昔の犯罪で逮捕【時効】

昔の犯罪で逮捕【時効】

過去の犯罪で逮捕された場合と時効について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。

【参考ニュース】
15年前の強制わいせつ事件で男逮捕
Yahoo!ニュース(読売テレビ提供)

この事件は、昨年発生した別件の公然わいせつ罪で逮捕された男のDNAが、15年前に起きた強制わいせつ致傷事件で現場に残された体液のDNAが一致したことから、15年の時を経て逮捕に至ったという事件です。

現場に残された体液から犯人のDNAが判明したとしても、犯人に前科がなかったりすると、警察は犯人のDNAの情報を持っていないことになり、照合できない場合があります。
今回は、犯人が事件から15年後に別の事件で捕まり、DNAが一致する人物が見つかったわけです。

新たな犯罪をしたからこそ過去の犯罪が発覚したというのは、新たな犯罪の被害者の方にとっては気の毒ですが、こういったパターンで犯人が判明するパターンもあるわけです。

もちろん、DNA鑑定の精度が低かった頃に、間違ってDNAが一致すると判断されて服役させられた冤罪事件もありますので(足利事件)、15年前のDNAの鑑定結果が使われたであろう今回の事件がどういう判決になるかわからないとも言えます。

~時効制度その1~

15年も前の犯罪となると、時効になってしまっていないかという疑問もあるかもしれませんので、時効制度について確認しておきます。

時効は、犯罪から一定期間が経過すると、もはや裁判にかけて刑罰を受けさせることができなくなる制度です。
犯罪から長い年月が経つと証拠が少なくなって冤罪の可能性が高まったり、被害者の処罰感情が薄れるといった理由から定められている制度ですが、この理由が合理的なのかは微妙なところです。

そこで、人を死亡させた罪であって、刑罰として死刑が定められている犯罪(殺人罪や強盗殺人罪など)については、時効制度の対象外とされています。

他の罪については、定められた刑罰(法定刑)の重さによって時効が成立するまでの期間が異なります。
刑事訴訟法の条文を引用してみます。

刑事訴訟法第250条1項
時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く。)については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
1号 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については三十年
2号 長期二十年の懲役又は禁錮に当たる罪については二十年
3号 前二号に掲げる罪以外の罪については十年

①人を死亡させた罪で、②禁錮以上の刑罰が定められており、③死刑は定められていない罪については、この条文で時効期間が決められています。

なお、禁錮というのは、刑務作業をするかどうかは自由とされている点以外は懲役と同じ刑罰です。
「禁錮以上」の中には懲役刑も含まれます。

たとえば傷害致死罪(刑法205条)は、①人を死亡させた罪です。
また、傷害致死罪の法定刑は3年以上の有期懲役ですので、②禁錮以上の刑罰が定められていますし③死刑は定められていません

そして有期懲役の上限(長期)は20年とされているので(刑法12条1項参照)、上記の刑事訴訟法250条1項2号の「長期二十年の懲役…に当たる罪」になりますので、時効期間は20年となります。

国外逃亡中は時効が進まないなどの例外はありますが(刑事訴訟法255条参照)、傷害致死事件を起こしてから20年たつと、処罰を受ける可能性がなくなるわけです。

~時効制度その2~

一方、①人を死亡させた罪であることと、②禁錮以上の刑罰が定められていることのうち、1つでも満たさない犯罪については、以下の条文が適用されます。
たとえば、今回のニュースで問題となった強制わいせつ致傷罪(刑法181条1項)は、①人を死亡させた罪に該当しませんので、こちらになります。

刑事訴訟法第250条2項
時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
1号 死刑に当たる罪については二十五年
2号 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については十五年
3号 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については十年
4号 長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年
5号 長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年
6号 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
7号 拘留又は科料に当たる罪については一年

細かく区切られておりわかりにくいですが、強制わいせつ致傷罪無期懲役が定められているので、2号に該当し、時効期間は15年ということになります。

今回のニュース記事では、事件が2005年とのみ書かれていたので、何月に起きた事件なのかはわかりませんが、逮捕された男が国外にいた期間があるなどの例外がない限り、今年時効を迎える事件がギリギリで逮捕に至ったということになります。

~弁護士に相談を~

このように、犯罪をしてから長期間経過した事件でも、逮捕のおそれはあります。
もし心当たりのある方がいらっしゃいましたら、弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
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