未熟運転で危険運転致死罪

未熟運転で危険運転致死罪

宮城県多賀城市の20歳専門学校生Aさんは、親の車を勝手に使用して無免許運転をして、見よう見まねで車を操作して走行していたところ、信号のない交差点において横断歩道を横断していたVさんを轢いてしまいました。
Vさんは意識不明の重体で病院に搬送されましたが、数日後に死亡しました。
宮城県塩釜警察署はAさんを危険運転致死罪(未熟運転)の容疑で逮捕しました。
(フィクションです。)

~危険運転致死罪(未熟運転)~

交通事故を起こして人を死傷させた場合に対する刑罰は、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、自動車運転死傷行為処罰法)」」という法律で定められています。
人身事故、死亡事故については、かつては刑法上の業務上過失致死傷罪(刑法211条)が適用されていましたが、自動車事故に対する国民の処罰感情の高まりを受けて,規制を強化する形で上記の法律が制定されました。

人身事故、死亡事故の場合にあたりうる犯罪にはいくつか類型があります。
通常の交通事故であれば、自動車運転死傷行為処罰法5条の過失運転死傷罪が成立することが多いです。
しかし、あえて危険な運転行為をして人身事故を起こした、飲酒や薬物の影響があったことを隠ぺいしようとした、無免許で人身事故を起こしたといった、より重大で悪質な類型では、刑罰が重く定められています。
酩酊運転など類型的に高い危険性を帯びた運転行為により人を負傷させた場合に適用されるのが、危険運転致死傷罪です。
危険な運転を行って人を負傷させた者は15年以下の懲役、人を死亡させた者は1年以上20年以下の有期懲役に処されます(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条)。

危険な運転とは、次に掲げる行為を言います。
1.アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
2.その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
3.その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
4.人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近しかつ重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
5.赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
6.通行禁止道路を進行しかつ重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

今回のAさんは、無免許で見よう見まねで車を操作して走行していたところ、死亡事故を起こして、危険運転致死傷罪の構成要件の1つとされている上記の3.「その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為」(いわゆる未熟運転)で逮捕されています。
この罪は、未熟運転致死傷罪と呼ばれることがあります。

では、「進行を制御する技能を有しない」とは無免許運転のことを指しているのかというと、実は「無免許運転」を意味するわけではありません。
判例では、「進行を制御する技能を有しない」とは、ハンドルやブレーキなどを操作する初歩的な技能すら有しないような、運転の技能が極めて未熟なことを指している、と考えています。
つまり、「進行を制御する技能を有しない」=無免許運転ということではないのです。

無免許運転といっても、運転免許の停止や取消・期限切れなどにより無免許となっている者や、外国人で母国では運転免許があるが日本では無免許の者、まったく免許を取得したことのない者、路上教習は終了して運転の技量はあるが筆記試験が未受験や不合格で無免許である者など、様々なパターンがあります。

無免許であったとしても、基本的な自動車操作の技能が認められれば、「進行を制御する技能を有しない」とはされず、危険運転致死傷罪(未熟運転)の要件には当てはまりません。

実際に、危険運転致死傷罪(未熟運転)が問題となった判例では、無免許運転の暴走車両が人の集団に突っ込み多数が死傷していますが、運転者が無免許運転を繰り返していたことから一定の運転技量はあったという認定がなされて、危険運転致死傷罪(未熟運転)が適用されませんでした。

逆に、運転免許を有していても、長年ペーパードライバーで基本的な自動車操作の技能を失っているような状態で運転し、人を死傷させた場合は、危険運転致死傷罪(未熟運転)の要件にあてはまることになります。

危険運転致死傷罪は、非常に重い刑事処罰を科せられる可能性があります。
非常に重い刑事処罰を受ける可能性のある場合は、早期に弁護士に依頼して的確な刑事弁護を受ける必要性が高いです。
危険運転致死傷罪などの交通事故でお困りの場合は、交通事件・刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご用命ください。
(宮城県塩釜警察署までの初回接見費用:38,800円)

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