不正融資で逮捕【特別背任罪】
特別背任罪で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
【事例】
宮城県内の某銀行支店で支店長を務めるAさん。
貸付先のB社の経営が傾きかけ、このままでは倒産してしまう危険性がありました。
B社社長から豪華な接待を受けるなどして追加融資を依頼された上、不良債権になり自らの業績に響くことも嫌ったAさんは、B社の経営が立ち直る見込みが低いにもかかわらず、追加で貸付けを行いました。
一時的にB社の資金繰りにプラスにはなりましたが、抜本的な経営改善には至らず、結局、B社は倒産してしまいました。
追加融資したことで銀行の損失が広がったことから、Aさんは銀行から告訴され、宮城県警により逮捕されてしまいました。
(事実をもとにしたフィクションです)
~特別背任罪とは~
不正融資を行い、銀行に損失を与えてしまったAさん。
会社法に規定された特別背任罪という犯罪が成立する可能性があります。
条文を見てみましょう。
会社法第960条1項
次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
3号 取締役、会計参与、監査役又は執行役
6号 支配人
一部省略しましたが、この条文は会社の取締役など重要な地位にある人が不正な行為を行うと、権限が大きい分、会社の損害も大きくなりかねないということで、刑法に規定された背任罪(5年以下の懲役または50万円以下の罰金)よりも重い刑罰を定めて、不正行為を防ごうとしているわけです。
この条文によれば、特別背任罪が成立するためには、
①各号に規定された立場の人が、
②自分や第三者の利益を図り、または株式会社に損害を加える目的で(図利加害目的)
③任務に背く行為をし
④会社に財産上の損害を加えた
という条件を満たす必要があります。
以下、Aさんの場合を検討してみます。
~①各号に規定された立場の人~
6号にある「支配人」というのは、支店や店舗などのトップのことを指します。
したがって、銀行支店長のAさんは「支配人」に該当しますので、①をみたします。
~②図利加害目的~
今回の追加の貸し付けが、これまでの貸付金の不良債権化を防ぎ、銀行にとってもプラスになるというのを主な目的でなされたのであれば、この要件を満たしません。
しかしAさんは、追加融資をしてもB社の経営が立ち直る見込みが低いにもかかわらず、自分の業績が下がることを防いだり、第三者であるB社が倒産することをとりあえず防ぐという目的で追加融資を行っています。
したがって、銀行への「加害」目的まではないかもしれませんが、自己や第三者への「図利」(とり)目的はあると言えるので、②を満たすということになります。
~③任務に背く行為~
今回は追加融資をしてもB社の経営が立ち直る見込みが低い状況でした。
そうすると、これ以上不良債権が増えないように、追加融資を行わないという判断をし、銀行の損失を最小限にすることが銀行支店長の任務として求められていたと言えます。
Aさんは、この任務に背く行為をしたわけですから、③も満たすことになります。
~④会社に財産上の損害を加えた~
追加融資により不良債権が増えてしまったわけですので、④も満たすことは明らかです。
以上により、Aさんの行為には特別背任罪が成立することになるでしょう。
~お早めに弁護士にご相談を~
逮捕された後の手続について、詳しくはこちらをご覧ください。
https://sendai-keijibengosi.com/keijijikennonagare/
弁護士としては、まずは勾留を防いで早期釈放を目指すとともに、軽い処分や判決となるよう活動していくことになります。
逮捕されると、いつ釈放されるのか、どのくらいの刑罰を受けるのか、取調べにはどう対応したらよいのかなど、わからないことが多いと思いますので、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
ご家族などから初回接見のご依頼をいただければ、拘束されている警察署等にて、ご本人に面会(接見)し、事件の内容を聴き取った上で、今後の見通しなどをご説明致します。
接見後には、接見の内容などをご家族にお伝え致しますので、それを聞いていただいた上で、正式に弁護活動を依頼するかどうかを決めていただけます。
また、逮捕されていない場合やすでに釈放された場合には、弁護士事務所での法律相談を初回無料で行っております。
特別背任罪などで逮捕された、捜査を受けているといった場合には、ぜひ一度ご連絡ください。