傷害事件(正当防衛事件・少年事件)

傷害事件(正当防衛事件・少年事件)

傷害事件(正当防衛事件・少年事件)について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。

【刑事事件例】

山形県尾花沢市の高校に通うAさん(15歳)は,高校の学生集会に参加することを予定していました。
しかし,同じ高校には日頃から仲が悪かったVさん(15歳)がおり,Aさんは「Vが来たら返り討ちにしてやる」と考え,鉄パイプを持って学生集会に参加しました。
すると,案の定,Vさんがメリケンサックをはめて現れ,Aさんのもとに向かってきたため,Aさんは「これを機に痛めつけてやる」と考え,Aさんに対して鉄パイプを振り回し,肋骨を骨折させました。
その結果,Vさんは,山形県尾花沢警察署の警察官に傷害事件の被害を訴えました。
Aさんは「Vがメリケンなんかはめてくるのが悪い」と考えていますが,Aさんには傷害罪が成立するのでしょうか。
(フィクションです。)

【傷害罪とは】

刑法204条
人の身体を傷害した者は,15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

Aさんは,Vさんに鉄パイプを振り回すことで,肋骨骨折という生理機能障害(傷害罪の「傷害」)を与えています。
しかし,Aさんが「Vがメリケンなんかはめてくるのが悪い」と考えているように,Aさんの傷害行為は正当防衛(刑法36条1項)に当たるのではないのでしょうか。
以下では,Aさんの傷害行為に正当防衛(刑法36条1項)が成立し,Aさんに傷害罪は不成立となるのか考えてみます。

【正当防衛とは】

刑法36条1項
急迫不正の侵害に対して,自己又は他人の権利を防衛するため,やむを得ずにした行為は,罰しない。

正当防衛により犯罪(刑事事件例では傷害罪)が不成立となるのは,一見すると犯罪(刑事事件例では傷害罪)が成立するような行為を行ったとしても,それが社会的に相当な行為であれば,違法(社会倫理規範に違反する法益侵害のことをいいます。)とはいえないからです。

そして,上述のように正当防衛が社会的相当性を有している(ゆえに,違法性がない)というためには,行為者(刑事事件例では傷害行為者)に防衛の意思があったといえる必要があると考えられています。
また,具体的に防衛の意思とは,急迫不正の侵害を認識し,これを避けようとする単純な心理状態のことをいいます。

刑事事件例では,Aさんは,Vさんに対してかねてから憎悪の念をもち,攻撃を受けたのに乗じて積極的に加害(傷害行為)をする意思を持っていたといえます。
このような場合,急迫不正の侵害を「避けようとする意思」がないとして,防衛の意思を欠くと考えられます。

したがって,Aさんには正当防衛は成立せず,傷害罪が成立すると考えられます。

【正当防衛事件と少年事件】

以上のように,Aさん自身は「Vがメリケンなんかはめてくるのが悪い」と考えているようですが,実際は,Aさんの傷害行為は正当防衛(刑法36条1項)には当たらず,Aさんには傷害罪が成立すると考えられます。

Aさんに傷害罪が成立する場合,刑事事件例のAさんは未成年者であり,少年事件として少年法に規定された処分がなされる可能性があります。
刑事事件例では,Aさんは「Vがメリケンなんかはめてくるのが悪い」と考えていますが,このような認識が傷害事件を担当する家庭裁判所の裁判官や調査官に悪印象を与えてしまう可能性もあります。
その結果,傷害事件の少年審判において,保護観察(少年法24条1項1号),児童自立支援施設または児童養護施設送致(少年法24条1項2号),少年院送致(少年法24条1項3号)などの重い処分(少年審判での終局処分)が下されてしまう可能性があります。

そこで,刑事弁護士少年付添人)を選任し,法律の専門家としての立場から,少年の規範意識を正し,傷害事件を担当する家庭裁判所の裁判官や調査官に対して好印象を与えられるようにしていくことが大切であると考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は,刑事事件少年事件を専門に扱う法律事務所です。
傷害事件(正当防衛事件・少年事件)でお困りの場合は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部までご相談ください。

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