執行猶予中にストーカーで逮捕②
前回の記事〈執行猶予中にストーカーで逮捕①〉に引き続き、女性への傷害罪で執行猶予中に、同じ女性にストーカーをしたとして逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説いたします。
【参考事例】
執行猶予中にストーカー行為,容疑の男逮捕 埼玉県警
産経新聞
~ストーカー規制法とは?~
裁判で女性への傷害容疑で執行猶予判決を受けた男性は、同じ女性の実家前を車で複数回行き来するなどのつきまとい行為で再び逮捕されました。
ここで、ストーカー規制法の制度の概要について確認しておきましょう。
恋愛感情やその裏返しの恨みなどを原因として、つきまといや待ち伏せをしたり、拒まれても電話やメール送信などを繰り返し行うことを、ストーカ規制法では「つきまとい等」と呼んでいます(2条1項・2項参照)。
このような「つきまとい等」を行い、今後も違反を続けるおそれがある場合、警察がやめるよう警告したり、公安委員会が禁止命令を出すことができます(4条1項・5条1項)。
また、「つきまとい等」を繰り返すことを「ストーカー行為」と呼んでいます(2条3項)。
すでに「つきまとい等」を繰り返す「ストーカー行為」に至っていれば、警告や禁止命令をせずに、加害者をいきなり逮捕して刑罰を科すこともできます。
この場合の刑罰は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。
一方、最初に公安委員会からつきまとい等の禁止命令を出されたが、それでもやめずに「ストーカー行為」に至るパターンもあります。
この場合も逮捕して刑罰を科すことができます。
しかも、禁止命令に反してまでストーカー行為をしたのはより悪質だということで、さらに重い2年以下の懲役または200万円以下の罰金を科すことができます。
今回のリンクを貼ったニュース記事では、判決後に女性の関係者周辺を警戒していた捜員が男性の車を発見し、逮捕に至った旨が書かれていますが、警告や命令が出されていたといった事情は書かれていません。
そこで、すでに「つきまとい等」を繰り返す「ストーカー行為」に至っており、警告や禁止命令をせずに、加害者をいきなり逮捕したパターンだったことが予想されます。
~執行猶予も取り消される~
執行猶予中に新たに犯罪を行うと、新たな犯罪が極めて軽いものであるなど例外的な場合を除いて、前回の裁判の執行猶予が取り消され、新旧両方の裁判で下された刑罰を受けることになります。
特に今回の事例では、前回の裁判は執行猶予期間中に保護観察所の指導監督を受けるという保護観察付きのものであり、執行猶予判決の中では重い判決です。
また、新たな罪が同じ女性に対するストーカー行為という悪質性もあります。
そう考えると、新たな犯罪では懲役刑の実刑判決が下り、前回の裁判で下された2年6か月の懲役も合わせて執行されることになる可能性が高いでしょう。
せっかく執行猶予判決となったのに再犯をして取り消されてしまうのは、加害者にとっては不利益ですし、何より被害者にとってもたまったものではありません。
性犯罪や薬物犯罪などでは、自分の意志だけではやめられない依存症状態になることもありますので、遅くても一度目の判決後の段階で、専門的な治療をしている病院を受診するなどの対策が不可欠となります。
~弁護士にご相談を~
あなたやご家族が何らかの犯罪をしたとして逮捕されたり、取調べを受けたといった場合にはぜひ一度、弁護士にご相談いただければと思います。
どれくらいの刑罰を受けそうか、示談はできそうか、取調べではどのように受け答えしたらよいのか、治療を受けられる病院はどこにあるかなど、事件内容に応じてご説明いたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスのご利用を、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談のご利用をお待ちしております。