昏睡強盗罪で執行猶予
30代男性Aさんは、居酒屋に行った際、店内で知り合った男性Vさんと仲良くなって一緒にお酒を飲み始めました。
借金を抱えて生活に困っていたAさんは、Vさんに睡眠薬を飲ませて眠らせることでVさんの財布からお金を抜き取ろうと企てました。
Aさんは、Vさんがトイレに行った隙に、Vさんが飲んでいるビールの中に睡眠薬を入れ、トイレから戻ってこのビールを飲んだVさんは、しばらくしてそのまま深い眠りにつきました。
Aさんは、Vさんが完全に眠り込んだことを確認して、Vさんの財布から現金2万円を抜き取りました。
犯行後、Aさんは、眠っているVさんを残して居酒屋を去りましたが、後日、Aさんは昏睡強盗罪の容疑で宮城県大和警察署に逮捕・勾留されてしまいました。
困ったAさんの妻は、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に連絡しました。
(フィクションです。)
~昏睡強盗罪~
「人を昏睡させてその財物を盗取」した場合、「昏睡強盗罪」が成立します(刑法第239条)。
刑法239条は「人を昏睡させてその財物を盗取した者は、強盗として論ずる。」と規定しています。
「強盗として論ずる」とは、すなわち、「強盗罪(刑法236条1項)」と同一の法定刑(5年以上の懲役)で処罰されるということです。
刑法236条1項に規定されている「強盗罪」とは、暴行や脅迫といった手段により、相手側の犯行を抑圧した状態で人の財物を強取する場合に成立します。
一方、「昏睡強盗罪」とは、薬物などにより意識作用に障害を生じさせて(=昏睡させて)、人の財物を盗んだ場合に成立します。
相手方を昏睡させてその犯行を抑圧して財物を窃取する行為(昏睡強盗)も、実質的な違法性の程度は通常の強盗罪と同じであることから、強盗罪と同じ扱いを受けることになっているのです。
「昏睡させる」とは、人の意識作用に一時的または継続的な障害を生じさせて財物に対する支配をなしえない状態に陥れることをいい、その方法には制限はありません。
睡眠薬を飲ませたり、麻酔薬を投与したり、大量のお酒を呑ませたりして眠らせる行為がその典型です。
昏睡強盗罪が成立するには
①財物を盗取する意思を持つ
②この意思に基づいて、財物を窃取することを目的に相手を昏睡状態に陥らせる
③財物を盗取する
という構図が成り立つ必要があります。
上記の事例では、①Aさんが、Vさんに睡眠薬を飲ませて眠らせることでVさんの財布からお金を抜き取ろうと企て、②Vさんの飲んでいるビールに睡眠薬を入れてVさんがそのビールを飲んで深い眠りに陥る、③Vさんの財布から現金を抜き取る、という構図になっています。
このようなAさんの行為には、昏睡強盗罪が成立することになる可能性が高いです。
なお、すでに被害者が昏睡状態に陥っているのを見て、その時点で被害者から財物を盗むことを思いついて財物を盗取するのは、昏睡強盗罪ではなく、窃盗罪となります。
昏睡強盗罪の条文の「昏睡させて」という文言から、犯人自らが昏睡状態を作り出す必要があるためです。
窃盗罪の法定刑が「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」であるのに対して、昏睡強盗罪の法定刑は、強盗罪と同じく「5年以上の有期懲役」と非常に厳しいです。
~昏睡強盗罪で起訴された場合~
昏睡強盗罪で起訴されて刑事裁判になった場合、前科がなく初犯であったとしても、実刑判決を受ける可能性が生じます。
しかし、昏睡強盗罪は被害者のいる犯罪であるため、被害者に対して被害弁償をして示談を成立させることで執行猶予が付く可能性が高まります。
法律知識に基づいて安全かつ確実に示談を成立させることを目指す場合、示談交渉に優れた弁護士に依頼することがお勧めです。
被害者との間で弁護士が介入し、適切に示談交渉を行うことで、加害者・被害者が互いに納得できる示談を成立させることができます。
また、執行猶予を目指す場合、弁護士が、公判において、被告人にとって有利な事情を主張立証することも考えられます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、昏睡強盗罪を始めとする刑事事件を専門とする弁護士が多数所属しています。
昏睡強盗罪で示談したい、執行猶予を獲得したいという方は、まずは無料法律相談または初回接見サービスをご利用ください。
(宮城県大和警察署への初回接見費用は、フリーダイヤル0120-631-881までお問い合わせください。)