タイヤ落下死亡事故で不起訴処分

タイヤ落下死亡事故で不起訴処分

トラックのスペアタイヤが走行中に落下したことを原因として母娘2人が死亡した事故で、トラックの運転手らが不起訴処分になりました。

営業所長と運転手を不起訴 中国道タイヤ落下事故で岡山地検
山陽新聞

不起訴処分となった理由について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。

~過失運転致死罪などに問われた~

この事故は、走行中のトラックのスペアタイヤがキャリアの腐食により落下し、母娘2人が乗る自動車に衝突しました。

しかし母娘2人は衝突自体で死亡したのではありませんでした。
衝突後に2人が路肩に避難していたところ、後続のトレーラーが脱落したタイヤに乗り上げ横転。
これに巻き込まれた2人が死亡するという痛ましい事故でした。

この事故では、タイヤが脱落したトラックの運転手と、横転したトレーラーの運転手が過失運転致死罪に問われていました。

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律
第5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

また、タイヤが脱落したトラックの運送会社の所長も、トラックの整備を怠ったなどとして業務上過失致死罪に問われていました。

刑法211条
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

しかし、3人ともが不起訴処分となりました。

~不起訴処分とは~

そもそも不起訴処分とは何でしょうか。

犯罪が起こると、まずは警察が一通りの捜査をします。
その後、検察に事件が送られ、検察官が取調べ等の捜査をします。
そして検察官はこれらの結果を踏まえ、犯罪をしたと疑われている被疑者を、裁判にかけるか(起訴)、かけないか(不起訴)を判断します。

不起訴処分になれば、前科も付かずに刑事手続きが終わります。

不起訴処分は、①軽い犯罪などで今回は大目に見るという意味などでなされるパターン(起訴猶予)と、②そもそも犯罪をしていないと判断されたパターン(嫌疑なし)、③犯罪をしたと言い切れないと判断されたパターン(嫌疑不十分)があります。

今回、運転手2人と所長は、③嫌疑不十分を理由として不起訴処分となりました。

~不起訴処分の理由は?~

【タイヤが脱落したトラックの運転手について】
今回問題となっている過失運転致死罪は、わざとやった犯罪(故意犯)ではなく、間違ってやった犯罪(過失犯)です。
過失犯は、(A)悪い結果が生じることを予見でき、(B)その悪い結果を防ぐことも出来たのに、(C)防ぐ行動を取らなかった場合に成立します。

しかし今回は、(A)悪い結果が生じることを予見できたとは言い切れないと判断されました。
今回の事故での「悪い結果」というのはタイヤが脱落することです。
しかしスペアタイヤを取り付けているキャリアごと腐食により脱落することは、運転手が予見するのは難しいと判断されました。

絶対に予見が不可能とまでは言い切れないと判断したのか、過失運転致死罪が絶対に成立しないという②嫌疑なしとまではしなかったようですが、犯罪が成立すると言うのは困難だとして③嫌疑不十分のパターンの不起訴処分になったようです。

【後続のトレーラー運転手について】
トレーラーの運転手についてどういった理由で不起訴処分となったのか、報道からは詳しくはわかりません。

たとえば今回は、 (A)タイヤを発見後に、このまま衝突すれば事故になることを予見し、(B)減速・停止するなどにより衝突を回避できたのに、(C)回避行動を適切に取らなかった場合などに過失が認められることになります。

しかし今回の事故では、たとえば、(B)タイヤを発見してからでは衝突を避けることはどうやっても不可能な状況だった可能性があるといった理由により、③嫌疑不十分のパターンによる不起訴処分になったものと思われます。

【運送会社の所長について】
所長については、(A)スペアタイヤが脱落して事故が起こることを予見できたかが問題となります。

しかし事故当時、運送業者に義務付けられていた3カ月ごとの法定点検の項目に、スペアタイヤの固定状況は含まれていなかったことなどから、予見はできたとは言い切れないとして、③嫌疑不十分の不起訴処分となりました。

~弁護士に相談を~

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、交通事件も含めた刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。

不起訴処分無罪が見込まれる事件かどうかに関わらず、もしあなたやご家族が、交通事故などで逮捕されたり、取調べを受けるという場合には、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
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