宮城県石巻市の器物損壊事件
宮城県石巻市の器物損壊事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
【刑事事件例】
宮城県石巻市に住むAさんは、仕事のストレスを発散するために、酒に酔った勢いで、同市内に居住しているVさんの自宅前に停めていた車の窓ガラスに向かって石を投げつけました。
これによって、Vさんの車の窓ガラスは割れてしまいました。
後日、Vさんの自宅周りで河北警察署の警察官がパトロールしていることに気が付いたAさんは、河北警察署に器物損壊罪について自首をすることを検討しています。
(この刑事事件例はフィクションです)
【器物損壊罪とは】
刑法 261条
前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
刑法 264条
第259条、第261条及び前条の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
刑事事件例のAさんのように他人の車の窓ガラスを割るといった、他人が所有する物を物理的に破壊する行為は、器物損壊罪の典型的な行為と言えます。
そのため、刑事事件例のAさんの行為は器物損壊罪に当たる可能性が高いと言えます。
そして、器物損壊罪は刑法264条に規定されているとおり、器物損壊事件の被害に遭われてしまった方などが捜査機関に対して犯罪があったことを申告して、器物損壊事件の犯人の処罰を求める意思を表示しなければ起訴することができない、親告罪と呼ばれる犯罪になります。
なお、この処罰を求める意思表示のことを「告訴」と言い、告訴がすることができる者のことを「告訴権者」と言います。
【自首とは】
刑法 42条
1 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
2 告訴がなければ公訴を提起することができない罪について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、前項と同様とする。
刑事事件例のAさんは器物損壊罪について自首を検討しています。
自首については、刑法42条に規定があります。
刑法42条1項では、自首が成立するためには、「罪を犯した者」が警察などの「捜査機関に発覚する前」に犯罪の事実を申告する必要があることを規定しています。。
また、刑事事件例の器物損壊罪のような親告罪については、刑法42条2項が、捜査機関以外にも告訴権者に発覚する前に告訴権者に対して自身の犯罪について告知することで、自首と同様の扱いをすることを規定しています。
それでは、刑事事件例のAさんには器物損壊罪についての自首が成立するでしょうか。
刑事事件例の器物損壊事件で問題となる自首の要件は、刑法42条1項の「捜査機関に発覚する前に」という要件です。
この内、「捜査機関」とは、捜査機関全体のことを意味します。
そのため、犯罪の事実を直接申告した警察官が犯罪の事実を知らなくても、捜査機関の誰かが知っていた場合には自首は成立しません。
次に、「発覚する前」とは、犯罪の事実と犯人が発覚する前のことを意味します。
犯罪の事実が発覚していても、犯人が誰であるかが分かっていない場合は、「発覚する前」に当たることになります。
一方、犯罪の事実と犯人が誰であるかが分かっているが、その犯人がどこにいるかが分かっていない場合には、「発覚する前」には当たりません。
従って、単に犯人がどこにいるのかが分からない場合に自首をしても、自首は成立しないことになります。
なお、このような「発覚する前」の理解については、刑法42条1項に規定されている告訴権者に対して犯罪の告知をする場合であっても同様です。
これを刑事事件例で説明すると、車の窓ガラスが割れていることはすぐに気が付くことができるものであること、及び、Vさんの自宅周りを河北警察署の警察官がパトロールしていたことからすると、器物損壊罪の犯罪事実ついては捜査機関のひとつである河北警察署に対しても、告訴権者であるVさんに対しても発覚している可能性が高いと言える状況でしょう。
もっとも、器物損壊罪の犯人がAさんであると特定されているかについては、刑事事件例の事実関係だけでは分かりません。
河北警察署の警察官がAさんの自宅を訪れずにVさんの自宅周辺をパトロールしているからといって、器物損壊罪の犯人がAさんであると特定できていないと断言することはできません。
器物損壊罪の犯人がAさんであることが特定されていても、Aさんの自宅の住所が分からないだけの場合があります。
従って、刑事事件例の事実関係において、Aさんが捜査機関のひとつである河北警察署や、告訴権者のひとりであるVさんに対して、自身が犯した器物損壊罪について「自分がやりました」と申告しても、自首が成立しない可能性があります。
【器物損壊罪で自首を検討されている方は】
自首の成立は、刑が軽減されるための判断要素のひとつとなります。
自首が成立したからといって、必ず刑が減刑されるわけではなく、自首が成立した方に対してその刑を減刑するかどうかは裁判所の自由な判断によります。
そのため、刑事事件の内容や自首の態様など様々な事情を総合的に考慮して刑を減刑するか、減刑をする場合にはその程度を決定することになります。
また、刑事事件例の器物損壊事件のように、そもそも自首が成立するか否か微妙な判断が求められる場合もあります。
単に警察が自分のもとに来ていない段階で警察署を自ら訪れ、器物損壊罪などの犯罪の事実を警察官に申告しても、自首が成立しない可能性は十分にあります。
そのため、器物損壊罪などの犯罪を犯してしまい自首を検討されている方は、一度、刑事事件に精通した刑事弁護人に対して相談することをお勧め致します。
刑事事件に精通した刑事弁護人に相談することで、そもそも自首が成立するような刑事事件なのかといった見通しを得られることが期待できるでしょう。
また、自首が成立するような事件の場合には、具体的な自首の態様等についてアドバイスを得ておくことも、器物損壊罪の刑の減軽を目指すにあたって非常に有益でしょう。
弁護人法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、器物損壊事件などの刑事事件に精通した刑事弁護人が在籍しています。
宮城県石巻市で器物損壊事件について自首を検討されている方は、ぜひ、弁護人法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部までご相談ください。