インターネットでタレントを侮辱し書類送検
インターネット掲示板でタレントを誹謗中傷し、侮辱罪の容疑で書類送検された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
【参考ニュース】
「気持ち悪い親子」タレント中傷で女2人を書類送検
Yahoo!ニュース(テレビ朝日提供)
この事件は、タレントの川崎希さんを誹謗中傷する言葉をインターネットの掲示板に書き込んだ女性2人が、侮辱罪の容疑で警察の捜査を受け、書類送検されたというものです。
2人は川崎さんを侮辱する書き込みをそれぞれ100件以上していたとのことです。
ここで、侮辱罪の条文を見てみましょう。
刑法231条
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
条文の中にある「事実を摘示しなくても」というのは、「○○と不倫していた」「過去に逮捕されたことがある」などの具体的な事実は書いていないという意味です。
具体的な事実を書いた場合は、それがウソでも本当でも名誉毀損罪の問題となります。
今回の事件では、「気持ち悪い親子」などの書き込みが問題となっており、具体的な事実が書かれていなかったということで、侮辱罪が問題となったのでしょう
そして、だれでも閲覧できるインターネットでのこういった書き込みは、「公然と人を侮辱した」といえます。
したがって、侮辱罪が成立することになると思われます。
罰則の「拘留」とは、1日以上30日未満、刑事施設に収容されるものです。
「科料」とは、1000円以上1万円未満の金銭徴収がされるものです。
~書類送検とは?~
比較的軽い犯罪では、犯人と疑われている被疑者が逮捕されず、自宅から警察署などに出向いて取調べなどの一通りの捜査がなされた後、捜査書類が検察官に送付されます。
これを書類送検と言います。
今回の事件はこの段階ということです。
今後、検察官は追加で取調べなどの捜査を行い、被疑者を刑事裁判にかけるか(起訴)、かけないか(不起訴)の判断をします。
起訴されれば、無罪判決とならない限り、拘留や科料となります。
一方、軽い事件などでは検察官が不起訴処分として、前科も付かずに刑事手続が終わる場合があります。
今回は大目に見てもらうということです。
~発信者情報開示請求とは~
誹謗中傷を書き込んだ2人は、匿名で書き込みをしていました。
しかし川崎さんが昨年、プロバイダ責任制限法4条に規定された、発信者情報開示請求という手続きを利用して、書き込んだ女性の情報を特定できたことから、今回の立件につながりました。
この発信者情報開示請求は、
①投稿があったサイトの運営者に、投稿者のIPアドレス等の開示を請求
②このIPアドレス等から、投稿者が利用しているプロバイダを特定し、そのプロバイダに投稿者の住所・氏名などの情報開示請求を行う
という流れで行われます。
※ IPアドレスとは、インターネットに接続されているパソコンやスマートフォンなどに接続割り振られる番号です。この番号がわかれば、そのパソコン等をインターネットにつなぐ際に利用している通信業者(プロバイダ)がわかるので、②の請求が出来る可能性が出てきます。
ただし、必ず投稿者を特定できるとは限らず、特定できたとしても、何度も裁判手続きをしなければならないなど、書き込みをされた人にとって金銭的・時間的・精神的負担がとても強いものとなってしまいます。
とはいえ、匿名での投稿であっても投稿者が特定される可能性があります。
特定されれば上述の刑罰を受けて前科が付く可能性がありますし、被害者から慰謝料請求や、投稿者情報開示に要した費用も請求されるでしょう。
~弁護士にご相談ください~
一般的に、不起訴処分などの軽い処分を得たり、判決を軽くするためには、被害者に謝罪・賠償して示談を締結することが重要です。
しかし今回のような事件を起こしてしまった場合、上述のように慰謝料の他、開示請求費用も請求されるでしょうから、示談交渉は難しいものとなるでしょう。
示談金はいくらにすればよいのか、何と言って示談交渉すればいいのか、あるいは取調べでは何と答えればよいのかなど、不安な点も多いでしょう。
お困りの方はぜひ一度、弁護士にご相談いただければと思います。
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