信号無視の自転車をひいて裁判に【無罪】
信号無視の自転車をひいて死亡させ、裁判になった事件がありました。
女子高生死亡事故で男性に無罪 徳島地裁「過失なし」
Yahoo!ニュース(共同通信提供)
無罪判決が出されたということなので、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
~過失運転致死罪に問われた~
この裁判で自動車の運転手は、過失運転致死罪に問われていました。
条文を見てみましょう。
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律
第5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
もし有罪となれば、条文にある通り、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金という刑罰が科される可能性があります。
今回は、自転車の側が信号無視をしたわけなので、このような重い刑罰を受ける可能性が出てくるというのは腑に落ちない気もします。
しかし、相手が交通違反をしたのが事故の主たる原因だったとしても、こちらにも非があれば(=過失があれば)、こちらも罪の問われる可能性があるわけです。
~求刑は罰金30万円だった~
とはいえ、今回の事故は自動車の運転手の側に過失が認められるか微妙なところだったようです。
刑事裁判において検察官は、裁判にかけられた被告人にどれくらいの刑罰を受けさせるべきかという意見を述べますが(求刑)、この求刑は罰金30万円でした。
今回は有罪となれば最高で懲役7年を科すことも出来る犯罪ですが、求刑自体がだいぶ軽いものだったといえます。
仮に自動車の運転手にも過失があったとしても、悪質さは低いというのが検察官と弁護人の一致した意見だったと思われます。
~過失が認められず無罪に~
そして今回の裁判、自動車の運転手の過失が認められないとして無罪となりました。
判決理由では、
①自転車が赤に従って横断を差し控えるものと期待、信頼するのが通常
②前照灯の光や反射板を踏まえても、自転車の存在を予見できたか疑いが残る
といった理由が述べられたそうです。
①は、刑事裁判で時々用いられる、信頼の原則と呼ばれる考え方を示しています。
たしかに相手が交通違反をするかもしれないと注意深く運転していれば避けられたかもしれないが、このような注意を払うのにも限界があるので、相手が交通ルールを守ることを前提として信頼して運転していれば、事故が起こっても責任を負わなくて済むこともあるという考え方です(絶対に責任を負わないということではありません)。
この①は交通事故全般に当てはまる一般論に近いことを言っていますが、②は今回の事故を具体的に検討した結果を示しています。
すなわち、今回たしかに自転車が信号無視をしていたものの、自転車のライトや反射板が光っており、自転車の存在に気が付くことができたのだから、自動車の側で事故を避けることができたのではないかといった主張が検察官からなされていたのだと思われます。
しかし裁判所としては、自転車の存在に気付いて事故を避けられたとまでは言い切れないという判断をしたということになります。
~お困りの方は弁護士にご相談を~
今回の運転手は無罪となりましたが、裁判や取調べ対応などは大変だったでしょうし、仕事などにも影響が出たかもしれません。
また、人をひいて死亡に至ったということ自体が大きな心理的負担となったことでしょう。
さらに、主たる事故原因が相手にある場合でも、こちらにも非がある(過失がある)場合には有罪となってしまう可能性もあります。
普段、犯罪と縁がない人であっても犯罪者となってしまう可能性があるのが交通事故です。
運転は慎重に行うことが重要です。
もし、あなたやご家族が交通事故を起こして逮捕されたり、警察の取調べを受けるといった場合には、いつ釈放されるのか、被害者との示談はどうすればいいのか、どのくらいの刑罰を受けることになるのか、取調べでは何と答えたらよいのか、今後の刑事手続きの流れなど、わからない点が多いと思いますので、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件も含めた刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
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