停電中のひき逃げで逮捕
地震による停電中にひき逃げをして逮捕された事件がありました。
会社員をひき逃げ容疑で逮捕「飲酒発覚恐れた」 停電中の交差点
Yahoo!ニュース(毎日新聞)
この事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
~飲酒運転もしていた~
この事件は、2月13日に発生した最大震度6強の地震による停電で、信号機も消えてしまっている交差点において、ひき逃げをして逮捕されたという事件です。
被害者は腰の骨を折る重傷でした。
信号機が消えていたことが事故の原因の一つとなったのかどうかは、報道からはわかりません。
ただし運転手は当時、飲酒運転だったとのことで、飲酒運単が発覚するのをおそれて逃げたという供述をしているとのことです。
これが本当であれば、今回の運転者には、①飲酒運転をした点、②人にケガを負わせた点、③ひき逃げをした点それぞれに犯罪が成立する可能性が高いでしょう。
1つ1つ見ていきます。
~①飲酒運転をした点~
呼気1リットルにつき0.15mg以上のアルコールが検出されると、酒気帯び運転の罪となります。
罰則は3年以下の懲役または50万円以下の罰金です(道路交通法117条の2の2第3号)。
アルコールの数値に関わらず、強く酔っていて、正常な運転ができない状態で運転をすると、酒酔い運転の罪となります。
罰則はより重く、5年以下の懲役または100万円以下の罰金です(道路交通法117条の2第1号)。
~②人にケガを負わせた点~
人をひいてケガをさせた場合、運転手に過失がなかった場合を除き、過失運転致傷罪が成立することになるでしょう。
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律
第5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
ただし、飲酒運転の中でも、強く酔っていて事故を起こしたという悪質なものについては、さらに重い刑罰が定められた危険運転致傷罪が成立することもあります。
条文が長いので、一部を引用してみます。
同法第2条
次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
1号 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
被害者がケガをしたが死亡まではしなかったという場合でも、最高で懲役15年という、重い刑罰が定められています。
~③ひき逃げをした点~
ひき逃げをした場合には、被害者を助ける救護義務違反と、警察官に届け出る報告義務違反が成立します。
・救護義務違反(道路交通法72条1項前段・117条2項)
→10年以下の懲役または100万円以下の罰金
・報告義務違反(道路交通法72条1項後段・119条1項10号)
→3か月以下の懲役または5万円以下の罰金
特に救護義務違反は、最高で10年の懲役という重い刑罰が定められています。
さらに、逃げた原因が飲酒運転の発覚をおそれたことにあった場合、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪という犯罪が成立する可能性があります。
この犯罪は、一度逃げて、アルコールが抜けてから自首すれば、アルコールの影響による事故かどうかがわからなくなり、過失運転致傷罪よりも重い刑罰が定められた危険運転致傷罪には問えなくなるという事態を防ぐために定められています。
罰則は12年以下の懲役です。
今回の事件では、停電による信号機の消灯という不運も重なった可能性はありますが、飲酒運転をして事故を起こすと、様々な重い犯罪が成立してしまう可能性があるわけです。
~事故を起こしたら弁護士にご相談を~
あなたやご家族が交通事故を起こしてしまった場合、どれくらいの刑罰を受けるのか、示談はどうやって行えばよいのか、逮捕されるのか、いつ釈放されるのかなど、不安が大きいと思います。
事件内容に応じてアドバイスいたしますので、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
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