妊娠中絶で逮捕

妊娠中絶で逮捕

堕胎罪などで逮捕・取調べされた場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。

【事例】
宮城県岩沼市に住む女性Aさん。
交際相手との間の子供を妊娠しましたが、望まない妊娠であったため、おろしたいと考えていました。
しかし、妊娠が判明したのが遅く、金銭的にも余裕がなく、家族にも相談できないまま時間が過ぎ、適法に中絶できる妊娠22週を過ぎてしまいました。
このまま産むわけにもいかないと考えたAさんは、妊娠中絶の指定医師ではない医師のBさんに中絶手術をしてもらいました。
その後、Bさんが逮捕されたことをきっかけとし、Aさんが中絶してもらったことが警察に知れることに。
警察から事情を聞きたいと言われ、警察署に行くことになりました。
AさんやBさんはどうなってしまうのでしょうか。
(事実をもとにしたフィクションです)

~人工妊娠中絶ができる条件~

最近、アメリカの一部の州などで、人工妊娠中絶をほぼ全面的に禁止する法律が施行され、レイプなどで妊娠してしまったケースでも中絶が出来ないとして反発されているというニュースが流れています。

日本の場合、刑法の条文上は中絶は禁止されていますが、母体保護法に定められた要件を満たせば刑法は適用されず、適法に中絶を行えることになっています。
条文を見てみましょう。

母体保護法
第2条2項
この法律で人工妊娠中絶とは、胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に、胎児及びその附属物を母体外に排出することをいう。
第14条1項
都道府県の区域を単位として設立された公益社団法人たる医師会の指定する医師(以下「指定医師」という。)は、次の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。
1号 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの
2号 暴行若しくは脅迫によつて又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦かん 淫いんされて妊娠したもの
第2項
前項の同意は、配偶者が知れないとき若しくはその意思を表示することができないとき又は妊娠後に配偶者がなくなつたときには本人の同意だけで足りる。

このうち2条2項の「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期」とは、旧厚生省事務次官通知により、妊娠22週未満とされています。

したがって中絶を適法にできるのは、

①妊娠22週未満であること
②人工妊娠中絶をしてもよい医師として指定された医師が行うこと
③身体的・経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのある場合やレイプによる妊娠であること
④本人(および配偶者)の同意があること

という要件を満たした場合ということになります。

今回の事例では、①と②の要件を満たさないことから、違法な中絶だったということになります。

~(業務上)堕胎罪とは~

では、Aさんや医師のBさんはどのような罰を受ける可能性があるのでしょうか。
刑法の条文を見てみます。

刑法
第212条(堕胎)
妊娠中の女子が薬物を用い、又はその他の方法により、堕胎したときは、一年以下の懲役に処する。

Aさんは、自ら薬物を飲んで堕胎したのではなく、医師に堕胎してもらっていますので、「その他の方法により、堕胎したとき」に該当し、堕胎罪として1年以下の懲役となる可能性があります。

第214条(業務上堕胎及び同致死傷)
医師、助産師、薬剤師又は医薬品販売業者が女子の嘱託を受け、又はその承諾を得て堕胎させたときは、三月以上五年以下の懲役に処する。よって女子を死傷させたときは、六月以上七年以下の懲役に処する。

Bさんは、「医師…が女子の嘱託を受け、又はその承諾を得て堕胎させたとき」に該当し、業務上堕胎罪として3か月以上5年以下の懲役となる可能性があります。
仮に中絶手術の過程で母のAさんを死亡または負傷させた場合には、さらに重い業務上堕胎致死傷罪として6か月以上7年以下の懲役ということになります。

~弁護士にご相談を~

刑事事件の手続について、詳しくはこちらをご覧ください。
https://sendai-keijibengosi.com/keijijikennonagare/

特にAさんの場合は、逮捕されずに在宅のまま取調べ等の捜査を受ける可能性も十分考えられます。
また、医師Bさんを裁判にかけるための資料としてAさんから事情を聞くだけで、Aさん自身は特に刑罰を受けずに終わる可能性もあります。

しかし、いずれにしろ不安な点は多いと思いますので、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
ご家族などから初回接見のご依頼をいただければ、拘束されている警察署等にて、ご本人に面会(接見)し、上記の不安点などについてご説明いたします。
接見後にその結果をご家族にご報告致しますので、報告を聞いていただいた上で、正式に弁護活動を依頼するかどうかを決めていただけます。

また、逮捕されていない場合やすでに釈放された場合には、弁護士事務所での法律相談を初回無料で行っております。

(業務上)堕胎罪などで逮捕された、捜査を受けているといった場合には、ぜひ一度ご連絡ください。

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