窃盗事件(情報の不正入手事件)
窃盗事件(情報の不正入手事件)について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
【刑事事件例】
宮城県仙台市青葉区に本社を置くV株式会社に勤めるAさんは,競争会社に売りつける目的で,V株式会社から,V株式会社の企業秘密が書かれている小紙片一枚を持ち出してコピーした後,直ちにV株式会社に戻しておきました。
その後,AさんはV株式会社に上記窃盗(情報の不正入手)行為がばれてしまい,V株式会社から宮城県北警察署に窃盗罪で刑事告訴すると言われてしまいました。
(フィクションです。)
【窃盗罪とは】
刑法235条
他人の財物を窃取した者は,窃盗の罪とし,10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
窃盗罪は,他人の「財物」を「窃取」したときに成立する財産犯です。
【窃盗罪の成立要件①】
ここで,刑事事件例では,Aさんが無断で持ち出したのはV株式会社の企業秘密が書かれている小紙片一枚です。
単なる小紙片であれば経済的価値は非常に小さく,窃盗罪の「財物」には当たらないとも考えられます。
Aさんが無断で持ちだしたV株式会社の企業秘密が書かれている小紙片一枚は,窃盗罪の「財物」に当たるのでしょうか。
この点,確かに,小紙片を単体としてみると,財産的価値が乏しく,窃盗罪の「財物」には当たらないとも考えられます。
また,仮に窃盗罪の「財物」に当たるとしても,刑罰を科すほどの違法性がないと判断されるとも考えられます。
しかし,価値のある情報が化体されることによって媒体である小紙片の価値も上昇するため,情報の化体された媒体(小紙片)の財産的価値は,媒体と情報の全体の経済的価値によって判断されると考えられています。
刑事事件例のように,V株式会社の企業秘密という価値の高い情報が化体されており,全体としてみると,財産的価値があると考えられます。
そのため,刑事事件例において,Aさんが無断で持ちだしたV株式会社の企業秘密が書かれている小紙片一枚は,窃盗罪の「財物」に当たると考えられます。
【窃盗罪の成立要件②】
しかし,Aさんは,V株式会社から,V株式会社の企業秘密が書かれている小紙片一枚を持ち出してコピーした後,直ちにV株式会社に戻しておきました。
とすると,Aさんは,ごく短時間,一時使用しただけであるといえます。
一時使用目的の窃盗行為は窃盗罪が成立しないと考えられています。
そうすると,Aさんの窃盗行為もあくまで一時使用目的の窃盗行為として,窃盗罪には当たらないのでしょうか。
この点,企業秘密のような情報は,他に漏れないことが重要であり,それが競争会社に売り渡された場合には,企業秘密を有していた会社にとってその情報の利用価値が著しく低下してしまいます。
そのため,使用後すぐに元に戻したとしても,使用窃盗とは評価できないと考えられています。
以上から,Aさんは,V株式会社が占有していた「他人の財物」である小紙片を無断で持ち出し,窃取したとして,窃盗罪が成立すると考えられます。
【窃盗事件(情報の不正入手事件)を起こしたら】
刑事事件例のAさんのように,たとえ小紙片1枚,短時間の持出しであったとしても,その行為は窃盗罪にあたる可能性があります。
そして,窃盗罪を犯した者には,10年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられることになります。
刑事事件例では,現段階では,V株式会社が窃盗罪での刑事告訴を検討している段階であるため,刑事弁護士を選任した上での示談交渉によっては,窃盗罪での刑事告訴をしないような法的効力を持たせた示談を締結することにより,刑事事件化を避けることができる可能性があります。
しかし,いつまでもV株式会社が窃盗罪で刑事告訴をしない状態でいるという保証は何ら存在しませんので,すみやかに刑事弁護士を選任し,V株式会社と正式に示談交渉を開始することが大切でしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は,刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
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