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窃盗事件で責任能力を争いたい
窃盗事件で責任能力を争いたい
窃盗事件で責任能力を争いたい場合について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは,宮城県塩釜市内において窃盗事件を起こしてしまい,窃盗罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの逮捕の連絡を受けたAさんの家族は,Aさんに統合失調症の症状がみられたことから,責任能力を争いたいと考え,責任能力に詳しい刑事弁護士を探しています。
(刑事事件例はフィクションです。)
【責任能力とは】
物事の良し悪しを判断できない者が違法な行為をしたからといって,その者に違法な行為を行ったことに対する道義的な非難を加えることはできません。
なぜなら,そのような者には,物事の良し悪しを判断して違法な行為をしないという期待ができない(期待可能性がない)からです。
そのため,違法な行為に対して道義的な非難を与えるためには,その大前提として,行為者に人格的な適性がなければならないと考えられています。
その人格的な適性とは,自分の行為が違法であることを意識し,そのような行為をしないように自分を律することができる能力(責任能力)を有することをいい,具体的には,精神の障害がないこと(刑法39条)であり,また,刑事未成年者でないこと(刑法41条)ということになります。
刑法39条
1項:心神喪失者の行為は,罰しない。
2項:心神耗弱者の行為は,その刑を減軽する。
刑法39条1項が定める「心神喪失者」とは,精神の障害により,行為が違法であることを認識する能力がない,又は,この認識に従って行動する能力がない状態にある者のことをいいます。
また,刑法39条2項が定める「心神耗弱者」とは,精神の障害により,行為が違法であることを認識する能力が著しく減退しているか,又は,この認識に従って行動する能力が著しく減退している状態にある者のことをいいます。
【どのような場合に責任無能力,限定責任能力が認められるか】
犯罪精神医学の慣例では,統合失調症や急性アルコール中毒,慢性アルコール中毒のうちアルコール精神病,アルコール痴呆,覚せい剤中毒などが,「心神喪失者」や「心神耗弱者」にあたり,責任無能力者又は限定責任能力者として扱われることがあるとされています。
また,犯罪精神医学上では,アルコール単純酩酊状態にあったり,病的性格(単なる性格の異常)の持ち主であったりしても,完全な責任能力があるとして考えています(通説)。
ただし,「心神喪失者」や「心神耗弱者」にあたるか否かについて,精神障害の有無に関しては専門家である精神医学者の意見を十分に尊重しなければならないと考えられていますが,最終的な判断は裁判所に判断に委ねられています。
【精神鑑定について】
責任能力が争われるような刑事事件では,検察官により簡易鑑定(精神診断)又は鑑定嘱託が行われるのが通常です。
簡易鑑定(精神診断)とは,精神の障害や薬物中毒が疑われる被疑者の方について,被疑者の方の承諾を得て,精神科医によって行われる簡単な精神鑑定のことをいいます。
鑑定嘱託とは,捜査官が精神科医(などの特別の学識経験のある第三者)に対し,その学識経験に基づいた報告をすることを嘱託することをいいます。
被疑者の方の鑑定にあたり,被疑者の方を病院等に留置する必要がある場合には,鑑定留置がなされることがあることが特徴です。
【責任能力を争いたい場合】
責任能力を争いたい場合のうち,明らかに責任能力がないと思われる場合には,検察官に対して不起訴処分をするように訴えていくことになると考えられます。
また,その他に,責任能力の有無や軽重について争いたい場合は,不起訴処分となった場合を除き,法定で本格的に争っていくことになると考えられます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は,刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
窃盗事件で責任能力を争いたい場合は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部までご相談ください。
強制性交等事件の被害者参加制度④
強制性交等事件の被害者参加制度④
強制性交等事件の被害者参加制度④について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
この記事は強制性交等事件の被害者参加制度③の続きとなります。
【被害者の方が利用できる制度について】
以下では,被害者参加制度や心情意見陳述制度の他に,被疑者の方が利用できる制度について解説します。
【被害者の方等の公判手続の傍聴とは】
犯罪被害者保護法2条
刑事被告事件の係属する裁判所の裁判長は,当該被告事件の被害者等(被害者又は被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう。以下同じ。)又は当該被害者の法定代理人から,当該被告事件の公判手続の傍聴の申出があるときは,傍聴席及び傍聴を希望する者の数その他の事情を考慮しつつ,申出をした者が傍聴できるよう配慮しなければならない。
被害者の方等は,公判手続を傍聴することができます。
刑事事件例の強制性交等事件においても,強制性交等事件の被害者の方等は,公判を傍聴することができます。
【被害者の方等の公判記録の閲覧及び謄写とは】
犯罪被害者保護法3条1項
刑事被告事件の係属する裁判所は,第1回の公判期日後当該被告事件の終結までの間において,当該被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から,当該被告事件の訴訟記録の閲覧又は謄写の申出があるときは,検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き,閲覧又は謄写を求める理由が正当でないと認める場合及び犯罪の性質,審理の状況その他の事情を考慮して閲覧又は謄写をさせることが相当でないと認める場合を除き,申出をした者にその閲覧又は謄写をさせるものとする。
被害者等の方等は,第1回公判期日後から刑事事件(刑事事件例では強制性交等事件)が終結するまでの間に,公判記録を閲覧又は謄写することができます。
【損害賠償命令制度とは】
犯罪被害者保護法23条1項
次に掲げる罪に係る刑事被告事件(刑事訴訟法第451条第1項の規定により更に審判をすることとされたものを除く。)の被害者又はその一般承継人は,当該被告事件の係属する裁判所(地方裁判所に限る。)に対し,その弁論の終結までに,損害賠償命令(当該被告事件に係る訴因として特定された事実を原因とする不法行為に基づく損害賠償の請求(これに附帯する損害賠償の請求を含む。)について,その賠償を被告人に命ずることをいう。以下同じ。)の申立てをすることができる。
被害者等は,刑事事件(刑事事件例では強制性交等事件)の弁論の終結までに,損害賠償命令の申立てをすることができます。
損害賠償命令制度では,刑事事件(刑事事件例では強制性交等事件)の訴訟記録を流用することができます(犯罪被害者保護法23条4項)。
この損害賠償命令制度を利用すれば,刑事裁判の証拠を用いることで,民事裁判の立証を省略することができます。
【刑事和解制度とは】
犯罪被害者保護法19条
1項:刑事被告事件の被告人と被害者等は,両者の間における民事上の争い(当該被告事件に係る被害についての争いを含む場合に限る。)について合意が成立した場合には,当該被告事件の係属する第一審裁判所又は控訴裁判所に対し,共同して当該合意の公判調書への記載を求める申立てをすることができる。
4項:第1項又は第2項の規定による申立てに係る合意を公判調書に記載したときは、その記載は、裁判上の和解と同一の効力を有する。
被害者等は,刑事事件(刑事事件例では強制性交等事件)の被告人との間で,民事上の争いについての合意が成立した場合には,その合意を公判調書に記載するよう申立てることができます。
合意が公判調書に記載された時は,その記載は裁判上の和解と同一の効果を有します。
この刑事和解制度を利用すれば,刑事事件(刑事事件例では強制性交等事件)の被告人が合意通りの支払いをしなかったときに,民事訴訟を一から提起することなく,直ちに強制執行をすることができます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,刑事事件を専門とする法律事務所です。
強制性交等事件の被害者参加制度についてお困りの方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
強制性交等事件の被害者参加制度③
強制性交等事件の被害者参加制度③
強制性交等事件の被害者参加制度③について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
この記事は強制性交等事件の被害者参加制度②の続きとなります。
【被害者参加制度での被害者保護】
刑事訴訟法316条の39第1項(付添い)
裁判所は,被害者参加人が第316条の34第1項(同条第五項において準用する場合を含む。第四項において同じ。)の規定により公判期日又は公判準備に出席する場合において,被害者参加人の年齢,心身の状態その他の事情を考慮し,被害者参加人が著しく不安又は緊張を覚えるおそれがあると認めるときは,検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き,その不安又は緊張を緩和するのに適当であり,かつ,裁判官若しくは訴訟関係人の尋問若しくは被告人に対する供述を求める行為若しくは訴訟関係人がする陳述を妨げ,又はその陳述の内容に不当な影響を与えるおそれがないと認める者を,被害者参加人に付き添わせることができる。
刑事訴訟法316条の39第4項(被告人との間の遮へい措置)
裁判所は,被害者参加人が第316条の34第1項の規定により公判期日又は公判準備に出席する場合において,犯罪の性質,被害者参加人の年齢,心身の状態,被告人との関係その他の事情により,被害者参加人が被告人の面前において在席,尋問,質問又は陳述をするときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であつて,相当と認めるときは,検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き,弁護人が出頭している場合に限り,被告人とその被害者参加人との間で,被告人から被害者参加人の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができる。
刑事訴訟法316条の39第5項(傍聴人との間の遮へい措置)
裁判所は,被害者参加人が第316条の34第1項の規定により公判期日に出席する場合において,犯罪の性質,被害者参加人の年齢,心身の状態,名誉に対する影響その他の事情を考慮し,相当と認めるときは,検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き,傍聴人とその被害者参加人との間で,相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができる。
公判廷内で自身のプライバシーが守られない場合があっては,被害者の方が被害者参加制度を積極的に利用することができません。
そこで,被害者参加制度では,付添い(刑事訴訟法316条の39第3項)や遮へい措置(刑事訴訟法316条の39第4項,5項)をとることができるとされています。
刑事事件例の強制性交等事件においても,付添いや遮へい措置といった強制性交等事件の被害者の方のプライバシーを守るための措置がなされる可能性があります。
【被害者のよる心情意見陳述制度とは】
刑事訴訟法292条の2(心情意見陳述制度)
1項:裁判所は,被害者等又は当該被害者の法定代理人から,被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは,公判期日において,その意見を陳述させるものとする。
2項:前項の規定による意見の陳述の申出は,あらかじめ,検察官にしなければならない。
この場合において,検察官は,意見を付して,これを裁判所に通知するものとする。
被害者による心情意見陳述制度は,被害者の方の心情や事件に関する意見を述べることができる制度です。
刑事事件例の強制性交等事件で考えれば,「強制性交等事件の加害者は絶対に許せない。厳罰に処してほしい。」などと,具体的に強制性交等事件の被害に関する心情や意見を陳述するこができると考えられます。
6項:第157条の4,第157条の5及び第157条の6第1項及び第2項の規定は,第1項の規定による意見の陳述について準用する。
被害者による心情意見陳述制度では,付添い(刑事訴訟法157条の4)や遮へい措置(刑事訴訟法157条の5),ビデオリンク方式(刑事訴訟法157条の6第1項,2項)をとることができ,被害者の方のプライバシーに配慮がなされています。
9項:第1項の規定による陳述又は第7項の規定による書面は,犯罪事実の認定のための証拠とすることができない。
被害者による心情意見陳述は,犯罪事実の認定のための証拠とすることはできません。
しかし,量刑資料とすることはできると考えられているため,加害者に対する厳罰を求めたい被害者の方にとっては,重要な制度となっています。
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強制性交等事件の被害者参加制度についてお困りの方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
この記事は強制性交等事件の被害者参加制度④に続きます。
強制性交等事件の被害者参加制度②
強制性交等事件の被害者参加制度②
強制性交等事件の被害者参加制度②について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
この記事は強制性交等事件の被害者参加制度①の続きとなります。
【被害者参加制度における証人尋問】
刑事訴訟法316条の36(証人尋問)
裁判所は,証人を尋問する場合において,被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から,その者がその証人を尋問することの申出があるときは,被告人又は弁護人の意見を聴き,審理の状況,申出に係る尋問事項の内容、申出をした者の数その他の事情を考慮し,相当と認めるときは,情状に関する事項(犯罪事実に関するものを除く。)についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項について,申出をした者がその証人を尋問することを許すものとする。
被害者参加をした場合,被害者参加人は,情状に関する事項について,証人の供述の証明力を争うために必要な事項について,証人尋問をすることができます。
被害者参加人による証人尋問は,検察官による尋問が終わった後になされます。
刑事事件例の強制性交等事件について具体例を考えてみれば,強制性交等事件の加害者側弁護士が加害者の身元引受人となる家族などを情状証人として証人尋問をし,加害者を今後監視監督して,再犯を起こさせないようにするとの主張をすることなどが考えられます。
これらの情状証人の情状に関する供述に対して,被害者参加人(・被害者参加人弁護士)は,証明力がないことを主張するために証人尋問をすることが考えられます。
【被害者参加制度における被告人質問】
刑事訴訟法316条の37(被告人質問)
裁判所は,被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から,その者が被告人に対して第311条第2項の供述を求めるための質問を発することの申出があるときは,被告人又は弁護人の意見を聴き,被害者参加人又はその委託を受けた弁護士がこの法律の規定による意見の陳述をするために必要があると認める場合であつて,審理の状況,申出に係る質問をする事項の内容,申出をした者の数その他の事情を考慮し,相当と認めるときは,申出をした者が被告人に対してその質問を発することを許すものとする。
被害者参加人は,意見陳述(後述)をするために必要な事項について,被告人に対して質問することができます。
刑事事件例の強制性交等事件においても,被害者参加人は,意見陳述をするために必要な事項について,強制性交等事件の被告人に対して質問をすることができます。
【被害者参加制度における弁論としての意見陳述】
刑事訴訟法316条の38(弁論としての意見陳述)
1項:裁判所は,被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から,事実又は法律の適用について意見を陳述することの申出がある場合において,審理の状況,申出をした者の数その他の事情を考慮し,相当と認めるときは,公判期日において,第293条第1項の規定による検察官の意見の陳述の後に,訴因として特定された事実の範囲内で,申出をした者がその意見を陳述することを許すものとする。
4項:第1項の規定による陳述は、証拠とはならないものとする。
被害者参加人は,事実又は法律の適用について意見を陳述することができます。
被害者参加人は,この弁論としての意見陳述の際に,量刑意見も述べることができます。
ただし,弁論としての意見陳述は,証拠とはなりません。
刑事事件例の強制性交等事件の被害者の方は,この意見陳述で厳罰を求める旨の主張をすることができます。
例えば,強制性交等事件の犯行態様が悪質であること,強制性交等事件により多大な身体的・精神的苦痛を受けたこと,強制性交等事件の加害者には情状はないことなどを主張することができると考えられます。
なお,後述する被害者による心情意見陳述制度の意見陳述(刑事訴訟法292条の2)は量刑判断の基礎となりますが,弁論としての意見陳述(刑事訴訟法316条の38)は量刑判断の基礎とはなりません。
また,後述する被害者による心情意見陳述制度の意見陳述(刑事訴訟法292条の2)は主に被害者の心情を述べるものであるのに対し,弁論としての意見陳述(刑事訴訟法316条の38)は具体的に「懲役○年を求刑します」などと量刑意見などを述べるものです。
後述する被害者による心情意見陳述制度の意見陳述(刑事訴訟法292条の2)と弁論としての意見陳述(刑事訴訟法316条の38)は,その沿革や設けられた時期が異なるため,厳密には別の制度です。
しかし,両方の制度の意見陳述を行うこともできます。
心情意見陳述制度の意見陳述(刑事訴訟法292条の2)は通常,検察官による論告求刑の前に,弁論としての意見陳述(刑事訴訟法316条の38)は検察官による論告求刑の後に行われます。
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強制性交等事件の被害者参加制度についてお困りの方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
この記事は強制性交等事件の被害者参加制度③に続きます。
強制性交等事件の被害者参加制度①
強制性交等事件の被害者参加制度①
強制性交等事件の被害者参加制度①について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
この記事は強制性交等事件の被害者参加制度①となります。
【刑事事件例】
宮城県仙台市青葉区に住むAさんは,同市内において強制性交等事件の被害を受けました。
強制性交等事件を起こした加害者は強制性交等罪で起訴されたといいます。
Aさんは,強制性交等事件の刑事裁判に被害者として参加して,加害者に対する厳罰を求めたいと考えています。
(刑事事件例はフィクションです。)
【公判手続における被害者特定事項の秘匿】
刑事訴訟法290条の2第1項
裁判所は,次に掲げる事件を取り扱う場合において,当該事件の被害者等(被害者又は被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者,直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう。以下同じ。)若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から申出があるときは,被告人又は弁護人の意見を聴き,相当と認めるときは,被害者特定事項(氏名及び住所その他の当該事件の被害者を特定させることとなる事項をいう。以下同じ。)を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。
刑事事件例では,被害者の方は,強制性交等事件の刑事裁判に被害者として参加して,加害者に対する厳罰を求めたいと考えていますが,その被害者参加にあたって被害者の方が心配されるのは,公判手続において自己のプライバシーが守られないことだと考えられます。
強制性交等事件の被害者の方は,公判手続では,自己のプライバシーが守られるようにしてほしいと思うはずです。
ここで,刑事訴訟法290条の2第1項では,公判手続における被害者特定事項の秘匿について定められており,被害者等は,公判手続における被害者特定事項の秘匿を申し出ることができるとされています。
被害者特定事項の秘匿ができる犯罪は,強制わいせつ罪や強制性交等罪などの性犯罪事件,被害者特定事項が公開の法廷で明らかにされることにより被害者等の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれがあると認められる事件などです。
刑事事件例の強制性交等事件は被害者特定事項の秘匿ができる刑事事件に含まれているため,強制性交等事件の被害者の方は公判手続における被害者特定事項の秘匿を申し出ることができます。
【被害者参加制度とは】
刑事事件例の強制性交等事件の被害者の方は,強制性交等事件の刑事裁判に被害者として参加して,強制性交等事件の加害者に対する厳罰を求めたいと考えています
このような場合に利用できる制度が被害者参加制度です。
刑事訴訟法316条の33(被害者参加制度)
裁判所は,次に掲げる罪に係る被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から,被告事件の手続への参加の申出があるときは,被告人又は弁護人の意見を聴き,犯罪の性質,被告人との関係その他の事情を考慮し,相当と認めるときは,決定で,当該被害者等又は当該被害者の法定代理人の被告事件の手続への参加を許すものとする(以下省略)。
被害者参加制度は,被害者保護の観点から,被害者が当事者として,主体的に刑事裁判に関与することができる制度です。
被害者参加制度が利用できる犯罪は,故意の犯罪行為により人を死傷させた罪,強制わいせつ罪,強制性交等罪,業務上過失致死傷罪,自動車運転死傷行為処罰法の罪(過失致死傷罪など),逮捕監禁罪,略取誘拐罪,人身売買罪などです。
刑事事件例の強制性交等事件は被害者参加制度が利用できる犯罪に含まれていますので,強制性交等事件の被害者の方は被害者参加制度を利用することができます。
被害者参加制度を利用するためには,被害者等又はこれらの者から委託を受けた弁護士が,刑事事件を担当する検察官に対して,刑事事件へ参加したい旨を申し出る必要があります。
そして,被害者参加を許された者(被害者参加人)又は委託を受けた弁護士は,公判期日に出席することができます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は,刑事事件を専門とする法律事務所です。
強制性交等事件の被害者参加制度についてお困りの方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
この記事は強制性交等事件の被害者参加制度②に続きます。
宮城県仙台市宮城野区の建造物等以外放火事件
宮城県仙台市宮城野区の建造物等以外放火事件
宮城野仙台市宮城野区の建造物等以外放火事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは、以前交際していたVさんに対して恨みを抱いていたため、宮城県仙台市宮城野区にあるVさんの自宅前に置いてあった自転車にガソリンをまいて、ライターで火を付けて、その場から逃走しました。
自転車は勢いよく燃えてしまいましたが、Vさんの自宅など、そのほかの場所に火が回ることはありませんでした。
なお、Vさんの自宅は住宅街にあり、他の住宅が多数密集していました。
後日、仙台東警察署の警察官より、Aさんのもとに、話を聞きたいので署まで来てくれないかとの連絡がありました。
(この刑事事件例はフィクションです)
【建造物等以外放火罪とは】
刑法 110条1項
放火して、前2条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、1年以上10以下の懲役に処する。
刑法 110条2項
前項の物が自己の所有に係るときは、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
建造物等以外放火罪が成立するには、①「前2条に規定する物以外の物」を②「焼損」して、これによって、③「公共の危険」を生じさせる必要があります。
また、過失により出火させた犯罪である失火罪と区別するために、④故意に火をつけたという要件も必要になります。
以下で、簡単にそれぞれの要件について説明します。
建造物等以外放火罪の1つ目の要件は、火を付けた対象に関する要件で、「前2条に規定する物以外の物」という要件です。
「前2条」とは、刑法108条・109条のことを意味します。
そのため、刑法110条の建造物等以外放火罪の対象は幅広く、108条・109条に定める建造物・艦船・鉱坑、人が現在する汽車・電車以外の一切の物に放火した場合は、建造物等以外放火罪の対象になります。
建造物等以外放火罪にあたる例としては、車やバイク、自転車、ゴミ捨て場に置かれたゴミなどが挙げられます。
そして、この「前2条に規定する物以外の物」が他人が所有する物であれば刑法110条1項が適用され、「前2条に規定する物以外の物」が自身の所有する物であれば110条2項が適用されることになります。
これを刑事事件例で説明すると、自転車は建造物等以外放火罪の対象になる物ですので、「前2条に規定する物以外の物」という要件は満たされることになるでしょう。
そして、Aさんが火を付けた自転車はVさんの所有する物なので、刑事事件例では、刑法110条1項に規定する他人所有の「前2条に規定する物以外の物」に当たることになるでしょう。
建造物等以外放火罪の2つ目の要件は、「焼損」したという要件です。
建造物等以外放火罪における「焼損」とは、火がその媒介している物から離れて、火を付けた物に燃え移り独立して燃焼を継続する状態のことをいいます。
刑事事件例においては、火の媒介物となっているライターから、火が自転車へと燃え移り、その火がライターから独立して自転車を燃焼し続けている状態になっているといえます。
よって、建造物等以外放火罪の2つ目の要件である「焼損」の要件も満たすことになりそうです。
建造物等以外放火罪の3つ目の要件は、「公共の危険」を生じさせることです。
「公共の危険」とは、不特定又は多数人の生命・身体・財産に危険を及ぼす状態のことをいいます。
これを刑事事件例で説明すると、Aさんが火を付けた自転車は住宅街が密集しているVさんの自宅前に停められており、自転車からVさんの家や、Vさん以外の家へと延焼する可能性があったといえます。
よって、建造物等以外放火罪の3つ目の要件である「公共の危険」を生じさせるという要件も満たす可能性が高いといえます。
建造物等以外放火罪の4つ目の要件は、故意にAさんが放火行為をしたということです。
「故意」とは、犯罪の結果が生じることを認識している状態、あるいは犯罪の結果が生じても構わないと思っている状態のことをいいます。
刑事事件例では、Aさんは自転車を燃やそうという意思で自転車に火を放っていますので、建造物等以外放火罪の4つ目の要件である、建造物等以外放火罪についての故意が認められることになるでしょう。
以上より、Aさんには自己所有の建造物等以外放火罪が認められる可能性が高いといえるでしょう。
【建造物等以外放火罪について警察での捜査が予定されている方は】
自己所有の建造物等以外放火罪には、罰金刑が定められておらず、1年以上10年以下の懲役刑が定められていることから、犯罪の中で比較的刑が重い犯罪類型といっても良いでしょう。
そのため、建造物等以外放火罪について警察が捜査を既に開始している場合、いち早く刑事事件に精通した刑事弁護人に相談することをお勧めします。
建造物等以外放火罪をはじめとする刑事事件に精通した刑事弁護人に対して事前に相談することで、今後逮捕されるのかといった、刑事事件についての見通しを立てることが期待できます。
また、建造物等以外放火罪をはじめとする刑事事件に精通した刑事弁護人から、取調べについて、法的観点から的確なアドバイスにを得ることも期待できるでしょう。
弁護人法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、建造物等以外放火罪をはじめとする刑事事件に精通した刑事弁護人が在籍しています。
宮城県仙台市宮城野区で建造物等以外放火罪でお困りの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部まで一度ご相談ください。
窃盗事件で弁護士を代えたい
窃盗事件で弁護士を代えたい
窃盗事件で弁護士を代えたい場合について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
【刑事事件例】
宮城県名取市に住むAさんは,同市内で窃盗事件を起こしてしまいました。
その後,Aさんは窃盗罪の容疑で逮捕,勾留されてしまいました。
Aさんには国選弁護士が付きましたが,Aさんとその家族は国選弁護士と信頼関係を築けずにいました。
Aさんは窃盗罪で起訴されましたが,Aさんの家族はAさんのために弁護士を代えたいと考えています。
(刑事事件例はフィクションです。)
【国選弁護士と私選弁護士の違い】
国選弁護士は,国が弁護士費用を負担することにより,付けることができる弁護士です。
国選弁護士は,裁判所が国選弁護士の選任決定をし,裁判所から依頼を受けた法テラスが国選弁護士の名簿に従って指名をすることによって決まります。
また,国選弁護士を付けるためには,資力要件を満たす必要があります。
具体的には,被疑者の方の資力が50万円に満たないことが必要です(刑事訴訟法第36条の2の資産及び同法第36条の3第1項の基準額を定める政令1条,2条)。
これに対して,私選弁護士は,ご依頼者の方の意向で,ご依頼者の方が弁護士費用を負担することにより,付けることができる弁護士です。
私選弁護士は,ご依頼者の方自身が弁護士を探して,「この弁護士に任せたい」と選ぶことができます。
国選弁護士と違い,私選弁護士はご依頼者の方が自分の目で見て,実際に話した上で,弁護士として選ぶことができるため,ご依頼者の方が弁護士との信頼関係が築きやすい,弁護士の刑事弁護活動に納得しやすい傾向にあります。
もちろん,国選弁護士と私選弁護士のどちらを選ぶかによって,刑事弁護活動が大きく変わるということは考えられません。
しかし,国選弁護士の刑事弁護への熱意や国選弁護報酬への考え方によっては,事実上,刑事弁護活動の取組み方に違いが出ることがあります。
例えば,弁護士には,主として一般民事事件を取り扱っている弁護士,主として企業法務を行っている弁護士,刑事事件を専門にしている弁護士などと,多種多様な人材がいます。
弁護士によっては,その専門分野が異なったり,分野への熱意が異なったりする結果,無意識のうちに国選弁護事件の優先順位が下がってしまうという状況が皆無というわけではありません。
【弁護士を代えたい場合は...】
刑事事件の被疑者となってしまうという経験は,通常,被疑者の方に何度も起こり得るものではありません。
また,刑事事件の真の解決のためには,刑事弁護士としっかりと信頼関係を築き,ご家族の方からの協力を得て,再犯を防止し,更生をすることが必要です。
刑事弁護士を切り替え,公判までの被害弁償を進めたり,綿密なコミュニケーションを取った上で,情状証人尋問や被告人質問に臨んだりするといったことが重要です。
刑事事件の真の解決のために,弁護士を信頼のできる刑事弁護士に代えたいという場合は,ぜひ刑事弁護士が所属する法律事務所に相談してみるのが良いでしょう(無料法律相談についてはこちら)。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は,刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
窃盗事件で弁護士を代えたい場合は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部までご相談ください。
宮城県石巻市の器物損壊事件
宮城県石巻市の器物損壊事件
宮城県石巻市の器物損壊事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
【刑事事件例】
宮城県石巻市に住むAさんは、仕事のストレスを発散するために、酒に酔った勢いで、同市内に居住しているVさんの自宅前に停めていた車の窓ガラスに向かって石を投げつけました。
これによって、Vさんの車の窓ガラスは割れてしまいました。
後日、Vさんの自宅周りで河北警察署の警察官がパトロールしていることに気が付いたAさんは、河北警察署に器物損壊罪について自首をすることを検討しています。
(この刑事事件例はフィクションです)
【器物損壊罪とは】
刑法 261条
前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
刑法 264条
第259条、第261条及び前条の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
刑事事件例のAさんのように他人の車の窓ガラスを割るといった、他人が所有する物を物理的に破壊する行為は、器物損壊罪の典型的な行為と言えます。
そのため、刑事事件例のAさんの行為は器物損壊罪に当たる可能性が高いと言えます。
そして、器物損壊罪は刑法264条に規定されているとおり、器物損壊事件の被害に遭われてしまった方などが捜査機関に対して犯罪があったことを申告して、器物損壊事件の犯人の処罰を求める意思を表示しなければ起訴することができない、親告罪と呼ばれる犯罪になります。
なお、この処罰を求める意思表示のことを「告訴」と言い、告訴がすることができる者のことを「告訴権者」と言います。
【自首とは】
刑法 42条
1 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
2 告訴がなければ公訴を提起することができない罪について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、前項と同様とする。
刑事事件例のAさんは器物損壊罪について自首を検討しています。
自首については、刑法42条に規定があります。
刑法42条1項では、自首が成立するためには、「罪を犯した者」が警察などの「捜査機関に発覚する前」に犯罪の事実を申告する必要があることを規定しています。。
また、刑事事件例の器物損壊罪のような親告罪については、刑法42条2項が、捜査機関以外にも告訴権者に発覚する前に告訴権者に対して自身の犯罪について告知することで、自首と同様の扱いをすることを規定しています。
それでは、刑事事件例のAさんには器物損壊罪についての自首が成立するでしょうか。
刑事事件例の器物損壊事件で問題となる自首の要件は、刑法42条1項の「捜査機関に発覚する前に」という要件です。
この内、「捜査機関」とは、捜査機関全体のことを意味します。
そのため、犯罪の事実を直接申告した警察官が犯罪の事実を知らなくても、捜査機関の誰かが知っていた場合には自首は成立しません。
次に、「発覚する前」とは、犯罪の事実と犯人が発覚する前のことを意味します。
犯罪の事実が発覚していても、犯人が誰であるかが分かっていない場合は、「発覚する前」に当たることになります。
一方、犯罪の事実と犯人が誰であるかが分かっているが、その犯人がどこにいるかが分かっていない場合には、「発覚する前」には当たりません。
従って、単に犯人がどこにいるのかが分からない場合に自首をしても、自首は成立しないことになります。
なお、このような「発覚する前」の理解については、刑法42条1項に規定されている告訴権者に対して犯罪の告知をする場合であっても同様です。
これを刑事事件例で説明すると、車の窓ガラスが割れていることはすぐに気が付くことができるものであること、及び、Vさんの自宅周りを河北警察署の警察官がパトロールしていたことからすると、器物損壊罪の犯罪事実ついては捜査機関のひとつである河北警察署に対しても、告訴権者であるVさんに対しても発覚している可能性が高いと言える状況でしょう。
もっとも、器物損壊罪の犯人がAさんであると特定されているかについては、刑事事件例の事実関係だけでは分かりません。
河北警察署の警察官がAさんの自宅を訪れずにVさんの自宅周辺をパトロールしているからといって、器物損壊罪の犯人がAさんであると特定できていないと断言することはできません。
器物損壊罪の犯人がAさんであることが特定されていても、Aさんの自宅の住所が分からないだけの場合があります。
従って、刑事事件例の事実関係において、Aさんが捜査機関のひとつである河北警察署や、告訴権者のひとりであるVさんに対して、自身が犯した器物損壊罪について「自分がやりました」と申告しても、自首が成立しない可能性があります。
【器物損壊罪で自首を検討されている方は】
自首の成立は、刑が軽減されるための判断要素のひとつとなります。
自首が成立したからといって、必ず刑が減刑されるわけではなく、自首が成立した方に対してその刑を減刑するかどうかは裁判所の自由な判断によります。
そのため、刑事事件の内容や自首の態様など様々な事情を総合的に考慮して刑を減刑するか、減刑をする場合にはその程度を決定することになります。
また、刑事事件例の器物損壊事件のように、そもそも自首が成立するか否か微妙な判断が求められる場合もあります。
単に警察が自分のもとに来ていない段階で警察署を自ら訪れ、器物損壊罪などの犯罪の事実を警察官に申告しても、自首が成立しない可能性は十分にあります。
そのため、器物損壊罪などの犯罪を犯してしまい自首を検討されている方は、一度、刑事事件に精通した刑事弁護人に対して相談することをお勧め致します。
刑事事件に精通した刑事弁護人に相談することで、そもそも自首が成立するような刑事事件なのかといった見通しを得られることが期待できるでしょう。
また、自首が成立するような事件の場合には、具体的な自首の態様等についてアドバイスを得ておくことも、器物損壊罪の刑の減軽を目指すにあたって非常に有益でしょう。
弁護人法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、器物損壊事件などの刑事事件に精通した刑事弁護人が在籍しています。
宮城県石巻市で器物損壊事件について自首を検討されている方は、ぜひ、弁護人法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部までご相談ください。
交際相手への不同意堕胎事件
交際相手への不同意堕胎事件
交際相手への不同意堕胎事件について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは,交際していたVさん宅(宮城県多賀城市)において,Vさんの承諾を得ずに中絶薬を投与し,堕胎させたとして,宮城県塩釜警察署に不同意堕胎罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんは,Vさんとの結婚後の将来に不安があったため,堕胎をさせてしまったといいます。
Aさんのご家族は,Aさんが不同意堕胎罪の容疑で逮捕されたと連絡を受けました。
(2021年9月14日に朝日新聞デジタルに掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)
【不同意堕胎罪とは】
刑法215条(不同意堕胎罪)
女子の嘱託を受けないで,又はその承諾を得ないで堕胎させた者は,6月以上7年以下の懲役に処する。
不同意堕胎罪は,その名の通り,妊娠中の女性の依頼(「嘱託」)も受けず,同意(「承諾」)も得ないで堕胎させることをいいます。
不同意堕胎罪の「堕胎」とは,自然の分娩期に先立って人為的に胎児を母体から分離,排出させることをいいます。
簡単に言い換えれば,不同意堕胎罪の「堕胎」とは,子をおろすことだといえます。
不同意堕胎罪の刑事罰は,刑法215条の「6月以上7年以下の懲役」です。
不同意堕胎罪の刑事罰は罰金刑がなく,起訴されてしまった場合には,無罪か懲役刑(執行猶予を含む)が宣告されることになるでしょう。
【不同意堕胎罪で逮捕されたら】
不同意堕胎罪で逮捕された場合,刑事手続きとしては,以下のような流れになります。
不同意堕胎罪で逮捕された後,48時間以内に,不同意堕胎事件の被疑者の方の身柄が検察庁に渡されます。
身柄を受け取った検察官は,不同意堕胎事件の被疑者の方を勾留(逮捕に引き続く身体拘束)するための裁判所への請求をするかどうかを判断します(1段階目)。
検察官からの勾留請求を受けた裁判官は,不同意堕胎事件の被疑者の方の勾留決定をするかどうかを判断します(2段階目)。
以上の2段階の手続きを経て,不同意堕胎事件の被疑者の方の勾留が決定した場合,不同意堕胎事件の被疑者の方は,最長で(勾留の延長がなされた場合)20日間の身体拘束を受けることになります。
【刑事弁護士を雇う】
不同意堕胎事件で逮捕されてしまった場合に刑事弁護士を雇った場合,以上の身体拘束からの解放が早まる可能性があります。
これは,刑事弁護士が,勾留手続きの1段階目において,検察官に対して,不同意堕胎事件の被疑者の方を勾留するための裁判所への請求をしないように説得したり,勾留手続きの3段階目において,裁判官に対して,不同意堕胎事件の被疑者の方の勾留決定をしないように働きかけたりすることができるからです。
また,刑事弁護士は,早期の身体拘束を求めるチャンスとしては3段階目となる,勾留決定に対する不服申立て(準抗告申立て)をすることができます。
以上のように,被疑者段階では,刑事弁護士が検察官や裁判官,裁判所に対して,不同意堕胎事件の被疑者の方の勾留を争うことで,身体拘束からの早期解放が期待できる可能性が高まります。
また,これらの身柄解放活動が上手くいかなかったとしても,引き続く被告人段階で,刑事弁護士が保釈の請求をすることで,身体拘束からの早期解放を目指すことができます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は,刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
交際相手への不同意堕胎事件でお困りの場合は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部までご相談ください。
宮城県仙台市青葉区のひったくり事件
宮城県仙台市青葉区のひったくり事件
宮城県仙台市青葉区のひったくり事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは、宮城県仙台市青葉区の商店街を原付バイクで走行中、バッグを肩にかけながら歩いているVさんを見つけました。
遊ぶお金が欲しかったAさんは、Vさんの後ろから原付バイクで近付き、バッグのショルダーストラップに手を掛け、そのままバッグを奪い去ろうとしました。
この時、Vさんはバッグを盗られないようにショルダーストラップを強く握ったため、バッグと一緒に数メートル引きずられ、全治2週間の擦り傷を負いました。
また、バッグもAさんに奪い去られてしまいました。
後日、Aさんが犯行現場の商店街を通りかかったところ、仙台中央警察署の警察官がパトロールをしており、任意同行を求められました。
(この刑事事件例はフィクションです)
【ひったくりは何罪に当たるのか】
刑事事件例は、いわゆる「ひったくり」と呼ばれる事件に当たります。
「ひったくり」とは、相手の不意を突いた暴行により、財布やバッグなどの財物を奪うことを言いますが、刑法には「ひったくり罪」という犯罪は規定されていません。
「ひったくり」事件は、窃盗罪と暴行罪または窃盗罪と傷害罪が成立することが多いと言われていますが、強盗罪・強盗致傷罪が成立する場合もあり得ます。
刑事事件例は、強盗致傷罪が成立する可能性が高い事案と言えます。
以下、簡単にその理由を説明します。
【強盗致傷罪とは】
刑法 240条
強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。
刑法 236条1項
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
刑法240条は、4つの類型について規定しています。
まず、強盗の際に故意に人を傷つけた強盗傷人罪と、強盗の際に故意に人を殺害した強盗殺人罪が刑法240条には規定されています。
次に、強盗の際に故意ではなく人を傷つけた強盗致傷罪と、強盗の際に故意ではなく人を殺害してしまった強盗致死罪も240条には規定されています。
前述したとおり、刑事事件例は強盗致傷罪が成立する可能性が高い事案と言えます。
刑事事件例において強盗致傷罪が成立するためには、①「強盗が」②「人を負傷させた」という強盗致傷罪の条文に明記されている要件と、強盗致傷罪の条文には明記されてはいませんが、③傷害の結果が強盗の機会に行われている必要があります(③の要件を「強盗の機会性」とここでは呼ぶことにします)。
以下で、刑事事件例において、強盗致傷罪の3つの要件が満たされているかについて説明します。
【強盗致傷罪の1つ目の要件である「強盗」について】
「強盗」とは、強盗犯人のことを言い、刑法236条の強盗罪の犯罪が完成した既遂の場合だけでなく、強盗罪の実行に着手したが強盗罪が未完成に終わった未遂の場合も含みます。
そのため、刑法240条の「強盗」とは、刑法236条の強盗罪の実行に着手した者のことを言います。
刑法236条の強盗罪についての実行の着手は、財布が入ったカバンなどの財物を奪うために暴行・脅迫を行った時点で認められることになります。
そして、この暴行・脅迫の程度は相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のものを言います。
刑事事件に即して説明すると、通行中のVさんが所持するバッグのショルダーストラップを掴んだまま原付バイクを進行させてVさんを引きずった行為は、Vさんの反抗を抑圧するに足りる程度の暴行に当たると言えるでしょう。
従って、強盗致傷罪の1つ目の要件である「強盗」の要件は満たすことになるでしょう。
【強盗致傷罪の2つ目の要件である「人を負傷させた」について】
「人を負傷させた」とは、犯人以外の人に傷害を与えることを言います。
刑事事件例においては、バッグを奪われたVさんは全治2週間の擦り傷を負っています。
従って、強盗致傷罪の2つ目の要件である「人を負傷させた」の要件は満たさされることになるでしょう。
【強盗致傷罪の3つ目の要件である「強盗の機会性」について】
「強盗の機会性」とは、前述したとおり、傷害の結果が強盗の手段である暴行・脅迫によって生じたことを言います。
刑事事件例では、Vさんの擦り傷は、通行中のVさんが所持するバッグのショルダーストラップを掴んだまま原付バイクを進行させてVさんを引きずったという強盗の手段である暴行から生じていると言えます。
従って、強盗致傷罪の3つ目の要件である「強盗の機会性」の要件も満たすと言って良いでしょう。
以上より、刑事事件例のAさんには、強盗致傷罪が成立する可能性が高いと言えます。
【ひったくり事件を起こしてしまったら】
ひったくり事件が窃盗罪と暴行罪または窃盗罪と傷害罪が成立するか、あるいは強盗罪・強盗致傷罪が成立するかは具体的な事実関係によって異なります。
そして、事実関係がどのようなものであったのかを確定するには証拠が必要になります。
この証拠のひとつとして、ひったくり事件を起こしてしまった方の供述があり、この供述もひったくり事件の事実関係を確定するための証拠として有力なものになり得ます。
そのため、ひったくり事件について警察署で取調べの際に、本当は窃盗罪と暴行罪または窃盗罪と傷害罪が成立するひったくり事件なのにもかかわらず、それらよりも罪が重い強盗罪・強盗致傷罪に当たるかのような供述を強いられてしまうといった危険性があります。
ひったくり事件について、そのような不当に重い処罰が科される危険性を回避するためには、ひったくり事件をはじめとした刑事事件に精通した刑事弁護人に事前に相談して、刑事事件の見通しを聞き、取調べの際のアドバイスを得ておくことが有益でしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、ひったくり事件をはじめとした刑事事件に精通した刑事弁護人が在籍しています。
宮城県仙台市青葉区でひったくり事件を起こして仙台中央警察署で取調べが予定されている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部まで一度ご相談ください。