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エアドロップでわいせつな動画送った疑い(通称「エアドロップ痴漢」)で逮捕
エアドロップでわいせつな動画送った疑い(通称「エアドロップ痴漢」)で逮捕
宮城県仙台市青葉区のエアドロップ痴漢について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説致します。
【刑事事件例】
宮城県仙台市青葉区に住むAさんは、多くの通勤・通学者がいるバスターミナルで、近くにいた同市在住の女子高校2年のVさんのスマートフォンに対して、スマートフォンの通信機能「エアドロップ」でひわいな動画を送りつけました。
Vさんが仙台中央警察署に被害届を出したところ、仙台中央察署が捜査を開始しました。
近くの防犯カメラの映像などから犯人がAさんだということが判明したため、仙台中央警察署はAさんをわいせつ電磁的記録等送信頒布等罪の疑いで逮捕しました。
仙台中央警察署の警察官からAさんが逮捕されたことを突然知らされたAさんの妻であるBさんは、気が動転してしまい、今後何をしたら良いのか分からず困ってしまいました。
(この刑事事件例は朝日新聞の8月24日付けの記事を基にしたフィクションです)
【わいせつ電磁的記録等送信頒布等罪とは】
刑法 175条1項
わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。
電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
刑事事件例でAさんに問われうる罪は刑法175条1項後段に記載されている「わいせつ電磁的記録等送信頒布等罪」です。
これは、①「電気通信の送信により」②「わいせつ」な③「電子的記録」を④「頒布した」人を処罰する犯罪になります。
以下で、このわいせつ電磁的記録等送信頒布等罪の4つの要件について簡単に説明します。
【わいせつ電磁的記録等送信頒布等罪の各要件について】
わいせつ電磁的記録等送信頒布等罪の1つ目の要件である「電気通信」とは、有線、無線その他の電磁的方法により、符号、音響又は映像を送り、又は受けることを言います。
刑事事件例においては、エアドロップという通信機能が用いられています。
エアドロップは、Wi-FiとBlootoothという無線通信によって、スマートフォン間でデータ等の受け渡しを行うことができる機能ですので、エアードロップはわいせつ電磁的記録等送信頒布等罪の要件である「電気通信」にあたると言えるでしょう。
わいせつ電磁的記録等送信頒布等罪の2つ目の要件である「わいせつ」とは、「徒に性欲を興奮又は刺激せしめ、且つ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する」ものをいいます。
そして、「わいせつ」か否かの判断については、社会通念(その時代の平均的な一般人の意識)に従って決められるものとされています。
何が「わいせつ」とされるかの判断については、微妙な判断になる場合もありますが、例えば刑事事件例において、Aさんが自身の陰部が写った動画を送った場合は、その動画はわいせつ電磁的記録等送信頒布等罪の「わいせつ」の要件は満たすと判断される可能性が高いといえるでしょう。
わいせつ電磁的記録等送信頒布等罪の3つ目の要件は「電磁的記録」とは、電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいいます。
情報としての画像や動画のデータは「電磁的記録」にあたるでしょう。
刑事事件例では、Aさんは動画のデータをVさんに送っていますので、わいせつ電磁的記録等送信頒布等罪の「電磁的記録」の要件は満たすことになるでしょう。
わいせつ電磁的記録等送信頒布等罪の4つ目の要件である「頒布」とは、有償・無償を問わずに、不特定又は多数の人の記録媒体上に電磁的記録を存在するに至らしめることをいいます。
これを刑事事件例で説明すると、Aさんはエアードロップ機能を使ってVさん1人のスマートフォンにしか、わいせつな動画を送っておらず、不特定又は多数の人のスマートフォンにわいせつな動画を送ってはいないことになります。
この場合、わいせつ電磁的記録等送信頒布等罪の「頒布」の要件は満たされないことになるかのように思われます。
しかし、この刑事事件例のAさんのように、偶然1人の記録媒体上にしか、電磁的記録を存在するに至らしめなかった場合であっても、それが不特定又は多数の人の記録媒体上に電磁的記録を存在するに至らしめる意思でなされたものであれば、「頒布」に該当することになります。
刑事事件例で説明すると、エアードロップ機能は、データを受け取る側の設定次第ではVさん以外の不特定多数の人のスマートフォンにもデータを送ることが可能な通信機能です。
そして、多くの人が行きかうバスターミナルにおいて、エアードロップ機能を使ってわいせつな動画データを送るという行為をした人には、不特定又は多数の人のスマートフォンにわいせつな動画を送る意思があると評価されることになるでしょう。
したがって、刑事事件例において、わいせつ電磁的記録等送信頒布等罪の「頒布」の要件は満たされることになるでしょう。
以上より、Aさんは、わいせつ電磁的記録等送信頒布等罪によって、処罰される可能性が高いといえます。
【家族がわいせつ物頒布等罪罪で逮捕されてしまったら…】
刑事事件例のように、突然ご家族の方が逮捕されてしまってどうすればよいか分からず不安を感じている方は、刑事事件に精通した刑事弁護人に相談し、いち早く初回接見を頼まれることをお勧め致します。
初回接見とは、刑事弁護人が警察署などの留置施設に出張して、逮捕・勾留によって身柄を拘束されている方と接見(面会)する、その1回目のことをいいます。
初回接見には以下のようなメリットが期待できます。
逮捕されて身柄を拘束されている方は、逮捕後72時間はご家族の方であっても面会することできないため、精神的・肉体的負担が大きいですが、刑事弁護人であれば自由に接見することができますので、そのような負担を軽減することができます。
また、この初回接見により、事件の見通しや予定される刑事手続の流れ、さらには、今後の取調べの対応方法についてのアドバイス等について聞くことができるという大きなメリットがあります。
突然ご家族が逮捕されてしまい不安な方にも同様に、初回接見を行った刑事弁護人から事件の見通しや今後予定されるであろう刑事手続の流れについてもしっかりとご説明させていただき、ご家族の方が抱えている不安を解消させていただきます。
他にも、刑事弁護人を通して、ご家族の方から身柄を拘束されている方に対して伝言を伝えることができますし、身柄を拘束されている方からご家族の方に対する伝言も承ることもできます。
以上のように、初回接見は、いま身柄を拘束されている方にとっても、また、突然ご家族が逮捕されてしまい今後について不安な方にとっても、重要なものといえます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には刑事弁護に精通した刑事弁護人が在籍しております。
宮城県仙台市青葉区でご家族がエアドロップ痴漢で逮捕されてお困りの方、あるいは初回接見のご依頼を検討されている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部までご相談ください。
保険金目的の放火事件
保険金目的の放火事件
保険金目的の放火事件について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは,宮城県岩沼市で,火災保険金目的で自宅を放火し全焼させたとして,非現住建造物等放火の疑いで逮捕されました。
出火当時,Aさんは一人暮らしであり,Aさん自身も「保険金目的で放火した」と話し,非現住建造物等放火罪の容疑を認めています。
Aさんは,宮城県警察岩沼警察署の警察官から保険金を得ようとした動機などについて詳しく捜査を受けています。
(2021年8月25日に鹿児島ニュースKTSに掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)
【保険金目的の放火事件は何罪になるのか】
刑法109条1項
放火して,現に人が住居に使用せず,かつ,現に人がいない建造物…を焼損した者は,2年以上の有期懲役刑に処する。
刑法109条2項
前項の物が自己の所有に係るときは,6月以上7年以下の懲役に処する。ただし,公共の危険を生じなかったときは,罰しない。
刑法109条1項は他人所有非現住建造物放火罪を,刑法109条2項は自己所有非現住建造物放火罪を規定しています。
条文をご覧頂ければ,それぞれの刑事罰は異なり,他人所有非現住建造物放火罪の刑事罰の方が,自己所有非現住建造物放火罪に比べて重くなっているのが分かるかと思います。
それでは,刑事事件例のような保険金目的の放火事件は,具体的に何罪になるのでしょうか。
ここで重要となるのは,Aさんが放火した家屋に保険が掛けられていたことです。
刑法では,自己所有物であっても,それが「差押えを受け,物権を負担し,賃貸し,又は保険に付したものである場合」には,刑法109条1項の他人所有非現住建造物等放火罪により処罰されるとされています(刑法115条)。
よって,刑事事件例のような保険金目的の放火事件では,刑法109条1項の他人所有非現住建造物等放火罪が成立すると考えられます。
【保険金目的の放火事件は詐欺罪になるか】
詐欺罪が成立するためには,実行行為(法益侵害の現実的危険性を有する行為)が必要であると考えられています。
ここで,保険会社は,保険金の支払いを求める請求があって初めて保険金を給付するかどうかを判断するといえます。
とすれば,保険金の給付には保険金の支払いを求める請求が必要であり,単なる放火行為だけでは,現実に保険金が給付されるおそれはないといえます。
よって,詐欺未遂罪(246条1項)の実行行為がないとして,詐欺罪は成立しないと考えられます。
【法律が分からない場合は】
このように,いかなる罪が成立し,いかなる刑事罰が予定されているのか,今後の手続き,見通しはどうなるのかといったことは,法律の知識がなければ正確に理解することが困難です。
法律が分からない場合や刑事事件についてお悩みを抱えている場合は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部までご相談ください(無料相談についてはこちらをご参照ださい)。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は,刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
保険金目的の放火事件でお困りの場合は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部までご相談ください。
車のトラブルの暴行・器物損壊事件
車のトラブルの暴行・器物損壊事件
車のトラブルの暴行・器物損壊事件について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは,宮城県名取市の交差点でタクシーの運転手(Vさん)を殴り車を壊す刑事事件を起こしてしまいました。
Aさんは,目の前に停まったタクシーの運転手に声をかけ,運転手が窓を開けたところ窓越しに顔を殴った上,ウインカーレバーを壊してしまいました。
Aさんが運転手(Vさん)に暴行するのを見かけた住民が110番通報し,駆け付けた警察官により現行犯逮捕されてしまったといいます。
Aさんは,暴行・器物損壊事件を起こしてしまった動機について,「タクシーが停車時に接近してきて危なかったから」といいます。
(刑事事件例はフィクションです。)
【暴行・器物損壊事件を起こした場合,刑務所行き確定?】
刑法208条(暴行罪)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときには,2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
刑法261条(器物損壊罪)
…他人の物を損壊し,又は傷害した者は,3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
暴行事件を起こしてしまった場合,暴行罪の刑罰としては,「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」が科されます。
暴行罪の法定刑(刑法に規定されている刑事罰)のうち,「刑務所行き」となるのは,「2年以下の懲役」や「拘留」ですが,犯状や情状,刑事弁護活動の結果によっては「刑務所行き」を回避し,「30万円以下の罰金」や「科料」に刑事罰を軽くすることができ得るといえます。
また,器物損壊事件を起こしてしまった場合,器物損壊罪の刑罰としては,「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」が科されます。
器物損壊事件の法定刑(刑法に規定されている刑事罰)のうち,「刑務所行き」となるのは,「3年以下の懲役」ですが,犯状や情状,刑事弁護活動の結果によっては「刑務所行き」を回避し,「30万円以下の罰金」や「科料」に刑事罰を軽くすることができ得るといえます。
【車のトラブルを穏便に解決するには?】
①被害者の方(タクシーの運転手)と示談をする
刑事事件例のような暴行・器物損壊事件では,被害者の方(タクシーの運転手)と示談をすることが有効です。
その際,車の修理費などを含め示談金を提示し,刑事責任の軽減や,民事責任の軽減・回避を目指します。
②検察官や裁判官に訴えて,早期に釈放してもらう
暴行・器物損壊事件では,被疑者の方が逮捕されてしまうことがあります。
刑事事件例においても,Aさんは暴行・器物損壊罪の容疑で逮捕されてしまっています。
暴行・器物損壊事件で逮捕されてしまった場合,その後,長期間にわたる勾留という身体拘束もかされてしまう可能性もあります。
そこで,刑事弁護士が暴行・器物損壊事件の被疑者の方の事情をお聞きし,検察官や裁判官に訴えて,早期に釈放するよう働きかけていきます。
③検察官や裁判官に訴えて,寛大な処分・判決にしてもらう
暴行事件を起こしてしまった場合,暴行罪の刑罰としては,「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」が科されます。
また,器物損壊事件を起こしてしまった場合,器物損壊罪の刑罰としては,「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」が科されます。
しかし,犯状や情状,刑事弁護活動の結果によっては刑事罰を軽くすることができ得るということは既に述べた通りです。
加えて,わが国の刑事司法制度では,起訴便宜主義(刑事裁判を提起するに足りる十分な犯罪の嫌疑がある場合においても,検察官の裁量により起訴しないことを認める制度)が採用されています(わが国の刑事司法制度・刑事事件の流れの概要について知りたい方はこちらをご参照ください)。
そこで,刑事弁護士が暴行・器物損壊事件の被疑者の方の事情をお聞きし,検察官や裁判官に訴えて,何とか不起訴処分にしてもらえないかと働きかけていくことができます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は,刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
車のトラブルの暴行・器物損壊事件でお困りの場合は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部までご相談ください。
青少年保護育成条例違反事件で不起訴
青少年保護育成条例違反事件で不起訴
青少年保護育成条例違反事件で不起訴になった刑事事件について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
【刑事事件例】
2021年8月21日に高知さんさんテレビに,以下のような青少年保護育成条例違反事件が掲載されました。
女子高生にみだらな行為をしたとして逮捕された大学の先生が不起訴処分となりました。
大学の先生である男性は18歳未満と知りながら県内の女子高生と市のホテルでみだらな行為をしたとして宮城県青少年保護育成条例違反の疑いで逮捕されました。
女子高校生とはSNSで知り合い、金銭のやり取りはなかったということです。
検察庁はAさんを不起訴としました。
(2021年8月21に高知さんさんテレビに掲載された記事を参考に作成しました。)
【青少年保護育成条例の禁止行為,刑事罰とは?】
刑事事件例では,青少年保護育成条例違反事件を起こしたものの,不起訴処分として刑事事件が終結しています。
この記事を閲覧してくださった読者の方の中には,ご自身又はご家族の方が青少年保護育成条例違反事件を起こしてお困りの方がおられると思います。
以下では,青少年保護育成条例の中身,刑罰について確認し,最後に青少年保護育成条例違反事件の不起訴可能性について解説します。
今回は,宮城県青少年保護育成条例について考えてみます。
宮城県青少年保護育成条例31条(みだらな性行為又はわいせつな行為の禁止)
1項:何人も,青少年に対しみだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
刑事事件例のように18歳未満と知りながら県内の女子高生と市のホテルでみだらな行為をした場合,宮城県青少年保護育成条例31条のみだらな性行為又はわいせつ行為の禁止規定に違反することになります。
宮城県青少年保護育成条例41条(罰則)
1項:第31条第1項の規定に違反して,青少年に対しみだらな性行為又はわいせつな行為をした者は,2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
そして,宮城県青少年保護育成条例31条1項のみだらな性行為又はわいせつ行為の禁止規定に違反した場合,その者には宮城県青少年保護育成条例違反の罪として「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」が科されます。
【青少年保護育成条例違反事件の不起訴になる確率は?】
法律の世界では100%の確率で事件の結果が分かるということはありません。
しかし,類似の刑事事件(青少年保護育成条例違反事件)の処分や判決の内容,犯罪行為の態様や動機,余罪の有無,前科前歴の有無などに照らして,一定の可能性をお教えすることができます。
ここで,弊所で受任したことのある類似の刑事事件(青少年保護育成条例違反事件)を参考に考えれば,刑事事件例のような青少年保護育成条例違反事件では,青少年保護育成条例違反事件の被害者の方と示談をすることができたかどうかということが,不起訴処分を獲得できるか否かに大きく左右されるということがいえます。
青少年保護育成条例違反事件の被害者の方と示談をすることができた場合,たとえ事後的であっても,青少年保護育成条例違反による被害を回復できたことが評価されて不起訴処分を獲得できる可能性が大きくなるのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は,刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
青少年保護育成条例違反事件で不起訴にしてほしいとご要望の場合は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部までご相談ください(不起訴処分については,こちらをご参照ください)。
宮城県多賀城市の過失傷害・重過失傷害事件
宮城県多賀城市の過失傷害・重過失傷害事件
宮城県多賀城市の過失傷害・重過失傷害事件について、あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説致します。
【刑事事件例】
宮城県多賀城市に住むAさんは、スケートボードを趣味にしていました。
宮城県多賀城市にスケートボード専用の公園がなかったことから、Aさんは近くの公園で練習していました。
練習中、たまたま近くにいたVさんに気が付かず、スケートボードに乗ったAさんはVさんに衝突してしまい、Vさんに全治3か月の怪我を負わせてしまいました。
怪我を負わせてしまった際、Vさんがどこかに連絡しようとしていたことから、Aさんは塩釜警察署に通報されるのではないかと思い、その場から立ち去ってしまいました。
(この刑事事件例はフィクションです)
【過失傷害罪・重過失傷害罪とは】
刑法 38条1項
罪を犯す意思がない行為は、罰しない。
ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。
刑法 204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法 208条
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
刑法 209条
1 過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
刑法 211条
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
刑法38条1項本文が規定する通り、罪を犯す意思(故意)がない行為は処罰の対象になりません。
故意とは、犯罪事実を認識・認容していることを意味しています。
傷害罪について考えれば,傷害罪の故意とは,「人の身体を傷害」するという刑法204条に規定された事実を認識・認容していることをいいます。
傷害罪の故意がない行為は、刑法204条に規定する傷害罪として処罰の対象にはなりません。
なお、傷害罪の場合、刑法208条に規定される暴行罪の故意で傷害の結果を発生させ場合にも、傷害罪の故意犯が成立することになりますが、ここでも、暴行罪の故意がなければ、傷害罪の故意犯として処罰されることはありません。
もっとも、故意がない場合であっても、刑法38条1項ただし書に規定の通り、法律に特別の定めがある場合は処罰の対象になり得ます。
傷害罪について説明すると、過失傷害罪を規定している刑法209条や、業務上過失傷害罪・重過失傷害罪を規定している刑法211条は、刑法38条1項後段に規定されている「法律」の「特別の定め」に当たることになります。
したがって、傷害罪の故意犯として処罰がなされない場合であっても、過失傷害罪・業務上過失傷害罪・重過失傷害罪のいずれかの罪で処罰される可能性はあることになります。
なお、ここで用いられている「過失」とは、犯罪の結果が予見できることを前提に、その結果を回避する義務(注意義務)に違反した行為のことを意味します。
【刑事事件例に沿って説明すると…】
刑事事件例のAさんは、Vさんに怪我を負わせてやろう、あるいは怪我を負わせても構わないという意思でVさんに怪我を負わせたわけではありません。
よって、刑事事件例の場合、刑法38条1項に定められている「故意」があるとは言えず、刑事事件例のAさんに傷害罪を規定する刑法204条が適用される可能性は少ないといえるでしょう。
もっとも、刑事事件例のAさんは、公園でスケートボードを練習するにあたって人に怪我を負わせてはならない注意義務を負っていると考えられるところ、そのような注意義務に違反してVさんに怪我を負わせたAさんには刑法209条が規定する過失傷害罪が成立する可能性が高いといえます。
さらに、刑事事件例においてスケートボードの練習中に人を怪我させるということが極めて容易に予見することができるなどの事情があった場合には、過失傷害罪ではなく、刑法211条の後段に規定している重過失傷害罪の責任が問われる可能性もあります。
【スケートボードの練習中に人を怪我させてしまったら】
過失傷害罪を定める刑法209条の2項に規定されているように、過失傷害罪は、親告罪と呼ばれる犯罪です。
親告罪とは、刑事告訴(被害に遭われてしまった方が犯人の処罰を求める意思を示すこと)がなければ起訴することができない犯罪のことをいいます。
起訴されることがなければ,当然,有罪判決が下って刑事罰を受ける可能性はないということになります。
したがって、過失傷害罪にあたる行為をしてしまった場合、まずは過失傷害事件の被害に遭われてしまった方と示談をし、過失傷害罪についての刑事告訴を取り下げてもらうという刑事弁護活動が最も重要であるといえるでしょう。
また、過失傷害罪ではなく重過失傷害罪の罪に問われている場合であっても、重過失傷害罪は過失傷害罪とは異なり親告罪ではないものの、重過失傷害事件の被害に遭われてしまった方と示談しているという点は、その後の刑事手続の中で刑事罰を軽くさせる要素になりますので、示談に向けた刑事弁護活動は効果的なものと言えるでしょう。
このようにスケートボードの練習中に人に怪我をさせて過失傷害罪、重過失傷害罪の罪に問われる場合の刑事弁護活動については、刑事弁護に精通した刑事弁護人にいち早く相談することをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には刑事弁護に精通した刑事弁護人が在籍しております。
宮城県多賀城市でスケートボードの練習中に,人に怪我をさせ、過失傷害罪、重過失傷害罪でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部までご相談ください。
近所の住宅への住居侵入事件
近所の住宅への住居侵入事件
近所の住宅への住居侵入事件について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは,宮城県宮城郡にある近所の住宅(Vさん宅)の敷地に忍び込んだ疑いで,住居侵入罪の容疑で逮捕されました。
宮城県塩釜警察署の警察官によると,Vさん宅に住むVさんの家族が人の気配を感じたところ,Aさんの住居侵入行為の姿を目撃したということです。
Vさんやその家族は,Aさんと面識があり,Vさんの家族が警察に通報し,Aさんは住居侵入罪の容疑で逮捕されました。
Aさんは「Vさんの行動を確認するために忍び込んだ」と住居侵入罪の容疑を認めていますが,早期に釈放してほしいと願っています。
(2021年8月11日にHBC北海道放送に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)
【住居侵入罪】
刑法130条
正当な理由がないのに,人の住居若しくは人の看守する邸宅,建造物若しくは艦船に侵入し,又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は,3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
刑法130条は長い文章となっていますが,住居侵入罪に関わる部分のみを抜き出すと,「正当な理由がないのに,人の住居」「に侵入し」「た者は,3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する」と読むことができます。
住居侵入罪の「住居」とは,日常生活(起臥寝食)に使用されている場所のことをいいます。
Aさんが忍び込んだのは,住宅(Vさん宅)の敷地ですので,住居侵入罪の「住居」に当たります。
また,住居侵入罪の「侵入」とは,住居権者の意思に反する立入りのことをいいます。
Aさんは,Vさんに無断でVさん宅に立ち入っており,住居侵入罪の「侵入」に当たります。
住居侵入罪の刑事罰は,「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」であり,「10万円以下の罰金であれば」と人によっては軽いと考える人もいると思います。
しかし,法律上は,「3年以下の懲役」という重い刑事罰が科される可能性もありますので,注意が必要です。
【住居侵入事件で早期に釈放するためには】
ところで,最終的に科される刑罰の軽重にかかわらず,住居侵入事件の被疑者の方が証拠を隠滅する可能性が高いと考えられれば,住居侵入事件の被疑者の方は逮捕されてしまう可能性があります。
住居侵入事件での証拠隠滅には,例えば,住居侵入事件の被害者の方の住居に再び戻り,防犯カメラや指紋,足跡を消すこと,目撃者に口止めを迫ること,アリバイ工作をすることなどが考えられます。
証拠を隠滅する可能性の判断について,一般の方にとって理解が難しいところは,たとえご家族の方が「住居侵入事件の被疑者の方はそのような証拠隠滅行為は行わない」というように住居侵入事件の被疑者の方を信じていたとしても,検察官や裁判官が「住居侵入事件の被疑者の方が主観的にも客観的にも証拠隠滅を図る可能性がある」と判断する可能性があるという点です。
そこで,ご家族の方が「住居侵入事件の被疑者の方はそのような証拠隠滅行為は行わない」と信じているのであれば,なおさら刑事弁護士を付けて,「住居侵入事件の被疑者の方が主観的にも客観的にも証拠隠滅を図る可能性がない」ということを示していかなければなりません。
刑事弁護士は,刑事事件に関する専門的な知識の下,刑事事件の被疑者の方が早期に釈放できるよう,検察官や裁判官と話し合ったり,彼らの下した身体拘束をするとの決定に対して不服を申し立てたりしていきます。
住居侵入事件で早期釈放を望む場合,とりわけ「住居侵入事件の被疑者の方はそのような証拠隠滅行為は行わない」と信じている場合は,お近くの刑事弁護士事務所にご相談することをお薦めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は,刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
近所の住宅への住居侵入事件でお困りの場合は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部までご相談ください。
司法書士による戸籍の不正取得事件
司法書士による戸籍の不正取得事件
司法書士による戸籍の不正取得事件について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
【刑事事件例】
宮城県塩釜市で司法書士法人を経営しているAさんは,友人の探偵社を経営しているBさんに「対象者の戸籍謄本や住民票を代わりに取得してくれないか」と依頼されました。
Aさんは,司法書士法人の経営不振に陥っていたことから,Bさんの依頼を承諾し,戸籍等を不正に請求(不正取得)し,Bさんの探偵社に提供しました。
戸籍等の請求に当たっては,虚偽と認識しながらも,「損害賠償請求に伴う書類作成のため」などと虚偽に記載した請求書を利用・提出しました。
その後,戸籍を不正に取得された被害者の方が宮城県塩釜警察署に対して戸籍の不正取得事件の被害を訴えました。
その結果,Aさんは戸籍法違反などの容疑で逮捕されてしまいました。
(2021年8月5日に毎日新聞に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)
【戸籍の不正取得は何の犯罪になり得るのか】
刑事事件例では,探偵社を経営するBさんは戸籍・住民票を結婚相手の身辺調査のために利用したかったのだと考えられます。
この探偵社を経営するBさんの依頼に応じて,司法書士が第三者の戸籍謄本などを取得できる「職務上請求書」を悪用した場合,戸籍法違反,住民基本台帳法違反,有印私文書偽造・同行使罪が成立する可能性があります。
【戸籍法違反とは】
戸籍法135条
偽りその他不正の手段により,第10条若しくは第10条の2に規定する戸籍謄本等,第12条の2に規定する除籍謄本等又は第120条第1項に規定する書面の交付を受けた者は,30万円以下の罰金に処する。
「偽りその他不正の手段により,」「第10条の2に規定する戸籍謄本等」「の交付を受けた者」は,戸籍法違反の罪が成立し,「30万円以下の罰金」が科されます。
【住民基本台帳法違反とは】
住民基本台帳法50条
偽りその他不正の手段により,第11条第1項の規定による住民基本台帳の一部の写しの閲覧をし,第12条第1項若しくは第2項の住民票の写し若しくは住民票記載事項証明書の交付を受け,第20条第1項の戸籍の附票の写しの交付を受け,又は第30条の37第2項の規定による開示を受けた者は,10万円以下の過料に処する。
「偽りその他不正の手段により,」「第12条第1項若しくは第2項の住民票の写し」「の交付を受け」「た者」は,住民基本台帳法違反の罪が成立し,「10万円以下の過料」が科されます。
【有印私文書偽造罪・同行使罪とは】
刑法159条1項
行使の目的で,他人の印章若しくは署名を使用して権利,義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し,又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利,義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は,3月以上5年以下の懲役に処する。
刑法161条1項
前2条の文書又は図画を行使した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する。
司法書士が職務上請求書を使用する場合,職務上請求用紙を使用するところ,上記用紙は司法書士会が一元的に管理し,全国の司法書士会には配布されていることと思います。
この職務上請求書を司法書士が偽造した場合,有印私文書偽造罪・同行使罪が成立する可能性があります。
有印私文書偽造罪・同行使罪を犯した者には,「3月以上5年以下の懲役」が科されます。
【司法書士の資格剥奪・欠格事由とは】
司法書士法5条
次に掲げる者は,司法書士となる資格を有しない。
1号:禁錮以上の刑に処せられ,その執行を終わり,又は執行を受けることがなくなつてから3年を経過しない者
すでに述べたように,有印私文書偽造罪・同行使罪を犯した者には,「3月以上5年以下の懲役」が科されます。
そして,有印私文書偽造罪・同行使罪の刑事罰である「3月以上5年以下の懲役」は「禁錮以上の刑」にあたるため,司法書士の資格剥奪・欠格事由に該当する可能性があります。
そこで,刑事事件例では,有印私文書偽造罪・同行使罪で起訴されてしまうことを回避するための刑事弁護活動が必要になってくるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は,刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
司法書士による戸籍の不正取得事件でお困りの場合は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部までご相談ください。
宮城県名取市の窃盗事件
宮城県名取市の窃盗事件
宮城県名取市の窃盗事件について、あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説致します。
【刑事事件例】
AさんとVさんは宮城県名取市内にあるマンションの一室で長年一緒に同居しているものの、婚姻届は提出していない、いわゆる事実婚(内縁関係)のカップルです。
Aさんは、自身の遊ぶためのお金欲しさに、Vさんが保管していた高級ブランド腕時計を宮城県名取市に店舗を構えるブランド品買取専門店に売り出すために、Vさんに無断で複数点持ち去って、それを売却してしまいました。
Vさんの高級ブランド腕時計を売却したお金で豪華に遊び周ったAさんはその後、我に返り、自身の行為が犯罪に当たるのではないかとの不安を抱き、岩沼警察署に自首をすることを検討し始めました。
(この刑事事件例はフィクションです)
【窃盗罪とは】
刑法 235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法235条は、窃盗罪について規定しています。
窃盗罪の成立要件については、大きく分けて2つあるといってよいでしょう。
窃盗罪の要件の1つ目は、窃盗罪の条文に明記されている要件として、「他人の財物を窃取した」という要件です。
窃盗罪の要件の2つ目は、窃盗罪の条文に明記されていない要件として「不法領得の意思」(財物の所有者を排除して,経済的な用法に従って財物を利用・処分する意思)という窃盗を犯してしまった人の内心に関わる要件です。
AさんがVさんの高級ブランド腕時計をVさんに無断で持ち去り売却した行為は、刑法235条が定める窃盗罪の上記2つの要件を満たしていると判断され、Aさんの行為は窃盗罪に当たる可能性が高いと言って良いでしょう。
もっとも、刑法235条が定める窃盗罪については、窃盗罪を犯した人の窃盗罪の刑を免除する特例があります。
この窃盗罪についての特例を親族相盗例といいますが、この窃盗罪の特例を定める親族相盗例の規定がAさんに適用されることになるのでしょうか。
以下で、詳しく説明します。
【親族相当例とは】
刑法 244条
1 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪、第235条の3の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
2 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
3 前2項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。
さきほど述べた窃盗罪の刑を免除する特例は、刑法244条1項に記載されています。
ここで、窃盗罪の刑を免除する特例となっている刑法244条1項の内容を詳しくみていきますと、刑法244条1項は、「配偶者、直径血族又は同居の親族との間」で窃盗罪の罪を犯した人の刑を免除するという内容になっています。
ここで、「配偶者」とは民法上婚姻関係にある夫から見た妻、あるいは妻から見た夫のことを指します。
それでは、民法上婚姻関係にあるとは言えない事実婚(内縁関係にある)状態のカップルの一方から見た他方、刑事事件例に即して説明すると、Aさんから見たVさんは「配偶者」にあたるのでしょうか。
この点について判断した最高裁判所の判例(最高裁判所平成18日8月30日決定)は、窃盗罪の特例を定める刑法244条1項の適用範囲は明確に定める必要があるとの理由で、事実婚(内縁関係にある)状態の方に対しては、窃盗罪の特例を定めた刑法244条1項は適用も類推適用もされないとの決定をしました。
窃盗罪の特例を定めた刑法244条1項の適用範囲について述べたこの最高裁判例に従うと、刑事事件例のAさんには窃盗罪の特例を定めた刑法244条1項が適用されないことになり、原則通り、窃盗罪について規定している刑法235条が適用され、窃盗罪の刑事責任を問われる可能性が高いといえるでしょう。
【窃盗罪で自首を検討されている場合は…】
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件の加害者となってしまった方の刑事弁護を専門に扱う法律事務所です。
宮城県名取市の窃盗事件で自首を検討している方は、自首をなさる前に、あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部までご相談されることをお勧めいたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部では、刑事事件に精通した刑事弁護士が在籍しております。
自首をした場合の刑事手続の流れについての説明や、自首をした後になされるであろう取調べに対する法的助言を刑事事件に精通した刑事弁護士から受けることができます。
宮城県名取市の窃盗事件で自首を検討している方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部までご相談ください。
壁への落書きは犯罪になるのか(建造物損壊事件)
壁への落書きは犯罪になるのか(建造物損壊事件)
壁への落書きは犯罪になるのかという建造物損壊事件に関する疑問について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは宮城県仙台市若林区にある県立高校に通う高校生です。
Aさんは,同市のビル(V会社所有)の壁に塗料で落書きをしたとして逮捕されました。
Aさんは深夜,落書きしたビル付近の公園で,友人とたむろしていたところ,宮城県若林警察署の警察官により職務質問されました。
そして,その会話の中でAさんが壁への落書き事件に関与していたことが発覚してしまいました。
その後,宮城県若林警察署の警察官が捜査した結果,容疑が固まったとして,事件発生から3か月ほど経った後,逮捕されてしまったといいます。
Aさんによる壁への落書きは犯罪になるのでしょうか。
(2021年8月4日にHBC北海道放送に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)
【壁への落書きは建造物損壊罪にあたり得る】
刑法260条
他人の建造物…を損壊した者は,5年以下の懲役に処する。
建造物損壊罪は,刑法260条に定められている犯罪です。
建造物損壊罪の成立要件は,「他人の建造物」を「損壊」することです。
刑事事件例の壁への落書き事件では,Aさんは,V会社所有のビルに落書きをしており,建造物損壊罪の「他人の建造物」という要件は満たすと考えられます。
問題は壁への落書きが建造物損壊罪の「損壊」に当たるのかという点です。
この点,建造物損壊罪の「損壊」とは,効用の減少であると考えられています。
そして,この効用には,建造物の美観も含まれると考えられています。
この考え方と同じく,平成18年1月17日の最高裁判所決定では,公園の公衆トイレの壁にスプレーで「反戦」と大きく書いた行為について,「建物の外観ないし美観を著しく汚損し,原状回復に相当の困難を生じさせた」として建造物損壊罪の「損壊」に当たると判示されています。
この最高裁判所決定の考え方によって刑事事件例をみてみると,Aさんによる壁への落書きも建造物損壊罪の「損壊」に当たり得ると考えられます。
よって,Aさんには建造物損壊罪が成立すると考えられます。
壁への落書きは建造物損壊罪にあたり得るのです。
【壁への落書き事件(建造物損壊事件)と少年事件の関係】
壁への落書き事件(建造物損壊事件)を未成年(20歳未満)の少年が起こした場合,少年には少年法の規定が適用されます。
成年の刑事事件における刑事裁判が被疑事実があるか否か(被疑事実があれば,有罪となります)という点が問題となるのに対して,少年法が適用される少年事件では,①非行事実があるか否かと,②少年の保護が必要か否かという2点が問題となります。
刑事事件例で考えれば,①非行事実があるか否かということは,すなわちAさんが本当に壁への落書き事件(建造物損壊事件)を起こしたのかという問題を意味します。
一方,②少年の保護が必要か否かということは,少年の性格や環境に照らして将来再び非行を行ってしまう可能性があるのか,少年審判による保護処分によって将来再び非行を行ってしまうことを防ぐことができる可能性があるか,少年審判による保護処分が少年の更生に最も有効かつ適切かという問題を意味します。
刑事事件例で考えれば,Aさんが深夜,落書きしたビル付近の公園で,友人とたむろしていたことから,Aさんの環境は必ずしも良好であったとはいえなかったと考えられます。
そうすると,家庭裁判所は,少年の性格や環境に照らして将来再び非行を行ってしまう可能性があると考えてしまう可能性があり,その結果,少年の保護が必要であると考えられてしまう可能性があります。
少年事件では,壁への落書き事件(建造物損壊事件)を起こした背景等によっては,少年の要保護性(②少年の保護が必要か否か)が認められてしまう可能性があります。
この少年の要保護性を解消するためには,少年自身の改心やご家族の協力はもちろん,刑事弁護士による環境調整活動が大切となるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は,刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
壁への落書き事件(建造物損壊事件)でお困りの場合は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部までご相談ください。
薬局への建造物侵入・窃盗事件
薬局への建造物侵入・窃盗事件
薬局への建造物侵入・窃盗事件について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは,以前勤務していた宮城県仙台市若林区内の薬局に侵入し、抗がん剤約100万円相当を盗んだとして,宮城県若林警察署の警察官により建造物侵入罪・窃盗罪の容疑で逮捕されました。
Aさんは,従業員を装って,卸会社に抗がん剤を注文して薬局に納品させた上,夜間に薬局に侵入し納品された抗がん剤を無断で持ち去ったといいます。
建造物侵入・窃盗事件を起こした動機について,Aさんは,転売してローンに充当するつもりだったといいます。
(2021年8月2日にTBSNEWSに掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)
【建造物侵入罪とは】
刑法130条
正当な理由がないのに,…人の看守する…建造物…に侵入した者は,3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
刑事事件例の薬局は建造物侵入罪の要件である「人の看守する…建造物」に当たります。
Aさんは,その建造物侵入罪の「人の看守する…建造物」に無断で立ち入っており,ここに建造物侵入罪の要件である「侵入」が存在します。
よって,Aさんには建造物侵入罪が成立することになるでしょう。
【窃盗罪とは】
刑法235条
他人の財物を窃取した者は,窃盗の罪とし,10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
Aさんは,納品された抗がん剤を無断で持ち去っており,窃盗罪の「他人の財物を窃取した」という要件を満たします。
よって,Aさんには窃盗罪が成立することになるでしょう。
【建造物侵入・窃盗事件を起こしたらどうすればいいか】
建造物侵入・窃盗事件を起こした場合,被害者の方と示談をするために,すぐに示談交渉を始めましょう。
建造物侵入・窃盗事件の示談では,建造物侵入・窃盗事件を起こしてしまったことへの謝罪,盗品の返還,盗品の返還に代わる被害弁償金の支払い,建造物への立ち入り禁止の誓約などを行うことが考えられます。
刑事事件例のように,転売目的で建造物侵入・窃盗事件を起こし,すでに盗品を売り払ってしまったという場合は,盗品の返還に代わる被害弁償金の支払いをするというところがポイントとなります。
被害弁償金の金額は,盗品自体の金額のほか,慰謝料が含まれることになるのが通常です。
示談といっても,示談締結の内容は様々な態様があります。
例えば,単に示談金を受け取ることには了承する場合や,示談金を受け取ることに了承した上,建造物侵入・窃盗事件の被疑者の方を許すことにするという場合などがあります。
この示談締結のレベル,程度というのは,まさに刑事弁護士のスキルによって左右され得るところですので,刑事事件に強い刑事弁護士に示談を任せることが重要です。
なお,刑事弁護士を付けずに,建造物侵入・窃盗事件の被疑者の方,若しくはそのご家族の方自身で示談交渉を行うというのは十分に注意しなければなりません。
それは,刑事事件に関する知識がない一般の方が示談交渉をする場合,示談書の内容やその効力をよく知らないまま示談締結をしてしまい,後になって示談の内容が自身に不利であったり,望んでいた法的効果が得られる示談内容ではなかったりすることが容易に想定できるからです。
示談をする場合,やはりその道の専門家である刑事弁護士を付けるのが安全でしょう。
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薬局への建造物侵入・窃盗事件でお困りの場合は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部までご相談ください(初回接見契約については,こちらをご覧ください)。