監護者わいせつ罪と監護者性交等罪

監護者わいせつ罪と監護者性交等罪

仙台市青葉区在住の40代男性Aさんは、内縁の妻であるBさんとその連れ子であるVさん(15歳)と共に暮らしています。
Aさんは、BさんとVさんに対して経済的支援を行う傍ら、Bさんが留守にしている間に、Vさんの陰部を触るなどのわいせつな行為を繰り返していました。
Aさんは暴力を振るったり脅迫をしたりしてこれらの行為を行っていたわけではなく、またVさんも、特に抵抗するそぶりを見せていたわけではありませんでした。
数か月我慢していたVさんですが、耐えかねて学校の教員に相談し、児童相談所からの通報で、Aさんは宮城県仙台中央警察署に、監護者わいせつ罪の容疑で逮捕されました。
Aさんの両親は、刑事事件・性犯罪事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)

~ 監護者わいせつ罪 監護者性交等罪 ~

今回の事例では、Aさんは内縁の妻Bさんの娘であるVさんにわいせつな行為をしたとして、監護者わいせつ罪で逮捕されています。

監護者わいせつ罪,監護者性交等罪は平成29年の刑法改正で新設された犯罪です。

刑法179条1項は、「18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は、第176条の例による」とし、監護者わいせつ罪を定めています。
なお、2項では「18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第177条の例による」とし、監護者性交等罪を定めています。
これらはそれぞれ、176条の強制わいせつ罪における「わいせつ」行為、177条の強制性交等罪(旧強姦罪)における「性交等(旧姦淫)」の行為に対応しています。

監護者わいせつ罪の法定刑は強制わいせつ罪と同じ「6月以上10年以下の懲役」、監護者性交等罪の法定刑は強制性交等罪と同じ「5年以上の有期懲役(最高20年)」に規定されています。

改正前の刑法では、強姦罪や強制わいせつ罪で、13歳以上の女子に対する行為を罰するためには、その行為の手段として被害者の反抗を著しく困難にする程度の暴行・脅迫を用いている必要がありました(もしくは被害者が抗拒不能に当たる必要がありました。)

そのため、監護者による18歳未満の者に対するわいせつ行為や性交等については,暴行・脅迫や抗拒不能に当たらない場合,法定刑の低い児童福祉法違反等で対処せざるを得ませんでした。

(児童福祉法違反の「児童に淫行をさせる行為」の罪の法定刑は「10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金,又は併科」です。)

しかし、家庭内での性的虐待では、親などがその影響力を利用した場合、子供は暴行や脅迫がなくとも逆らったり抵抗することができず、性犯罪の被害者になってしまうことが少なくありません。

そこで、親などの監護者が支配的な立場を利用して18歳未満の者と性的行為を行った場合は、たとえ暴行・脅迫がなかったとしても処罰できるように、新たに監護者わいせつ罪と監護者性交等罪が設けられたのです。

この改正によって、これまでは児童福祉法違反で処罰されていたような事件がより法定刑の重い監護者わいせつ罪、監護者性交等罪の規定で処罰可能になりました。

今回の事例では、AさんはVさんに対して暴行や脅迫をしておらず、またVさんも特に抵抗するそぶりを見せていたわけではありません。
しかし、監護者わいせつ罪や監護者性交等罪は、親などの監護者が支配的な立場を利用して18歳未満の者と性的行為を行った場合は、18歳未満の者が同意していた場合も成立します。

また、日頃からわいせつな行為や性交等をしていたからといって罪が成立しないといったことはありません。

なお,監護者とは,18歳未満の者を現に監督する者をいいます。
民法820条の親権規定と同様に監督・保護する者であり,法律上の監護権に基づかなくても事実上現に18歳未満の者を監督し保護する者であればこれに当たります。
監護者に当たるかどうかは,同居の有無や居住状況,指導や身の回りの世話などの生活状況,生活費の負担などの経済状況,被害者に関する諸手続の情況などを考慮して判断されます。

今回のAさんのように、養子縁組していない者であっても,同居し子供の寝食の世話をして指導・監督しているのであれば「現に監督する者」にあたりえます。

被害者のいる性犯罪では、示談を成立させることが重要ですが、監護者わいせつ罪や監護者性交等罪では被害者が家族あるいは身内であるため、示談を行うことが難しい場合が考えられます。
また、家族関係の維持が困難になることも考えられるため、弁護活動においては、加害者・被害者双方への配慮が求められます。
性犯罪の中でも、監護者わいせつ罪、監護者性交等罪の事件においては、他の性犯罪とは異なる対応が求められますし、最近の刑法改正によって新設された犯罪であるため、前例の数がそこまで多くありません。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件専門の法律事務所であり、このような前例の少ない刑事事件についても安心してご相談いただけます。

監護者わいせつ罪や監護者性交等罪でお困りの場合は、まずはフリーダイヤル0120-631-881までお問い合わせください。
(宮城県仙台中央警察署への初回接見費用:34,100円)

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