客引きをして中止勧告を受ける
宮城県仙台市に住むAさんは、同市中心部にある居酒屋の店員をしています。
この居酒屋近くにあるアーケードでは以前から、居酒屋店員による客引きが多く行われており、Aさんも数年前から客引きを行っていました。
しかし最近になって客引きを規制する条例が制定されたことから客引きの数は減っていました。
ある日、Aさんは店長に指示され、このアーケード内で客引きをしていたところ、警察官に声を掛けられました。
警察官からは、条例が制定されたことを説明され、氏名や店の名前等を聞かれた上で、客引きをしないよう勧告というものを受けました。
翌日、不安になったAさんは弁護士に相談してみることにしました。
~仙台市客引き行為等の禁止に関する条例の概要~
仙台市中心部のアーケードや歓楽街では、以前から居酒屋などの店員が客引きをしている人が数多くいました。
必ずしもぼったくりをするような店だけではなく、健全な営業をしている店による客引きも多くありました。
しかし、中には悪質な店があるほか、通行の妨げや不快な声掛けになる例もあることから、仙台市は「仙台市客引き行為等の禁止に関する条例」を制定し、今年4月に完全施行されました。
この条例では、禁止区域において、相手方を特定して客引きをすることの他、相手方を特定してキャバクラ等のキャストになることの勧誘をする行為、これら客引きや勧誘の相手方を待つ行為を禁止しています(2条1号、6条)。
また、経営者が従業員に対し、これらの行為をさせたり、客引きが連れてきたお客を店舗に入れることも禁止しています(6条、7条)。
なお、禁止されるのは「相手方を特定して」客引き行為等をする場合ですので、不特定多数の者に対して呼びかける行為や、道路使用許可を取得して、ティッシュ・チラシ等を配布したり、看板を掲げて宣伝する行為は禁止されません。
一方、客引き等をする目的で相手方となる者を待つ(探す)だけでも禁止の対象ですので、注意が必要です。
これらの禁止事項の違反者には、違反行為をしてはならない旨の「勧告」がなされます(10条)。
それでも違反した者には、違反行為をしてはならない旨の「命令」がなされます(11条)。
この命令にもかかわらず、さらに違反した者には、5万円以下の過料の他、違反者の氏名や住所などが公表される可能性があります(13条1項、17条1号)。
また、市長(の指示を受けた職員等)は、違反者に対し、勧告・命令に必要な報告をさせたり、店舗への立ち入り調査を行うことができ、これに協力しなかった場合も5万円以下の過料となる可能性があります(12条1項2項、17条2号3号)。
なお、従業員が過料に処せられた場合、使用者には勧告や命令を経ずに過料が科される可能性があります(18条)。
なお、過料とは、刑罰である罰金や科料とは別物であり、前科もつきませんが、金銭を徴収されるという意味では同じです。
この条例の詳しい内容は、仙台市ホームページをご覧ください。
https://www.city.sendai.jp/shiminsekatsu/kurashi/anzen/anzen/mewaku/kyakuhikijourei.html
~ぼったくりをすると犯罪が成立しうる~
この条例に違反しただけであれば、氏名等の公表により影響は未知数ですが、過料の金額は5万円以下なので、弁護士に依頼するという展開にはなりにくいかもしれません。
しかし、客引きをしてぼったくりをするような店だと、様々な犯罪の成立が考えられます。
まず、客引き時や入店時に虚偽の説明をし、支払段階で高額な料金を請求して支払わせた場合、詐欺罪(刑法246条1項)が成立する可能性があります。
また、支払いを渋るお客に対して暴行・脅迫を用いて支払わせた場合、恐喝罪(249条1項)や傷害罪(204条)が成立する可能性もあります。
さらに、帰ろうとするお客を帰さずに支払いを要求した場合、監禁罪(220条)が成立する可能性もあります。
~不安があれば弁護士に相談を~
仙台市の条例違反で勧告を受け、今後が不安という方もいらっしゃるでしょう。
また、ぼったくりをしている、あるいはぼったくりに加担させられた場合には、逮捕されたり、懲役や罰金の刑罰を受ける可能性があるので、不安が大きいかもしれません。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする弁護士事務所です。
事務所での法律相談は初回無料となっております。
条例違反や詐欺罪、恐喝罪、傷害罪、監禁罪などでご相談されたいことがある方は、ぜひご連絡ください。