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窃盗症で刑罰が軽くなる?

2020-04-06

窃盗症で刑罰が軽くなる?

万引きがやめられない窃盗症であることを理由として刑罰が軽くなったという事件がありました。

保釈中の万引き、異例の減刑 窃盗症による心神耗弱認定
Yahoo!ニュース(朝日新聞提供) 

この事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。

~窃盗症(クレプトマニア)とは~

覚せい剤や大麻などの薬物やアルコールなどは、依存症になると自分の意志ではやめることが難しくなり、病院での治療などが必要になってくるという話は聞いたことがある方も多いと思います。
これと同じように、窃盗についても依存症のような状態になってしまい、簡単にはやめられなくなってしまうケースがあります。

窃盗症クレプトマニアと呼ばれており、精神疾患の1つとされています。

窃盗症になると、経済的に困っているわけではなくても万引きを繰り返してしまうのです。
悪いことだとはわかっていても、成功した時に感じる達成感などが忘れられず、犯行を繰り返してしまいます。

窃盗症は薬物依存症と同じく、専門的な治療を行っている病院に通ったり、窃盗症で悩んでいる方々が集うグループミーティングに通うなどの対策が必要となってきます。

~刑罰が軽くなった判決~

通常、犯罪を繰り返すと、受ける刑罰は重くなっていきます。
万引きの場合も、最初は不起訴処分罰金刑、次は執行猶予付きの懲役刑、それでも再びしてしまった場合には実刑判決などというように、判決が重くなっていくのが通常です。

しかし今回のニュースの東京地裁判決は、重度の窃盗症による心神耗弱(シンシンコウジャク)状態にあったことを理由に刑を軽くしました。
求刑懲役1年6か月に対し、実刑判決ではあるものの、懲役4カ月という軽い判決を下したのです。

心神耗弱というのは、①物事の善悪を判断し、②その判断に従って行動する能力が弱まっている場合に、刑罰を軽くするというものです(刑法39条2項)。
単に①②の能力が弱まっているのではなく、どちらかが完全に欠いていれば、心神喪失により刑罰は免除されます(刑法39条1項)。

精神疾患などにより犯罪をしないという選択が難しい、あるいはできない場合には、後で責めてもしょうがないから、刑務所には入れずに病院で治療を受けさせた方がいいといった判断がされるということです。
よく重大犯罪のニュースで聞かれる、「裁判で責任能力が争われている」というのは、心神喪失心神耗弱の状態にあったのではないかと争われているということです。

今回の判決は、窃盗症であることのみを理由として減刑されたという珍しい判決でした。

~社会の中で更生させる~

窃盗症の人は、万引きを繰り返すわけですから、今回の判決に対しては、犯罪を繰り返す人ほど刑罰が軽くなってしまうという反対意見もあるでしょう。
しかし、万引きを繰り返しているということは、それだけ適切な治療を受けなければ回復が難しいとも言えます。

もちろん刑務所の中でも治療が受けられないわけではありません。
しかし、依存症の治療には、社会の中に身を置き、犯行をやろうと思えばやれる環境の中で、いかに思いとどまるかという訓練をする必要があるとも言われています。

刑務所に長期間入れたとしても、単にその期間中に万引きできなくなるだけであり、必ずしもベストな治療が受けられるわけではないから、真に更生させるためには、刑罰以外の方法によるべき、という考え方を強く押し出したのが今回の判決ということになります。

このような考え方などに基づき、すでに刑の一部執行猶予という制度も出来ています(刑法27条の2以下)。
これは一度刑務所に入れるものの、その期間を短くして、残りの期間を執行猶予とし、社会の中で更生を目指していくというものです。
薬物犯罪などで利用されています。

今回の判決がこのまま確定するかわかりませんが、今後、心神耗弱や刑の一部執行猶予の判決が増えていくかもしれません。

~弁護士にご相談ください~

窃盗症からの更生および軽い判決を目指すためには、専門的な治療や被害店舗に謝罪・賠償して示談を結ぶといった対応が必要となってきます。

しかし、あなたやご家族が万引きをしてしまった場合、具体的にどのように対応して行けばよいのかわからないと思います。
事件に応じたアドバイス及びサポートをさせていただきますので、ぜひ一度弁護士にご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では初回接見のご利用を、逮捕されていない場合やすでに釈放された場合には、事務所での無料法律相談のご利用をお待ちしております。

妻が夫を刺殺して逮捕

2020-04-05

妻が夫を刺殺して逮捕

妻が夫を刺したとして逮捕された事件がありました。

果物ナイフで刺され夫死亡、妻を殺人未遂容疑で逮捕
Yahoo!ニュース(TBS)

この事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。

~殺人未遂罪での逮捕~

この事件は、夫婦で営んでいた製本業に関して口論となり、妻が夫の胸を果物ナイフで刺して死亡させたというものです。
取り調べに対し妻は、
「力や言葉では夫に勝てないので、刺すしかないと思った」
と供述しているとのことです。

被害者が死亡しているのに殺人罪ではなく殺人未遂罪で逮捕されているのは、現行犯逮捕した時点で夫が死亡していなかった、あるいは死亡が確認できていなかったからだと思われます。
今後の捜査は殺人の容疑で進められ、裁判でも殺人罪で審理がなされることが予想されます。
このように途中で容疑が変わるのはよくあることです。

~容疑を否認している~

逮捕された妻は、「殺そうとするつもりはありませんでした」と容疑を一部否認しているとのことです。

殺人罪は殺すつもりで犯行をしていないと成立しません。
殺意」や「殺人の故意」がない場合は成立しないという言い方もできます。
もし殺意がなかった場合には、傷害致死罪が成立するにとどまります。

殺人罪死刑、無期懲役、5年以上20年以下の懲役となります。
一方、傷害致死罪であれば3年以上20年以下の懲役となります。
死刑や無期懲役の可能性がなくなりますし、下限も2年短くなっています。

したがって殺意の有無は極めて重要な問題となります。

~殺意の有無の判断方法~

犯人自ら殺意があったと供述していれば、殺意があったと認められる可能性が高いでしょう。
ただ、殺意の有無は犯行時の内心のことですから、後から裁判で客観的に判断することは難しいところがあります。

そこで、外部から判断できる事情を総合的に考慮して、殺意があったかどうかが判断されます。

たとえば、犯行に使われた凶器が殺傷能力の高いもの(大きなナイフやピストルなど)であれば、命への危険性が高い行為をしていたわけですので、殺意が認められやすくなります。
今回の果物ナイフの大きさは報道からはわかりませんが、ある程度殺傷能力があるといえるでしょう。

また、刺した部位が命にかかわりやすい場所であれば、殺すつもりだったのだろうと判断されやすくなります。
今回は夫の胸を刺したとのことですので、殺意を認める根拠となる大きな事情と言えます。

また今回、妻は夫を何回刺したかはわかりませんが、仮に何回も刺していたのであれば、やはり殺すつもりだったのだろうと判断されやすくなります。

今後、殺人罪に問われるのか、はたまた傷害致死罪にとどまるのかは注目かもしれません。

~弁護士にご相談を~

殺人や傷害致死に問われる場合はもちろんですが、もっと軽い犯罪を含めて、あなたやご家族が逮捕されたり取調べを受けたという場合には、どんな犯罪が成立し、どれくらいの刑罰を受けるのかなど、不安な点が多いと思います。

事件の内容をお聴き取りし、今後の見通しをご説明致しますので、ぜひ一度ご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスのご利用を、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談のご利用をお待ちしております。

中学校教師が児童買春で逮捕

2020-04-04

中学校教師が児童買春で逮捕

中学校の教師が児童買春で逮捕されたという事件がありました。

女子高生とみだらな行為 買春容疑で教諭逮捕 神奈川県警
Yahoo!ニュース(産経新聞提供)

この事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。

~児童売春防止法違反に~

この事件は、中学校教諭がSNSで知り合った高校1年生に対し、2万円を渡してみだらな行為をしたというものです。

売春や買春は売春防止法で禁止された行為ですが、同法では売春や買春それ自体について罰則が定められていません。
しかし、18歳未満の者を相手にした買春は、児童買春・ポルノ禁止法という別の法律でも禁止されており、罰則も定められています。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律
第4条
児童買春をした者は、五年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。

児童の同意があるとはいえ、売春が児童の今後の人生に及ぼす影響を考え、重い刑罰が定められています。

~容疑を一部否認~

逮捕された教師は、「年齢をちゃんと確認したかどうかは覚えていません」と供述し、容疑を一部否認しているとのことです。
これはどういう意味でしょうか、

児童買春の罪は、相手が18歳未満であると知らなかった場合には成立しません
ただし、「18歳未満だと知らなかった」というのは、18歳未満ではないと確信しているような状態を言います。
したがって18歳未満であることをはっきりとわかっていた場合はもちろん、18歳未満かもしれないと半信半疑だった場合にも犯罪が成立することになります。

今回の事件では、仮に年齢確認していれば、女子高生側が偽の身分証明書を持っていたといった事情のない限り、18歳未満であることは完全に認識できたはずです。
したがって年齢確認をしたと言い切ると、18歳未満であることを認識していたということになり、有罪になってしまうから、言葉を濁しているのかもしれません。

もちろん、容疑を一部否認しているといった情報は警察が発表したものですから、最終的に裁判で有罪となるまでは何とも言えないところです。

~補導がきっかけで発覚~

今回の事件は、女子高生が補導されて事情を聞かれ、SNSのやり取りなどから教師の関与が発覚したとのことです。

女子高生がどのような理由で補導されたかはわかりませんが、よくあるのは、売春相手の募集している旨のSNSへの書き込みが警察に見つかったり、他の人との売春行為が警察に発覚して芋づる式に発覚したり、あるいは深夜徘徊など児童買春とは直接の関係はない理由であったりします。

児童買春はどんなルートから発覚するかわからず、非常にリスクが高いと言えます。

~警察に発覚したら~

警察に児童買春が発覚すると、逮捕されるのか任意で事情聴取されるのかは事件にもよります。
いずれの場合であっても処罰を軽くするためには、警察官・検察官・裁判官に対し、なぜ児童買春がいけない行為なのかを認識できていることや、深く反省していることを示す必要があります。
また、相手の児童側に対し謝罪し、示談を締結することが重要です。

しかし、取調べでどのように受け答えしたらよいのか、何と言って示談をお願いしたらよいのか、示談金はいくらにしたらよいのか、示談書の文言はどうしたらよいのかなど、わからないことが多いと思います。

また、性犯罪では被害者が加害者に直接連絡先を教えることは心理的に行いづらく、直接会って交渉することも拒否されるのが通常です。
弁護士が間に入って初めて示談交渉が出来る可能性が出てくるパターンが多いということになります。

弁護士は、取調べへの対応方法や、示談締結に向けた動きなどについてアドバイス致します。
正式に依頼するかどうかはともかく、まずは一度ご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では初回接見のご利用を、逮捕されていない場合やすでに釈放された場合には、事務所での無料法律相談のご利用をお待ちしております。

ケンカで死亡

2020-04-03

ケンカで死亡

駅で倒れている男性が見つかり、その後死亡が確認されたという事件がありました。

関内駅で男性が死亡 うつぶせで倒れ、顔に擦り傷やあざ
Yahoo!ニュース(朝日新聞提供)

この事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説いたします。

~傷害致死罪か殺人罪か~

この事件は、横浜市中区のJR関内駅南口付近で、男性が倒れているのを通行人が見つけ、病院に運ばれたが死亡が確認されたというものです。
顔に擦り傷やあざがあり、防犯カメラには他の人物ともめるような様子が映っていたということです。

現時点で死亡の原因はわかりませんが、ケンカ相手から暴行を受け、死亡してしまった可能性があります。

ケンカに関する相談を受けることは弊所でもよくあります。
しかし、そのうちの多くは相手にケガをさせてしまい傷害罪に問われていたり、飲食店などで物を壊してしまい器物損壊罪に問われるといったものです。

刑法第204条(傷害)
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第261条(器物損壊等)
前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

※ 科料とは罰金とほぼ同じですが、徴収される金額が1000円以上1万円未満の場合を言います。

ところが、相手が死亡してしまった場合には、より重い刑罰が定められた殺人罪傷害致死罪が成立してしまう可能性があります。

第199条(殺人)
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
第205条(傷害致死)
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する。

※ 有期懲役とは、余罪がなければ上限は20年です。

傷害致死罪も殺人罪も、被害者が死亡したという点では同じですが、殺すつもりがあった場合が殺人罪殺すつもりがなかった場合が傷害致死罪になります。
「殺意の有無」や「殺人の故意の有無」により区別されるという言い方もできます。

たとえば、相手が死ぬとまでは思わず、打ちどころが悪かったりして死亡させてしまった場合には、傷害致死罪になるわけです。

しかし、殺意の有無は内心のことなので、後から客観的に判断することはできません。
そこで、本人の供述の他、殺傷能力がある凶器を使ったか、頭部や腹部など身体の重要な部分に攻撃をしていたか、何回も執拗に攻撃したのかなど、客観的にわかる事情から、当時の殺意の有無を推測することになります。

いくら取調べで「殺すつもりはなかった」と言っても、攻撃の態様などから殺意があったと判断される可能性もあるわけです。

~弁護士のご相談を~

被害者側の方々のためにも、また、出来るだけ軽い処分や判決を得るためにも、しっかり謝罪・賠償し、示談を締結するといった対応をすることが重要です。
これは傷害罪にとどまった事件でも、あるいは交通事故や性犯罪などでも、被害者のいる事件であれば多くの事件に当てはまります。

しかし、何と言って示談をお願いしたらよいのか、示談書の文言はどうしたらよいのか、示談金はいくらにしたらよいのかなど、わからないことが多くて不安だと思います。
ぜひ一度弁護士にご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。

逮捕されている事件では、ご家族などから初回接見のご依頼をいただければ、拘束されている警察署等にて、ご本人に面会(接見)し、事件の内容を聴き取った上で、今後の見通しなどをご説明致します。
 接見後には、接見の内容などをご家族にお伝え致しますので、それを聞いていただいた上で、正式に弁護活動を依頼するかどうかを決めていただけます。

また、逮捕されていない場合やすでに釈放されている場合は、事務所での無料法律相談をご利用いただけます。
ご連絡をお待ちしております。

子供を骨折させて逮捕

2020-04-02

子供を骨折させて逮捕

父親が子供を踏みつけて骨折させ逮捕された事件がありました。

生後1カ月の娘を踏みつけ足の骨折ったか 父親逮捕
Yahoo!ニュース(テレビ朝日提供)

この事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説いたします。

~虐待で成立する犯罪~

いわゆる虐待事件では、多くの犯罪が成立する可能性があります。

まず、暴力を振るった場合、子供がケガをすれば傷害罪、ケガに至らなければ暴行罪が成立します。

刑法
第204条(傷害)
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第208条(暴行)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

子供が死亡してしまうと傷害致死罪が成立する可能性がありますし、その際、死んでもいいとまで思っていれば、殺人罪まで成立する可能性があります。

第205条(傷害致死)
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する。
第199条(殺人)
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

また、あからさまな暴力はしなくても、食事を与えないなどのネグレクトをした場合、保護責任者遺棄罪が成立する可能性があります。
また、これによって子供が健康を害すれば保護責任者遺棄致が、死亡すれば保護責任者遺棄致が成立する可能性もあります。

第218条(保護責任者遺棄等)
老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。
第219条(遺棄等致死傷)
前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

罰則について219条には「傷害の罪と比較して、重い刑」とあります。
具体的には保護責任者遺棄致傷罪が3か月以上15年以下の懲役、保護責任者遺棄致死罪が3年以上の有期懲役(余罪がなければ上限は20年)となっています。

~刑事事件の手続きの流れ~

犯罪をしたとして逮捕されると、最初に最大3日間、警察署等で身体拘束され、取調べ等の捜査を受けます。
そして逃亡や証拠隠滅のおそれがあるなどとして検察官が請求し、裁判官が許可すれば、さらに10日間勾留(こうりゅう)と呼ばれる身体拘束がされる可能性があります。
この勾留期間はさらに10日間延長されることもあります。

勾留期間が終われば刑事裁判が始まり、保釈が認められない限り身体拘束が続くことになります。

~弁護士にご相談ください~

あなたやご家族が何らかの犯罪をしたとして逮捕されたり、取調べを受けたといった場合、今後の流れがわからずに不安だと思います。
ぜひ一度、弁護士にご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。

逮捕されている事件では、ご家族などから初回接見のご依頼をいただければ、拘束されている警察署等にて、ご本人に面会(接見)し、事件の内容を聴き取った上で、今後の見通しなどをご説明致します。
 接見後には、接見の内容などをご家族にお伝え致しますので、それを聞いていただいた上で、正式に弁護活動を依頼するかどうかを決めていただけます。

また、逮捕されていない場合やすでに釈放されている場合は、事務所での無料法律相談をご利用いただけます。
ご連絡をお待ちしております。

警察官がストーカーで書類送検

2020-04-01

警察官がストーカーで書類送検

警察官がストーカーで書類送検されたという事件がありました。

栃木県警警部補がストーカー疑いで書類送検 捜査で知り合った女性に
Yahoo!ニュース(産経新聞提供)

この事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。

~警察官がストーカー~

この事件は、警察官が事件の相談に訪れた女性と交際をはじめ、関係が破綻した後に、家に複数回押しかけたというものです。
女性から警察に相談があり、逮捕こそしなかったものの警察の捜査が進められ、捜査書類が検察官に送られた(書類送検された)という段階になっています。

今後、検察官がさらに取調べなどの必要な捜査をした上で、刑事裁判にかけるか(起訴)、今回は大目に見て不起訴処分にするかという判断がなされます。
起訴されれば裁判の末、無罪判決や執行猶予判決とならない限り、刑罰を受けることになります。

なお、この警察官は減給6か月の懲戒処分を受けた上で、依願退職したとのことです。

~ストーカー規制法の内容~

今回問題となっているストーカー規制法は内容が複雑なのでご説明いたします。

恋愛感情やその裏返しの恨みなどを原因として、つきまといや待ち伏せをしたり、拒まれても電話やメール送信などを繰り返し行うことを、ストーカ規制法では「つきまとい等」と呼んでいます(2条1項・2項参照)。
このような「つきまとい等」を行い、今後も違反を続けるおそれがある場合、警察がやめるよう警告したり、公安委員会が禁止命令を出すことができます(4条1項・5条1項)。

また、「つきまとい等」を繰り返すことを「ストーカー行為」と呼んでいます(2条3項)。
公安委員会からつきまとい等の禁止命令を出されたが、それでもやめずに「ストーカー行為」に至った場合、2年以下の懲役または200万円以下の罰金を科される可能性があります。

さらに、「つきまとい等」を繰り返して「ストーカー行為」に至っていれば、警告や禁止命令をせずに逮捕したり、裁判にかけて刑罰を科すこともできます。
この場合の刑罰は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。

今回の事件では捜査関係者が、「現職の警察官であることを重くみて、行為への禁止命令や警告ではなく、厳正に対処した」と話しているとのことです。
このコメントが正しければ、警告や禁止命令の前にいきなり罰則を与えるパターンで進んでいるということになります。

~お早めにご相談ください~

もしあなたやご家族がストーカー規制法違反で逮捕されたり、取調べを受けているといった場合で、判決などを軽くするためには、被害者に謝罪賠償して示談するなどの対応が重要となってきます。

しかし性犯罪などでは、被害者の方々が、加害者やその家族に対して連絡先を教えたくない、あるいは直接交渉したくないということも当然ながら多く、弁護士が間に入って示談するしかない場合も多いです。

そこでぜひ一度、弁護士にご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では初回接見のご依頼を、逮捕されていない場合やすでに釈放された場合には、事務所での無料法律相談をご利用いただけます。
ぜひお早めのご連絡をお待ちしております。

隣人トラブルから殺人未遂罪で逮捕

2020-03-31

隣人トラブルから殺人未遂罪で逮捕

マンションの騒音トラブルが原因で殺人未遂事件が起きたとのニュースがありました。

ハンマーで殴り首を圧迫 “音量”トラブル…隣人の男逮捕
Yahoo!ニュース(テレビ静岡提供)

この事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説いたします。

~隣人トラブルから成立しうる犯罪~

この事件は、マンションの隣の部屋から聞こえてくるクラシック音楽の音量を原因として、ハンマーを持参して隣の部屋を訪れた加害者が、被害者をハンマーで数回殴り、首を圧迫するなどして殺害しようとしたとして、殺人未遂の容疑で逮捕されたという事件です。

客観的にみて本当にうるさかったのかはわかりませんが、今回のようにマンションやアパートの騒音トラブルなどから犯罪に発展してしまうケースはよくあると言えます。

一般的に、隣人トラブルを原因として成立しうる犯罪としては、以下のように様々なものが考えられます。

①脅迫罪
苦情の入れ方を間違い、たとえば「ぶっ殺すぞ」などと強い言葉を使ってしまった場合には、脅迫罪が成立する可能性があります。

刑法222条1項
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2項
親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

②強要罪・強要未遂罪
「ぶっ殺すぞ」などの強い言葉を使ったり、暴力をした上で、土下座させるなどの行為をさせた場合には強要罪が成立する可能性があります。
また、土下座などをさせようとしたが、させるに至らなかった場合でも強要未遂罪が成立する可能性があります。

第223条1項
生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
3 前二項の罪の未遂は、罰する。

③暴行罪・傷害罪
相手に暴力をふるい、ケガをさせれば傷害罪が、幸いケガまではしなかった場合でも暴行罪が成立するでしょう。

第204条
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第208条
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

④傷害致死罪
相手を殺すつもりはなかったが、暴力をふるった結果、相手が死亡してしまった場合には傷害致死罪が成立するでしょう。

第205条
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する。

⑤殺人罪・殺人未遂罪
相手を殺すつもりで暴力をふるい、実際に死亡させた場合には殺人罪が、死亡させるに至らなかった場合には殺人未遂罪が成立するでしょう。

第199条
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
第203条
第百九十九条及び前条の罪の未遂は、罰する。

~殺人罪と傷害致死罪・殺人未遂罪と傷害罪の区別は?~

このように隣人トラブルから様々な犯罪が成立することがあります。

ここで、相手が死亡した場合でも殺人罪になる場合と傷害致死罪になる場合とがあります。
また、死亡しなかった場合でも殺人未遂罪になる場合と傷害罪になる場合があります。

これらの区別は、殺すつもりがあったかどうか(故意があったかどうか)によって区別します。
殺人の故意があって殺害すれば殺人罪に、殺人の故意があったが殺害に至らなかった場合が殺人未遂罪になります。
一方、殺人の故意がないのに死亡させてしまうと傷害致死罪に、殺人の故意がなくケガをさせたにとどまれば傷害罪ということになります。

とはいえ、被疑者の犯行当時の内心のことですから、後から裁判で客観的に判断することは難しいところがあります。
そこで、実際には諸事情を総合的に考慮して、故意があったかどうかが判断されます。

たとえば被疑者が自ら殺すつもりであったと認めているかどうかはもちろん重要な事情の1つになります。
また、犯行に使われた凶器が殺傷能力の高いもの(大きなナイフやピストルなど)であれば、命への危険性が高い行為をしていたわけですので、故意が認められやすくなります。
殴ったり刺したりした部位が、頭部や腹部など命にかかわりやすい場所であれば、殺すつもりだったのだろうと判断されやすくなります。
また、執拗に攻撃を続けていたのであれば、やはり殺すつもりだったのだろうと判断されやすくなります。

今回の事件では、逮捕された被疑者が犯行を認めているかどうかは、警察が発表していないということです。
しかし、頭部という重要な部分を、ハンマーという強力な武器で数回殴ったうえ、首を圧迫したというのが事実であれば、殺人の故意があったと認められやすい事情があったといえます。
そこで警察も殺人未遂の疑いで逮捕したといえるでしょう。

~弁護士にご相談を~

あなたやご家族が隣人トラブルなどで何らかの犯罪を起こしたとして警察に逮捕されたり、取調べ受けているといった場合には、今後どうなってしまうのか不安だと思いますので、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスのご利用を、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談のご利用をお待ちしております。

検察事務官が痴漢で懲戒処分

2020-03-30

検察事務官が痴漢で懲戒処分

検察事務官が痴漢をしたとして懲戒処分を受けた事件がありました。

停職3ヵ月の懲戒処分 検察事務官が女性の尻を触る【岩手】
FNN PRIME online

この事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説いたします。

~検察事務官とは~

この事件は岩手県内を走行中のJR東北本線の車内で、検察事務官の男性が、隣に座る女性の尻を手の甲で触った疑いが持たれたというものです。

この検察事務官というのはどんな仕事なのでしょうか。

一般に、犯罪が起こるとまずは警察が捜査します。
一通り警察の捜査がされた後、今度は検察官に事件が送られ(送検)、さらに検察官が取調べ等の捜査を行い、犯罪をしたと疑われている被疑者を刑事裁判にかけるか(起訴)、かけないか(不起訴)の判断をします。
起訴して裁判が始まると、検察官は被告人が犯罪を行った証拠を示し、しっかり処罰してほしいと主張する役割を担います。

検察事務官というのは、この検察官の仕事をサポートする事務職員(公務員)です。
犯罪の捜査に携わっている検察事務官が痴漢の疑いをかけられたということです。

~迷惑行為防止条例違反に問われた~

痴漢をした場合、各都道府県が制定する迷惑行為防止条例違反に問われたり、特に悪質な態様の場合には刑法の強制わいせつ罪に問われたりします。

岩手県の条例と刑法の条文を見てみましょう。

岩手県・公衆に著しく迷惑をかける行為等の防止に関する条例
第8条
何人も、公共の場所又は公共の乗物において、他人を著しく羞恥させ、又は他人に不安を生じさせ、若しくは嫌悪の情を催させる方法で、卑わいな行為であって次に掲げるものをしてはならない。
(1) みだりに他人の胸部、臀(でん)部、下腹部等(以下「胸部等」という。)の身体の一部に触れること(着衣の上からこれらの身体の一部に触れることを含む。)。
第12 条1項
第8条又は第9条の規定に違反した者は、6月以下の懲役又は50 万円以下の罰金に処する。
第2項
常習として第8条又は第9条の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は100 万円以下の罰金に処する。
刑法176条
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

この男性事務官は、岩手県の迷惑防止条例違反の疑いで書類送検されました。
書類送検というのは、前述の送検の中でも、逮捕されていない事件、または逮捕されたが逃亡や証拠隠滅のおそれがないとして裁判の前に釈放された事件で、警察から検察に捜査書類が送られ、捜査の担当が検察に移るパターンのことを言います。

しかし最終的に男性事務官は不起訴処分となりました。
刑事裁判にかけられず、前科も付かずに刑事手続が終了したということです。

不起訴処分がなされるのは、犯罪をした証拠がない、あるいは証拠が不十分な場合や、行った犯罪が比較的軽いものであったり、被害者に謝罪賠償して示談が成立しているもの、被害者が犯人を処罰してほしいという感情が弱い事件などが考えられます。

今回の事件がどのような理由で不起訴処分となったのかはわかりませんが、男性事務官は刑事裁判を受けず、前科も付かずに終わったということになります。

~懲戒処分に~

一方で、男性事務官は、職場である検察庁から停職3か月の懲戒処分を受けたとのことです。
偶然、勤務先が検察庁なのでややこしいですが、一般の方が犯罪をした場合に、国から罰則を受ける他に、会社からも処分を受けたのと同じということになります。

ここからは推測になりますが、検察庁としては、この男性事務官が本当に痴漢を行っていると判断したのだと思います。
しかし前述の不起訴処分がなされやすいパターンのいずれかに当たったので不起訴処分とした上で、あくまでも勤務先による処分として停職3か月の懲戒処分にしたということだと思われます。

~痴漢を疑われたら弁護士に相談を~

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
痴漢をしたとして逮捕されたり取調べを受けた場合には、ぜひご相談ください。

本当にやっていない場合には不起訴処分無罪判決を目指して弁護活動を致します。
やってしまっている場合にも、示談交渉をして示談を締結することなどにより、被害者の方の被害を少しでも回復するとともに、不起訴処分などの軽い結果となるよう弁護活動をしてまいります。

まずは、逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスのご利用を、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談のご利用をお待ちしております。

私有地での飲酒運転

2020-03-29

私有地での飲酒運転

私有地での飲酒運転には道路交通法が適用されないとの記載があるニュースを見つけました。

カメラが捉えた! “罪に問えない飲酒運転” 現役運転手「みんな分かって飲んでいる」 福岡県
Yahoo!ニュース(テレビ西日本提供)

このニュースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説いたします。

~道路交通法は適用されないが~

このニュース映像では、愛媛県の松山港でトラックの運転手が飲酒運転をしている様子が映し出されています。
場所が私有地内なので道路交通法が適用されず、酒気帯び運転の罪や酒酔い運転の罪などに問われないので、飲酒運転をしている人がいるということです。

たしかに私有地であれば道路交通法が適用されないのが原則です。
しかし、私有地であっても不特定または多数の人が乗り入れる場所では道路交通法が適用される可能性があります。
たとえばショッピングセンターの駐車場などでは道路交通法が適用され、飲酒運転も処罰される可能性があります。

さらに、人身事故を起こした場合には、純粋な私有地であっても、過失運転致死傷罪危険運転致死傷罪で処罰される可能性があります。
これらの罪は道路交通法ではなく自動車運転死傷行為処罰法という別の法律で定められており、私有地内でも適用されるからです。

実際に貨物船の中で飲酒運転をしたトレーラーの運転手が誘導員をひいて死亡させ、過失運転致死罪に問われている事故もあります。
公道でないため道路交通法が適用できず…飲酒運転事故で息子を亡くした両親が訴える法整備の必要性
FNN PRIME(テレビ西日本)

このような事故を起こした場合の罰則はどれくらい深く酔っていたかにもよりますが、正常な運転が困難なほど深く酔った状態で運転して人を負傷させると15年以下の懲役に、死亡させると1年以上の有期懲役(上限は20年)となる可能性があります。

(参考)
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律
第2条(危険運転致死傷)
次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
1号 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
第3条1項
アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は十二年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は十五年以下の懲役に処する。
第5条(過失運転致死傷)
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

~飲酒運転してしまったら~

私有地でも公道でも飲酒運転は絶対にいけません。

しかし、飲酒運転に限らず、普段は犯罪に縁がない人でも犯罪に当たる行為をしてしまう可能性があるのが交通事故です。
あなたやご家族が何らかの交通事故を起こし、警察に逮捕された、取調べを受けているといった場合には、分からないことが多いと思いますので、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスを、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談をご利用をお待ちしております。

警察官が腕時計を盗む

2020-03-28

警察官が腕時計を盗む

警察官が検視現場で高級腕時計を盗み、占有離脱物横領罪執行猶予判決を受けた事件がありました。

検視現場から腕時計持ち去り 元巡査部長に猶予判決 宇都宮地裁
(下野新聞)

この事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。

~警察官が盗みを働く~

この事件は、元巡査部長の男性が、遺体の検視で訪れた宇都宮市内のマンションから、約350万円相当の高級腕時計を持ち去ったというものです。
元巡査部長は占有離脱物横領罪に問われ、懲役1年、執行猶予3年の判決を受けました。
なお「検視」とは、主に病院以外で人が死亡した場合に、事件性がないかどうか、ご遺体を確認することをいいます。

物を盗み去ったわけですから、窃盗罪が成立するのではないかと思われるかもしれませんが、今回は占有離脱物横領罪という犯罪に問われました。
なぜでしょうか。

まずは両罪の条文を見てみましょう。

刑法第235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第254条
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

占有離脱物横領罪が定められた254条を見ると、遺失物など、他人の占有を離れた物を盗った場合の規定であることがわかるかもしれません。
落とし物などを持ち去るネコババなどを処罰する条文ということになります。

一方、235条の窃盗罪の方は、他人が占有している物を盗った場合の規定ということになります。
万引きや住居に忍び込んで物を盗んだ場合に成立する犯罪です。

どちらも犯罪であることに変りはありませんが、落とし物を持ち去るよりも、万引きや住居侵入窃盗などの方が悪質なので、窃盗罪の方が刑罰も重くなっているわけです。

~腕時計は誰の占有にもなかった~

今回の事件で、腕時計が誰かの占有に属していたのであれば、窃盗罪に問われていたはずです。
しかし占有離脱物横領罪に問われたということは、腕時計は誰の占有にもなかったと判断されたことになります。

報道からは詳しい事情まではわかりませんが、元警部補は現場となったマンションを検視で訪れています。
ということは、腕時計の持ち主がすでに死亡しており、持ち主の占有から離れてしまったのでしょう。

それでも同居人や、その部屋を管理している親族などがいれば、その人に占有が移ったことになり、窃盗罪に問われていたでしょう。
しかし今回はそういった事情もなく、腕時計を含めその部屋の中にある物が誰の占有にも属していなかった状態だったのだろうと思われます。

このような理由により窃盗罪ではなく占有離脱物横領罪に問われたのでしょう。

物を落とした場合だけでなく、持ち主が死亡した場合にも、物の占有が人から離れたと解釈される可能性があるわけです。

~犯罪に問われたら弁護士に相談を~

あなたやご家族が隣人トラブルなどで何らかの犯罪を起こしたとして警察に逮捕されたり、取調べ受けているといった場合には、いつ釈放されるのか、どんな犯罪でどれくらいの刑罰を受けるのか、被害者との示談はどうしたらよいのかなど、わからないことが多いと思いますので、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスのご利用を、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談のご利用をお待ちしております。

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