ポルシェ暴走で懲役8年判決【危険運転致死罪】
スピードオーバーで死亡事故を起こし、危険運転致死罪で懲役8年の実刑判決が下った事件の弁護側の主張について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
【参考事例】
ポルシェで医師が暴走・追突…トラック運転手死亡 「危険運転罪」認め懲役8年判決
この事故は、2018年に兵庫県内の阪神高速においてポルシェがトラックに追突して横転させ、トラックの運転手を死亡させたというものです。
検察側は、60キロ制限の道路であおり運転をして216キロで走行して追突しており、危険運転致死罪が成立するとの主張をしていました。
一方、弁護側は、カーナビを操作してわき見運転をしてしまったのであり、過失運転致死罪にとどまるとの主張をしていたようです。
神戸地方裁判所は、検察側の主張の通り危険運転致死罪が成立するとして、懲役8年の実刑判決を下しました。
~弁護側の主張の意味は?~
弁護側の主張を見ると、
「カーナビを操作してわき見運転をしていたというのは、どっちにしろ悪いじゃないか」
と感じるかもしれません。
いったい、どういう趣旨の主張なのか、条文をもとにして考えてみましょう。
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律
第2条(危険運転致死傷)
次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
一 省略
二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
第5条(過失運転致死傷)
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
2条に定められた危険運転致死罪が成立するためには、その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為「によって」人を死させたと言えることが必要です。
すなわち、事故の原因がスピード違反にあると言えることが必要なわけです。
そうすると、いくらスピードを出していたとしても、事故の直接の原因がわき見運転であれば、危険運転致死傷罪は成立しない可能性があるのです。
一方、より刑罰が軽い5条の過失運転致死傷罪は、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた」場合に成立します。
わき見運転も、「自動車の運転上必要な注意を怠り」にあたることは間違いないので、弁護側の主張によっても過失運転致死罪は成立することになります。
つまり弁護側としては、何とか刑罰が軽い過失運転致死罪にとどめようとしていたと言えます。
神戸地裁の判決は、この弁護側の主張は退け、検察側の主張を採用したことになります。
もしかすると、弁護士たちも主張が認められる可能性は低いと考えていたかもしれません。
それでも、刑事弁護人としての役割を出来る限り果たそうとしたということだと思われます。
~交通事故でも弁護士にご相談を~
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