名誉毀損で告訴
宮城県蔵王町に住むAさん。
ご当地アイドルをしている女性について、インターネットに、
「妻子持ちの人と不倫している」
などという根も葉もない噂を書き込む行為を繰り返していました。
Aさんはアイドル側から告訴され、取調べのために警察へ出頭するよう連絡を受けました。
今後どうなってしまうのか不安になったAさんは、弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
~名誉棄損罪~
ネットに根も葉もない噂を書き込んでいたAさんには、名誉棄損罪が成立する可能性があります。
刑法第230条1項
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
この条文中の「事実」は、真実であるかウソであるかは関係ありません。
人の社会的評価を害するようなものでさえあれば、名誉棄損罪は成立しうるのです。
したがって被害女性が本当に被害者が不倫をしているか否かに関係なく、名誉棄損罪が成立するでしょう。
なお、具体的な「事実」を示さず、単に悪口を書き込んだだけであれば、せいぜい侮辱罪が成立するにとどまります。
第231条
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
「拘留」とは、1日以上30日未満の間、刑事施設に留置される罰則をいいます。
また、「科料」とは、1000円以上1万円未満が徴収される罰則をいいます。
~偽計業務妨害の可能性も~
また、不倫したという事実がウソだった場合、偽計業務妨害罪が成立する可能性もあります。
刑法第233条
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
「虚偽の風説を流布」とは、ウソの噂を流すことをいいます。
そして不倫をしているという噂は、ご当地アイドルとして活動する女性にとって、業務の妨害となりえます。
したがって、偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。
なお、実際に仕事が減ったなどの影響が出なくても、偽計業務妨害罪は成立します。
なぜなら、実際にウソの噂を流されたことによって仕事が減ったという因果関係を証明することは難しく、この証明を要求すると偽計業務妨害罪がなかなか成立しなくなり、業務妨害行為が防ぎにくくなるからです。
~今後の刑事手続きの流れ~
Aさんらは、自宅から警察署や検察庁に出向いて取調べを受けることになるでしょう。
その結果、検察官が被疑者を刑事裁判にかけると判断すれば(起訴)、刑事裁判がスタートします。
もし検察官が起訴しないという判断(不起訴処分)をすれば、刑事手続はそこで終わり、前科も付きません。
また、簡易な手続で罰金や科料に処する略式起訴を選択する場合もあります。
弁護士としては、不起訴処分や略式起訴、執行猶予などの軽い処分・判決を目指して弁護活動をしていくことになります。
なお、仮に逮捕されてしまった事件では、まずは最大で3日間、警察署等で身体拘束されます。
そしてもし検察官が逃亡や証拠隠滅のおそれがあるとして勾留(こうりゅう)を請求し、裁判官が許可すれば、さらに最大20日間の身体拘束がされる可能性があります。
その後、検察官が起訴・不起訴の判断をします。
弁護士としては、まずは検察官の勾留請求や裁判官の勾留許可を防ぎ、早期釈放を実現させた上で、不起訴処分や略式起訴、執行猶予などの軽い処分・判決を目指していくことになります。
~示談の重要性~
被害者に賠償して示談が成立したか否かは、検察官が不起訴処分にするかという判断などに大きく影響する可能性があります。
特に名誉棄損罪や侮辱罪は、被害者の告訴がなければ刑事裁判を開くことができない親告罪です。
第232条 この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
そこで、示談を成立させて告訴を取り下げてもらえれば、そこで刑事手続は終了となり、前科が付く可能性はありません。
そこで、すみやかに被害者の方に賠償し、示談を締結することが重要です。
~弁護士にご相談を~
しかし示談交渉をしようにも、示談金額や示談書の内容をどうしたらよいのか、なんと言ってお願いすればよいのかなど、わからないことが多いと思います。
他にも、警察から呼び出しを受けると、ご本人やご家族は、逮捕されてしまうのか、どんな罪が成立するのか、刑事手続はどのように進んでいくのか、取調べにはどう受け答えしたらいいのか等々、不安点が多いと思います。
そこで一度、弁護士に相談されるのが良いでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
事務所での法律相談を初回無料でお受けいただけます。
仮に逮捕されている場合には、ご家族などからご依頼いただければ、拘束されている警察署等にすみやかに接見に伺います。
名誉棄損罪、侮辱罪、偽計業務妨害罪などで取調べを受ける、逮捕されたといった場合には、ぜひ一度ご相談ください。