Archive for the ‘性犯罪’ Category

売春相手を探して逮捕

2020-03-21

売春相手を探して逮捕

路上で通行人に対し、売春の相手にならないか声をかけた女性が逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説いたします。

【事例】
女性Aさんは宮城県仙台市内において、売春相手を探すため、通行人の男性に声をかける行為を繰り返していました。
ある日Aさんは、違法な風俗店の取り締まりなどの目的で私服で警戒に当たっていた仙台中央警察署の警察官に対し、売春の相手になるよう声をかけてしまいました。
Aさんはその場で現行犯逮捕されてしまいました。
(フィクションです)

~売春防止法違反~

路上で売春の相手を探している、いわゆる「立ちんぼ」に声をかけられたことのある男性は多くいらっしゃると思います。

売春買春は売春防止法で禁止された行為ですが、罰則はありません。
しかし、路上で売春の相手となるよう声をかけるなどの行為には罰則が定められています。

売春防止法第5条
売春をする目的で、次の各号の一に該当する行為をした者は、六月以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
1号 公衆の目にふれるような方法で、人を売春の相手方となるように勧誘すること。
2号 売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
3号 公衆の目にふれるような方法で客待ちをし、又は広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること。

1号は勧誘行為を、2号は立ちふさがったり付きまとったりする行為を、3号は客待ちをすることなどを禁止しています。
3号によれば、通行人に声をかける前であっても、売春相手を探す目的で路上などに立っているだけで、罰則の対象となってしまうことになります。

売買春自体に処罰規定を置かず、勧誘行為などに処罰規定を置いているのは不思議な感じもしますが、繁華街の雰囲気を健全に保つといった意味合いもあるのかもしれません。

※ 売春しているのが20歳未満の場合には、その子は補導されて家庭裁判所の審判に付される可能性があります。
また、売春しているのが18歳未満の場合には、売春の相手方は青少年健全育成条例違反で処罰される可能性があります。宮城県では2年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。

~刑事事件の手続~

犯罪をしたとして逮捕されると、最初に最大3日間、警察署等で身体拘束され、取調べ等の捜査を受けます。
そして逃亡や証拠隠滅のおそれがあるなどとして検察官が請求し、裁判官が許可すれば、さらに10日間勾留(こうりゅう)と呼ばれる身体拘束がされる可能性があります。
この勾留期間はさらに10日間延長されることもあります。

弁護士としては、勾留を防いで早期に釈放されるよう、逃亡や証拠隠滅のおそれがないといえる理由をまとめた意見書を提出するなどの弁護活動を行います。
釈放されれば、自宅から警察署や検察庁に出向いて取調べを受けるという流れになるでしょう。

勾留された場合はその期間の最後に、勾留されなかった場合は捜査が終わり次第、検察官が被疑者を刑事裁判にかけるか(起訴)、かけないか(不起訴)の判断をします。

このうち起訴には①正式起訴②略式起訴があります。
①正式起訴されると刑事裁判が開かれ、事件によって懲役刑の実刑判決や執行猶予判決、罰金刑の判決を受けたり、まれに無罪判決がなされることになります。
一方、②略式起訴は比較的軽い事件でなされることが多いです。
法廷での刑事裁判は開かれず、簡単な手続で罰金を納付して終わるということになります。

さらに、より軽い事件などでは検察官が不起訴処分として、前科も付かずに刑事手続が終わる場合があります。
今回は大目に見てもらうということです。

~弁護士にご相談ください~

あなたやご家族が突然逮捕されたり、取調べを受けたといった場合、今後どうなってしまうのかわからずに不安だと思います。
ぜひ一度、弁護士にご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスを、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談のご利用をお待ちしております。

娘への性的暴行で逆転有罪判決

2020-03-18

娘への性的暴行で逆転有罪判決

娘への準強制性交等罪に問われた父親の控訴審判決で、一審の無罪判決から一転、懲役10年の有罪判決が出されました。

娘への性的暴行罪 父親に有罪の逆転判決 名古屋高裁
NHK NEWS WEB
娘への性的虐待に逆転有罪、地裁と高裁で分かれた判断3つのポイント
Yahoo!ニュース(ハフポスト提供/執筆・中村かさねさん)

この判決について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。

~準強制性交等罪とは~

今回の裁判で父親が問われていたのは、準強制性交等罪という犯罪です。
そもそもどのような犯罪なのでしょうか。

前提として刑法には、いわゆるレイプをした場合に成立する強制性交等罪という犯罪が定められています。

刑法177条
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

この犯罪は、被害者を暴行または脅迫して性交等をした場合に成立します。

※ 強制性交「等」となっているのは、性器ではなく口や肛門に性器を挿入した場合も成立する犯罪だからです。また、被害者が13歳未満の場合には、暴行・脅迫がなくても成立します。

この犯罪とは別に、刑法には準強制性交等罪という犯罪も定められています。

第178条2項
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。

この犯罪は、暴行・脅迫をしなくても、被害者が心神喪失(気を失っている等)や抗拒不能(抵抗ができない等)の状態にあることを利用して、あるいはこれらの状態にさせて性交等をした場合に成立します。
飲み物に睡眠薬を入れて眠らせ、レイプするような方法が典型例です。

※ 条文中の「前条の例による」というのは、177条の強制性交等罪と同じく、5年以上の有期懲役(余罪がなければ上限は20年)ということです。

今回の事件では、父親が暴行や脅迫をしたというよりも、父親の立場を利用して性交をしたことから、準強制性交等罪が成立するのかが問題となったのです。

~判決が分かれた理由は?~

今回の裁判では、被害者が抗拒不能な状態にあったのかが争いになりました。
1審判決は抗拒不能だったとは言い切れず、準強制性交等罪の成立条件を満たさないので無罪としました。
2審判決は、抗拒不能だったとして有罪としました。
現状、どのような状態であれば抗拒不能だったといえるのかという基準が明確に定まっていないことから、裁判所の判断が分かれてしまったのです。

では、それぞれの裁判所はどのような理由によりこのような判断をしたのでしょうか。

無罪とした1審の裁判所は、抗拒不能と言うためには、「人格を完全に支配され服従せざるをえない状態」になっている必要があると判断しているようです。
これはつまり、子供は親に対し精神的・経済的に依存して立場の強弱があることを背景として、性交を拒むことが不可能なほど親が子供の言いなりになっていたかどうか、というような基準を立てたと言えるでしょう。
該当するケースが減りやすい厳しい基準と言えます。

そして今回の事件では、過去に実際に抵抗して拒んだことがあったこと、弟らに相談して性的暴行を受けないような対策をしていたこと、アルバイト収入があり家を出て1人で暮らすことも検討して経済的な依存度も強くないことなどから、「人格を完全に支配され服従せざるをえない状態」とまでは言えないとして、無罪にしたのです。

一方、有罪とした2審の裁判所は、1審のような厳しい基準で考えることは間違っている旨を述べ、「抵抗が著しく困難であったか」という1審よりは緩やかな基準を立てています。
そして、被害者が中学2年生の頃から意に反した性行為をくり返し受けてきたこと、抵抗した場合には暴力を受けたことがあったこと、弟と同じ部屋で寝ていた時は性行為はされなかったが弟が別の部屋で寝るようになるとかえって性行為の頻度が増えて抵抗の意思・意欲が奪われたこと、父親が逮捕されれば弟が生活に困ると考えたことなどから、抵抗できない状態だったと優に認められるとして有罪としました。

また今回の事件では、被害者が両親の反対を押し切って専門学校に行くことにしたり、その入学金や学費のうち、被害者が負担する分を減らして父親が負担する分を増やさせるなど、日常生活では父親に対しても自由に行動できる部分がありました。
この点も1審は抗拒不能ではないといえる事情の1つとしましたが、2審は「日常生活で自由に行動できることと性交時の抵抗が困難になることとは両立し得るものであり、矛盾するものではない」と判断しました。

一般に性犯罪においては、外部の人間が一見すると抵抗できるのではないかと思えるような場合でも、実際には抵抗が極めて難しいケースがあります。
今回の2審判決は、このことに配慮した判決と言えます。

~今後の展開~

父親は上告したので、まだ判決は確定していません。
最高裁判所がどのような判断をするかは注目です。

1審の無罪判決は、性暴力根絶を訴えるフラワーデモが広がるきっかけにもなりました。
(準)強制性交等罪の成立条件から暴行・脅迫・心神喪失・抗拒不能という条件を消し、相手の同意がない性交であれば犯罪が成立するようにすべきという意見もあります。
海外ではすでにそうなっている国もあり、今後日本でも刑法が変わる可能性があります。

性犯罪の被害者はもちろん、加害者も減らしていくためにどのような制度がいいのか、真剣に考えるべき時と言えるでしょう。

風俗の禁止行為で成立する犯罪

2020-03-17

風俗の禁止行為で成立する犯罪

風俗で禁止されている行為をした場合にどんな犯罪に問われるおそれがあるのか、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。

~強制性交等罪~

風俗店はわいせつ行為をすることが許されている店なので、ルールの範囲内でわいせつ行為をしただけなら犯罪が成立することはありません。

しかし、ルール違反をすると犯罪が成立してしまうことがあります。
典型的なパターンとしては、禁止されている本番行為を無理やりしてしまい、強制性交等罪に問われることがあります。

刑法第177条
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

ちなみに、わざとではなく不意に挿入する形になった場合には強制性交等罪は成立しません。
しかし、わざとではないことを信じてもらうのは難しいこともあります。

~強制わいせつ罪~

本番行為までしなくても、たとえば時間を超えて無理やり触り続けたり、触ることを禁止されている部位を触ったりすると、強制わいせつ罪に問われる可能性もあります。

第176条
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

ルールの範囲内であれば成立しませんが、ルールを破ってしまうと強制わいせつ罪が成立する可能性があるわけです。

~暴行罪・傷害罪~

風俗嬢を殴ったり蹴ったりした場合、ケガをすれば傷害罪、ケガまではしなかった場合でも暴行罪が成立する可能性があります。

第204条
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第208条
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

~強制性交等致傷罪・強制わいせつ致傷罪~

無理やり本番行為をしたり、ルール違反のわいせつ行為をした上、ケガをさせてしまった場合には、強制性交等致傷罪強制わいせつ致傷罪が成立する可能性があります。

強制性交等致死傷罪は無期または6年以上の懲役、強制わいせつ致死傷罪は無期または3年以上の懲役と定められています。

これらは死亡させた場合も含んだ規定ですが、とても重い刑罰が定められています。
抵抗する相手に無理やりこのような行為に及んだ場合には、相手がケガをしてしまう可能性も十分考えられ、重い刑罰を受けることにつながります。

~盗撮で迷惑行為防止条例違反~

部屋に隠しカメラを設置し、風俗嬢とのプレイを盗撮したような場合には、迷惑行為防止条例違反になる可能性があります。

宮城県・迷惑行為防止条例
第3条の2第3項
何人も、正当な理由がないのに、住居、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所で当該状態にある人を撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置してはならない。

罰則は、常習者が6か月以下の懲役または50万円以下の罰金、常習者の場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金となっています。

~ストーカー規制法違反・強要罪~

風俗嬢に対しストーカーをして、ストーカー規制法違反に問われるケースもあります。

ストーカー行為等の規制等に関する法律
第18条
ストーカー行為をした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

他にも、脅し文句を言ってプライベートで会うことや画像の送信を要求した場合などには、強要罪強要未遂罪などが成立する可能性もあります。

刑法第223条1項
生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。

プライベートで女の子と関わろうとした場合、その方法によっては犯罪になってしまう可能性があるわけです。

~弁護士にご相談を~

このようなトラブルを起こしてしまった場合、処分や判決を軽くするためには、お店や女性側に謝罪・賠償して示談を締結するのが重要となってきます。
しかし、風俗店相手にどうやって示談交渉すればよいか不安だと思います。

また、被害届が出されれば警察に逮捕されたり、取調べを受ける可能性もあります。
そうなるといつ釈放されるのか、取調べでは何と答えたらよいのかなど、わからない点が多いと思います。

あなたやご家族が何らかの犯罪をしてお困りの場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、交通事件も含めた刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスを、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談のご利用をお待ちしております。

盗撮動画をネットに公開して逮捕

2020-03-13

盗撮動画をネットに公開して逮捕

出会い系サイトで知り合った女性との性行為を盗撮し、インターネットで販売して逮捕された事件がありました。

「あなた似の動画がネットに…」知人から知らされ被害発覚 性行為盗撮し公開の男逮捕
神戸新聞

この事件で神戸地方裁判所は3月9日、懲役3年、執行猶予5年、罰金100万円の判決を出しました。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~わいせつ電磁的記録陳列罪~

この事件の被告は、わいせつ電磁的記録陳列罪リベンジポルノ防止法違反に問われました。
まずは、わいせつ電磁的記録頒布罪の条文を見てみます

刑法175条1項
わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。

被告の行為は、2文目に該当したと判断されました。
つまり、盗撮動画は「わいせつな電磁的記録」に、インターネットへの公開は「電気通信の送信により…頒布した」に該当したわけです。

罰則は①2年以下の懲役、②250万円以下の罰金、③科料、④懲役と罰金の両方、のいずれかになります。
なお、③科料は罰金とほぼ同じ刑罰ですが、金額が1000円以上1万円未満のものを言います。
罰金は最低でも1万円以上です。

今回の判決は懲役3年、執行猶予5年、罰金100万円ということでした。
懲役には執行猶予が付いたものの、懲役罰金の両方が言い渡されているので、④のパターンだったわけです。
被害を考えると罰金では軽すぎるけど、こういった営利目的もある犯罪に対しては、罰金にもできた方が抑止効果があるということで、両方を科すことができるようにされています。

~リベンジポルノ防止法違反~

リベンジポルノ防止法は、主に交際していた相手の裸の画像などをインターネットに公開することを防ぐ目的で制定された法律です。
条文を見てみましょう。

私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(リベンジポルノ防止法)
第3条1項
第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

いかにも法律らしく、難しい言葉が使われていますが、「私事性的画像記録」とは簡単に言うと、第三者に公開することが予定されていない性的な画像や動画をいいます。
相手の裸や性行為などの画像・動画が該当します。
撮影することについて相手の同意がない場合はもちろん、同意があっても第三者に公開することが予定されていないのであれば該当することになります。

~児童ポルノ禁止法違反~

仮に相手が18歳未満であり、18歳未満であることを知りながら撮影や公開をすると、児童ポルノ禁止法にも違反してまいます。

第7条2項
児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線(筆者注・インターネット)を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態(筆者注・簡単に言うとひわいな格好)を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録(筆者注・動画・画像データ)その他の記録を提供した者も、同様とする。
第5項
前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

~迷惑行為防止条例違反~

また、相手の許可を得ないで盗撮した場合には、各都道府県が制定する迷惑行為防止条例に違反する可能性があります。
宮城県の条例を見てみましょう。

第3条の2第3項
何人も、正当な理由がないのに、住居、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所で当該状態にある人を撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置してはならない。

罰則は、
・撮影に成功した場合
 →盗撮常習者は1年以下の懲役または100万円以下の罰金
 →盗撮常習者は2年以下の懲役または100万円以下の罰金
・盗撮に失敗した場合(未遂で終わった場合)
 →盗撮常習者は6か月以下の懲役または50万円以下の罰金
 →盗撮常習者は1年以下の懲役または100万円以下の罰金
となっています。

~弁護士にご相談を~

このように、盗撮やその画像・動画の公開・販売をすると、様々な犯罪が成立する可能性があります。

もしこのようなことをやってしまった場合には、すみやかに被害者に謝罪・賠償して示談を締結することが、被害者の損害回復と、加害者の早期釈放軽い処分・判決を目指す上で重要です。

あなたやご家族が逮捕されたり、警察の取調べを受けてお困りの方は、お早めに弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスを、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談のご利用をお待ちしております。

自衛官が風呂を盗撮させる

2020-03-11

自衛官が風呂を盗撮させる

交際相手の女性自衛官に女性風呂を盗撮させたとして、男性自衛官が有罪判決を受け、懲戒免職になった事件がありました。

交際相手に女性風呂を盗撮させた自衛官を懲戒免職処分 航空自衛隊岐阜
Yahoo!ニュース(CBCテレビ提供)

このような事件を起こした場合の刑事責任について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。

~迷惑行為防止条例違反に~

今回のような盗撮事件を起こした場合、盗撮した女性とさせた男性は、ともに各都道府県が定める迷惑行為防止条例違反になる可能性があります。

宮城県の条例を見てみましょう。

宮城県・迷惑行為防止条例
第3条の2第3項
何人も、正当な理由がないのに、住居、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所で当該状態にある人を撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置してはならない。

罰則は、盗撮の常習者の場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
盗撮の前科があるなど常習者として裁かれる場合は、2年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。

なお都道府県によっては、上記のような浴場での盗撮の処罰規定を置いていないところもあります。
その場合は軽犯罪法や建造物侵入罪に問われる可能性があるでしょう。

~本人は盗撮していないが~

今回の事件の男性自衛官は盗撮自体はしておらず、他人にさせています。
このように自分自身で犯行をしていない人を処罰する方法としては、①共同正犯として罰する、②教唆犯として罰する、③幇助犯として罰する、の3パターンがあります。

①共同正犯(刑法60条)は、他の人と共謀(相談)して犯罪を行ったが、犯行自体は他のメンバーが行ったような場合に、犯行自体を行っていない人も同罪として一緒に処罰するというものです。

②教唆犯(刑法61条)は、他人をそそのかして犯罪をする決意をさせ、実際に犯行させた場合に、そそのかした人を処罰するというものです。

③幇助犯(刑法62条)は、すでに犯罪を決意している人の犯行を手助けした人を処罰するものです。

①②③の区別が難しい事件もありますが、①は自分の犯罪として積極的に関与している場合、②は他人に犯罪をすすめたものの、あくまでも他人が行う犯罪に関与したにとどまる場合、③は犯罪をすすめてすらおらず、他人が行う犯罪に関与したにとどまる場合、という言い方もできます。

一般的には、①共同正犯が一番重く、③幇助犯が一番軽く処罰されます。
特に①共同正犯の場合、実際に受ける刑罰は、実行者よりも主犯格・黒幕である人が重くなるということもありえます。

今回の事件で男性の自衛隊員がどれで処罰されたのか、報道からは明確にはわかりません。
たとえば、自分が見る目的があったり、盗撮データを販売して儲けようといった意図があった場合には、盗撮させることによって自分が利益を受けるわけですから、女性自衛官という他人の犯罪に関与したにとどまらず、自分の犯罪として関与したといえるので、①共同正犯になる可能性が高いでしょう。

~お困りの際は弁護士に相談を~

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
刑事事件・少年事件の経験豊富な弁護士が、早期釈放軽い処分・判決、そしてご本人の更生を目指して弁護活動をしてまいります。

逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスを、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談のご利用をお待ちしております。

入院患者虐待で看護士らを逮捕

2020-03-09

入院患者虐待で看護士らを逮捕

入院患者を虐待して看護士らが逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。

【参考ニュース】
入院患者にトイレで放水など虐待疑い 看護師の男ら6人を逮捕 兵庫県警
(毎日新聞)

この事件は、精神疾患で入院中の患者に対し、看護師ら6名が虐待を繰り返したとして、準強制わいせつ罪監禁罪などの容疑で逮捕されたというものです。
逮捕された6名のうちの1名が、全く別の強制わいせつ事件を起こして逮捕され、警察がスマホを調べたところ、虐待の動画が見つかって発覚したということです。

盗撮を繰り返している人が逮捕されたといった事件では、スマホを調べて同じような盗撮の余罪が発覚するというのはよくあるパターンです。
しかし今回のように全く別の重大な余罪の発覚し、多くの人が逮捕に至ったというのは、やや特殊ではあります。

~準強制わいせつ罪とは~

今回、男性患者同士を無理やりキスさせたり、男性患者を裸にしてホースで放水したりといった行為が、準強制わいせつ罪に問われているようです。

ここで強制わいせつ罪準強制わいせつ罪という2つの犯罪の条文を見てみましょう。

刑法176条(強制わいせつ)
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
第178条1項(準強制わいせつ)
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。

176条が強制わいせつ罪です。
暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした場合に成立します。
無理やり体を触ったような場合ですね。

一方、178条1項の準強制わいせつ罪は、すでに気を失っている状態や抵抗できない状態の人の体を勝手に触ったり、このような状態にさせてから体を勝手に触ったりした場合に成立する犯罪です。
薬や酒で眠らせてからわいせつな行為をしたような場合に成立します。
則は強制わいせつ罪と同じく6か月以上10年以下の懲役となります。

今回の事件は、精神疾患の影響などで抵抗できない(心神喪失・抗拒不能の)状態にあった患者に対するものだったようです。
また、患者同士をキスさせたり、裸にして放水したという犯行だったとのことで、加害者の性欲を満足させる目的でなされる通常の性犯罪とは異なります。
しかし、性犯罪が成立する条件として、性欲を満足させるような目的があったことは不要とされています。
被害者の性的羞恥心を害するような、あるいは性に関する倫理に反するような行為であることに変わりはないので、準強制わいせつ罪に問われているということになるでしょう。

~監禁罪~

続いて監禁罪の条文も見てみましょう。

第220条
不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。

「逮捕」とは人を直接的に拘束し、「監禁」とは人を間接的に(一定区域内に)拘束して、行動の自由を奪うことを言います。
前者を逮捕罪、後者を監禁罪と言います。

本事件では、当時60代の男性患者を床に敷いた布団に寝かせ、転落防止用の柵がついたベッドを逆さにしてかぶせ、約20分監禁したとのことです。
柵を直接、体にかぶせているのであれば、人を直接的に拘束したとして逮捕罪となる可能性もあると思います。

ただ、刑罰はどちらにしろ同じ3か月以上7年以下の懲役となります。

~弁護士にご相談ください~

看護師らが患者を虐待するというのはショッキングな話ですが、特殊な環境の中で誤った方向に向かってしまったということなのでしょう。

もし、あなたやご家族が、同じような事件を起こして逮捕されたり、警察の取調べを受けた場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。
謝罪・賠償、そして示談締結により被害者の権利回復を図りつつ、加害者の処分・判決が軽くなるようサポートしてまいります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
すでに逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスを、逮捕されていない事件では無料法律相談のご利用をお待ちしております。

風呂をのぞき逮捕

2020-03-03

風呂をのぞき逮捕

風呂をのぞいて逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。

【参考ニュース】
浴室の天井裏でのぞきか 職員(32)逮捕 こども家庭相談センター
Yahoo!ニュース(FNN.jpプライムオンライン提供)

この事件は、奈良県中央こども家庭相談センターの男性職員が、宿直勤務中に、女性用の浴室の天井裏に侵入した疑いで逮捕されたものです。
のぞき目的とみて捜査が進められているとのことです。

「侵入した疑い」と報道されていることから、逮捕容疑は建造物侵入罪であると思われます。

刑法第130条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

逮捕された男は、赤く色付けした部分に該当するとして逮捕されたのでしょう。

すなわち、奈良県中央こども家庭相談センターの建物は、センター長などの職員が「看守(管理)する建造物」です。

そして「侵入」とは、管理権者の意思に反する立ち入りをいます。
たとえ職員であっても、のぞき目的で建物に入るのは許されるものではありません。
したがって男の行為は、管理権者であるセンター長などの意思に反する立ち入りとして「侵入」に該当するといえるでしょう。

また、のぞき目的に「正当な理由がない」のも明らかです。

したがって、建造物侵入罪が成立する可能性があるわけです。

~のぞき自体にはどんな犯罪が成立する?~

建造物侵入罪は、のぞき行為自体を罰するものではありません。
警察は、のぞき目的とみて捜査を進めているとのことですから、建造物侵入罪だけでなく、のぞき行為自体も立件するつもりかもしれません。

のぞきは軽犯罪法違反となります。
条文を見てみましょう。

軽犯罪法1条
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
23号 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者

罰則は拘留または科料となっています。
拘留とは、1日以上30日未満の身体拘束がされる刑罰です。
科料は1000円以上1万円未満の金銭が徴収される刑罰です。

どちらも前科がつきますが、比較的軽い罰則にとどまります。

仮にのぞいただけでなくカメラで盗撮していれば、各都道府県が制定する条例にも違反します。
例として宮城県の条例を見てみましょう。

迷惑行為防止条例
第3条の2第3項
何人も、正当な理由がないのに、住居、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所で当該状態にある人を撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置してはならない。

罰則は、盗撮の常習者の場合、撮影までしていれば1年以下の懲役または100万円以下の罰金です(常習者だと2年以下の懲役または100万円以下の罰金)。
カメラを向けたり設置したところで終わっていれば6か月以下の懲役または50万円以下の罰金となります(常習者だと1年以下の懲役または100万円以下の罰金)。

奈良県にも同じような条例があります。
ただ、ニュース記事ではのぞき目的という記載はありましたが、盗撮したといった記載はなく、今回は条例違反にならないと思われます。
とはいえ、軽犯罪法違反にしか問われないとなると、前述のように罰則が軽くなってしまいます。

このような場合、ある程度重い刑罰が定められた建造物侵入罪で立件することがよくあります。
つまり、職場の職員であったり、デパートでの一般客によるのぞきなど、通常は立ち入ること自体は許されている人の立ち入りを、のぞき目的であれば許されない立ち入りだとして、建造物侵入罪に問うわけです。

今回のニュースの事件でも、軽犯罪法と建造物侵入罪のセットで処罰されることになる可能性が十分考えられるでしょう。

~弁護士にご相談ください~

あなたやご家族が盗撮で逮捕されたり、取調べを受けた場合、いつ釈放されるのか、どれくらいの刑罰を受けるのか、示談はどうやってするのかなど不安な点が多いと思いますので、ぜひ弁護士にご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、交通事件を含む刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
すでに逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスを、逮捕されていない事件では無料法律相談のご利用をお待ちしております。

児童ポルノを送らせて取調べ

2020-03-01

児童ポルノを送らせて取調べ

未成年女性に児童ポルノ画像を送らせて警察の取調べを受ける場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。

【事例】
宮城県内に住むAさん。
SNSで知り合った栗原市内に住む17歳の女子高生とメッセージをやり取りしていました。
さらに、女子高生に裸の自撮り画像まで送ってもらいました。
その女子高生が深夜徘徊で警察に補導されたことをきっかけとして、Aさんに裸の画像を送っていたことが発覚。
宮城県築館警察署からAさんに対し、取調べのために警察署に来るよう連絡がありました。
今後どうなってしまうのか、Aさんは強い不安に襲われています。
(事実をもとにしたフィクションです)

~児童ポルノ製造に問われる~

Aさんのように、18歳未満の者からわいせつな自撮り画像を受け取ると、児童ポルノ禁止法児童ポルノ製造の罪に問われる可能性があります。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律
第7条4項
前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

条文には、「第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態」とあります。
これは簡単に言うと、わいせつな格好ということになります。
これを写真や画像データとして描写したものを製造すると、児童ポルノ製造の罪が成立するわけです。

そして、「製造」には、自ら撮影する場合の他、自撮り画像を送らせることも含まれます。
言葉からはイメージしにくいですが、裸の自撮り画像を撮影・送信させることにより、児童ポルノ画像をこの世に作り出させたということで、「製造した」にあたると考えられているわけです。

罰則は、7条2項と「同様とする」、すなわち、3年以下の懲役または300万円以下の罰金です。
インターネットに落ちている児童ポルノ画像を個人的に保存しておく児童ポルノ所持(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)よりも重くなっています。

~今後の刑事手続きは?~

今回のように、犯罪をしたと疑われている被疑者を逮捕せずに捜査を進める事件を在宅事件と言います。

在宅事件では、警察からの呼び出しに応じて警察署に出向き、取調べなどの捜査を受けます。
一通りの捜査が終わると、捜査書類が警察から検察に送られます(書類送検)。
書類送検を受けた検察官は、さらに取調べなどの捜査をした上で、その犯罪をしたと疑われている被疑者を、刑事裁判にかけるか(起訴)、かけないか(不起訴)の判断をします。

このうち起訴には①正式起訴②略式起訴があります。
①正式起訴されると刑事裁判が開かれ、事件によって懲役刑の実刑判決執行猶予判決罰金刑の判決を受けたり、まれに無罪判決がなされることになります。
一方、②略式起訴は比較的軽い事件でなされることが多いです。
法廷での刑事裁判は開かれず、簡単な手続で罰金を納付して終わるということになります。

さらに、より軽い事件などでは検察官が不起訴処分として、前科も付かずに刑事手続が終わる場合があります。
今回は大目に見てもらうということです。

~軽い処分・判決に向けて~

出来るだけ軽い処分や判決を得るためには、相手の女子高生やその親御さんに謝罪・賠償して示談するといったことが重要です。
しかし、住所や電話番号などの連絡先を被疑者に知られるのは相手にとってハードルが高く、示談交渉が全くできないことも多いです。

そこで、弁護士が被疑者に代わって示談交渉するという手法を取ることが考えられます。
弁護士は、女子高生側の連絡先を被疑者に伝えないという約束で示談交渉するので、女子高生側も示談を受けてくれることも多いです。

このような示談に関することの他、取調べへの対応方法など不安が強いと思いますので、ぜひ一度ご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
無料法律相談を行っておりますので、ぜひご利用ください。
なお、すでに逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスをご利用ください。

電車内の強制わいせつで逮捕

2020-02-29

電車内の強制わいせつで逮捕

電車内での強制わいせつ行為で逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。

【参考ニュース】
「騒いだら殺す」列車内で高校生に強制わいせつ、容疑で埼玉県の25歳男を再逮捕 同時期に被害数件、余罪調べる
Yahoo!ニュース(佐賀新聞提供)

この事件は、佐賀県を走行中の電車内で、「騒いだら殺す」などと表示させたスマホを女子高生に示し、身体を触ったとして、強制わいせつの容疑で逮捕されたものです。
40分間に渡って触り続けたとの報道もあります。

痴漢をすると、一般的には、①各都道府県が制定する迷惑行為防止条例違反に問われる場合と、②刑法の強制わいせつ罪に問われる場合があります。

宮城県の条例と刑法の条文を見てみましょう。

宮城県・迷惑行為防止条例
第3条の2第1項
何人も、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような次に掲げる行為をしてはならない。
第1号
衣服その他の身に着ける物(以下「衣服等」という。)の上から又は直接人の身体に触れること。

刑法第176条
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

条例違反の罰則は、痴漢の常習者が6か月以下の懲役または50万円以下の罰金、常習者は1年以下の懲役または100万円以下の罰金です(17条1項1号・2項参照)。
一方、強制わいせつ罪は6か月以上10年以下の懲役なので、罰金で終わる可能性はありません。

このように強制わいせつ罪の方が刑罰が重いので、具体的な犯行方法を考慮し、悪質な犯行の場合に強制わいせつ罪、痴漢の中では悪質とまでは言えない場合には条例違反となる傾向にあります。
具体的な線引きは難しいですが、例えば、①スカートや下着の中に手を入れて触ったというような場合には強制わいせつ罪に、②服の上から触ったり、もともと出していた腕や足に触ったような場合には条例違反になる可能性が高まるでしょう。

今回のニュースの事件では、触っていた部位の他、「殺す」という強い言葉を用いたり、触っていた時間なども考慮して、強制わいせつの容疑で逮捕した可能性があります。

~脅迫罪と条例違反に問われる可能性も~

今回の事件で逮捕された被疑者は、同じような手口の余罪があり、すでに強制わいせつ罪の容疑で逮捕されていました。
しかし、この余罪については結局、脅迫罪条例違反で裁判にかけられたとのことです。

脅迫罪の条文も見てみましょう。

刑法第222条1項
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

脅迫罪も強制わいせつ罪も、脅迫を手段として用いた場合に成立しうる犯罪である点は同じです。
しかし、脅迫罪における脅迫は、人を畏怖させる(怖がらせる)程度の害悪を告げることを言います。
一方、強制わいせつ罪における脅迫は、人の反抗を著しく困難にさせる程度の害悪を告げることを言います。

つまり、強制わいせつ罪の方がより強い言葉で脅さなければ成立しないことになるのです。

今回の余罪の事件で、逮捕された被疑者が何と言って脅したのかは記事からはわかりません。
おそらく、強制わいせつ罪で逮捕したものの、脅迫の内容が被害者の反抗を著しく困難にする程度のものとまでは言いきれず、他に強制わいせつ罪が成立するような暴行があるとも言い切れず、有罪にできる保証がなかったため、強制わいせつ罪での起訴はしなかったのかもしれません。

とはいえ、佐賀県迷惑行為防止条例に定められた刑罰は宮城県の条例と同じで、これまで前科がなく非常習者とされれば最高でも6か月の懲役、常習者でも最高で1年の懲役となります。
そこで、相手が怖がる程度の脅迫はあったのだから、条例違反だけでなく、最高で2年の懲役となる脅迫罪も加えて起訴したものと思われます。

~弁護士にご連絡を~

痴漢をしたとして逮捕されたり、取調べを受けた場合、ご本人やご家族は、いつ釈放されるのか、どれくらいの刑罰を受けるのか、取調べにはどう対応していけばいいのか、謝罪・賠償や示談はどうやって行えばよいのかなど、わからないことが多いと思います。

ぜひ一度弁護士にご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
すでに逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスを、逮捕されていない事件では無料法律相談をご利用をお待ちしております。

昔の犯罪で逮捕【時効】

2020-02-26

昔の犯罪で逮捕【時効】

過去の犯罪で逮捕された場合と時効について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。

【参考ニュース】
15年前の強制わいせつ事件で男逮捕
Yahoo!ニュース(読売テレビ提供)

この事件は、昨年発生した別件の公然わいせつ罪で逮捕された男のDNAが、15年前に起きた強制わいせつ致傷事件で現場に残された体液のDNAが一致したことから、15年の時を経て逮捕に至ったという事件です。

現場に残された体液から犯人のDNAが判明したとしても、犯人に前科がなかったりすると、警察は犯人のDNAの情報を持っていないことになり、照合できない場合があります。
今回は、犯人が事件から15年後に別の事件で捕まり、DNAが一致する人物が見つかったわけです。

新たな犯罪をしたからこそ過去の犯罪が発覚したというのは、新たな犯罪の被害者の方にとっては気の毒ですが、こういったパターンで犯人が判明するパターンもあるわけです。

もちろん、DNA鑑定の精度が低かった頃に、間違ってDNAが一致すると判断されて服役させられた冤罪事件もありますので(足利事件)、15年前のDNAの鑑定結果が使われたであろう今回の事件がどういう判決になるかわからないとも言えます。

~時効制度その1~

15年も前の犯罪となると、時効になってしまっていないかという疑問もあるかもしれませんので、時効制度について確認しておきます。

時効は、犯罪から一定期間が経過すると、もはや裁判にかけて刑罰を受けさせることができなくなる制度です。
犯罪から長い年月が経つと証拠が少なくなって冤罪の可能性が高まったり、被害者の処罰感情が薄れるといった理由から定められている制度ですが、この理由が合理的なのかは微妙なところです。

そこで、人を死亡させた罪であって、刑罰として死刑が定められている犯罪(殺人罪や強盗殺人罪など)については、時効制度の対象外とされています。

他の罪については、定められた刑罰(法定刑)の重さによって時効が成立するまでの期間が異なります。
刑事訴訟法の条文を引用してみます。

刑事訴訟法第250条1項
時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く。)については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
1号 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については三十年
2号 長期二十年の懲役又は禁錮に当たる罪については二十年
3号 前二号に掲げる罪以外の罪については十年

①人を死亡させた罪で、②禁錮以上の刑罰が定められており、③死刑は定められていない罪については、この条文で時効期間が決められています。

なお、禁錮というのは、刑務作業をするかどうかは自由とされている点以外は懲役と同じ刑罰です。
「禁錮以上」の中には懲役刑も含まれます。

たとえば傷害致死罪(刑法205条)は、①人を死亡させた罪です。
また、傷害致死罪の法定刑は3年以上の有期懲役ですので、②禁錮以上の刑罰が定められていますし③死刑は定められていません

そして有期懲役の上限(長期)は20年とされているので(刑法12条1項参照)、上記の刑事訴訟法250条1項2号の「長期二十年の懲役…に当たる罪」になりますので、時効期間は20年となります。

国外逃亡中は時効が進まないなどの例外はありますが(刑事訴訟法255条参照)、傷害致死事件を起こしてから20年たつと、処罰を受ける可能性がなくなるわけです。

~時効制度その2~

一方、①人を死亡させた罪であることと、②禁錮以上の刑罰が定められていることのうち、1つでも満たさない犯罪については、以下の条文が適用されます。
たとえば、今回のニュースで問題となった強制わいせつ致傷罪(刑法181条1項)は、①人を死亡させた罪に該当しませんので、こちらになります。

刑事訴訟法第250条2項
時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
1号 死刑に当たる罪については二十五年
2号 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については十五年
3号 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については十年
4号 長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年
5号 長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年
6号 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
7号 拘留又は科料に当たる罪については一年

細かく区切られておりわかりにくいですが、強制わいせつ致傷罪無期懲役が定められているので、2号に該当し、時効期間は15年ということになります。

今回のニュース記事では、事件が2005年とのみ書かれていたので、何月に起きた事件なのかはわかりませんが、逮捕された男が国外にいた期間があるなどの例外がない限り、今年時効を迎える事件がギリギリで逮捕に至ったということになります。

~弁護士に相談を~

このように、犯罪をしてから長期間経過した事件でも、逮捕のおそれはあります。
もし心当たりのある方がいらっしゃいましたら、弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されていない事件では無料法律相談を、逮捕されて身柄拘束中の事件では初回接見サービスのご利用をお待ちしております。

« Older Entries Newer Entries »

keyboard_arrow_up

0120631881 問い合わせバナー LINE予約はこちら