風呂をのぞき逮捕
風呂をのぞいて逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
【参考ニュース】
浴室の天井裏でのぞきか 職員(32)逮捕 こども家庭相談センター
Yahoo!ニュース(FNN.jpプライムオンライン提供)
この事件は、奈良県中央こども家庭相談センターの男性職員が、宿直勤務中に、女性用の浴室の天井裏に侵入した疑いで逮捕されたものです。
のぞき目的とみて捜査が進められているとのことです。
「侵入した疑い」と報道されていることから、逮捕容疑は建造物侵入罪であると思われます。
刑法第130条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
逮捕された男は、赤く色付けした部分に該当するとして逮捕されたのでしょう。
すなわち、奈良県中央こども家庭相談センターの建物は、センター長などの職員が「看守(管理)する建造物」です。
そして「侵入」とは、管理権者の意思に反する立ち入りをいます。
たとえ職員であっても、のぞき目的で建物に入るのは許されるものではありません。
したがって男の行為は、管理権者であるセンター長などの意思に反する立ち入りとして「侵入」に該当するといえるでしょう。
また、のぞき目的に「正当な理由がない」のも明らかです。
したがって、建造物侵入罪が成立する可能性があるわけです。
~のぞき自体にはどんな犯罪が成立する?~
建造物侵入罪は、のぞき行為自体を罰するものではありません。
警察は、のぞき目的とみて捜査を進めているとのことですから、建造物侵入罪だけでなく、のぞき行為自体も立件するつもりかもしれません。
のぞきは軽犯罪法違反となります。
条文を見てみましょう。
軽犯罪法1条
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
23号 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
罰則は拘留または科料となっています。
拘留とは、1日以上30日未満の身体拘束がされる刑罰です。
科料は1000円以上1万円未満の金銭が徴収される刑罰です。
どちらも前科がつきますが、比較的軽い罰則にとどまります。
仮にのぞいただけでなくカメラで盗撮していれば、各都道府県が制定する条例にも違反します。
例として宮城県の条例を見てみましょう。
迷惑行為防止条例
第3条の2第3項
何人も、正当な理由がないのに、住居、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所で当該状態にある人を撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置してはならない。
罰則は、盗撮の非常習者の場合、撮影までしていれば1年以下の懲役または100万円以下の罰金です(常習者だと2年以下の懲役または100万円以下の罰金)。
カメラを向けたり設置したところで終わっていれば6か月以下の懲役または50万円以下の罰金となります(常習者だと1年以下の懲役または100万円以下の罰金)。
奈良県にも同じような条例があります。
ただ、ニュース記事ではのぞき目的という記載はありましたが、盗撮したといった記載はなく、今回は条例違反にならないと思われます。
とはいえ、軽犯罪法違反にしか問われないとなると、前述のように罰則が軽くなってしまいます。
このような場合、ある程度重い刑罰が定められた建造物侵入罪で立件することがよくあります。
つまり、職場の職員であったり、デパートでの一般客によるのぞきなど、通常は立ち入ること自体は許されている人の立ち入りを、のぞき目的であれば許されない立ち入りだとして、建造物侵入罪に問うわけです。
今回のニュースの事件でも、軽犯罪法と建造物侵入罪のセットで処罰されることになる可能性が十分考えられるでしょう。
~弁護士にご相談ください~
あなたやご家族が盗撮で逮捕されたり、取調べを受けた場合、いつ釈放されるのか、どれくらいの刑罰を受けるのか、示談はどうやってするのかなど不安な点が多いと思いますので、ぜひ弁護士にご相談いただければと思います。
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