強盗をして逃走中に死亡事故【強盗致死?】
強盗後に車で逃走中、死亡事故を起こして逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
【事例】
宮城県富谷市の民家に窃盗目的で忍び込んだAさん。
住人に見つかったことから、首元にナイフを突きつけ、
「金を出せ」
と言って、現金や貴金属類を奪い取りました。
その後、自動車で逃走中、早く遠くに逃げたいとの思いから制限速度を大幅にオーバーするスピードで走行していたところ、誤って歩行者をはねて死亡させてしまいました。
駆け付けた大和警察署の警察官から事故について取調べを受けていたAさんですが、実況見分をしていた別の警察官が、Aさんの車にあった紙袋の中に現金や貴金属が入っていることを偶然発見しました。
警察には強盗事件の情報も入っていたため、警察官がAさんに事情を聞いたところ、強盗についても自白。
Aさんは逮捕されました。
(事実をもとにしたフィクションです)
~住居侵入・強盗・自動車運転過失致死罪~
強盗をして逃走中に人をひき殺してしまったAさん。
少なくとも住居侵入罪・強盗罪・自動車運転過失致死罪の3つの犯罪が成立することになるでしょう。
刑法第130条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
第236条1項
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律
第5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
ただし、かなりのスピードで走行していたAさんですから、自動車運転過失致死罪ではなく、より重い刑罰が定められた危険運転致死罪が成立する可能性も否定できません。
第2条
次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
2号 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
~強盗致死罪は成立しない?~
Aさんは強盗をして、逃走中に人を死亡させてしまったのですから、強盗致死罪は成立しないのかと思う方もいらっしゃるかもしれません。
刑法第240条
強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。
たしかに今回のAさんは、形式的には、赤く色付けした部分に該当するようにも思えます。
しかし、強盗致死罪までは成立しない可能性が高いでしょう。
理論的な説明は難しい部分ですが、そもそも強盗致死罪に極めて重い刑罰が定められている理由は、強盗の際に、被害者や犯人を捕まえようとした人を死傷させることが多く、このような死傷者が出ることを防ごうとする点にあります。
また、同条の刑罰が極めて重いので、あまり成立範囲を広げすぎない方がバランスが良いという考え方もあります。
したがって、物を奪う際の被害者への暴行や、追いかけてきた被害者・警察官等に対する暴行については強盗致死罪が成立しますが、それ以外の者を誤って死亡させてしまったような場合には、強盗致死罪は成立しないことになるでしょう。
今回も、ひき殺されてしまった方は、強盗自体の被害者ではなく、Aさんを捕まえようとしたわけでもないですし、Aさんが誤って死亡させた形ですので、強盗致死罪までは成立しないと思われます。
~弁護士に相談を~
逮捕された後の手続について、詳しくはこちらをご覧ください。
https://sendai-keijibengosi.com/keijijikennonagare/
逮捕されると、ご本人はもちろん、ご家族も、刑事手続はどう進んでいくのか、釈放の見込みはあるのか、どのくらいの刑罰を受けるのかなど、わからないことも多いと思いますので、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
ご家族などから初回接見のご依頼をいただければ、拘束されている警察署等にて、ご本人に面会(接見)し、事件の内容を聴き取った上で、今後の見通しなどをご説明致します。
接見後には、接見の内容などをご家族にお伝え致しますので、それを聞いていただいた上で、正式に弁護活動を依頼するかどうかを決めていただけます。
また、逮捕されていない場合やすでに釈放された場合には、弁護士事務所での法律相談を初回無料で受けていただけます。
強盗罪や自動車運転過失致死罪などで逮捕された、捜査を受けているといった場合には、ぜひご連絡ください。