多量の覚せい剤所持で営利目的所持に?

多量の覚せい剤所持で営利目的所持に?

宮城県大崎市在住のAさんは、ある朝やってきた宮城県鳴子警察署の警察官に家宅捜索令状を示された上で家宅捜索を受けました。
家宅捜索の結果、Aさんの自宅から約5gの覚せい剤が発見されたため、Aさんは覚せい剤取締法違反の容疑で逮捕されました。
警察官の取調べを受けるうちに、Aさんは、Aさんが営利目的で覚せい剤を所持していたのではないかと疑われていることを知りました。
Aさんの両親の依頼で初回接見に来た弁護士に、なぜ自分が覚せい剤の営利目的を疑われているのか尋ねました。
(フィクションです。)

~覚せい剤の営利目的所持~

覚せい剤については,覚せい剤取締法で、所持,使用,譲渡,輸出入,製造などが禁止されています。
覚せい剤や大麻などの違法薬物を規制する法律では、違反に対する罰則のなかに、営利目的加重処罰規定とよばれるものがあります。
これは、営利の目的で罪を犯した者に対しては、その目的のなかった者より重い刑が科されるというものです。
営利目的によって刑が加重されるのは、財産上の利得を目当てとして犯罪を行うことが道義的に厳しく非難に値するというだけでなく、一般にその行為が反復され、覚せい剤の濫用を助長・増進させ国民の保健衛生上の危害を増大させる危険性が高いからであると言われています。
「営利の目的」とは、「犯人が自ら財産上の利益を得、又は第三者に得させることを動機・目的とする場合」とされています(覚せい剤取締法違反事件につき、最高裁決定 昭和57 年6 月28 日 )。

刑の加重については、例えば、覚せい剤の単純所持(=営利目的ではない自己使用目的等の所持)では、罰則は、10年以下の懲役です。
しかし、営利目的の所持となると、罰則は「1年以上の有期懲役、又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金」と刑がかなり重くなっています。

~Aさんはなぜ営利目的を疑われているのか~

今回のAさんは、覚せい剤を所持していた容疑で逮捕され、警察から営利目的の所持を疑われています。
なぜ、Aさんが営利目的の所持を疑われているかというと、多量の覚せい剤を所持していた場合は、自己使用目的ではなく営利目的だと疑われやすいためだと考えられます。

一般的に、覚せい剤の使用量は1回0.01~0.03gとされています。
覚せい剤の依存が大きく進んだ人でも1回0.1g程度を使用すると言われています。
つまり、1gの覚せい剤で多くて100回近くの使用が可能と考えられるのです。
それほどの多数回使用できる覚せい剤を所持していたとなれば、単純に自分で使用する分だけではないだろうと推測されてしまうおそれがあるのです。

今回のAさんは、自宅から約5gの覚せい剤が発見されました。
約5gというのは、最大500回近く使用できてしまう非常に多い量と言えます。
そのため、警察官からAさんが売買のため、つまり営利目的で所持していたのではないかと疑われていると考えられます。

もちろん、警察等の捜査機関は、押収した覚せい剤の量だけで営利目的か考えるわけではありません。
覚せい剤は2~3回分の量を、「パケ」と呼ばれるチャック付きのポリ袋に入れて密売されるケースが多いため、小分けするためのパケを大量に所持していたり、小分けする量を計る電子計り等を所持していた場合も、営利目的の所持が疑われます。
捜査機関は、他にも、販売を裏付けるメモやメールのやり取り(密売履歴)や、実際に購入した者が捕まったりしているなどの証拠によって営利目的の所持であると立証します。

営利目的所持による覚せい剤取締法違反での起訴率は80%以上と極めて高く、起訴された場合には初犯であっても執行猶予が付かない実刑となる可能性が高いといえます。
営利目的かどうかは,実刑か執行猶予かを分ける大きな事情となります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、薬物事件を含む刑事事件に詳しい弁護士が個々の事案に応じて様々な事情を考慮して弁護活動を行います。
ご家族、ご友人が覚せい剤の営利目的所持で警察に逮捕されてしまった方は、できるだけ早く弁護士にご相談ください。
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