ハードディスクを転売して逮捕【窃盗罪・個人情報保護条例違反】
先日、神奈川県が使用していたハードディスクが、下請けの廃棄業者の社員により転売され、情報が漏洩したというニュースが流れました。この事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
~事件の概要~
神奈川県が使用していたハードディスク。
その中には、個人の納税記録などの個人情報が大量に入っていました。
ハードディスクは耐用年数が過ぎると、破損してデータの消失などが起きるかもしれないので、神奈川県でも新しいハードディスクと交換し、古くなったハードディスクのデータ削除を業者に依頼したようです。
ところが、その業者の社員がハードディスクを勝手に持ち出し、ネットオークションで転売していました。
社員は逮捕されましたが、中身が完全に削除されないままネットオークションで転売されていたのか、大量の個人情報が漏洩してしまったようです。
~問われる罪~
この事件の犯人として逮捕された被疑者は、窃盗罪の容疑がかけられています。
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
条文にある「他人の財物」とは、他人が占有する(支配下にある)財物という意味です。
そして「窃取」とは、その財物を自分の占有に移すことを言います。
詳しい事情にもよりますが、データの削除を依頼されたハードディスクは、その業者自体の占有下にあるということになるでしょう。
そのハードディスクを勝手に持ち帰っているわけですので、自分の占有に移した、すなわち「窃取」したことになります。
したがって、10年以下の懲役または50万円以下の罰金になる可能性があることになります。
~個人情報保護条例違反のおそれも~
今回の事件の犯人は、ハードディスクの中身が何なのか知らなかったと述べているとの報道もあります。
しかし仮に、個人情報が入っていることを分かった上で売却していた場合などには、個人情報保護に関連する法律・条例にも違反する可能性もあります。
今回のように都道府県が保有していた個人情報の場合には、各都道府県が制定している個人情報保護条例に違反する可能性があります。
ここでは、宮城県の条例を見てみましょう。
宮城県・個人情報保護条例
第 15 条1項
実施機関から個人情報を取り扱う事務の委託を受けたもの又は公の施設の管理を行う指定管理者は,当該委託又は管理の事務を行うに当たって取り扱う個人情報の保護に関し必要な措置を講じなければならない。
2項
前項の委託又は管理の事務に従事している者又は従事していた者は,当該事務に関して知り得た個人情報をみだりに他人に知らせ,又は不当な目的に使用してはならない。
第 65 条
実施機関の職員若しくは職員であった者又は第 15 条第1項の委託若しくは管理の事務に従事している者若しくは従事していた者が,正当な理由がないのに,個人の秘密に属する事項が記録された行政文書であって,個人の氏名,生年月日その他の記述等により当該個人を容易に検索することができるように体系的に構成されたもの(その全部又は一部を複製し,又は加工したものを含む。)を提供したときは,2年以下の懲役又は 100 万円以下の罰金に処する。
第 66 条
前条に規定する者が,正当な理由がないのに,個人の秘密に属する事項が記録された行政文書(前条に規定するものを除き,その全部又は一部を複製し,又は加工したものを含む。)を提供したときは,1年以下の懲役又は 50 万円以下の罰金に処する。
非常に長い条文を引用してしまいましたが、今回のケースのような場合、赤く色付けした部分が特に関係してきます。
実施機関とは知事などを指しますので、知事の名前で委託されたハードディスク廃棄業務を請け負っている会社の従業員が情報を漏洩させれば、上記条文に違反してしまうわけです。
そして、データベース化されて個人情報の検索が容易な状態のものなど漏洩による被害が大きいものについては65条に、データベース化されておらず個人情報の検索がそこまで容易でない状態のものなどの漏洩については66条に違反するイメージです。
被害の内容に応じて、罰則が異なってくることになります。
~弁護士に相談を~
逮捕された後の手続について、詳しくはこちらをご覧ください。
https://sendai-keijibengosi.com/keijijikennonagare/
逮捕されると、釈放の見込みはあるのか、どのくらいの刑罰を受けるのか、取調べにはどう対応したらよいのかなど、わからないことも多いと思いますので、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
ご家族などから初回接見のご依頼をいただければ、拘束されている警察署等にて、ご本人に面会(接見)し、事件の内容を聴き取った上で、今後の見通しなどをご説明致します。
接見後には、接見の内容などをご家族にお伝え致しますので、それを聞いていただいた上で、正式に弁護活動を依頼するかどうかを決めていただけます。
また、逮捕されていない場合やすでに釈放された場合には、弁護士事務所での法律相談を初回無料で受けていただけます。
窃盗罪や個人情報保護条例違反などで逮捕された、捜査を受けているといった場合には、ぜひご連絡ください。
〈関連リンク〉
逮捕事件で弁護士を雇うメリット【私選弁護人】