無免許運転ひき逃げの身代わりで犯人隠避罪2

無免許運転ひき逃げの身代わりで犯人隠避罪2

~前回からの続き~
先日2月8日、仙台市青葉区で、追突事故を起こしながら現場から逃走した女性と、その身代わりとして警察に名乗り出た交際相手の男性の2人が宮城県仙台北警察署逮捕される事件が起きました。
警察によると、女性は、仙台市青葉区の県道において無免許で乗用車を運転中にバイクに追突し、バイクを運転していた大学生にけがを負わせたにも関わらず、その場から逃走したひき逃げなどの疑いが持たれています。
女性はひき逃げ直後、電話で交際相手の男性を呼び出し、無免許運転の自分の身代わりになることを依頼したと報道されています。
助けを求められた交際相手の男性は、事故処理中の現場に2人で現れ、捜査中の警察官に「自分が運転して事故を起こした」と嘘の供述をした犯人隠避罪の疑いが持たれているそうです。
2人は容疑を認めていて、女性は「無免許が発覚するのを恐れた」などと供述しているそうです。

前回は、事例の女性について、無免許運転ひき逃げをした場合の罪と罰則、女性が犯人隠避罪を教唆したとして犯人隠避罪の法定刑である「3年以下の懲役または30万円以下の罰金」が適用される恐れがあることをご説明しました。
今回は、犯人隠避罪についてご説明します。

~身代わり出頭で犯人隠避罪~

身代わり出頭とは、真犯人に代わって別人が警察署などに出頭し、供述などをすることです。
交通事故においては、飲酒運転や今回の事例のような無免許運転の発覚を隠蔽するために、身代わり出頭が比較的行われやすいようです。
身代わり出頭をして真犯人の発見を妨げた場合、犯人隠避罪に問われる可能性があります。

犯人隠避罪は、犯人の発見や身柄の確保を妨げる罪であり、犯人蔵匿罪と共に刑法103条に規定されています。
刑法が犯人隠避罪および犯人蔵匿罪を通して保護しているのは、国家の刑事司法作用(犯罪捜査や刑事裁判など)の安全です。

犯人隠避罪 刑法第百三条
罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

~罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者~

「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」とは、法定刑として罰金刑又はそれ以上の刑罰が規定された犯罪を犯した者で、その者の犯した犯罪が警察等の捜査機関に発覚しているか否かは関係ありません。
また、実際に罪を犯した者だけでなく、その疑いが持たれている者も含まれると考えられています。
今回の事例の女性は、報道されている内容からすると、無免許運転をしてひき逃げ事件を起こしているとされており、該当する犯罪の法定刑はいずれも「罰金以上」に該当するので、今回の事例の女性は「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」となる可能性が高いです。

なお、「拘禁中に逃走した者」とは、法令に基づき国家の権力により拘禁を受けた者が、不法に拘禁から脱した場合です。
裁判の執行によって拘禁された既決、未決の者や、勾引状の執行を受けた者に加えて、現行犯逮捕若しくは緊急逮捕されて令状が発せられる前の者、調査、審判のために少年鑑別所に収容されている少年もこれに当たります。

~「蔵匿」「隠避」とは~

続いて「蔵匿」「隠避」という行為について説明します。
蔵匿 : 犯人の発見又は逮捕が妨害されることを認識した上で、検挙を免れるような場所を提供して犯人を匿う行為
(自分の家に匿ったり、潜伏する部屋を用意したりする行為)
隠避 : 蔵匿以外の方法によって捜査機関による犯人の発見又は逮捕を免れさせる一切の行為
(逃走資金援助や逃走用の車や衣類、携帯電話機等を用意する行為etc)

今回の事例では、人身事故時の運転者で犯人である女性に捜査が及ばないように、女性の交際相手の男性が身代わり出頭を行ったとされています。
身代わり出頭、つまり、他人の犯罪を自己の犯罪であるかのように虚偽の申し立てをして、その他人の犯罪の発見を妨げる行為は、犯人隠避罪でいう「隠避行為」に当たります。
そのため、女性に代わって出頭した男性は、犯人隠避罪に問われる可能性が高いと思われます。

犯人隠避罪で起訴されて有罪となった場合、「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金」が科せられますが、量刑は、逃走犯の犯した犯罪や社会的反響の大きさ、隠避の犯行態様等によって左右されると言われています。

女性はひき逃げ直後、電話で交際相手の男性を呼び出し、無免許運転の自分の身代わりになることを依頼したと報道されています。
報道通り、女性が隠避行為を交際相手の男性に頼んでいた場合、女性は交際相手の男性の犯人隠避行為を教唆したとして、犯人隠避罪の教唆犯とされる可能性があります。
「教唆」とは、犯罪の意思がない人をそそのかして、犯罪を実行することを決意させて実行させることをいい、刑法第61条に規定されています。
教唆犯は、正犯(実際に犯罪を実行した人)の刑が科せられるので、もし女性が、犯人隠避罪の教唆犯として起訴されて有罪が確定した場合は、犯人隠避罪の法定刑である「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金」が適用されます。

無免許運転でひき逃げをしてしまった、身代わりで犯人だと名乗り出て犯人隠避罪の疑いをかけられているという場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
(宮城県仙台北警察署への初回接見費用:34,600円)

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