多くもらいすぎた釣銭を返さなかったら犯罪に? 宮城県の刑事弁護士③
前々回のコラムより、釣銭詐欺:釣銭を多くもらって、多くもらったことに気付いたのに返さなかった場合について解説しています。
前回のコラムでは、占有離脱物横領罪と詐欺罪について解説しました。
不作為による欺罔を手段とする詐欺罪では、すでに相手方が錯誤に陥っていたことが必要であり、欺罔行為者に事実を告知する法的な告知義務が認められる必要があるとされていることを解説しました。
今回は、釣銭詐欺の各ケースについて、詐欺罪が成立するのか占有離脱物横領罪が成立するのか個別に見てみます。
1.釣銭が多いことにその場で気づきながら、黙って受け取ったというケース
不作為による「欺く行為」があるとして詐欺罪が成立するという見解が通説です。
通説では、
店員から釣銭が手渡される前に釣銭が多いと気付いた場合、事実を告知しなければ不当な釣銭を領得することが確実に可能となる。
そのため、釣り銭が多いことを店員に告知する信義則上の告知義務がある。
この告知義務を怠り黙って釣銭を受領すれば、店員が既に錯誤に陥っていることを利用して財物を領得したことになり、詐欺罪が成立する。
と解説されます。
2.釣銭を受け取ってしばらくして多いことに気づいたが、そのまま持ち去ったケース
相手方を錯誤に陥らせ財物を取得したのではなく、偶然に自己の占有に属したものを領得したにすぎないため、不作為による詐欺が認められず、占有離脱物横領罪が成立するとされます。
3.釣銭が多いことに後から気づき、後日店員から「渡した釣銭が多かったので返してほしい。」と言われて、釣銭は多くなかったと虚偽の事実を申し立てたケース
このケースについては、詐欺罪(二項詐欺罪)が成立するという説と、占有離脱物横領罪が成立するにとどまるという説があります。
詐欺罪(二項詐欺罪)が成立するという説
釣銭は多くなかったと虚偽の事実を告げるという欺く行為により、被害者に返還請求権はないものと誤信させて請求を諦めさせているため、被害者の処分行為によって利得したとして、詐欺罪(二項詐欺罪)が成立する。
占有離脱物横領罪が成立するという説
虚偽の事実を告げる行為は、既に成立した占有離脱物横領罪の違法状態を維持するものと考えるべきであり、別途詐欺罪などの犯罪は成立せず、占有離脱物横領罪が成立するにすぎないとする説。
釣銭詐欺は、店員が誤って多く釣銭を渡したという事情があるため、釣銭を多くもらいすぎただけで…と軽く考えてしまいがちです。
しかし、釣銭を多くもらって実際に逮捕されてしまったケースがあるため、釣銭詐欺事件で警察に捜査されている場合は、刑事事件専門の弁護士に一度ご相談されることをお勧めします。
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