宮城県での遺言書隠しで取調べ

宮城県での遺言書隠しで取調べ

遺言書を隠して警察の取調べを受けた場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。

【事例】
宮城県大和町に住むAさん。
父親が亡くなり遺品を整理していたところ、父が作成し、封がなされた遺言書が見つかりました。
開封して内容を見ると、Aさんにとっては不利ですが、Aさんの弟にとっては有利な内容でした。
その内容に不満を抱いたAさんは、遺言書を隠して弟には見せないことに。
その結果、民法に定められた法定相続分通りの遺産分割がされ、Aさんは不利益を免れました。
しかし後日、Aさん宅を訪れていた弟が、偶然にも遺言書を発見。
Aさんに問いただしたところ、
「そんなもんは知らん」
などとシラを切りました。
弟が遺言書通りの遺産分割のやり直しを要求してもAさんは応じず。
兄弟の信頼関係は完全に壊れてしまい、弟は民事上の損害賠償請求をするとともに、大和警察署に相談。
大和警察署の警察官はAさんに電話し、事情を聞きたいから警察署に来るよう言いました。
警察から電話が来て驚いたAさんは、弁護士に相談することにしました。
(事実をもとにしたフィクションです)

~遺言書を開封すると~

Aさんは遺言書を自ら開封しました。

遺言書の偽造や隠すことを防ぐため、封がされた遺言書は原則として、家庭裁判所での正式な手続き(検認)によって行わなければなりません。

民法1004条1項
遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。(以下略)

この手続きをしないで開封した場合、5万円以下の過料が科される可能性があります。

民法第1005条
前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。

過料とは罰金と同じく金銭を徴収されるものですが、前科は付きません。
ただし、開封するには手続きを踏む必要があることがあまり知られていないこともあり、実際に過料が科されることは少ないようです。

とはいえ、余計なトラブルとならないよう、正式な手続きを踏む方がよいでしょう。

~遺言書を隠すと~

Aさんは自分に不利な遺言書であるとわかると、遺言書を隠してしまいました。

遺言書を隠すと、民法上、相続人としての資格を失い、全く遺産を相続できなくなる可能性があります(民法891条5号)。
また、すでに遺産分割が済んでいた場合も、隠匿により余分に相続した分は、本来の相続人から損害賠償請求がされるといったことが考えられます。

これらは民事上の問題、別な言い方をすればお金の問題です。
しかし遺言書の隠匿は、刑事上の問題、すなわち犯罪者として責任を負わなければならなくなる可能性もあります。

具体的には、私用文書等毀棄罪という犯罪が成立する可能性があります。

刑法第259条
権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録を毀棄した者は、五年以下の懲役に処する。

「毀棄」(きき)という難しそうな言葉が出てきますが、文書の効果を失わせるような行為のことをいいます。
文書を捨てることはもちろん、隠すことも、他人が読むことができず文書の効果を発揮できないので、「毀棄」に当たります。

~遺言書を偽造すると~

また、出てきた遺言書を自分に有利なように書き換えたり、勝手に新たに作ったり、これをもとに遺産分割をすると、私文書偽造や同行使罪が成立することになるでしょう。

刑法第159条1項
行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
第161条1項
前二条の文書又は図画を行使した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する。
第2項
前項の罪の未遂は、罰する。

勝手に開封したり、隠したり、捨てたり、偽造したりすると、後々大きなトラブルとなり、場合によっては一切遺産を受け取れなくなったり、逮捕される可能性もあるので、しないようにしましょう。

~弁護士に相談を~

警察から取調べを受けることになれば、どのように対応すればよいのか、逮捕されてしまうのか等、不安が大きいと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
事務所での法律相談を初回無料でお受けいただけますので、ぜひ一度ご相談ください。

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