暴行罪から傷害罪に切り替え?
仙台市泉区内の居酒屋において飲酒と食事をしていた自営業50代男性Aさんは、同店のホールスタッフVさんの接客態度に腹を立てて、「お前のその態度はなんだ!」と怒鳴って突然Vさんに向かって自分の飲みかけの味噌汁をかけました。
同店の店長の通報により駆け付けた宮城県泉警察署は、Aさんを暴行罪の容疑で逮捕しました。
その後、病院を受診したVさんは全治一週間のやけどと診断され、Vさんは担当の警察官に診断結果を伝えました。
そのため、警察は、Aさんの容疑を傷害罪に切り替えて捜査しています。
Aさんの家族は、暴行罪から傷害罪に容疑が切り替えられたのはなぜか、切り替わるとどうなるのか刑事事件の経験豊富な弁護士に問い合わせをしました。
(フィクションです。)
~暴行罪から傷害罪へ罪名が切り替わる?~
今回の事例のAさんは、当初、暴行罪の容疑で逮捕されましたが、その後、傷害罪に切り替えられて捜査されています。
Aさんが容疑をかけられていた暴行罪と現在捜査を受けている傷害罪について、刑法がこれらの犯罪をどのように規定しているのかを確認してみましょう。
第204条(傷害)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
第208条(暴行)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
暴行罪も傷害罪も人の身体に不法な力を加えた時に成立する犯罪ですが、人の身体に傷害を負わせたかどうかという点で異なります。
「暴行」とは人の身体に対する不法な有形力の行使を意味します。
「傷害」とは,人の生理機能に障害を与えることを言います。
暴力を振るって怪我をさせることや、失神させる,飲酒させて急性アルコール中毒にさせる,騒音を鳴らし続けて頭痛を起こさせるといったことが傷害行為に当たると判断されています。
また,PTSD(心的外傷後ストレス障害)にさせることも傷害に当たる場合があります。
暴行罪は「人を傷害するに至らなかったとき」に成立するため,傷害が未遂に終わった場合の多くは暴行罪に当たります。
今回の事例のAさんの場合を見てみましょう。
Aさんは、Vさんに突然味噌汁をかけるという行為をしています。
この行為をした時点で、Vさんの身体に不法な有形力を行使している=暴行罪が成立していることになるため、Aさんは暴行罪の容疑で逮捕されたと考えられます。
その後、病院を受診したVさんは全治一週間のやけどと診断され、Vさんは担当の警察官に診断結果を伝えています。
つまり、VさんがAさんの暴行により全治一週間のやけどを負っている=傷害を負わされているということが捜査機関に発覚しているということになります。
(なお、傷害罪の「傷害」の定義は生理機能を害することなので,たとえ全治1週間のやけどであっても,「傷害」であることには変わりありません。)
以上のような流れで、Aさんに傷害罪の成立が疑われ、被疑罪名が暴行罪から傷害罪に切り替わったのだと考えられます。
今回のAさんは、居酒屋で飲酒と食事をしているときに事件を起こしてしまっています
酒に酔って気が大きくなった状態で,つい手が出てしまうこともあり得ます。
酒によって気が大きくなっていることが犯罪の成立に影響を及ぼすのではないかと疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、確かに、飲酒は犯罪が成立するために必要な責任能力に影響を及ぼすことがあります。
しかし、通常見られる単純酩酊では,犯罪の成立に影響は生じません。
そのため、酔ったうえでつい手を出してしまい相手を怪我させてしまえば,それはれっきとした傷害罪になることが多いでしょう。
暴行罪の場合は約30パーセントが起訴されて裁判を受けることになりますが、傷害罪の場合は、約40パーセントが起訴されて裁判をうけることになります。
暴行罪や傷害罪は、被害者との示談を進めることが,起訴を回避するうえで重要になります。
仮に起訴されてしまっても、示談の成立は容疑をかけられている方にとって有利に働きます。
それゆえ、暴行罪や傷害罪で捜査・逮捕されている場合は、すぐに弁護士に依頼することをお勧めします。
上記で見てきました通り、捜査が進んだことで、逮捕された時点で容疑をかけられていた犯罪名から、別の犯罪名に容疑が切り替わることがあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門で示談交渉に長けた弁護士が多数所属しており、罪名の切り替えについても対応が可能です。
暴行罪や傷害罪でお悩みの方は、まずはお気軽に無料法律相談または初回接見サービスをご利用ください。
(宮城県泉警察署までの初回費用:34,800円)