Archive for the ‘暴力事件’ Category

介護職員の高齢者虐待で傷害罪2

2019-02-08

介護職員の高齢者虐待で傷害罪2

~前回からの続き~
宮城県登米市の特別養護老人ホームで介護職員として働く40代女性Aさんは、入所中のお年寄りに暴行し怪我をさせた傷害罪の疑いで、宮城県佐沼警察署逮捕されました。
同署によると、Aさんは、入所するお年寄りVさんに対して、叩く蹴るといった暴行を加えて、重傷を負わせたとされています。
Aさんは最近、Aさんの夫に対して「職員がどんどん辞めて人手不足で、業務の負担が大きくてつらい」と話していました。
Aさんの夫は、最近のニュースで、グループホームで入所者のお年寄りに暴行して傷害罪に問われていた介護職員が懲役2年の実刑判決を言い渡されたと耳にしたことから、刑事事件専門の弁護士にAさんの刑事弁護を依頼することにしました。
(フィクションです。)

高齢者を介護し守るべき養介護施設従事者等による虐待行為は全国各地で後を絶たず、増加傾向にあります。
厚生労働省によると、平成28年度の養介護施設従事者等による虐待については、相談・通報件数は 1,723 件、虐待判断件数は 452 件(前年度比44件増)と過去最悪を更新しているそうです。
介護職員でつくる労働組合が実施したアンケートでは、虐待の原因を尋ねる設問に対し、ほぼ半数が「業務の負担が大きい」「仕事上のストレス」と回答したそうです。
介護職員の離職率が全産業平均を上回るとの厚労省の調査結果もあり、要介護施設等の人材不足が過度な労働を招き、入所者への虐待の温床になっている可能性が指摘されています。

~実際に宮城県で起きた高齢者虐待事件~

先月15日、仙台市宮城野区のグループホームで入所者のお年寄りに暴行して重傷を負わせたとして傷害罪に問われていた介護職員に対し、仙台地方裁判所が懲役2年の実刑判決を言い渡しました。
判決によると、被告人は、勤務先のグループホームで入所する当時86歳の女性と当時90歳の2人の男性に殴るなどの暴行を加え、重傷を負わせたとされています。
裁判長は「入居者が安全、安心に過ごせるはずの施設で、このような犯行に立て続けに及んだことは極めて強い非難に値する」と指摘しました。
そのうえで、「不慣れな仕事によるストレスを背景として犯行に及んでいて、経緯や動機に酌むべきところはない」として、懲役2年6ヵ月の求刑に対し、懲役2年の実刑判決を言い渡したそうです。

~傷害罪~

実際に宮城県で起きた高齢者虐待事件と同様、今回のAさんも傷害罪の疑いをかけられています。
傷害罪は、刑法204条に定められている罪で、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。
人の身体に暴行を加えるなどして傷害した場合に成立します。
一方、暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、暴行罪(法定刑:2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料)になります。
傷害とは、人の生理的機能を害することとされており、殴る蹴るなどの行為により出血させたり骨折させたりするのが典型例です。
人を傷害させたかどうかが傷害罪と暴行罪の境となります。
なお、暴行について故意がある限り、傷害結果が生じれば傷害罪となるため、「怪我をさせるつもりはなかった」との言い訳は通用しないことになっています。

高齢者虐待事件の中には、虐待を受けた高齢者が死亡してしまい、暴行罪や傷害罪にとどまらないケースもあります。
2014年には川崎市の介護付き有料老人ホーム職員の男が、入所者3人を施設上階から庭に転落させて死亡させたとして、殺人罪で死刑判決(横浜地裁)を受けています。
昨年には、熊本市のグループホームで、職員の男が入所者を殴って死亡させ、傷害致死容疑で逮捕されています。

高齢者虐待で該当しうる罪としては、虐待の種類毎に
身体的虐待    暴行罪・傷害罪
性的虐待    強制わいせつ罪・強制性交等罪
心理的虐待    脅迫罪・侮辱罪
経済的虐待      横領罪・窃盗罪
介護や世話の放棄   保護責任者遺棄罪
虐待による高齢者死亡 傷害致死罪・殺人罪・保護責任者遺棄致死罪
などがあります。

高齢者虐待の事件内容によっては、起訴されて有罪となると、実刑が言い渡されて刑務所に服役しなければならなくなる可能性もあります。

養介護施設等の介護職員による高齢者虐待事件の場合、事件の報道や公表がなされることが考えられます。
マスコミなどによる事件の報道は、捜査機関からの情報提供を情報源としていることがほとんどです。
弁護士に依頼した場合、事件を報道・公表されることによって被る不利益などを丁寧に説明し、事件についての報道や公表がなされないように警察や検察に働きかけるといった活動を行うことが考えられます。
さらに、報道が避けられないような場合には、報道内容が過大なものとなっていないか、根拠のない不適切な内容となっていないかに注意を払い、報道機関に対して、報道内容の訂正や削除を求めることも考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、傷害罪をはじめとする刑事事件を専門とする法律事務所です。
まずはお気軽にフリーダイヤル0120-631-881まで無料法律相談または初回接見サービスをお申込みください。

介護職員の高齢者虐待で傷害罪1

2019-02-07

介護職員の高齢者虐待で傷害罪1

宮城県登米市の特別養護老人ホームで介護職員として働く40代女性Aさんは、入所中のお年寄りに暴行し怪我をさせた傷害罪の疑いで、宮城県佐沼警察署逮捕されました。
同署によると、Aさんは、入所するお年寄りVさんに対して、叩く蹴るといった暴行を加えて、重傷を負わせたとされています。
警察官から「今日はまだAさんと面会できない」と言われたAさんの夫は、刑事事件専門の弁護士初回接見を依頼しました。
(フィクションです。)

~高齢者虐待~

高齢化が進んで介護が身近なテーマになっている日本では、家庭や介護施設における高齢者に対する暴力、暴言、介護や世話の放棄、不当な財産の処分などの虐待が社会的な問題となっています。

2006年4月に施行された高齢者虐待防止法では、第2条4項及び5項で、高齢者虐待の定義をまとめています。

(1)身体的虐待:高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴力を加えること
たたく、蹴る、つねる、といった行為だけでなく、ベッドに縛るといった身体的拘束、食事や飲み物を無理やり口に押し込む行為も含まれます。
高齢者虐待で最も多い類型で、身体的虐待は全体の6割超に上るそうです。
(2)介護・世話の放棄・放任:高齢者を衰弱させるような著しい減食、長時間の放置、養護者以外の同居人による虐待行為の放置など、養護を著しく怠ること
入浴させない、食事や水分を十分に与えない、劣悪な住環境の中で生活させる 、必要な介護・医療サービスを相応の理由なく制限したり使わせない 、同居人による高齢者虐待と同様の行為を放置することなどがあります。
(3)心理的虐待:高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと
過度な暴言、無視、排泄の失敗を嘲笑する・失敗を人前で話すなどにより高齢者に恥をかかせるなどがあり、心理的虐待は身体的虐待の次に割合が多い虐待行為です。
(4)性的虐待 :本人との間で合意が形成されていない、あらゆる形態の性的な行為またはその強要。
キス、性器への接触や性行為の強要だけでなく、排泄失敗に対して懲罰的に下半身を裸にさせる行為なども含まれます。
(5)経済的虐待:養護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること
日常生活に必要な金銭を渡さない・使わせない、本人の自宅等を本人に無断で売却する 、年金や預貯金を本人の意思・利益に反して使用するなどがあります。

高齢者虐待防止法では、虐待行為を行った者への罰則はなく、守秘義務を守らず職務上知り得た秘密を漏らす行為や立ち入り調査を拒んだり妨害する行為に対しての罰則が定められています。
高齢者へ虐待行為を行った者への罰則は高齢者虐待防止法にはありませんが、高齢者虐待防止法に罰則がないからと言って処罰されないというわけではありません。
高齢者へ虐待行為を行った場合は、刑法に定められている暴行罪や傷害罪、保護責任者遺棄罪、強制わいせつ罪、横領罪といった罪にあたるとして処罰される可能性があります。

~初回接見~

今回の事例では、Aさんの夫が警察官から「今日はまだAさんと面会できない」と言われて、刑事事件専門の弁護士初回接見を依頼しています。
勾留決定前の逮捕段階では、弁護士以外は、被疑者に会うことはできません。
ご家族が被疑者に会えずお困りの場合、弁護士法事あいち刑事事件総合法律事務所の初回接見サービスをご利用ください。
ご家族からの依頼を受けて弁護士が24時間以内に逮捕されている方のもとへ面会に伺います。
(宮城県佐沼警察署への初回接見費用:フリーダイヤル0120-631-881までお気軽にお問い合わせください。)

車で轢いて殺人未遂罪

2019-01-31

車で轢いて殺人未遂罪

同僚の男性を自動車で轢いて殺害しようとしたとして、宮城県大郷町在住のAさんは、殺人未遂罪の疑いで宮城県大和警察署逮捕されました。
同署によると、Aさんは勤務する同町内の会社の敷地で、口論の末に同じ会社に勤めるVさんを轢いた疑いがもたれており、Vさんは命に別状はないものの手足を骨折するなど大怪我を負いました。
事件は当初、交通事故として調べられていましたが、現場の状況とAさんの説明のつじつまが合わないことから、さらに捜査したところ、取調べでAさんが「自分の意志で同僚をひいた」とVさんを轢いたことを認めました。
しかし、Aさんは「殺すつもりはなかった」と殺意については否定しています。
(今年1月に青森県で実際に起きた事件を基にしたフィクションです。)

事例のAさんは、「自分の意志で同僚をひいた」ことを認めていますが、「殺すつもりはなかった」と殺意については否認しています。
今回は、殺人未遂罪と殺意の否認について解説します。

~殺人未遂罪~

殺人未遂罪(刑法203条、199条)は、殺人の実行行為をしたが、殺害の結果が生じなかった場合に成立する犯罪です。
殺人の実行行為とは、「殺意を持って、人が死亡する危険性がある行為をすること」です。
つまり、殺人未遂罪となるのは、人を殺害しようとして、人を殺害する危険性のある行為をしたにもかかわらず、人を死に至らせなかった場合です。

今回の事例に関して考えると、自動車でVさんを轢くという行為は、人を死亡させる危険性のある行為と言えます。
しかし、Vさんは手足を骨折するなど大怪我を負うにとどまり命に別状はなかったため、Aさんは人を死に至らせてはいません。
したがって、Aさんが人を殺害しようとしたか否か、つまり殺意の有無により、殺人未遂罪の成否が変わってきます。

「殺意」というと、「殺してやる」と明確に思うことを想像するかもしれませんが、「殺意」は、「この行為をすれば相手は死んでしまうかもしれないが、それでもかまわない」と言う程度で認められます。
例えば、AさんがVさんを「殺してやる」と思っていた場合はもちろん、「(Vさんを)轢けば死ぬかもしれないが、それでもかまわない」と考えていた場合は、殺意を認定される可能性が高いということになります。

~殺意の否認と取調べ~

殺人罪や殺人未遂罪の成否の判断においては、殺意の有無が重要な要素となります。
本当に殺意があったか否かは,本人にしかわかりませんが、一般に殺人(未遂)事件では、事件時に本人がかなりの興奮状態にあることが多いため、本人も自分の心理状態を正確に認識していないことがよくあります。
しかし、殺人未遂罪のような重大事件で殺意を被疑者が否認している場合には、取調官が殺意を認めさせるために執拗かつ威圧的な取調べを行う危険性があります。
このような取調べに屈して殺意を認めてしまうと、後から取調べの違法性を証明することが容易ではないため、被告人の有罪・量刑を決める重要な証拠として採用されてしまう恐れがあります。

このような状況に対処するためには、弁護士に弁護を依頼することをお勧めします。
弁護士に、被疑者の権利や厳しい取調べの対応方法を尋ねることができますし、執拗かつ威圧的な取調べが、違法もしくは不当である場合には、弁護士による抗議や取調べの違法性や不当性を主張することも考えられます。
殺人未遂罪などの重大事件や否認事件の場合は、刑事事件の専門知識を持った弁護士に依頼すると心強いでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件専門の法律事務所であり、数多くの相談が日々寄せられています。
まずは無料法律相談または初回接見サービスのご利用をご検討ください。
(宮城県大和警察署への初回接見費用:フリーダイヤル0120-631-881までお気軽にお問い合わせください。)

傷害事件で審判不開始・不処分②

2019-01-25

傷害事件で審判不開始・不処分②

~前回からの続き~
宮城県七ヶ浜町の17歳高校生A君は、交際相手Vさんから別れ話を切り出された際、我を忘れてVさんを突き飛ばしてしまいました。
その結果、Vさんが加療1か月の怪我を負ってしまったため、A君は宮城県塩釜警察署傷害罪の容疑で取調べを受けており、いずれは事件が仙台家庭裁判所に送られると言われています。
A君は自分の行いを深く反省しています。
A君の両親が少年事件に詳しい弁護士に相談したところ、仙台家庭裁判所に事件が送られた後に審判不開始や不処分で事件が終結すれば、保護観察がつけられたり少年院に行ったりせずに済むと説明を受けました。
(フィクションです。)

前回は、「審判不開始」について解説しました。
今回は、「不処分」について解説します。
不処分決定の場合には,審判不開始決定と異なり,審判自体は開かれます。
不処分決定とは、家庭裁判所の調査の結果、少年院送致や保護観察などの保護処分には付さない旨の決定のことをいいます。
家庭裁判所は、審判の結果、保護処分に付することができず、又は保護処分に付する必要がないと認めるときは、その旨の決定をしなければなりません(少年法23条2項)。
不処分決定となった場合、少年に対して訓戒を与えたうえで手続きは終了します。

「保護処分に付することができない」場合とは、

①非行なし:少年の非行事実の存在について蓋然性が認められない場合で成人事件における無罪に相当するもの

②所在不明等:少年に所在不明、死亡、海外居住、病気・心神喪失等の事情が生じた場合、

③審判が適法であるための条件を欠く場合

があります。

「保護処分に付する必要がないと認めるとき」とは以下のような場合です。
①保護的措置:調査・審判の過程で,調査官や裁判官、弁護士による働きかけにより、要保護性が解消し、もはや少年に再非行の可能性が認められなくなった場合
②別件保護中:他の事件について保護的措置や保護処分に付されているために,本件で処分をする必要がないと認められる場合
③事案軽微:非行事実が極めて軽微な場合。事案が軽微な場合は、審判不開始がなされることも多いです。

不処分となる多くの場合が,「保護処分に付するまでの必要がない場合」です。
保護処分に付するまでの必要がない場合として不処分を獲得するためには,審判までに少年に対して教育的な働きかけを行って少年の事件に対する反省を深めること,家庭環境・学校・職場など少年を受け入れる環境を整えることによって、あえて保護処分をする必要がない(要保護性がない)と判断されなければなりません。

少年の要保護性の解消のためには、保護者の協力も不可欠で、保護者が少年や自身の問題に向き合うとともに、生活環境や家庭環境を整えることも重要です。
少年が再非行に走らないため,少年本人がしっかりと非行について考えて今後の人生につなげていく必要もあり、そのためには付添人弁護士などの専門家の協力を得るのがよいでしょう。

少年事件に慣れた弁護士に依頼した場合は、保護者に対して、養育態度や親子関係の問題点を指摘し、必要なアドバイスや環境の調整をする等の措置を行うことができます。

傷害罪など少年事件でお困りの場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご用命ください。
弊所は刑事事件少年事件を専門に取り扱っている法律事務所であり、少年事件に詳しい弁護士が多数所属しています。
傷害事件では、被害者への謝罪や被害弁償なども必要になります。
なるべく早期にご依頼いただくことで、より充実した活動を行うことができます。
まずは、お気軽に無料法律相談をご利用ください。
(宮城県警察塩釜警察署への初見接見費用:38,800円)

傷害事件で審判不開始・不処分①

2019-01-24

傷害事件で審判不開始・不処分①

宮城県七ヶ浜町の17歳高校生A君は、交際相手Vさんから別れ話を切り出された際、我を忘れてVさんを突き飛ばしてしまいました。
その結果、Vさんが加療1か月の怪我を負ってしまったため、A君は宮城県塩釜警察署傷害罪の容疑で取調べを受けており、いずれは事件が仙台家庭裁判所に送られると言われています。
A君は自分の行いを深く反省しています。
A君の両親が少年事件に詳しい弁護士に相談したところ、仙台家庭裁判所に事件が送られた後に審判不開始や不処分で事件が終結すれば、保護観察がつけられたり少年院に行ったりせずに済むと説明を受けました。
(フィクションです。)

~傷害罪~

傷害罪は、「人の身体を傷害した者は,15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と規定されている罪です(刑法204条)
「傷害」とは,人の生理的機能に障害を生じさせたことを意味します。
暴力を振るって他人に怪我をさせる行為が傷害罪の「傷害」に当たる典型的な行為です。
法定刑にかなりの幅がある理由は、「傷害」には後遺症が生じるような重い結果もあれば,1,2週間で治る怪我も含むためです。
比較的軽い怪我なら,何かのはずみで傷害罪の加害者になってしまう場合もありえます。

~少年事件~

少年事件とは,A君のような20歳未満の者が犯した犯罪に関する事件をいいます。
成人が犯罪をした場合には,刑事裁判にかけられて法定刑の範囲内で刑罰が科されます。
しかし,少年に対しては,その未来や更生可能性を考慮し,健全な育成を目指すべく、保護観察や少年院送致といった「保護処分」が行われることになっています。
少年事件については、成人が受ける裁判とは異なる特別な手続きが少年法などで定められています。
主に、家庭裁判所という裁判所において手続きが進められることになります。

~少年事件の終局処分~

家庭裁判所に係属した少年事件は、終局決定によって終結します。
終局決定には、審判不開始、不処分、保護処分(少年院送致、保護観察等)、検察官送致などがあります。
その中でも今回と次回で、「審判不開始」と「不処分」について説明いたします。

「審判不開始」決定とは,家庭裁判所における調査の結果,審判に付することができない場合,もしくは,審判に付するのが相当ではない場合に,審判を開始しない旨の決定をすることをいいます(少年法第19条第1項)。
審判不開始決定となると、その時点で事件が終了するため、その後家庭裁判所における審判が開かれることはありません。
審判が開かれないということは、少年院送致などの保護処分を受けることがないということなので、少年にとって大きなメリットがあるといえるでしょう。
(なお、審判不開始決定が出される前に、少年やその保護者が調査官の調査のために家庭裁判所に呼ばれることはあります。)

審判不開始決定が出される場合の一つである,「審判に付することができない場合」とは、①審判条件が存在しない場合、②非行事実存在の可能性がない場合、③少年の所在不明・海外居住・疾病・心神喪失などにより調査・審判が法律上又は事実上不可能になった場合が考えられます。

「審判に付するのが相当でないとき」とは、審判条件や非行事実の存在が認められ,審判を行うことは可能であるが,保護処分等を行うことが妥当ではなく,裁判官による直接審理の必要もない場合です。
以下の3つに分類されています。
①保護的措置:調査官の訓戒,教育的指導や保護的措置、被害者の話を聞いて内省を求めるなどにより,少年の要保護性が既に解消した場合
②別件保護中:別の事件によって保護観察等の保護処分が行われているため、本件で新たな処分をする必要がないとき
③事案軽微:非行事実が極めて軽微で,すでに警察,家庭,学校等で適切な措置がとられたことで要保護性が解消し,再非行のおそれもなくなっている場合

審判不開始決定が出される場合,多くは審判に付するのが相当ではない場合だとされています。

弁護士に依頼して審判不開始を目指す場合、家庭裁判所に対して、事件が重大でないことや、これまでの少年の更生の様子、家庭環境や生活環境に問題がないまたは解消されたことなどを伝えて、審判不開始決定を出してもらえるように働きかけていきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、これまで数多くの少年事件のご依頼をいただき、審判不開始決定や不処分決定を獲得してきました。
お子様の傷害事件が家庭裁判所に送られてお困りの場合は、まずはお気軽に無料法律相談をご利用下さい。
お子様が逮捕など身柄拘束を受けている場合は初回接見サービスのご利用をご検討下さい。
(宮城県塩釜警察署への初回接見費用:38,800円)

爆破予告で威力業務妨害罪

2019-01-17

爆破予告で威力業務妨害罪

仙台市若林区在住のAさんは、仙台市役所に爆破を予告するメールを送信して仙台市役所の業務を妨害したとして、威力業務妨害罪の疑いで宮城県仙台中央警察署逮捕されました。
Aさんは、ただの冗談のつもりで爆破予告メールを送信したのですが、逮捕されることになってしまって不安にかられています。
逮捕の知らせを受けたAさんの家族は、刑事事件に詳しい弁護士に初回接見を依頼しました。
(フィクションです。)

~爆破予告で威力業務妨害罪~

今回の事例は、昨年11月に山形県米沢市役所に爆破を予告するメールが届いたという実際の事件に着想を得て作成しています。
実際に米沢市で起きた事件では、「市役所と市内の学校に爆弾を仕掛けた。21日から22日にかけて爆破させる」という内容のメールが米沢市役所に届きました。
出勤した職員がメールに気づき、警察に通報するとともに手分けして庁舎内や周辺を捜索したものの、不審物は見つからず、米沢市内の全ての小中学校でも同じく不審物は確認されなかったそうです。
山形県警察は、悪質な威力業務妨害事件として捜査を始めている、と報道されていました。

業務妨害罪とは、虚偽の風評を流布し、又は偽計を用いたり(刑法第233条:偽計業務妨害罪)、威力を用いたり(刑法第234条:威力業務妨害罪)して他人の業務を妨害することによって成立する犯罪のことです。
「業務」とは、職業その他の社会生活上の地位に基づいて反復継続する事務又は事業のことをいいます。
条文では、人の業務とありますが,個人の業務はもちろん法人の業務も含み、会社の経営などの営利目的や経済的な仕事だけに限られず、学校の運営や行事など精神的、文化的なものでもよいとされています。

業務妨害罪のうち、威力業務妨害罪(刑法234条)の成立要件は、「威力」を用いて「業務を妨害」することとされています。
「威力」とは,犯人の威勢・人数・四囲の状勢などからみて,人の自由意思を制圧するに足りる勢力を示すことをいうと解されており、暴行や脅迫よりも広い概念であるとされています。
偽計業務妨害罪との区別については、被害者に業務妨害となる障害を外見的に提示している場合は「威力業務妨害罪」、ことさら秘匿しているような場合は、「偽計業務妨害罪」が成立しているようです。
業務の妨害が暴力的態様で行われた場合,公然と行われた場合などは威力に当たると考えてよいでしょう。
爆破予告メールや電話は、威力業務妨害罪とされることが多いようです。

「爆破する」という内容のメールが市役所に届いた場合、市役所の職員が本来行う必要がない庁舎内や周辺の捜索を余儀なくされることが容易に想像できます。
そうすると、どのような業務を行うかの意思決定の自由が、Aさんの行為により制圧されているとして、威力業務妨害罪にあたると考えられるでしょう。

米沢市の事件では、子どもたちを避難させる、市役所の窓口業務がストップする、といった事態には至らなかったそうですが、警察に通報するとともに手分けして庁舎内や周辺を捜索が行われ、米沢市内の全ての小中学校でも点検が行われたと報道されています。

威力業務妨害罪の罰則は,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。

事例のAさんのように、冗談のつもりであったとしても,誰がどう見ても信じないような内容でもない限り、「ただの冗談のつもりだった。」と言う言い分は認められにくいでしょう。
冗談や悪戯のつもりでも犯罪になってしまうことがあるので、自分の投稿に不安がある場合には早めに弁護士に相談しましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、威力業務妨害罪をはじめとする刑事事件専門の法律事務所です。
威力業務妨害罪で家族が逮捕された、威力業務妨害罪にあたりそうな行為をしてしまって不安という場合には、弊所の無料法律相談または初回接見をご利用ください。
(宮城県仙台中央警察署への初回接見費用:34,100円)

少年鑑別所送致の家族をサポート

2019-01-10

少年鑑別所送致の家族をサポート

宮城県角田市在住の16歳高校生Aさんは,友人らとともに傷害事件を起こし、宮城県角田警察署逮捕されました。
逮捕後Aさんには、勾留決定が出て、宮城県角田警察署の留置場に勾留されましたが、事件が家庭裁判所に送致されると、Aさんの身柄は仙台少年鑑別所に移されました。
Aさんは、最近はほとんど通学しておらず、友人らと深夜まで遊び歩く日が多くなっていました。
Aさんの両親は、注意してもAさんが生返事ばかりを返すこと、Aさんが荒れることが多くなったことから、Aさんを避けるようになっていました。
Aさんの両親は、事件を機に、Aさんにしっかり向き合いたいと考えています。
Aさんの両親は、宮城県内で少年事件に強い弁護士に相談して、少年鑑別所とは何か、なぜ少年鑑別所に移されたのか、Aさんの更生のために両親ができることは何か、尋ねました。
(フィクションです。)

~宮城県角田警察署の留置場から仙台少年鑑別所へ移されたのはなぜか?~

今回の事例のAさんは、逮捕後に勾留決定が出て、宮城県角田警察署の留置場に勾留されていましたが、事件が家庭裁判所に送致されると、仙台少年鑑別所に移されています。

Aさんの傷害事件が家庭裁判所に送られるまでの間は捜査段階と呼ばれます。
捜査段階では、少年は警察官や検察官の取調べを受ける等の捜査を受けることになります。
捜査段階では、捜査の必要性が高いこと、捜査機関の都合もあって,Aさんのような少年であっても成人と同様に警察の留置場に勾留(身柄拘束)されることが多いです。

一方、事件が家庭裁判所送致された後は,少年の更生や少年審判に向けて,少年の資質や性格,家庭環境,保護者の監督能力の調査,環境の整備等に主眼が置かれます。
送致を受けた家庭裁判所は、審判を行うため必要があるときは、観護措置として、家庭裁判所調査官の観護に付する(1号)ことの他、少年鑑別所に送致することができます(17条1項2号)。

少年鑑別所とは、犯罪、非行を犯した少年を、医学、心理学、社会学、教育学等の専門的な知識に基づいて、資質、及び環境の調整(鑑別)を行う施設です。
少年が被疑者のときに逮捕・勾留されていた場合、多くは家庭裁判所送致の際に少年鑑別所に送致されます。
少年鑑別所は、基本的に一都道府県に一ヶ所設置されており、宮城県内では、仙台市若林区に仙台少年鑑別所が設置されています。
少年鑑別所に収容する期間は2週間、特に継続の必要があるときは1回だけ更新することができるため、最長で4週間の間少年鑑別所に収容される可能性があります。

~少年鑑別所と少年院の違い~

少年鑑別所と、よく混同される施設に少年院がありますが、少年鑑別所と少年院とは全く性質の異なる施設です。
少年院とは,家庭裁判所で少年院送致という保護処分が出た後に収容される施設です。
少年院は、少年をその特性に応じた適切な矯正教育その他の在院者の健全な育成に資する処遇を行うことにより、在院者の改善更生及び円滑な社会復帰を図ることを目的とする施設です(少年院法1条)。
一方、少年鑑別所とは,家庭裁判所で保護処分が出る前に、保護処分の決定をするために必要がある場合に収容される施設です。
少年審判に向けて,少年の資質や性格などの調査を行うことを目的しており、調査結果は、「鑑別結果通知書」として家庭裁判所に送られ、少年審判での保護処分の決定のための資料として活用されます。
少年鑑別所は少年の鑑別を行う施設であるため、警察署の留置場や、少年院ほどは規則が厳しくなく、日中は、学習や、読書、運動、教官との面談をして過ごします。
テレビの視聴や購入した菓子類を食べることもでき、平日の決められた時間であれば家族と面会することができます。

~少年の更生のために両親ができること~

少年事件では、どうすれば少年を更生させて再非行を防げるかが重要視されます。
そのため、審判までに少年がどれだけ自分の問題点を自覚し、被害を実感したか、少年に再非行の危険性がどれほどあるかによって処分が違ってきます。
例えば、被害が小さくても、少年の周囲の環境に問題がある場合は、非行をする原因となった環境をそのままに少年を元の生活に戻してしまったのでは、再び非行をする可能性があります。

少年事件で軽い処分を望む場合には、ご両親が少年と向き合って、非行をした原因を見つけて改善していかなくてはなりません。
非行の原因が家庭環境にあることもありますが、その場合、少年や両親だけでは改善することが難しいかもしれません。
そのような場合こそ、少年事件に詳しい弁護士に依頼することをご検討ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所弁護士は、ご両親が少年と向き合うお手伝いから、少年が更生するための環境改善の提案、環境調整まで、少年の更生の手助けを行うことができます。
少年事件でお困りなら、まずは、無料法律相談または初回接見サービスをご利用ください。
(宮城県角田警察署への初回接見費用:44,200円)

脅迫罪の早期釈放

2019-01-07

脅迫罪の早期釈放

30代会社員で営業の仕事をしているAさんは、同僚Vさんの営業成績を妬み、Vさんの自宅の留守番電話にVさん宛で、「通り魔に気をつけろ」「お前の家の住所は知っている。お前の子供をさらいにいくぞ」などという内容のメッセージを複数回残しました。
留守番電話のメッセージを聞いたVさんは、自分や家族の身の危険を感じて、宮城県気仙沼警察署に相談して、被害届を提出しました。
警察の捜査により、Aさんは、Vさんに対する脅迫罪の疑いで、宮城県気仙沼警察署の警察官に逮捕されてしまいました。
Aさんの妻は、一家の大黒柱であるAさんが逮捕されてしまったため、Aさんが早く釈放されるにはどうしたらよいか刑事事件に強い弁護士に相談しました。
(この事例はフィクションです。)

~脅迫罪~

脅迫罪とは,本人又はその親族の生命・身体・自由・名誉・財産に害を加えると脅す犯罪で、刑法第222条で禁止されています。
罰則は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金と定められています。
畏怖心を生じさせる意思で、相手方又はその親族の生命、身体、名誉または財産に対して、害を加えるべきことを告知することで、脅迫罪が成立します。
親族とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族を言います(民法725条)。
脅迫罪は、被害者が脅しを認識すれば成立するため、脅迫罪に未遂の処罰規定はありません。
未遂の処罰規定がないことから、たとえば、脅迫状を郵送しても宛先人が読まなかった場合には、脅迫罪は成立しません

今回の事例の場合,Aさんは,Vさんに対して、Vさんの自宅の留守番電話にVさん宛で、「通り魔に気をつけろ」「お前の家の住所は知っている。お前の子供をさらいにいくぞ」などという内容のメッセージを複数回残していますが,このAさんの行為は、脅迫罪に当たるのでしょうか。
脅迫罪が成立するには,相手方又はその親族の生命・身体・自由・名誉又は財産に対し,害を加える旨を告知して,人を脅迫している必要があります。。
今回の場合の「通り魔に気をつけろ」というメッセージは、Vさんに対する生命及び身体に危害を加えることを暗示して害悪の告知をしていると考えられます。
「お前の家の住所は知っている。お前の子供をさらいにいくぞ」というメッセージは、Vさんらが居住する家やその付近に行って、Vさんの子供を誘拐することを暗示して害悪を告知していると考えられます。
そのため、Aさんには、脅迫罪が成立する可能性が高そうです。

~逮捕されたが早期に釈放されたい~

脅迫罪を犯して被害者が警察署に被害届を提出すると、事件内容が悪質な場合には逮捕されることになります。
脅迫罪の場合に限りませんが、警察などの捜査機関に逮捕されると,警察署内の留置場や拘置所などの留置施設に身体を拘束されて,取調べを受けることになります。
逮捕から最大約72時間は,被疑者にとって,勾留か釈放の決定が行われる極めて重要な時期になります。
しかし、逮捕直後つまり勾留決定前の段階では,逮捕された方と面会できるのは基本的に弁護士のみに限られます。
加えて、勾留決定前の段階では、国選の弁護士は選任できず私選の弁護士しか弁護人になれません。
逮捕直後の段階で私選弁護人をつけることができれば,早期の釈放に向けた弁護活動を受けることが出来ます。
脅迫罪でご家族やご友人が逮捕されて早期に釈放されたい場合は、まずは、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご連絡いただき、初回接見サービスをご利用ください。
(宮城県気仙沼警察署までの初回接見費用
:フリーダイヤル0120-631-881までお問い合わせください。相談電話スタッフが料金のご案内をいたします。)

一般人による逮捕で暴行罪?

2018-12-27

一般人による逮捕で暴行罪?

50代会社員Aは、仙台市地下鉄泉中央駅の駅内のエスカレーターでV1がV2の着衣の上から臀部を触る痴漢行為をしているのを見た。
Aは、V1に対して「やめなさい」と声をかけたところ,V1はエスカレーターを走って逃走しようとした。
V1を逃してなるものかと思ったAは,V1の上着の裾を掴み、その後V1を蹴るなどして引き留めた上でV1を逮捕し、宮城県警察泉警察署に通報して駆け付けた警察官にV1を引き渡した。
Aは、V1を引き留めて逮捕した際の行為が暴行罪などにあたるのではないかと不安に思い、仙台市内の刑事事件に強い弁護士無料法律相談に訪れた。
(事実に基づいたフィクションです。)

~一般人による逮捕~

時折ニュースで、警察官ではない一般の方が犯人を取り押さえて感謝状を渡されたと耳にすることがあります。
逮捕は、警察官の職務として行うイメージが強いと思いますが、日本では、現行犯人であれば、警察官ではない一般人による逮捕が認められています。

まず、逮捕手続きに関してですが、逮手続きは、「令状による逮捕」と、令状(逮捕状)が必要とされない「現行犯・準現行犯逮捕」に分けられます。
「令状による逮捕」には,
・事前に裁判官が「逮捕することを許可する」旨の令状を発付して行われる「通常逮捕
・一定の重い罪を犯したと疑われる場合で逮捕状を請求する時間がないときに、まず被疑者を逮捕しその後直ちに裁判官の令状発付を求める緊急逮捕
とがあります。
これらの逮捕手続きのうち、令状(逮捕状)が必要とされない「現行犯逮捕・準現行犯逮捕」については、一般人も行うことが認められています。

「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる」(刑事訴訟法第213条)。

法律で「何人でも」と定めているため、逮捕権のある警察官など以外の一般人でも、現行犯人を逮捕することができます。
逮捕は、他人の身体を拘束するという、人権を制約する行為です。
そのため、現に犯行を行っているか行い終わったところであり、逮捕して身柄を確保する必要が高い上に、誤認逮捕のおそれがない現行犯人に限って、一般人による逮捕が認められています。

しかし、一般人による現行犯逮捕・準現行犯逮捕には注意すべき点があります。

・犯人が現行犯人であること
一般人による逮捕は、現行犯人でない限り逮捕はできません。
そのため、ポスターに載っている氏名手配犯を見つけても、一般人は逮捕できません。

・一般人による現行犯逮捕・準現行犯逮捕が犯罪になり得る場合があること
逮捕するときの手段やその後の対応次第によっては、逮捕した(逮捕しようとした)一般人が逮捕罪や監禁罪、暴行罪などの罪に問われるおそれがあります。
特に多いトラブルは、被逮捕者に対する行き過ぎた対応による暴行罪、傷害罪です。
逮捕の際に認められる実力の行使は、その際の状況からみて社会通念上逮捕のために必要かつ相当であると認められる限度内であるか否かによって判断されます。
現行犯の犯罪としての軽重、犯人からどのような抵抗を受けたか、犯人に対して行った暴行(有形力)の程度、犯人が負った怪我の程度、などの事情を総合的に判断して違法かどうかが判断されることになります。

逮捕のために必要かつ相当な限度内ということであれば、『正当行為』(刑法35条)として、暴行罪や傷害罪などの犯罪は成立しませんが、そのような限度を超えた場合には、暴行罪や傷害罪などが成立してしまうことになります。
今回の事例に関して、一般人AによるV1の逮捕の可否ですが,AはV2がV1から痴漢されているのを現認しているので,V1は「現行犯人」であるといえると思われます。
しかし,AはV1の上着の裾を掴み、その後V1を蹴るなどして引き留めた上でV1を逮捕しています。
Aのこの行為が,社会通念上逮捕のために必要かつ相当な行為であると認めらない場合、Aに暴行罪などが成立する恐れがあります。

また、ほかに注意すべき点として、一般人による逮捕の場合は,直ちに地方検察庁・区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければなりません(刑事訴訟法第214条)
しかし,これを怠って、逮捕の後、一般人がその犯人を尋問したり、暴力を加えたり、自宅に連れ帰るなどの行為をすると、暴行罪や傷害罪、逮捕罪、監禁罪などに問われる可能性があります。
(なお、目の前で犯罪が起きて一般人による逮捕の後、警察に通報して警察の到着まで犯人を監禁するのは、正当な行為です。)
実際に、犯人を捕まえた後に、警察官らに引き渡すことなく勝手に拘束を続けたとして、監禁罪に問われた裁判例も存在します。

実際の一般人による逮捕の場合で、逮捕した自分が罪に問われないか疑問に思ったら,法律の専門家である弁護士に相談することが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、今回の事例と似た事件の相談も寄せられています。
無料法律相談は、フリーダイヤル0120-631-881までお問い合わせください。

泉区の監禁致傷罪

2018-12-26

泉区の監禁致傷罪

仙台市泉区在住の40代男性Aさんは、妻を自宅の一室で監禁状態にして長期間の身体拘束を行い、身体拘束の過程で頭部や手首、脚部などに傷害を負わせた疑いで、宮城県泉警察署監禁致傷罪の容疑で逮捕されました。
Aさんの逮捕にショックを受けたAさんの両親は、仙台市で刑事事件に強い弁護士に無料法律相談と初回接見の問い合わせの電話を掛けました。
(事実を基にしたフィクションです)

~逮捕及び監禁の罪~

監禁致傷罪は刑法221条に定められています。
監禁致傷罪の前に、まずは、逮捕罪と監禁罪についてみてみましょう。

逮捕罪及び監禁罪について定める刑法第220条は,「不法に人を逮捕し,又は監禁した者は,3月以上7年以下の懲役に処する。」と規定しています。

逮捕行為も監禁行為も、人の行動の自由を奪うという点で共通しています。
「逮捕」とは,人の身体に対して直接的な拘束を加えてその行動の自由を奪うことをいいます。
一方、「監禁」とは,人が一定の区域から出ることを不可能又は著しく困難にしてその行動を奪うことをいいます。

逮捕罪とは、あまり聞きなれない罪名だと思いますが、たとえば、ロープや粘着テープで手足を縛り5分間引きずり回すなどの行為で成立します。

監禁罪の場合、物理的に部屋に閉じ込めて隔離するという「監禁」という言葉のイメージ通りの行為だけでなく、物理的には脱出が容易でも,暴行・脅迫や偽計などの心理的な方法によってその場から立ち去ることが著しく困難である場合も含まれます。
脱出の可否及び困難性は,物理的障害の有無・程度,被害者の年齢・性別・体力・性格・犯人との関係などの事情を総合考慮して判断されます。
部屋に閉じ込めて隔離する以外の監禁罪の具体例としては、
・入浴中の人の衣服を隠して羞恥心を生じさせて浴室から出られなくする行為
・騙して車に乗せて走行する行為
・被害者を原動機付自転車の荷台に乗せて1000メートル疾走する行為
・被害者を円陣やスクラムを組んで取り囲む行為
など、脱出を不能または著しく困難にするものであれば、監禁罪が成立することがあります。

なお、逮捕罪と監禁罪のどちらも、成立するためには,行動の自由を侵害したといい得るほどの時間の継続が必要です。
また、逮捕及び監禁の罪が問題となるケースでは、逮捕行為に引き続いて監禁行為がされることも多いですが,その場合は2つの行為を合わせて刑法220条違反という処理をされます。

~監禁致傷罪(逮捕等致死傷罪)~

監禁行為を行った際に、その被害者を傷害したり死亡させた場合には、監禁致傷罪や監禁致死罪が成立し、さらに罪が重くなります。
監禁致傷罪を犯した者は「3月以上15年以下の懲役」という範囲で刑事処罰を受けることになります。

監禁致傷罪が成立するためには,監禁行為と人の死傷結果との間に因果関係があることが必要です。
一般に,人の死傷結果が逮捕・監禁行為そのもの又はその手段である行為から生じた場合に,逮捕・監禁行為と人の死傷結果との間に因果関係があると認められます。
被害者が監禁場所から脱出しようとして負傷した場合でも監禁致傷罪に問われます。

上記事案のように、被疑者と被害者が同居している事件では、威迫による罪証(証拠)隠滅が強く疑われてしまい、逮捕につづき勾留が決定されるおそれが高いと考えられます。
仙台市の監禁致傷罪逮捕・勾留された方のご家族等は、まずはフリーダイヤル(0120-631-881)までお電話下さい。
専属の電話スタッフが、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部の無料法律相談または初回接見サービスのご案内をいたします。
宮城県泉警察署への初回接見費用:34,800円

« Older Entries Newer Entries »

keyboard_arrow_up

0120631881 問い合わせバナー LINE予約はこちら