです。
介護職員の離職率が全産業平均を上回るとの厚労省の調査結果もあり、要介護施設等の人材不足が過度な労働を招き、入所者への虐待の温床になっている可能性が指摘されています。

~実際に宮城県で起きた高齢者虐待事件~

先月15日、仙台市宮城野区のグループホームで入所者のお年寄りに暴行して重傷を負わせたとして傷害罪に問われていた介護職員に対し、仙台地方裁判所が懲役2年の実刑判決を言い渡しました。
判決によると、被告人は、勤務先のグループホームで入所する当時86歳の女性と当時90歳の2人の男性に殴るなどの暴行を加え、重傷を負わせたとされています。
裁判長は「入居者が安全、安心に過ごせるはずの施設で、このような犯行に立て続けに及んだことは極めて強い非難に値する」と指摘しました。
そのうえで、「不慣れな仕事によるストレスを背景として犯行に及んでいて、経緯や動機に酌むべきところはない」として、懲役2年6ヵ月の求刑に対し、懲役2年の実刑判決を言い渡したそうです。

~傷害罪~

実際に宮城県で起きた高齢者虐待事件と同様、今回のAさんも傷害罪の疑いをかけられています。
傷害罪は、刑法204条に定められている罪で、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。
人の身体に暴行を加えるなどして傷害した場合に成立します。
一方、暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、暴行罪(法定刑:2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料)になります。
傷害とは、人の生理的機能を害することとされており、殴る蹴るなどの行為により出血させたり骨折させたりするのが典型例です。
人を傷害させたかどうかが傷害罪と暴行罪の境となります。
なお、暴行について故意がある限り、傷害結果が生じれば傷害罪となるため、「怪我をさせるつもりはなかった」との言い訳は通用しないことになっています。

高齢者虐待事件の中には、虐待を受けた高齢者が死亡してしまい、暴行罪や傷害罪にとどまらないケースもあります。
2014年には川崎市の介護付き有料老人ホーム職員の男が、入所者3人を施設上階から庭に転落させて死亡させたとして、殺人罪で死刑判決(横浜地裁)を受けています。
昨年には、熊本市のグループホームで、職員の男が入所者を殴って死亡させ、傷害致死容疑で逮捕されています。

高齢者虐待で該当しうる罪としては、虐待の種類毎に
身体的虐待    暴行罪・傷害罪
性的虐待    強制わいせつ罪・強制性交等罪
心理的虐待    脅迫罪・侮辱罪
経済的虐待      横領罪・窃盗罪
介護や世話の放棄   保護責任者遺棄罪
虐待による高齢者死亡 傷害致死罪・殺人罪・保護責任者遺棄致死罪
などがあります。

高齢者虐待の事件内容によっては、起訴されて有罪となると、実刑が言い渡されて刑務所に服役しなければならなくなる可能性もあります。

養介護施設等の介護職員による高齢者虐待事件の場合、事件の報道や公表がなされることが考えられます。
マスコミなどによる事件の報道は、捜査機関からの情報提供を情報源としていることがほとんどです。
弁護士に依頼した場合、事件を報道・公表されることによって被る不利益などを丁寧に説明し、事件についての報道や公表がなされないように警察や検察に働きかけるといった活動を行うことが考えられます。
さらに、報道が避けられないような場合には、報道内容が過大なものとなっていないか、根拠のない不適切な内容となっていないかに注意を払い、報道機関に対して、報道内容の訂正や削除を求めることも考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、傷害罪をはじめとする刑事事件を専門とする法律事務所です。
まずはお気軽にフリーダイヤル0120-631-881まで無料法律相談または初回接見サービスをお申込みください。

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