親権者が娘に性交等をさせた場合①:監護者性交等
親権者が娘に性交等をさせ監護者性交等罪が成立するケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
~事例~
宮城県多賀城市に住む会社員のAさんは、実の娘のVさんと同居していましたが、Vさんが幼い時から、口腔性交をさせており、Vさんにそれが当たり前のように思い込ませていました。
Vさんは、中学生になってもAさんから口腔性交を命じられ、それに応じていましたが、次第にそれが普通ではないことに気が付き、学校の先生に相談しました。
学校は、児童相談所に報告し、Vさんは保護されることになりました。
児童相談所からの連絡を受けたVさんは、「警察にも報告することになります。」と言われており、事実、その後、宮城県塩釜警察署から出頭要請の連絡が来ました。
Aさんは、自分の行為がどのような罪に当たるのか、今後どのような流れになるのか、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)
上記の事例では、親権者であるAさんが、同居している娘のVさんに対し口腔性交をさせていました。
それが、幼少時からの性的な支配関係の中で行われた場合、監護者性交等罪が成立する可能性があります。
監護者性交等罪とは
監護者性交等罪は、平成29年7月の刑法改正に伴い新設された罪です。
監護者性交等罪は、
①18歳未満の者に対し、
②その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて
③性交等をする
ことにより成立する罪です。
◇犯行の主体◇
監護者性交等罪の主体は、「18歳未満の者を現に監護する者」です。
典型例は親権者ですが、親権者であっても、実際に監護している実態がない場合には、監護者には該当しません。
他方、親権者のような法律上の監護権を有していない者でも、事実上、現に18歳未満の者を監督し、保護する者であれば該当し得ることになります。
18歳未満の者を現に監督し保護する者であるか否かを判断する際には、「依存・被依存ないし保護・被保護の関係にあって、その関係は、具体的な影響力を及ぼせる程度に至る」ものであるかといった点が検討されます。
「依存・被依存ないし保護・被保護の関係」は、衣食住などの経済的観点、生活指導・監督などの精神的観点から判断され、その関係がある程度継続していることが求められます。
一般的に、同居の親、同棲相手、子を引き取った親族は該当し易く、児童養護施設の職員は、事情を踏まえて判断されます。
◇犯行の対象◇
監護者性交等罪の対象は、「現に監護されている18歳未満の者」です。
◇行為◇
監護者性交等罪の実行行為は、「現に監護する者であることによる影響力に乗じて」「性交等」をすることです。
「現に監護する者であることによる影響力」とは、監護者が、被監護者の生活全般にわたって、衣食住などの経済的観点や生活上の指導・監督などの精神的観点から、現に被監護者を監督し保護することによって生ずる影響力のことです。
この影響力に「乗じて」というのは、現に監護するものであることによる影響力が一般的に存在し、かつ、当該行為時においてもその影響力を及ぼしている状態で、性交等を行うことを意味します。
性交等を行う特定の場面において、影響力を利用するために具体的な行為を行うことまでは必要とされず、18歳未満の者を現に監護する者に該当すれば、通常、その影響力が一般的に存在し、その性交等についても一般的に存在している監護者の影響力が作用していると考えられます。
「性交等」は、性交だけでなく、口腔性交や肛門性交も含まれます。
◇故意◇
監護者性交等罪の成立には、自己が18歳未満の者を現に監護する者であること、現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて、性交等を行うことの認識・認容が必要です。
現に監護する者に該当する旨の認識までは必要なく、これを基礎づける事実の認識・認容で足ります。
監護者性交等罪は、親告罪ではありませんので、公訴の提起には告訴は必要ありません。
監護者性交等罪は、その罰則が5年以上の有期懲役と重い罪です。
起訴され有罪となれば、実刑判決が言い渡される可能性は高いでしょう。
ですので、可能な限り被告人に有利な事情を収集し、刑を軽減してもらうよう弁護していくことが重要です。
監護者性交等事件で被疑者・被告人となり対応にお困りであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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