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執行猶予中にストーカーで逮捕①

2020-05-03

執行猶予中にストーカーで逮捕①

女性への傷害罪で執行猶予中に、同じ女性にストーカーをしたとして逮捕された事件がありました。

執行猶予中にストーカー行為,容疑の男逮捕 埼玉県警
産経新聞

この事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説いたします。

~事件の概要~

ニュース記事がリンク切れの可能性もあるので、最初に事件の概要を確認しておきます。

男性が知人女性の顔を複数回こぶしで殴り、車で女性に衝突するなど暴行を加えたとして殺人未遂罪の容疑で逮捕

傷害罪で起訴

さいたま地裁が懲役2年6か月、保護観察付き執行猶予4年の判決

執行猶予期間中に同じ女性の実家前を車で複数回行き来するなどのつきまとい行為で逮捕

今回の事件はこのような流れをたどりました。
順番に、気になる点を深堀していきます。

~殺人未遂罪が傷害罪に~

この男性は最初、殺人未遂の容疑で逮捕されています。
しかしその後、傷害罪で刑事裁判にかけられています。
これはなぜでしょうか。

一般的に、被害者にケガを負わせた事件では傷害罪が成立することが多いです。
同じくケガを負わせた事件であっても、より重い殺人未遂罪が成立するためには、

①被害者が死亡する危険性が認められること
②加害者に殺人の故意があること

が必要です。

①については、一般的にこぶしで数回殴った程度で被害者が死亡する危険性は低いでしょう。
しかし今回の事件のように、自動車を衝突させたとなれば、状況によっては死亡してもおかしくないので、①が認められる可能性が十分考えられます。

次に②については、被害者を殺そうと思っていた、あるいは死亡するかもしれないがそれでもかまわないと思っていれば、故意があるとされます。
そして繰り返しになりますが、自動車を衝突させることは被害者が死亡することも十分考えられる行為です。
だとすると、このような危険な行為をするということは被害者を殺すつもりがあったのではないか、少なくとも死ぬかもしれないとわかった上で死んでもかまわないと思って衝突させたのではないかと判断されてもおかしくないわけです。

それでも傷害罪での起訴・有罪判決となった理由はわかりません。
1つの予想されるパターンとしては、車と被害者の位置関係や被害者にぶつかった時のスピードなどから、被害者が死亡する可能性は低くて脅しの意味合いが強かったのではないか、すなわち①②が満たされるとは言い切れない、といった判断を検察官が行い、傷害罪で起訴したのかもしれません。

~なぜ執行猶予判決に?~

その後、さいたま地裁は執行猶予判決を下しました。
再び女性の実家周辺をうろつくような人がなぜ執行猶予になったのか、疑問に思われる方もいるかもしれません。
正確な事情は報道からはわかりませんが、いくつか考えられる理由をあげてみます。

まず、犯罪をしたと疑われている人をどの罪で裁判にかけるかの判断は検察官が行うことになっています。
裁判所は原則として、検察官が起訴した罪名で裁判を行うことしかできません。
したがって検察官が、前述のように殺人未遂罪が成立するとは言い切れないなどと判断して傷害罪で起訴した以上は、裁判所としては傷害罪で裁判を進めるしかないわけです。

そうなると、傷害罪は殺人罪よりも一般的に刑罰が軽くなりますから、殺人罪で起訴された場合に比べれば、執行猶予になる可能性も上がるわけです。

とはいえ今回の事件の男性は、判決が出る前の身柄拘束期間中、ノートに殺害をほのめかすような記載をしていたようです。
このような悪質といえる事情があったにも関わらず執行猶予となったのは、たとえば前科がない、裁判ではしっかりとした反省態度を示していた、被害者と鉢合わせするような事態は考えにくい状況にあった、男性の家族の監督が見込める状況にあったなどの事情があったのかもしれません。

しかし残念ながらその後、女性の実家周辺をうろついたとしてストーカー規制法違反で逮捕されたわけです。
結果だけ見れば、検察官や裁判所の判断が間違っていたとも言えますが、検察官や裁判官も人間ですから、なかなか正確な判断をすることは難しいということなのかもしれません。

〈続きはこちら〉
執行猶予中にストーカー②

教員によるわいせつ行為

2020-05-01

教員によるわいせつ行為

教員わいせつ、再犯防げず 18年度最多282人 処分歴の共有に「穴」
毎日新聞

この記事について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説いたします。

~過去最多を記録~

この記事では、公立学校の教師がわいせつ行為などにより処分された件数(2018年)が、過去最多になったことが紹介されています。
発覚すると懲戒免職になることは覚悟しなければなりません。
しかし、教員を採用する際、他の自治体で教員をしていた時の処分歴があるかどうかを正確に把握することが難しく、教員として再任用されるケースもあるとのことです。

教員が生徒にわいせつ行為をした場合、どのような犯罪が成立するか見ていきましょう。

【強制わいせつ罪】
刑法176条
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

強制わいせつ罪は、よく耳にする犯罪だと思います。
被害者が13歳以上の場合は、強い暴行・脅迫がなければ成立しない犯罪です。
しかし被害者が13歳未満の場合には、暴行・脅迫がなくても、わいせつな行為さえすれば成立します。

【強制性交等罪】
第177条
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

レイプまでしてしまった場合には、強制性交等罪が成立します。
強制わいせつ罪と同じく、被害者が13歳未満の場合には、暴行や脅迫を使わなくても犯罪が成立してしまいます。

【青少年健全育成条例違反】
生徒・児童の同意があったとしても、わいせつな行為をした場合には青少年健全育成条例に違反する可能性があります。

宮城県・青少年健全育成条例
第31条1項
何人も、青少年に対しみだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
第41条1項
第三十一条第一項の規定に違反して、青少年に対しみだらな性行為又はわいせつな行為をした者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

【児童ポルノ禁止法違反】
わいせつ行為をしている場面を撮影したり、児童にわいせつ画像を送らせると、児童ポルノ禁止法に違反し、3年以下の懲役または300万円以下の罰金となることもあります。
送るよう要求した時点で、宮城県の青少年健全育成条例により30万円以下の罰金または科料になるおそれもあります。

【迷惑行為防止条例違反】
学校内で、生徒・児童の下着や着替えの様子、トイレなどを盗撮した場合には、迷惑行為防止条例違反になる可能性があります。

宮城県・迷惑行為防止条例違反
第3条の2第3項
何人も、正当な理由がないのに、住居、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所で当該状態にある人を撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置してはならない。
第4項
何人も、正当な理由がないのに、集会場、事務所、教室その他の特定かつ多数の者が利用するような場所において、人の下着等を撮影してはならない。

罰則は、撮影に成功してしまった場合、盗撮の非常習者は1年以下の懲役または100万円以下の罰金盗撮前科があるなど常習者として扱われると2年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。

~ご相談ください~

リンクした記事によると、教師がわいせつ行為で検挙される確率は、日本全体に比べると1.5倍近くあるようです。
教師は人格的にわいせつ行為をしやすいということではなく、閉鎖された環境下で教師と児童の支配関係があるという状況自体によって、わいせつ行為が増えていると分析されています。

もし、あなたやご家族が性犯罪など何らかの罪を犯して逮捕されたり、取調べを受けたといった場合には、今後どうなってしまうのか不安だと思いますので、弁護士にご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスのご利用を、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談のご利用をお待ちしております。

痴漢外来で依存症を治す

2020-04-29

痴漢外来で依存症を治す

痴漢をやめられない人の治療について書かれた記事があります。

スーツ姿で都心駅前の「痴漢外来」に通う男性たちが抱える闇
Yahoo!ニュース(プレジデントオンライン)

この記事について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説いたします。

~痴漢依存症~

新型コロナウイルスの影響により、テレワーク・在宅ワークが推し進められていることから、以前よりも電車がすいている状況にあります。
元々、満員電車が異常な状態だったとも言えるので、これ自体はいい方向に向かっているのかもしれません。

満員電車がなくなると、痴漢も減ることになるでしょう。
この点も、コロナウイルスがもとらした思わぬ効果なのかもしれません。

とはいえ、痴漢が完全になくなるわけではないでしょう。
痴漢をする人は、頭では悪いことだと認識し、やめなければならないと思っていたとしても、やめられない状態になっているケースがあるからです。
薬物やアルコール、さらには万引きなどと同様、依存症のような状態になってしまうのです。

こうなると、自分の意志だけでやめることは難しく、責めてもあまり意味がないので、きちんとした治療を受けることが重要となります。

最近ではオンラインによるカウンセリングをしているところもありますので、お住まいの地域の近くに専門的な治療を行っている病院がなかったとしても、専門的ケアとつながることができます。

~痴漢をした場合の罰則~

痴漢は各都道府県が制定している迷惑行為防止条例違反、あるいは悪質な態様の場合は刑法の強制わいせつ罪になります。
条文を見てみましょう。

宮城県・迷惑行為防止条例
第3条の2第1項
何人も、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような次に掲げる行為をしてはならない。
第1号
衣服その他の身に着ける物(以下「衣服等」という。)の上から又は直接人の身体に触れること。
刑法第176条(強制わいせつ)
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

宮城県の迷惑行為防止条例で定められた罰則は、痴漢常習者ではない場合には6か月以下の懲役または50万円以下の罰金痴漢常習者の場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
痴漢を繰り返していたからといって必ず常習者として処罰されるわけではありませんが、痴漢前科がある場合には、常習者として処罰される可能性が上がるでしょう。

どちらの犯罪に問われるのか、明確な線引きをすることは難しいですが、①服の上から触ったり、もともと出していた腕や足に触ったような場合には条例違反に、②スカートや下着の中に手を入れて触ったというような場合には強制わいせつ罪になる可能性が高まるでしょう。
ただし、服の上から触ったとしても、触る部位や触り方によっては強制わいせつ罪になる可能性も十分考えられます。

痴漢を繰り返すと、条例違反の場合は条文上も刑罰が倍になりますし、強制わいせつ罪の方も前科がある場合は判決が重くなることが予想されます。
そのことがわかっていても、簡単にはやめられない状態となってしまうのが怖いところです。
しっかりと治療をして、スムーズな社会生活を営んでいけるようにすることが重要です。

~弁護士にご相談ください~

あなたやご家族が何らかの犯罪をしたとして逮捕されたり、取調べを受けたといった場合にはぜひ一度、弁護士にご相談いただければと思います。
いつ釈放されそうか、どれくらいの刑罰を受けそうか、示談は可能なのか、近くに依存症を専門に扱う病院があるかなど、事件内容に応じてご説明いたします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスのご利用を、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談のご利用をお待ちしております。

タイヤをパンクさせた教師が逮捕

2020-04-27

タイヤをパンクさせた教師が逮捕

自動車のタイヤをパンクさせた教師が器物損壊罪逮捕された事件がありました。

仙台の中学校教師を逮捕 タイヤパンクさせた疑い
産経新聞

この事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説いたします。

~器物損壊罪~

この事件は、仙台市内の中学校の教師が、面識のない女性の自動車のタイヤをパンクさせたとして器物損壊の容疑で逮捕されというものです。
逮捕された容疑者が住む富谷市内でも同じような事件が相次いでいたことから、余罪についても捜査が進められているとのことです。

器物損壊罪はよく聞く犯罪だと思いますが、条文を見てみましょう。

刑法261条
前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

「前三条」には重要な文書を捨てたり建造物を壊した場合が規定されています。
これらの文書・建造物等以外を壊した場合には、261条の器物損壊罪が成立する可能性があるわけです。

「損壊」とは、物を物理的に壊すことのほか、物の効用を害する行為全般を指します。
なお、「傷害した者」という表現も入っていますが、これは動物にケガをさせた場合に成立する犯罪です。

今回の事例のように、自動車のタイヤをパンクさせると走行できなくなるので、タイヤとしての効用を害する行為として「他人の物を損壊」したことになります。
したがって器物損壊罪が成立し、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料となるわけです。
なお、「罰金」も「科料」も金銭を徴収される刑罰ですが、「罰金」は金額が1万円以上、「科料」は1000円以上1万円未満という違いがあります。

~逮捕後の流れは?~

犯罪をしたとして逮捕されると、最初に最大3日間、警察署等で身体拘束され、取調べ等の捜査を受けます。
そして逃亡や証拠隠滅のおそれがあるなどとして検察官が請求し、裁判官が許可すれば、さらに10日間勾留(こうりゅう)と呼ばれる身体拘束がされる可能性があります。
この勾留期間はさらに10日間延長されることもあります。

一般的に、重い刑罰を受けることが予想される場合ほど、その刑罰から逃れたいと考え、逃亡や証拠隠滅をするおそれが高いと考えられています。
器物損壊罪は、犯罪の中では比較的軽い方の犯罪なので、逃亡や証拠隠滅のおそれがそれほどないと判断されて勾留を免れる可能性も十分考えられます。

もちろん、前科の有無や被害金額にもよりますが、弁護士としても逃亡や証拠隠滅のおそれがないといえる理由をまとめた意見書を提出するなど、早期釈放に向けた弁護活動を行います。

釈放されれば、自宅から警察署や検察庁に出向いて取調べを受けるという流れになるでしょう。

勾留された場合はその期間の最後に、勾留されなかった場合は捜査が終わり次第、検察官が被疑者を刑事裁判にかけるか(起訴)、かけないか(不起訴)の判断をします。

このうち起訴には①正式起訴②略式起訴があります。
①正式起訴されると刑事裁判が開かれ、事件によって懲役刑の実刑判決や執行猶予判決、罰金刑の判決を受けたり、まれに無罪判決がなされることになります。
一方、②略式起訴は比較的軽い事件でなされることが多いです。
法廷での刑事裁判は開かれず、簡単な手続で罰金を納付して終わるということになります。

さらに、より軽い事件や示談が成立した事件などでは検察官が不起訴処分として、前科も付かずに刑事手続が終わる場合があります。
今回は大目に見てもらうということです。

今回の事件のように余罪が多くある場合には不起訴処分になるのは難しいかもしれませんが、出来るだけ多くの被害者の方々に謝罪・賠償して示談を締結できれば、不起訴処分になる可能性や軽い判決になる可能性を上げることができます。

なお、余罪が少ない器物損壊事件などでは、逮捕されずに取調べや裁判手続きが進められる可能性もあります(在宅事件)。
警察から取調べのために警察署に出頭するよう連絡が来た時点で、しっかり反省態度を示し、被害者との示談を進めていくことで、その後に逮捕される可能性を下げ、最終的な処分・判決を軽くすることを目指すことになります。

~弁護士にご相談ください~

あなたやご家族が何らかの犯罪をしたとして逮捕されたり、取調べを受けたといった場合、いつ釈放されるのか、どれくらいの刑罰を受けるのか、示談は可能なのかなど、わからないことが多くて不安だと思います。
ぜひ一度、弁護士にご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスのご利用を、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談のご利用をお待ちしております。

秋田県で盗撮規制が強化

2020-04-25

秋田県で盗撮規制が強化

秋田県の迷惑行為防止条例が改正され、盗撮規制が強化されました。

秋田県警作成リーフレット

改正内容について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説いたします。

~処罰対象となる場所や行為が追加~

盗撮は各都道府県が制定する迷惑行為防止条例で規制されています。
秋田県でも従来から、

①電車やお店など不特定の人が利用する公共の場所や公共の乗物
②住居、浴場、更衣場、便所など、通常、人が衣服の全部または一部を着けない状態でいる可能性がある場所

において、衣服等で覆われている下着や身体を盗撮した場合は処罰の対象となっていました。

しかし昨年、秋田県内の中学校の教室で臨時講師が女性教師のスカート内を盗撮した事件で、臨時講師を処罰することができませんでした。
学校の教室は上記②には当たりませんし、特定の人しか入ることができないため、①不特定の人が利用する「公共の場所」に当たるとも言い切れないと判断されたからです。

そこで令和2年4月1日から、

③事務所、教室、貸切バスなど、特定かつ多数の人が集まる場所や乗物での盗撮

も処罰対象に含まれることになりました。
これにより同じ事件が起きた場合には処罰することができるようになります。

他にも、これまでは衣服等で覆われている下着や身体を実際に盗撮した場合にのみ処罰の対象とされていました。
しかし今回の改正で、盗撮するためにカメラを向けたり設置した時点で、処罰対象になりました。
たとえば、隠しカメラを設置したが、下着や身体を盗撮する前にカメラを発見されて盗撮できなかった場合にも処罰の対象となるわけです。

罰則は、盗撮の非常習者は従来から6か月以下の懲役または50万円以下の罰金でした。
今回の改正で、前科があるなど盗撮の常習者として扱われるとより重く、1年以下の懲役または100万円以下の罰金という処罰を受けることになりました。

前述の中学校の盗撮事件では、被疑者の自宅を捜索・差押えした結果、公共の場所で盗撮したデータも見つかり、そちらで処罰することができました。
しかし今後は余罪のあるなしに関わらず、学校の教室などでの盗撮も処罰されることになります。

~刑事事件の手続きの流れ~

盗撮などの犯罪が警察に発覚した場合も、逃亡や証拠隠滅のおそれまではないと判断されれば逮捕されず、自宅から警察署や検察庁に出向いて取調べを受けるという在宅事件として扱われる可能性があります。

一方、逮捕された場合は最初に最大3日間、警察署等で身体拘束され、取調べ等の捜査を受けます。
そして逃亡や証拠隠滅のおそれがあるなどとして検察官が請求し、裁判官が許可すれば、さらに10日間、勾留(こうりゅう)と呼ばれる身体拘束がされる可能性があります。
この勾留期間はさらに10日間延長されることもあります。

勾留された場合はその期間の最後に、在宅事件では必要な捜査が終わり次第、検察官が被疑者を刑事裁判にかけるか(起訴)、かけないか(不起訴)の判断をします。

起訴されると罰金刑や懲役刑(執行猶予の場合もある)を受ける流れになるでしょう。
一方、比較的軽い事件や示談が成立した事件などでは不起訴処分となり、裁判を受けずに前科も付かずに刑事手続が終わる場合があります。
今回は大目に見てもらうということです。

弁護士とはしては、まずは逃亡や証拠隠滅のおそれがない理由を検察官や裁判官に主張するなどして、勾留されずに早期に釈放されることを目指します。
早期釈放が実現すれば、たとえば会社に出勤できずに逮捕されたことが発覚して解雇されるといった事態を避けられるかもしれません。

また、被害者の方に謝罪・賠償して示談を締結して不起訴処分や罰金などの軽い結果となるように弁護活動をしてまいります。
示談が成立した場合などには意外と不起訴処分となる例はよくあります。

~ご相談ください~

あなたやご家族が何らかの犯罪をしたとして逮捕されたり、取調べを受けたといった場合、いつ釈放されるのか、どれくらいの処罰を受けるのか、被害者との示談はどうやって行えばよいのか、解雇されるのかなど、分からないことが多く不安だと思います。

事件の内容をお聞き取りした上でご説明いたしますので、ぜひ一度、弁護士にご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスを、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談をご利用ください。

東北各県からの事件に対応しておりますので、ご連絡をお待ちしております。

覚せい剤を無理やり打たれて無罪?

2020-04-21

覚せい剤を無理やり打たれて無罪?

覚せい剤を使用した罪に問われるも、無罪判決が出された事件がありました。

「無理やり注射された可能性」 覚醒剤使用男性に無罪判決 佐賀地裁
Yahoo!ニュース(佐賀新聞)

この事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。

~尿検査で検出されるも無罪に~

この事件では、佐賀県内や福岡県内で覚せい剤を使用したとして男性が逮捕されました。
男性は尿検査で覚せい剤の成分が検出されていました。

しかし男性は逮捕時から、「知人から覚醒剤を強制的に注射された」といった供述をして容疑を否認しました。
覚せい剤使用の罪は、自分の意思で摂取しなければ成立しないからです。

そして佐賀地方裁判所は、「自らの意思で使用したことについて合理的な疑いが残る」として無罪判決を出しました。

多くの方は、「そんなことあるか?」と思われるかもしれません。
弊所も詳しい事情は分かりませんが、男性の供述が嘘とは言い切れない事情があったのだろうと思われます。

~有罪とする条件は?~

そもそも刑事裁判では、裁判にかけられている人(被告人)が、本当に犯罪をしたと言うには合理的な疑いが残る場合には有罪判決をすることができません。

「合理的な疑いが残る」というのを具体的な数値に表すのは難しいですが、たとえば99%以上、ほぼ間違いなくやっていると判断された場合には、合理的な疑いは残っていないとして有罪となるでしょう。
仮に被告人が、「私が寝ている間に、小学生の子供が勝手に私に覚せい剤を注射した」という主張をした場合、理論上はその可能性はゼロではないと思いますが、極めて可能性が低い弁解と言えるので、有罪にできるでしょう。

一方、犯罪をしている確率が90%、80%、70%…と下がってくると、有罪にはしづらくなってきます。
無実の罪で処罰を受けるという冤罪を防ぐために、犯罪をしていない可能性もある程度ある場合には、有罪とできないのです。
「無罪推定の原則」や「疑わしきは被告人の利益に」といった言葉で現されます。

今回の事件でいうと、たしかに知人から無理やり注射を打たれたという主張は、一般的な感覚からすると信じられないかもしれません。
しかし被告人と知人の関係性や当時の状況などから考えると不合理な弁解とは言い切れず、自らの意思で覚せい剤を摂取していない可能性も否定しきれないと判断されたのでしょう。
そこで無罪判決が出されたわけです。

~犯罪を証明するのは検察官~

このように考えると、被告人は無実である証明まではする必要がなく、逆に検察官が、犯罪をしたという証明をしなければならないことになります。

つまり、被告人としては、犯罪をしていないと言える可能性もある程度あると言える理由さえ示せれば無罪となるので、犯罪をしていないという証明までする必要はないのです。

一方、検察官としては、ほぼ間違いなく被告人が犯罪をしたと言う理由を示さなければ、有罪判決を得ることができないわけですから、検察官が証明責任を負っているということになるのです。

被告人にとって有利に思われるかもしれませんが、犯罪をしていないことを証明するのは「悪魔の証明」と言われる困難なものであり、それを要求すると、冤罪が生まれやすくなってしまうのです。

先日、国外逃亡したカルロス・ゴーン被告について森法務大臣が、「潔白というのならば、司法の場で正々堂々と無罪を証明すべき」と発言して、後日、発言を「無罪を主張すべき」に訂正したということがありました。
被告人のカルロス・ゴーンさんは無罪の証明をする必要はないのですから、おかしな発言だとして国内外から批判されたわけです。

~お困りの方は弁護士にご相談を~

身に覚えのない犯罪を疑われて困っている場合には、無罪判決に向けて弁護活動を致しますので、ぜひ弁護士にご相談ください。
また、本当に犯行をしており無罪獲得が不可能なケースでも、早期釈放や軽い判決に向けて活動を致しますので、ご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、交通事件を含む刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では初回接見のご利用を、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では、事務所での無料法律相談のご利用をお待ちしております。

弁護士事務所職員をかたり詐欺で逮捕

2020-04-19

弁護士事務所職員をかたり詐欺で逮捕

弁護士事務所職員を装って300万円をだまし取った事件がありました。

弁護士事務所職員装い…90歳男性から300万円詐取 名古屋・瑞穂区
Yahoo!ニュース(CBCテレビ)

この事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説いたします。

~特殊詐欺で弁護士事務所も利用される~

この事件は、オレオレ詐欺や還付金詐欺などの特殊詐欺の1つです。
共犯者の1人が名古屋市内の90歳男性宅に電話し、息子を装って「親父、マスクあるけど、どうする」などと話を切り出した上で、「仮想通貨でもうかった」「脱税の処理に金が必要」などと言ってお金を用意させました。

そしてもう1人の共犯者が弁護士事務所職員を装って被害者の自宅を訪れ、現金300万円をだまし取ったとして逮捕されたものです。

お金を実際に受け取りに行く「受け子」役は、自治体職員や銀行員、警察官など様々な職業をかたってお金をだまし取りますが、弁護士事務所職員という弊所にとっても身近な存在を利用するケースもあるということなので、やるせないところです。

特殊詐欺をすると、当然ながら詐欺罪が成立します。

刑法第246条1項
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

詐欺罪は条文にある通り懲役刑しか規定されておらず、罰金で済む可能性がありません。

また、特殊詐欺は被害が重大なものになる傾向があることから、初犯であっても執行猶予にならず、刑務所に入れられてしまうことが十分考えられます。
特殊詐欺は、同じ詐欺罪が成立する無銭飲食などと比べると、被害額が高くなりがちです。
今回の事例でだまし取られたのも300万円という大金です。

しかも、だまし取ったお金を使ってしまって、返還できないという例も多いです。
そこで判決も厳しいものになる傾向があるのです。

~刑事手続きの流れ~

犯罪をしたとして逮捕されると、最初に最大3日間、警察署等で身柄拘束され、取調べ等の捜査を受けます。
そして逃亡や証拠隠滅のおそれがあるなどとして検察官が請求し、裁判官が許可すれば、さらに10日間勾留(こうりゅう)と呼ばれる身体拘束がされる可能性があります。
この勾留期間はさらに10日間延長されることもあります。

その後、刑事裁判が始まります。
保釈が認められない限り、身柄拘束が続いてしまうことになります。

弁護士としては、勾留を防いだり保釈を認めてもらうことにより、ご本人が釈放されることを目指します。
ただし、被害金額が高かったり、共犯者がいるといった事例では、逃亡や証拠隠滅のおそれが高いと判断されて、なかなか釈放が認められない傾向にあります。

~判決を軽くするには~

前述のように特殊詐欺は被害が重大なので判決が重くなる傾向にあります。
少しでも軽い判決を得るためには、被害者にだまし取ったお金を返還して示談を結ぶことが重要です。

しかし、だまし取ったお金を使ってしまって本人が返還できない場合には、場合によってはご家族にご協力いただいて返還するという方法もあります。

もちろん、ご家族は法的には返還義務はありません
しかし、ご家族が協力できる余裕がある場合には、代わりに返還することによって被害が回復できるので、被害者にとってもプラスですし、結果として判決が軽くなる可能性もあります。

~弁護士にご相談ください~

とはいえ、示談交渉はどうやって行えばよいのか、また釈放に向けてどう動けばよいのかなど、わからない方がほとんどだと思います。
あなたやご家族が何らかの犯罪をしたとして逮捕されたり、取調べを受けたといった場合にはぜひ一度、弁護士にご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスのご利用を、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談のご利用をお待ちしております。

ベランダからごみを捨てて逮捕【廃棄物処理法違反】

2020-04-17

ベランダからごみを捨てて逮捕【廃棄物処理法違反】

マンションのベランダから土鍋などのゴミを捨てた人が逮捕される事件がありました。

“カリスマ美容師”6階から『土鍋投げ捨てた』疑いで逮捕…テレビなども投げたか
Yahoo!ニュース(MBSニュース)

この事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説いたします。

~廃棄物処理法違反に~

この事件は美容師の男性が、自宅マンションの6階のベランダから土鍋を投げて捨てたとして、廃棄物処理法違反の容疑で逮捕されたというものです。
土鍋の他にもテレビやCDプレーヤーも投げ捨てた疑いが持たれています。

やや珍しい犯行内容で逮捕されたように思いますが、具体的にどういう規定に違反したのでしょうか。
条文を見てみましょう。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律
第16条
何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。
第25条1項
次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第14号 第十六条の規定に違反して、廃棄物を捨てた者

16条の「廃棄物」には産業廃棄物のような事業活動によって生じるゴミだけでなく、一般家庭で出るゴミ・粗大ゴミなども含まれます。
これを正しくない方法で捨てると「みだりに廃棄物を捨て」たことになり、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはこれらの両方を科される可能性があるわけです。

時々、空き地や高架の下などゴミが捨てられそうな場所に、「不法投棄は5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその両方を科されます」といった看板が立てられていることがあるのですが、この規定に従って作られたものと言えます。

罰金の金額は、せいぜい50万円や100万円が上限となっている犯罪が多い中、1000万円という高額になっています。
主に業者が不法投棄をして利益を得ることを防ぐために、高額に設定されています。

したがって今回の事件のように一般人がごみを捨てた事例で巨額の罰金となる可能性は低いでしょう。
ただ、逮捕されて懲役刑や罰金刑を受ける可能性がある以上、大きなリスクがある行為と言えます。

~重過失致死傷罪なども~

今回の事件では6階からごみを捨てています。
幸いケガ人は出ていないとのことですが、万が一ごみを捨てた時に人に当たって怪我をさせた場合には過失致傷罪重過失致傷罪に、死亡させた場合には過失致死罪重過失致死罪に問われる可能性があります。

刑法第209条1項(過失致傷)
過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。
第210条(過失致死)
過失により人を死亡させた者は、五十万円以下の罰金に処する。
第211条(重過失致死傷等)
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

死傷者が出て、これらの犯罪も成立してしまった場合には、廃棄物処理法違反だけの場合よりも判決が重くなることが予想されます。

特に、重大な過失がある方が、すなわち不注意の程度が重い方が重く処罰されます。
不注意の程度の重さは、死傷者が出ることが予想できたかといった点から判断することになります。
たとえば人が立ち入る可能性があるような場所に投げた場合には、不注意の程度が重いと判断される可能性が上がるでしょう。

~犯罪に問われたら弁護士にご相談を~

犯罪になると思っていなかった行為で逮捕や取調べをされてしまい、どうしたらよいかわからないという場合があるかもしれません。
ぜひ一度、弁護士にご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では初回接見のご利用を、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では、事務所での無料法律相談のご利用をお待ちしております。

宮城県大崎市の保護責任者遺棄致死事件

2020-04-15

宮城県大崎市の保護責任者遺棄致死事件

【参考ニュース】
体調不良の父親を放置し死亡 息子を逮捕
KHB東日本放送

この事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~保護責任者遺棄致死罪とは~

この事件は、62歳の男性が、同居する87歳の父親が体調不良だったことを知りながら外出し、翌日まで放置し死亡させた疑いが持たれているというものです。
容疑者の男性は、「面倒になって救急車を呼ばなかった」と述べ、容疑を認めているとのことです。

今回問題となっている保護責任者遺棄致死罪とはどんな犯罪でしょうか。
まずは関係する条文を見てみましょう。

刑法217条(遺棄)
老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者を遺棄した者は、一年以下の懲役に処する。
第218条(保護責任者遺棄等)
老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。
第219条(遺棄等致死傷)
前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

まず、今回の容疑者の行為は217条の遺棄罪に該当するように思えます。
体調不良の87歳の男性は、「老年…又は疾病のために扶助を必要とする者」に当たり、容疑者はこの男性の扶助をしなかったからです。

しかし217条は、たとえば偶然家を訪ねるなどして体調不良の人を発見したアカの他人が、そのまま体調不良者を放置した場合などを想定した条文です。
今回の容疑者と87歳の男性は同居する親子ですから、息子である容疑者はむしろ218条の「老年者…又は病者を保護する責任のある者」に該当するでしょう。

アカの他人が遺棄するよりも、特別な関係にある者が遺棄した場合の方が悪質性が強いといった理由により、より重い刑罰が定められている218条の保護責任者遺棄罪が優先的に成立することになるのです。

しかも今回は息子が父親を遺棄した結果、父親が死亡していますから、219条の保護責任者遺棄致死罪が成立することになります。
罰則は「傷害の罪と比較して、重い刑により処断する」と書かれていますが、具体的には3か月以上15年以下の懲役となります。

余談ですが、218条には「遺棄」「その生存に必要な保護をしなかった」(=不保護)という2つの行為が規定されています。
どちらも必要な保護をしなかった点では同じですが、「遺棄」は場所的に離れてしまったパターン、不保護は場所的に離れずに必要な保護をしなかったパターンが該当します。

今回の事件の容疑者は父親を放置して外出したので、場所的に離れており、「遺棄」に該当します。
親が一緒に住んでいる幼児に食事を与えなかったような場合は不保護に該当するでしょう。

~殺人罪の可能性も~

今回のような事件では、殺人罪に問われる可能性もあります。

第199条
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

理論上、殺人罪と保護責任者遺棄致死罪の区別は、このまま放置すれば死亡してしまうかもしれないとわかっており、それでもいいと思って放置したような場合には殺人罪に、そこまでの思ってなければ保護責任者遺棄致死罪に問われるということになります。

ただ、実際には両者の区別は非常に難しいです。
今回の事件では保護責任者遺棄致死罪の容疑で逮捕されていますが、最終的に殺人罪の容疑に切り替わって裁判を受けるという可能性も否定できません。

~弁護士にご相談を~

今回の事件について、犯行理由などの詳しい事情は分かりませんが、介護が必要な高齢者が増えていくわけですので、今後こういった事件が増えてしまうかもしれません。
あなたやご家族がこういった犯罪をしたとして逮捕されたり、取調べを受けたといった場合には、お早めに弁護士にご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスのご利用を、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談のご利用をお待ちしております。

殺人事件の再審で無罪判決

2020-04-12

殺人事件の再審で無罪判決

殺人罪で服役後に再審で無罪判決が出た事件がありました。

滋賀「呼吸器外し殺人」再審で無罪判決、でっちあげ捜査の怖さ実感
Yahoo!ニュース(ダイヤモンド・オンライン)
冤罪の調査報道の始まりは仰天。「離れたくない」と刑事に抱きついた?|#供述弱者を知る
Yahoo!ニュース(Forbes JAPAN)

この事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説いたします。

~看護助手が殺人罪で服役~

この事件は2003年、滋賀県の病院に勤務していた看護助手の女性が、患者の人工呼吸器を外して殺害したと疑われたことから始まりました。
看護助手の女性は、裁判で懲役12年の判決を受けて刑務所に服役し、満期出所しました。
その後に再審の裁判が開かれ、2020年3月31日に無罪判決が出されて確定しました。

どうやら実際は患者の不整脈による自然死だったようです。
しかし、女性が人工呼吸器を外したというウソの自白をさせられたことなどから、殺人罪で有罪となり、10年以上に渡り服役する結果となってしまいました。

~なぜ自白したか~

女性はなぜウソの自白をしたのでしょうか。

一般にウソの自白をさせられた冤罪事件では、連日、長時間に渡る厳しい取調べがなされたケースがよくあります。
いくら自分はしていないと主張しても全く取り合ってもらえなかったり、強い口調で責められたり、時には被疑者に寄り添うかのような発言や認めたら有利になる旨を伝えるなど、アメとムチを使い分ける取調べがなされます。

その結果、信じてもらえないことに絶望したり、自白すれば厳しい取調べから逃れられるという精神状態になってしまったり、自分の記憶が間違いで本当はやったんじゃないかとさえ思うケースもあります。

中には、いったんは自白して後で裁判で争うしかないと考えて自白するケースもあります。
実際には、一度自白してしまうと、裁判官もその自白を信用してしまい、覆せずに有罪判決を受けてしまうケースもあります。

やっていないことをやったと言ってしまうのは、外から見ると不利になることが分かるので信じられない事態かもしれません。
しかし、厳しい取調べを受けるという極限状態では、認めてしまった方がよいという判断に至ってしまうことは誰でもありうるのです。

特に今回の事件では、看護助手の女性が軽度の知的障害を持っていたというのもウソの自白の原因となってしまいました。
相手の発言に合わせるような発言をしてしまう可能性が上がる場合があるようです。

筆者は小学生時代、先生から悪いことをしたのではと強い口調で聞かれた時に、本当はやっていないのに、恐怖心から否定することができませんでした。
子供にはよくあることですが、大人の場合にも同じ状態になることがあるのです。

また、今回の事件では、アメとムチの取調べが上手くいってしまい、女性が警察官に恋心を抱いてしまったという原因もあるようです。
さらには、自分が犯行を認めないと、当時一緒に勤務していた同僚の看護師が、患者の異変に気付かなかったなどとして業務上過失致死罪に問われる可能性もあり、仲の良かった同僚看護師をかばうために自白したという事情もあったようです。

このような事情から、虚偽の自白をするに至ってしまったようです。

~厳しい取調べは必要?~

ここで、真犯人を逃さないためには、厳しい取調べもやむを得ないのではと思う方もいらっしゃるかもしれません。
たしかに真犯人を逃すわけにもいきませんし、警察官検察官が取り調べる相手のほとんどは真犯人ですから、厳しい取調べになってしまうことも全く理解できないわけではありません。

しかし、心の片隅には、「犯人ではないのではないか」という気持ちを持って取調べに臨んでほしいところです。
真犯人であるとの先入観を持っていると、有罪とするのに都合の良い供述をするよう無理に誘導したり、取調べている相手が真犯人ではないことを示証拠を見落としたり、あるいは都合の悪い証拠は隠すといったことが起こりかねないからです。

今回の事件でも、「患者は痰詰まりで死亡した可能性」との医師の所見が記載された捜査報告書を、再審が開始されるまで警察が隠していました。

わざと犯人に仕立て上げるような行為は断じて許されません。

~お困りの方はご相談を~

このように身に覚えのない犯罪を疑われて困っている場合には、無罪判決に向けて弁護活動を致しますので、ぜひ弁護士にご相談ください。
また、本当に犯行をしているケースでも、罪を認めた上で早期釈放軽い判決に向けて活動を致しますので、ご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、交通事件を含む刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では初回接見のご利用を、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では、事務所での無料法律相談のご利用をお待ちしております。

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