強制執行逃れの財産譲渡で逮捕
強制執行妨害目的損壊等罪で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
【事例】
宮城県仙台市泉区で会社経営をするAさん。
経営が傾いて銀行からの借金を返せなくなり、このままでは会社で所有している土地建物への強制執行が免れない状況となっていました。
銀行に取られるくらいなら、親戚に土地建物を譲ってしまおうと考えたAさん。
親戚のBさんに相場より安い価格で土地建物を売却してしまいました。
その後、銀行がこの事実を把握して警察に相談。
Aさんは、泉警察署の警察官に逮捕されました。
(事実をもとにしたフィクションです)
~強制執行妨害目的損壊等罪とは~
強制執行を逃れようとして、土地建物を親戚に安く売却したAさん。
民事上は、詐害行為取消権(民法424条1項)の行使により、売買は取り消されてしまう可能性があります。
しかしそれだけではなく、犯罪まで成立してしまいます。
長い罪名ですが、強制執行妨害目的損壊等罪に問われる可能性があります。
刑法第96条の2
強制執行を妨害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、三年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第三号に規定する譲渡又は権利の設定の相手方となった者も、同様とする。
第3号 金銭執行を受けるべき財産について、無償その他の不利益な条件で、譲渡をし、又は権利の設定をする行為
この条文をもとにすると、
①強制執行を妨害する目的で
②金銭執行を受けるべき財産について
③無償その他の不利益な条件で譲渡等
を行えば、犯罪が成立することになります。
Aさんには、土地建物を銀行に取られまいとしていたので、①「強制執行を妨害する目的」があります。
②の「金銭執行」とは、金銭債権についての強制執行のことです。
銀行は、Aさんに対する金銭債権について、土地建物を売却するなどして埋め合わせしようとしていたわけですから、土地建物は②金銭執行を受けるべき財産にあたるといえます。
③については、親戚のBさんに相場通りの価格で売却していれば該当しませんが、今回は相場より安い価格で売却しているので、Aさんは③不利益な条件で譲渡したと言えます。
以上により①②③を満たすので、強制執行妨害目的損壊等罪が成立することになるでしょう。
~Bさんも同罪~
第96条の2には、「情を知って、第三号に規定する譲渡又は権利の設定の相手方となった者も、同様とする。」とあります。
つまり、強制執行を妨害する目的があると知って、無償または安く財産を譲り受けた人も、共犯として処罰されるということになります。
したがって、土地建物を安く譲り受けた親戚のBさんも、強制執行を妨害する目的があることを知っていたのであれば、処罰される可能性があるということになります。
~刑事手続きについて~
逮捕された後の手続について、詳しくはこちらをご覧ください。
https://sendai-keijibengosi.com/keijijikennonagare/
逮捕されると、どのような罪が成立するのか、いつ釈放されるのか、どれくらいの刑罰を受けるのか、取調べにはどう対応したらよいのか等々、不安点が多いと思います。
手続きは一気に進んでいきますので、お早めに弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
ご家族などから初回接見のご依頼をいただければ、拘束されている警察署等にて、ご本人に面会(接見)し、上記の不安点などについてご説明いたします。
接見後にその結果をご家族にご報告致しますので、報告を聞いていただいた上で、正式に弁護活動を依頼するかどうかを決めていただけます。
また、逮捕されていない場合やすでに釈放された場合には、弁護士事務所での法律相談を初回無料で行っております。
強制執行妨害目的損壊等罪などで逮捕された、捜査を受けているといった場合には、ぜひ一度ご連絡ください。