窃盗(置引き)で後日逮捕

窃盗(置引き)で後日逮捕

宮城県大崎市在住のAは、近所のスーパーに買い物に出かけた際、スーパーの駐輪場に停めた自転車のカゴに鞄を置いたままVさんが15m先のスーパー入口に入っていくところを見ました。
Aさんは、Vさんがスーパーに入店したことから、Vさんの鞄を置引きしてもどうせバレないだろうと思って、Vさんの鞄を持ち去りました。
Vさんは、スーパーに入って1分後、スーパーの入口から10m進んだところで、鞄を自転車のカゴに置き忘れたことに気付き、慌てて自転車まで戻りましたが、既に鞄はAさんによって持ち去られた後でした。
Vさんは宮城県鳴子警察署に被害届を提出し、防犯カメラの映像等からAさんがVさんのカバンを置引きした犯人であることが発覚し、Aさんは窃盗罪の容疑で逮捕されました。
(フィクションです。)

~置引きは窃盗罪または占有離脱物横領罪に問われる~

本件のAさんは窃盗罪逮捕されていますが、置引きは、窃盗罪または占有離脱物横領罪に問われることになります。
では窃盗罪占有離脱物横領罪のどちらになるかどのように決まるのでしょうか。

窃盗罪占有離脱物横領罪の分かれ目となるのは、置引きした物が持ち主の占有下にあったかどうかです。
「占有」とは、財物が人の事実上の支配下におかれている状態のことをいいます。
持ち主の占有があった場合は、占有を侵害したとして窃盗罪、占有が無ければ占有を離れた他人の物を横領したとして、占有離脱物横領罪が成立します。
占有は、占有の事実という客観的要素と占有の意思という主観的要素から成り立ち、占有の有無は、占有の事実と占有の意思の相関関係より、社会通念に従って判断されます。
刑法上占有があるといえるためには、物に対する現実の所持又は監視を必要とするものではなく、物が所有者の支配力の及ぶ場所に存在すればよいとされました。
そして、占有者の支配内にあるか否かは、通常人ならば確かにその人の所有物だと納得出来るかどうかによって決まるとされています。
具体的にどのような事情から判断されるかというと、物が置かれている場所の性質や物から離れていた時間や距離、占有者が意識して置いたのか置き忘れたのかなどの事情から判断されます。

実際の裁判例では、公園のベンチにポシェットを置き忘れ、被害者がベンチから27メートル離れた時点でそれを置引きしたという事例において、窃盗罪の成立が認められています。
他の判例として、バス待ちの行列中にカメラを置き忘れた者が、約5分後約20m離れたところで気づいて引き返した場合について、カメラに対する被害者の占有が認めれ、窃盗罪が成立するとした例もあります。

本件では、Vさんは、スーパーの駐輪場に停めた自転車のカゴに鞄を置いたまま15m先のスーパー入口に入っており、スーパーに入って1分後、スーパーの入口から10m進んだところで鞄を置き忘れたことに気付いています。
本件の場合はVさんが鞄を占有していたと評価され、カバンを置引きしたAさんには窃盗罪が成立するとされる可能性があるものと思われます。

~後日逮捕~

窃盗罪は、犯行現場において現行犯逮捕されることが多い犯罪です。
一方で、犯行から時間が経ってから、後日逮捕(通常逮捕)される例もあります。

被害者の被害届が提出されており、防犯カメラの映像や目撃情報、被害現場や遺留品から検出された指紋・DNAなどの証拠が捜査過程で出てきた場合、後日逮捕される恐れが高まります。
特に昨今防犯カメラの設置の広まりや画像の高画質化により、防犯カメラの映像から検挙されるケースは年々増えています。

ただし、このような証拠がある場合でも、まずは逮捕せずに任意同行や任意出頭を求め、事情聴取するケースも多いです。
しかし、確たる証拠があるにもかかわらず容疑を否認する、任意同行や任意出頭を求められた場合に応じずに逃亡を図ったり証拠隠滅したりする可能性があるとみなされると、後日逮捕される可能性が高くなってしまいます。

置引き事件では、窃盗罪に当たるか占有離脱物横領罪に当たるのかの見極めは難しく、両者には量刑上大きな差があるため、どちらの犯罪に問われるのかが被疑者にとって重要な問題です。
どちらの罪に当たるのかによって、逮捕後身柄拘束を受ける可能性も異なります。
後日逮捕されるか不安な場合、ご自身の事件で疑問がある場合は、刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に相談してみてください。
(宮城県大崎市の事件の初回法律相談:無料)

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