Archive for the ‘刑事事件’ Category

ストーカー規制法違反で逮捕

2020-05-15

ストーカー規制法違反で逮捕

ストーカー規制法違反について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。

~事例~

会社員のAさんは、元交際相手の男性に対して、一日に何度もコミュニケーションアプリでメッセージを送信し、返信がないと男性の住んでいるマンションの部屋に訪れる等の行為を行っていました。
男性は、Aさんの行為に不安を覚えたため、宮城県岩沼警察署に相談しました。
ある日、Aさんのもとに岩沼警察署から連絡があり、男性に対する行為をやめるように警告を受けました。
警告を受けたAさんでしたが、しばらくして再び男性と連絡を取ろうと複数回メールを送信したり、男性の住んでいるマンションや職場の外で待ち伏せ行為を行いました。
Aさんは、とうとうストーカー規制法違反の疑いで逮捕されました。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、どうにか事件を穏便に終わらせることが出来ないかと思い、刑事事件専門弁護士に相談しました。
(フィクションです。)

ストーカー規制法違反となる場合

ストーカー規制法では、第2条第1項各号に規定する「つきまとい等」の行為を同一の者に対して反復すれば「ストーカー行為」として処罰することとしています。
また、公安委員会による禁止命令等に違反した者も処罰されます。

(1)ストーカー行為に対する罪

ストーカー規制法は、「ストーカー行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。」としています。

ここでいう「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、「つきまとい等」を反復して行うことをいいます。
「つきまとい等」と「ストーカー行為」の関係は、前者が後者の前段階の行為としてとらえることができます。

「つきまとい等」は、それが「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」で、「当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し」て、次の8つの類型の行為をすることです。
①つきまとい、待ち伏せ行為など
②監視していると告げる行為
③面会、交際などの要求
④乱暴な言動
⑤無言電話、電子メールなどの送付
⑥汚物などの送付
⑦名誉を害する行為
⑧性的羞恥心を害する行為

ストーカー規制法で規制対象となる「ストーカー行為」は、「つきまとい等」のうち、上の①~④にあっては、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えるような方法により行われた場合に限られます。
また、「ストーカー行為」の要件である「反復して」とは、複数回繰り返してということを意味しますが、8つの類型行為のうち、いずれかの行為をすることを反復する行為を「ストーカー行為」といい、特定の行為を反復する場合に限らず、①~⑧に定められた行為が全体として反復されたと認められれば、「ストーカー行為」が成立します。

ストーカー行為に対する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない親告罪です。

(2)禁止命令等に違反する罪

(a)禁止命令等に違反してストーカー行為をした者は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処する。
公安委員会からの禁止命令等を受けた後、禁止命令等に違反して第3条違反(つきまとい等をして不安を覚えさせる行為)を反復して行い、それが「ストーカー行為」である場合が対象です。

ストーカー規制法の手続の流れとしては、被害者等からの相談を受けた警察は、相手方にストーカー行為をやめるように「警告」や「禁止命令」を行うことができ、その禁止命令に違反すると処罰の対象となります。

(b)禁止命令等に違反してつきまとい等をすることにより、ストーカー行為をした者は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処する。
(a)が禁止命令を受けた者が命令に違反してストーカー行為を行った場合であるのに対して、これは、禁止命令を受けた者が命令に違反してつきまとい等を行った場合です。
つまり、命令前の行為から通して評価するとストーカー行為に該当する行為を処罰するものです。

(c)禁止命令等に違反した者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
禁止命令を受けた者が命令に違反してつきまとい等を行った場合で、命令前の行為から通じて評価してもストーカー行為に該当しない場合です。
行ったつきまとい等が、①~④のつきまとい等であって、不安を覚えさせる方法では行われなかった場合です。

以上のように、ストーカー行為をした場合や、禁止命令に違反した場合には、逮捕されることもあります。
ストーカー規制法違反の場合、加害者が引き続き被害者につきまとい等をするおそれがあるため、罪証隠滅のおそれが認められ、逮捕に引き続き勾留の手続がとられる可能性が高いでしょう。
そうなると、長期間の身体拘束を余儀なくされていまします。
そこで、早期に被害者との示談を成立させ、事件を穏便に終了させるよう動くことが必要となります。
しかしながら、加害者と被害者との関係性からしても、当事者同士による交渉は極めて困難です。
ですので、弁護士を介して、示談交渉を行うのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、ストーカー規制法違反事件を含めた刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が、ストーカー規制法違反事件で逮捕されてお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するお問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。

商標法違反で逮捕されたら

2020-05-08

商標法違反で逮捕されたら

商標法違反で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。

~事例~

宮城県若林警察署は、宮城県仙台市若林区に住む会社員のAさんを商標法違反(販売譲渡、販売目的所持)の容疑で逮捕しました。
Aさんは、偽の海外ブランド品の下着を販売し、偽の海外ブランド品のカバンなど3点を販売目的で所持した疑いが持たれています。
逮捕の連絡を受けたAさんの妻は、すぐに対応してくれる刑事事件専門弁護士をネットで探しています。
(フィクションです。)

商標法とは

商標法は、事業者が、自社の取り扱う商品やサービスを他社のものと区別するために使用するマークである商標を保護する法律です。
商標法の目的は、商標を保護することで、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、それにより産業の発展に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することです。

商標法において保護されている「商標」は、人の近くによって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状もしくは色彩またはこれらの結合、音その他政令で定めるものであって、①業として商品を生産し、証明し、または譲渡する者がその商品について使用するもの、および②業として役務を提供し、または証明する者がその役務について使用するもの、をいいます。
つまり、商標は、事業者が自己の取り扱う商品やサービスを他人のものと区別するために使用するマークのことです。
私たちが商品やサービスを選ぶときには、信頼できるブランドや会社のマークが付いているものを手に取りますよね。
ある商標が一定の事業所から出される商品やサービスに付いているということによって、私たちは安心してその商品やサービスを買うことができます。

商標法違反となるケース

1.商標権の直接侵害行為

商標権または専用使用権を侵害した場合、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはこれらの両方が科される可能性があります。

「商標権」というのは、商標登録した商標を指定した商品や役務について排他的独占的に使用できる権利のことです。
商標権者は、商標権を専有します。(専有権)
商標権者は、その商標権について「専用使用権」を設定することができます。
「専用使用権」は、設定行為で定めた範囲内において、指定した商品・使役について商標登録した商標を排他的独占的に使用できる権利です。

商標権の侵害とは、他人の登録商標をその指定した商品・役務について使用する行為、そして他人の商標登録した商標の類似範囲において使用する行為のことです。
何ら使用の権限がない者が、使用された商品・役務について商標登録を受けている商標と同一の商標を使用した場合、商標権の直接侵害行為となります。

2.商標権の間接侵害行為

商標権または専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行った場合、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその両方が科せられる可能性があります。

商標権または専用使用権を侵害するものとみなす行為(みなし侵害)は、
①指定した商品・役務についての商標登録した商標に類似する商標の使用、指定した商品・役務に類似する商品・役務についての商標登録した商標やこれに類似する商標の使用。
②指定した商品や指定した商品・役務に類似する商品であって、その商品やその商品の包装に商標登録した商標またはこれに類似する商標を付けたものを譲渡、引き渡し、輸出するために所持する行為。
③指定した役務や指定した役務・商品に類似する役務の提供にあたり、その提供を受ける者の利用に供する物に商標登録した商標またはこれに類似する商標を付けたものを、これを用いて当該役務を提供するために所持し、又は輸入する行為。
④③の譲り渡し、引き渡し、または譲渡もしくは引渡しのために所持し、もしくは輸入する行為。
⑤指定した商品・使役、またはこれらに類似する商品・役務について商標登録した商標またはこれに類似する商標の使用をするために、商標登録した商標またはこれに類似する商標を表示する物を所持する行為。
⑥⑤の譲渡し、引き渡し、または譲渡・引渡しのために所持する行為。
⑦⑤の製造し、又は輸入する行為。
⑧商標登録した商標またはこれに類似する商標を表示する物を製造するためにのみ用いる物を業として製造し、譲渡し、引き渡し、または輸入する行為。

これらの商標権侵害罪は故意犯です。
商標登録した商標または指定した商品・役務の存在、そして、これと同一または客観的に類似した商標、商品・役務の使用等の事実について認識していれば、商標権侵害罪の認識、つまり故意が認められることになります。

商標法違反で逮捕されたら

商標法違反事件においては、証拠を押収する必要性から、家宅捜索が行われます。
家宅捜索後に逮捕されることもありますし、逮捕後に家宅捜索されることもあります。

逮捕から48時間以内に、警察は被疑者を釈放するか、検察官に被疑者の身柄とともに証拠や関係書類を送致するかを決めます。
検察官に送致された場合、検察官は被疑者の身柄を受けてから24時間以内に、被疑者を釈放するか、もしくは裁判官に勾留請求を行います。
検察官からの勾留請求を受けた裁判官は、被疑者を勾留するかどうかを判断し、勾留しないとの決定(勾留請求却下)がなされた場合は、被疑者の身柄は釈放されます。(ただし、検察官からの勾留に対する準抗告が申し立てられ、準抗告が認められれば、当該被疑者の身柄は引き続き拘束されることになります。)
勾留となった場合には、検察官が勾留請求をした日から原則10日間、延長が認められれば、最大で20日間身柄が拘束されることになります。
逮捕から勾留までの間は、原則、家族であっても逮捕された被疑者と面会することはできません。
しかし、弁護士は、いつでも被疑者と面会(接見)することが法律で認められており、勾留前でもすぐに接見することができます。

ご家族が商標法違反事件で逮捕されたのであれば、すぐに刑事事件に強い弁護士に相談・依頼されるのがよいでしょう。
勾留となれば長期間の身体拘束を余儀なくされてしまうため、それにより被る影響は非常に大きいと言えるでしょう。
逮捕から勾留まで、あっという間に過ぎてしまいます。
早期に弁護士に相談し、勾留とならないよう身柄解放活動に動くことが重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、商標法違反事件にも対応する刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
無料法律相談初回接見サービスに関するお問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。

執行猶予中にストーカーで逮捕②

2020-05-05

執行猶予中にストーカーで逮捕②

前回の記事〈執行猶予中にストーカーで逮捕①〉に引き続き、女性への傷害罪で執行猶予中に、同じ女性にストーカーをしたとして逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説いたします。

【参考事例】
執行猶予中にストーカー行為,容疑の男逮捕 埼玉県警
産経新聞

~ストーカー規制法とは?~

裁判で女性への傷害容疑で執行猶予判決を受けた男性は、同じ女性の実家前を車で複数回行き来するなどのつきまとい行為で再び逮捕されました。

ここで、ストーカー規制法の制度の概要について確認しておきましょう。

恋愛感情やその裏返しの恨みなどを原因として、つきまといや待ち伏せをしたり、拒まれても電話やメール送信などを繰り返し行うことを、ストーカ規制法では「つきまとい等」と呼んでいます(2条1項・2項参照)。
このような「つきまとい等」を行い、今後も違反を続けるおそれがある場合、警察がやめるよう警告したり、公安委員会が禁止命令を出すことができます(4条1項・5条1項)。

また、「つきまとい等」を繰り返すことを「ストーカー行為」と呼んでいます(2条3項)。
すでに「つきまとい等」を繰り返す「ストーカー行為」に至っていれば、警告や禁止命令をせずに、加害者をいきなり逮捕して刑罰を科すこともできます。
この場合の刑罰は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。

一方、最初に公安委員会からつきまとい等の禁止命令を出されたが、それでもやめずに「ストーカー行為」に至るパターンもあります。
この場合も逮捕して刑罰を科すことができます。
しかも、禁止命令に反してまでストーカー行為をしたのはより悪質だということで、さらに重い2年以下の懲役または200万円以下の罰金を科すことができます。

今回のリンクを貼ったニュース記事では、判決後に女性の関係者周辺を警戒していた捜員が男性の車を発見し、逮捕に至った旨が書かれていますが、警告や命令が出されていたといった事情は書かれていません。
そこで、すでに「つきまとい等」を繰り返す「ストーカー行為」に至っており、警告や禁止命令をせずに、加害者をいきなり逮捕したパターンだったことが予想されます。

~執行猶予も取り消される~

執行猶予中に新たに犯罪を行うと、新たな犯罪が極めて軽いものであるなど例外的な場合を除いて、前回の裁判の執行猶予が取り消され、新旧両方の裁判で下された刑罰を受けることになります。

特に今回の事例では、前回の裁判は執行猶予期間中に保護観察所の指導監督を受けるという保護観察付きのものであり、執行猶予判決の中では重い判決です。
また、新たな罪が同じ女性に対するストーカー行為という悪質性もあります。

そう考えると、新たな犯罪では懲役刑の実刑判決が下り、前回の裁判で下された2年6か月の懲役も合わせて執行されることになる可能性が高いでしょう。

せっかく執行猶予判決となったのに再犯をして取り消されてしまうのは、加害者にとっては不利益ですし、何より被害者にとってもたまったものではありません。
性犯罪や薬物犯罪などでは、自分の意志だけではやめられない依存症状態になることもありますので、遅くても一度目の判決後の段階で、専門的な治療をしている病院を受診するなどの対策が不可欠となります。

~弁護士にご相談を~

あなたやご家族が何らかの犯罪をしたとして逮捕されたり、取調べを受けたといった場合にはぜひ一度、弁護士にご相談いただければと思います。
どれくらいの刑罰を受けそうか、示談はできそうか、取調べではどのように受け答えしたらよいのか、治療を受けられる病院はどこにあるかなど、事件内容に応じてご説明いたします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスのご利用を、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談のご利用をお待ちしております。

執行猶予中にストーカーで逮捕①

2020-05-03

執行猶予中にストーカーで逮捕①

女性への傷害罪で執行猶予中に、同じ女性にストーカーをしたとして逮捕された事件がありました。

執行猶予中にストーカー行為,容疑の男逮捕 埼玉県警
産経新聞

この事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説いたします。

~事件の概要~

ニュース記事がリンク切れの可能性もあるので、最初に事件の概要を確認しておきます。

男性が知人女性の顔を複数回こぶしで殴り、車で女性に衝突するなど暴行を加えたとして殺人未遂罪の容疑で逮捕

傷害罪で起訴

さいたま地裁が懲役2年6か月、保護観察付き執行猶予4年の判決

執行猶予期間中に同じ女性の実家前を車で複数回行き来するなどのつきまとい行為で逮捕

今回の事件はこのような流れをたどりました。
順番に、気になる点を深堀していきます。

~殺人未遂罪が傷害罪に~

この男性は最初、殺人未遂の容疑で逮捕されています。
しかしその後、傷害罪で刑事裁判にかけられています。
これはなぜでしょうか。

一般的に、被害者にケガを負わせた事件では傷害罪が成立することが多いです。
同じくケガを負わせた事件であっても、より重い殺人未遂罪が成立するためには、

①被害者が死亡する危険性が認められること
②加害者に殺人の故意があること

が必要です。

①については、一般的にこぶしで数回殴った程度で被害者が死亡する危険性は低いでしょう。
しかし今回の事件のように、自動車を衝突させたとなれば、状況によっては死亡してもおかしくないので、①が認められる可能性が十分考えられます。

次に②については、被害者を殺そうと思っていた、あるいは死亡するかもしれないがそれでもかまわないと思っていれば、故意があるとされます。
そして繰り返しになりますが、自動車を衝突させることは被害者が死亡することも十分考えられる行為です。
だとすると、このような危険な行為をするということは被害者を殺すつもりがあったのではないか、少なくとも死ぬかもしれないとわかった上で死んでもかまわないと思って衝突させたのではないかと判断されてもおかしくないわけです。

それでも傷害罪での起訴・有罪判決となった理由はわかりません。
1つの予想されるパターンとしては、車と被害者の位置関係や被害者にぶつかった時のスピードなどから、被害者が死亡する可能性は低くて脅しの意味合いが強かったのではないか、すなわち①②が満たされるとは言い切れない、といった判断を検察官が行い、傷害罪で起訴したのかもしれません。

~なぜ執行猶予判決に?~

その後、さいたま地裁は執行猶予判決を下しました。
再び女性の実家周辺をうろつくような人がなぜ執行猶予になったのか、疑問に思われる方もいるかもしれません。
正確な事情は報道からはわかりませんが、いくつか考えられる理由をあげてみます。

まず、犯罪をしたと疑われている人をどの罪で裁判にかけるかの判断は検察官が行うことになっています。
裁判所は原則として、検察官が起訴した罪名で裁判を行うことしかできません。
したがって検察官が、前述のように殺人未遂罪が成立するとは言い切れないなどと判断して傷害罪で起訴した以上は、裁判所としては傷害罪で裁判を進めるしかないわけです。

そうなると、傷害罪は殺人罪よりも一般的に刑罰が軽くなりますから、殺人罪で起訴された場合に比べれば、執行猶予になる可能性も上がるわけです。

とはいえ今回の事件の男性は、判決が出る前の身柄拘束期間中、ノートに殺害をほのめかすような記載をしていたようです。
このような悪質といえる事情があったにも関わらず執行猶予となったのは、たとえば前科がない、裁判ではしっかりとした反省態度を示していた、被害者と鉢合わせするような事態は考えにくい状況にあった、男性の家族の監督が見込める状況にあったなどの事情があったのかもしれません。

しかし残念ながらその後、女性の実家周辺をうろついたとしてストーカー規制法違反で逮捕されたわけです。
結果だけ見れば、検察官や裁判所の判断が間違っていたとも言えますが、検察官や裁判官も人間ですから、なかなか正確な判断をすることは難しいということなのかもしれません。

〈続きはこちら〉
執行猶予中にストーカー②

教員によるわいせつ行為

2020-05-01

教員によるわいせつ行為

教員わいせつ、再犯防げず 18年度最多282人 処分歴の共有に「穴」
毎日新聞

この記事について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説いたします。

~過去最多を記録~

この記事では、公立学校の教師がわいせつ行為などにより処分された件数(2018年)が、過去最多になったことが紹介されています。
発覚すると懲戒免職になることは覚悟しなければなりません。
しかし、教員を採用する際、他の自治体で教員をしていた時の処分歴があるかどうかを正確に把握することが難しく、教員として再任用されるケースもあるとのことです。

教員が生徒にわいせつ行為をした場合、どのような犯罪が成立するか見ていきましょう。

【強制わいせつ罪】
刑法176条
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

強制わいせつ罪は、よく耳にする犯罪だと思います。
被害者が13歳以上の場合は、強い暴行・脅迫がなければ成立しない犯罪です。
しかし被害者が13歳未満の場合には、暴行・脅迫がなくても、わいせつな行為さえすれば成立します。

【強制性交等罪】
第177条
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

レイプまでしてしまった場合には、強制性交等罪が成立します。
強制わいせつ罪と同じく、被害者が13歳未満の場合には、暴行や脅迫を使わなくても犯罪が成立してしまいます。

【青少年健全育成条例違反】
生徒・児童の同意があったとしても、わいせつな行為をした場合には青少年健全育成条例に違反する可能性があります。

宮城県・青少年健全育成条例
第31条1項
何人も、青少年に対しみだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
第41条1項
第三十一条第一項の規定に違反して、青少年に対しみだらな性行為又はわいせつな行為をした者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

【児童ポルノ禁止法違反】
わいせつ行為をしている場面を撮影したり、児童にわいせつ画像を送らせると、児童ポルノ禁止法に違反し、3年以下の懲役または300万円以下の罰金となることもあります。
送るよう要求した時点で、宮城県の青少年健全育成条例により30万円以下の罰金または科料になるおそれもあります。

【迷惑行為防止条例違反】
学校内で、生徒・児童の下着や着替えの様子、トイレなどを盗撮した場合には、迷惑行為防止条例違反になる可能性があります。

宮城県・迷惑行為防止条例違反
第3条の2第3項
何人も、正当な理由がないのに、住居、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所で当該状態にある人を撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置してはならない。
第4項
何人も、正当な理由がないのに、集会場、事務所、教室その他の特定かつ多数の者が利用するような場所において、人の下着等を撮影してはならない。

罰則は、撮影に成功してしまった場合、盗撮の非常習者は1年以下の懲役または100万円以下の罰金盗撮前科があるなど常習者として扱われると2年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。

~ご相談ください~

リンクした記事によると、教師がわいせつ行為で検挙される確率は、日本全体に比べると1.5倍近くあるようです。
教師は人格的にわいせつ行為をしやすいということではなく、閉鎖された環境下で教師と児童の支配関係があるという状況自体によって、わいせつ行為が増えていると分析されています。

もし、あなたやご家族が性犯罪など何らかの罪を犯して逮捕されたり、取調べを受けたといった場合には、今後どうなってしまうのか不安だと思いますので、弁護士にご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスのご利用を、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談のご利用をお待ちしております。

痴漢外来で依存症を治す

2020-04-29

痴漢外来で依存症を治す

痴漢をやめられない人の治療について書かれた記事があります。

スーツ姿で都心駅前の「痴漢外来」に通う男性たちが抱える闇
Yahoo!ニュース(プレジデントオンライン)

この記事について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説いたします。

~痴漢依存症~

新型コロナウイルスの影響により、テレワーク・在宅ワークが推し進められていることから、以前よりも電車がすいている状況にあります。
元々、満員電車が異常な状態だったとも言えるので、これ自体はいい方向に向かっているのかもしれません。

満員電車がなくなると、痴漢も減ることになるでしょう。
この点も、コロナウイルスがもとらした思わぬ効果なのかもしれません。

とはいえ、痴漢が完全になくなるわけではないでしょう。
痴漢をする人は、頭では悪いことだと認識し、やめなければならないと思っていたとしても、やめられない状態になっているケースがあるからです。
薬物やアルコール、さらには万引きなどと同様、依存症のような状態になってしまうのです。

こうなると、自分の意志だけでやめることは難しく、責めてもあまり意味がないので、きちんとした治療を受けることが重要となります。

最近ではオンラインによるカウンセリングをしているところもありますので、お住まいの地域の近くに専門的な治療を行っている病院がなかったとしても、専門的ケアとつながることができます。

~痴漢をした場合の罰則~

痴漢は各都道府県が制定している迷惑行為防止条例違反、あるいは悪質な態様の場合は刑法の強制わいせつ罪になります。
条文を見てみましょう。

宮城県・迷惑行為防止条例
第3条の2第1項
何人も、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような次に掲げる行為をしてはならない。
第1号
衣服その他の身に着ける物(以下「衣服等」という。)の上から又は直接人の身体に触れること。
刑法第176条(強制わいせつ)
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

宮城県の迷惑行為防止条例で定められた罰則は、痴漢常習者ではない場合には6か月以下の懲役または50万円以下の罰金痴漢常習者の場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
痴漢を繰り返していたからといって必ず常習者として処罰されるわけではありませんが、痴漢前科がある場合には、常習者として処罰される可能性が上がるでしょう。

どちらの犯罪に問われるのか、明確な線引きをすることは難しいですが、①服の上から触ったり、もともと出していた腕や足に触ったような場合には条例違反に、②スカートや下着の中に手を入れて触ったというような場合には強制わいせつ罪になる可能性が高まるでしょう。
ただし、服の上から触ったとしても、触る部位や触り方によっては強制わいせつ罪になる可能性も十分考えられます。

痴漢を繰り返すと、条例違反の場合は条文上も刑罰が倍になりますし、強制わいせつ罪の方も前科がある場合は判決が重くなることが予想されます。
そのことがわかっていても、簡単にはやめられない状態となってしまうのが怖いところです。
しっかりと治療をして、スムーズな社会生活を営んでいけるようにすることが重要です。

~弁護士にご相談ください~

あなたやご家族が何らかの犯罪をしたとして逮捕されたり、取調べを受けたといった場合にはぜひ一度、弁護士にご相談いただければと思います。
いつ釈放されそうか、どれくらいの刑罰を受けそうか、示談は可能なのか、近くに依存症を専門に扱う病院があるかなど、事件内容に応じてご説明いたします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスのご利用を、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談のご利用をお待ちしております。

タイヤをパンクさせた教師が逮捕

2020-04-27

タイヤをパンクさせた教師が逮捕

自動車のタイヤをパンクさせた教師が器物損壊罪逮捕された事件がありました。

仙台の中学校教師を逮捕 タイヤパンクさせた疑い
産経新聞

この事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説いたします。

~器物損壊罪~

この事件は、仙台市内の中学校の教師が、面識のない女性の自動車のタイヤをパンクさせたとして器物損壊の容疑で逮捕されというものです。
逮捕された容疑者が住む富谷市内でも同じような事件が相次いでいたことから、余罪についても捜査が進められているとのことです。

器物損壊罪はよく聞く犯罪だと思いますが、条文を見てみましょう。

刑法261条
前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

「前三条」には重要な文書を捨てたり建造物を壊した場合が規定されています。
これらの文書・建造物等以外を壊した場合には、261条の器物損壊罪が成立する可能性があるわけです。

「損壊」とは、物を物理的に壊すことのほか、物の効用を害する行為全般を指します。
なお、「傷害した者」という表現も入っていますが、これは動物にケガをさせた場合に成立する犯罪です。

今回の事例のように、自動車のタイヤをパンクさせると走行できなくなるので、タイヤとしての効用を害する行為として「他人の物を損壊」したことになります。
したがって器物損壊罪が成立し、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料となるわけです。
なお、「罰金」も「科料」も金銭を徴収される刑罰ですが、「罰金」は金額が1万円以上、「科料」は1000円以上1万円未満という違いがあります。

~逮捕後の流れは?~

犯罪をしたとして逮捕されると、最初に最大3日間、警察署等で身体拘束され、取調べ等の捜査を受けます。
そして逃亡や証拠隠滅のおそれがあるなどとして検察官が請求し、裁判官が許可すれば、さらに10日間勾留(こうりゅう)と呼ばれる身体拘束がされる可能性があります。
この勾留期間はさらに10日間延長されることもあります。

一般的に、重い刑罰を受けることが予想される場合ほど、その刑罰から逃れたいと考え、逃亡や証拠隠滅をするおそれが高いと考えられています。
器物損壊罪は、犯罪の中では比較的軽い方の犯罪なので、逃亡や証拠隠滅のおそれがそれほどないと判断されて勾留を免れる可能性も十分考えられます。

もちろん、前科の有無や被害金額にもよりますが、弁護士としても逃亡や証拠隠滅のおそれがないといえる理由をまとめた意見書を提出するなど、早期釈放に向けた弁護活動を行います。

釈放されれば、自宅から警察署や検察庁に出向いて取調べを受けるという流れになるでしょう。

勾留された場合はその期間の最後に、勾留されなかった場合は捜査が終わり次第、検察官が被疑者を刑事裁判にかけるか(起訴)、かけないか(不起訴)の判断をします。

このうち起訴には①正式起訴②略式起訴があります。
①正式起訴されると刑事裁判が開かれ、事件によって懲役刑の実刑判決や執行猶予判決、罰金刑の判決を受けたり、まれに無罪判決がなされることになります。
一方、②略式起訴は比較的軽い事件でなされることが多いです。
法廷での刑事裁判は開かれず、簡単な手続で罰金を納付して終わるということになります。

さらに、より軽い事件や示談が成立した事件などでは検察官が不起訴処分として、前科も付かずに刑事手続が終わる場合があります。
今回は大目に見てもらうということです。

今回の事件のように余罪が多くある場合には不起訴処分になるのは難しいかもしれませんが、出来るだけ多くの被害者の方々に謝罪・賠償して示談を締結できれば、不起訴処分になる可能性や軽い判決になる可能性を上げることができます。

なお、余罪が少ない器物損壊事件などでは、逮捕されずに取調べや裁判手続きが進められる可能性もあります(在宅事件)。
警察から取調べのために警察署に出頭するよう連絡が来た時点で、しっかり反省態度を示し、被害者との示談を進めていくことで、その後に逮捕される可能性を下げ、最終的な処分・判決を軽くすることを目指すことになります。

~弁護士にご相談ください~

あなたやご家族が何らかの犯罪をしたとして逮捕されたり、取調べを受けたといった場合、いつ釈放されるのか、どれくらいの刑罰を受けるのか、示談は可能なのかなど、わからないことが多くて不安だと思います。
ぜひ一度、弁護士にご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスのご利用を、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談のご利用をお待ちしております。

秋田県で盗撮規制が強化

2020-04-25

秋田県で盗撮規制が強化

秋田県の迷惑行為防止条例が改正され、盗撮規制が強化されました。

秋田県警作成リーフレット

改正内容について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説いたします。

~処罰対象となる場所や行為が追加~

盗撮は各都道府県が制定する迷惑行為防止条例で規制されています。
秋田県でも従来から、

①電車やお店など不特定の人が利用する公共の場所や公共の乗物
②住居、浴場、更衣場、便所など、通常、人が衣服の全部または一部を着けない状態でいる可能性がある場所

において、衣服等で覆われている下着や身体を盗撮した場合は処罰の対象となっていました。

しかし昨年、秋田県内の中学校の教室で臨時講師が女性教師のスカート内を盗撮した事件で、臨時講師を処罰することができませんでした。
学校の教室は上記②には当たりませんし、特定の人しか入ることができないため、①不特定の人が利用する「公共の場所」に当たるとも言い切れないと判断されたからです。

そこで令和2年4月1日から、

③事務所、教室、貸切バスなど、特定かつ多数の人が集まる場所や乗物での盗撮

も処罰対象に含まれることになりました。
これにより同じ事件が起きた場合には処罰することができるようになります。

他にも、これまでは衣服等で覆われている下着や身体を実際に盗撮した場合にのみ処罰の対象とされていました。
しかし今回の改正で、盗撮するためにカメラを向けたり設置した時点で、処罰対象になりました。
たとえば、隠しカメラを設置したが、下着や身体を盗撮する前にカメラを発見されて盗撮できなかった場合にも処罰の対象となるわけです。

罰則は、盗撮の非常習者は従来から6か月以下の懲役または50万円以下の罰金でした。
今回の改正で、前科があるなど盗撮の常習者として扱われるとより重く、1年以下の懲役または100万円以下の罰金という処罰を受けることになりました。

前述の中学校の盗撮事件では、被疑者の自宅を捜索・差押えした結果、公共の場所で盗撮したデータも見つかり、そちらで処罰することができました。
しかし今後は余罪のあるなしに関わらず、学校の教室などでの盗撮も処罰されることになります。

~刑事事件の手続きの流れ~

盗撮などの犯罪が警察に発覚した場合も、逃亡や証拠隠滅のおそれまではないと判断されれば逮捕されず、自宅から警察署や検察庁に出向いて取調べを受けるという在宅事件として扱われる可能性があります。

一方、逮捕された場合は最初に最大3日間、警察署等で身体拘束され、取調べ等の捜査を受けます。
そして逃亡や証拠隠滅のおそれがあるなどとして検察官が請求し、裁判官が許可すれば、さらに10日間、勾留(こうりゅう)と呼ばれる身体拘束がされる可能性があります。
この勾留期間はさらに10日間延長されることもあります。

勾留された場合はその期間の最後に、在宅事件では必要な捜査が終わり次第、検察官が被疑者を刑事裁判にかけるか(起訴)、かけないか(不起訴)の判断をします。

起訴されると罰金刑や懲役刑(執行猶予の場合もある)を受ける流れになるでしょう。
一方、比較的軽い事件や示談が成立した事件などでは不起訴処分となり、裁判を受けずに前科も付かずに刑事手続が終わる場合があります。
今回は大目に見てもらうということです。

弁護士とはしては、まずは逃亡や証拠隠滅のおそれがない理由を検察官や裁判官に主張するなどして、勾留されずに早期に釈放されることを目指します。
早期釈放が実現すれば、たとえば会社に出勤できずに逮捕されたことが発覚して解雇されるといった事態を避けられるかもしれません。

また、被害者の方に謝罪・賠償して示談を締結して不起訴処分や罰金などの軽い結果となるように弁護活動をしてまいります。
示談が成立した場合などには意外と不起訴処分となる例はよくあります。

~ご相談ください~

あなたやご家族が何らかの犯罪をしたとして逮捕されたり、取調べを受けたといった場合、いつ釈放されるのか、どれくらいの処罰を受けるのか、被害者との示談はどうやって行えばよいのか、解雇されるのかなど、分からないことが多く不安だと思います。

事件の内容をお聞き取りした上でご説明いたしますので、ぜひ一度、弁護士にご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスを、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談をご利用ください。

東北各県からの事件に対応しておりますので、ご連絡をお待ちしております。

覚せい剤を無理やり打たれて無罪?

2020-04-21

覚せい剤を無理やり打たれて無罪?

覚せい剤を使用した罪に問われるも、無罪判決が出された事件がありました。

「無理やり注射された可能性」 覚醒剤使用男性に無罪判決 佐賀地裁
Yahoo!ニュース(佐賀新聞)

この事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。

~尿検査で検出されるも無罪に~

この事件では、佐賀県内や福岡県内で覚せい剤を使用したとして男性が逮捕されました。
男性は尿検査で覚せい剤の成分が検出されていました。

しかし男性は逮捕時から、「知人から覚醒剤を強制的に注射された」といった供述をして容疑を否認しました。
覚せい剤使用の罪は、自分の意思で摂取しなければ成立しないからです。

そして佐賀地方裁判所は、「自らの意思で使用したことについて合理的な疑いが残る」として無罪判決を出しました。

多くの方は、「そんなことあるか?」と思われるかもしれません。
弊所も詳しい事情は分かりませんが、男性の供述が嘘とは言い切れない事情があったのだろうと思われます。

~有罪とする条件は?~

そもそも刑事裁判では、裁判にかけられている人(被告人)が、本当に犯罪をしたと言うには合理的な疑いが残る場合には有罪判決をすることができません。

「合理的な疑いが残る」というのを具体的な数値に表すのは難しいですが、たとえば99%以上、ほぼ間違いなくやっていると判断された場合には、合理的な疑いは残っていないとして有罪となるでしょう。
仮に被告人が、「私が寝ている間に、小学生の子供が勝手に私に覚せい剤を注射した」という主張をした場合、理論上はその可能性はゼロではないと思いますが、極めて可能性が低い弁解と言えるので、有罪にできるでしょう。

一方、犯罪をしている確率が90%、80%、70%…と下がってくると、有罪にはしづらくなってきます。
無実の罪で処罰を受けるという冤罪を防ぐために、犯罪をしていない可能性もある程度ある場合には、有罪とできないのです。
「無罪推定の原則」や「疑わしきは被告人の利益に」といった言葉で現されます。

今回の事件でいうと、たしかに知人から無理やり注射を打たれたという主張は、一般的な感覚からすると信じられないかもしれません。
しかし被告人と知人の関係性や当時の状況などから考えると不合理な弁解とは言い切れず、自らの意思で覚せい剤を摂取していない可能性も否定しきれないと判断されたのでしょう。
そこで無罪判決が出されたわけです。

~犯罪を証明するのは検察官~

このように考えると、被告人は無実である証明まではする必要がなく、逆に検察官が、犯罪をしたという証明をしなければならないことになります。

つまり、被告人としては、犯罪をしていないと言える可能性もある程度あると言える理由さえ示せれば無罪となるので、犯罪をしていないという証明までする必要はないのです。

一方、検察官としては、ほぼ間違いなく被告人が犯罪をしたと言う理由を示さなければ、有罪判決を得ることができないわけですから、検察官が証明責任を負っているということになるのです。

被告人にとって有利に思われるかもしれませんが、犯罪をしていないことを証明するのは「悪魔の証明」と言われる困難なものであり、それを要求すると、冤罪が生まれやすくなってしまうのです。

先日、国外逃亡したカルロス・ゴーン被告について森法務大臣が、「潔白というのならば、司法の場で正々堂々と無罪を証明すべき」と発言して、後日、発言を「無罪を主張すべき」に訂正したということがありました。
被告人のカルロス・ゴーンさんは無罪の証明をする必要はないのですから、おかしな発言だとして国内外から批判されたわけです。

~お困りの方は弁護士にご相談を~

身に覚えのない犯罪を疑われて困っている場合には、無罪判決に向けて弁護活動を致しますので、ぜひ弁護士にご相談ください。
また、本当に犯行をしており無罪獲得が不可能なケースでも、早期釈放や軽い判決に向けて活動を致しますので、ご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、交通事件を含む刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では初回接見のご利用を、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では、事務所での無料法律相談のご利用をお待ちしております。

弁護士事務所職員をかたり詐欺で逮捕

2020-04-19

弁護士事務所職員をかたり詐欺で逮捕

弁護士事務所職員を装って300万円をだまし取った事件がありました。

弁護士事務所職員装い…90歳男性から300万円詐取 名古屋・瑞穂区
Yahoo!ニュース(CBCテレビ)

この事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説いたします。

~特殊詐欺で弁護士事務所も利用される~

この事件は、オレオレ詐欺や還付金詐欺などの特殊詐欺の1つです。
共犯者の1人が名古屋市内の90歳男性宅に電話し、息子を装って「親父、マスクあるけど、どうする」などと話を切り出した上で、「仮想通貨でもうかった」「脱税の処理に金が必要」などと言ってお金を用意させました。

そしてもう1人の共犯者が弁護士事務所職員を装って被害者の自宅を訪れ、現金300万円をだまし取ったとして逮捕されたものです。

お金を実際に受け取りに行く「受け子」役は、自治体職員や銀行員、警察官など様々な職業をかたってお金をだまし取りますが、弁護士事務所職員という弊所にとっても身近な存在を利用するケースもあるということなので、やるせないところです。

特殊詐欺をすると、当然ながら詐欺罪が成立します。

刑法第246条1項
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

詐欺罪は条文にある通り懲役刑しか規定されておらず、罰金で済む可能性がありません。

また、特殊詐欺は被害が重大なものになる傾向があることから、初犯であっても執行猶予にならず、刑務所に入れられてしまうことが十分考えられます。
特殊詐欺は、同じ詐欺罪が成立する無銭飲食などと比べると、被害額が高くなりがちです。
今回の事例でだまし取られたのも300万円という大金です。

しかも、だまし取ったお金を使ってしまって、返還できないという例も多いです。
そこで判決も厳しいものになる傾向があるのです。

~刑事手続きの流れ~

犯罪をしたとして逮捕されると、最初に最大3日間、警察署等で身柄拘束され、取調べ等の捜査を受けます。
そして逃亡や証拠隠滅のおそれがあるなどとして検察官が請求し、裁判官が許可すれば、さらに10日間勾留(こうりゅう)と呼ばれる身体拘束がされる可能性があります。
この勾留期間はさらに10日間延長されることもあります。

その後、刑事裁判が始まります。
保釈が認められない限り、身柄拘束が続いてしまうことになります。

弁護士としては、勾留を防いだり保釈を認めてもらうことにより、ご本人が釈放されることを目指します。
ただし、被害金額が高かったり、共犯者がいるといった事例では、逃亡や証拠隠滅のおそれが高いと判断されて、なかなか釈放が認められない傾向にあります。

~判決を軽くするには~

前述のように特殊詐欺は被害が重大なので判決が重くなる傾向にあります。
少しでも軽い判決を得るためには、被害者にだまし取ったお金を返還して示談を結ぶことが重要です。

しかし、だまし取ったお金を使ってしまって本人が返還できない場合には、場合によってはご家族にご協力いただいて返還するという方法もあります。

もちろん、ご家族は法的には返還義務はありません
しかし、ご家族が協力できる余裕がある場合には、代わりに返還することによって被害が回復できるので、被害者にとってもプラスですし、結果として判決が軽くなる可能性もあります。

~弁護士にご相談ください~

とはいえ、示談交渉はどうやって行えばよいのか、また釈放に向けてどう動けばよいのかなど、わからない方がほとんどだと思います。
あなたやご家族が何らかの犯罪をしたとして逮捕されたり、取調べを受けたといった場合にはぜひ一度、弁護士にご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスのご利用を、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談のご利用をお待ちしております。

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