北上警察署が逮捕
特殊詐欺で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
宮城県内に住むAさん。
岩手県西和賀町の高齢者のVさんが1人で住む家に、銀行員を装って電話をかけました。
電話でVさんに対し、銀行口座が犯罪に利用されていると虚偽の事実を伝えた上、これ以上の不正利用を防ぐため、職員が訪問してキャッシュカードを預かると言いました。
その後、AさんはV宅に向かい、キャッシュカードを預かるとともに、言葉巧みに暗証番号も聞き出すことに成功してしまいました。
Vさん宅を後にしたAさんは、ATMからVさんのお金を下ろしました。
その後、Vさんは何の音沙汰もなかったことから銀行に問い合わせをし、詐欺被害に遭ったことを知りました。
警察がATMの防犯カメラ映像を検証するなどの捜査をした結果、Aさんの犯行が発覚。
Aさんは北上警察署の警察官によって逮捕されました。
(フィクションです)
~特殊詐欺で成立する犯罪~
Aさんが行ったのは、特殊詐欺と呼ばれる犯行の一態様です。
まだまだこのような特殊詐欺による被害が発生してしまっている状況です。
Aさんの行為には、窃盗罪と詐欺罪の成立が問題となります。
刑法第235条(窃盗)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第246条第1項(詐欺)
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
第2項
前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
まず、口座が犯罪に利用されているとだまして、キャッシュカードをだまし取った点につき、246条1項の詐欺罪が成立する可能性があります。
また、暗証番号を聞き出したことも、キャッシュカードと相まってAさんにとって大きな利益となるので、別途246条2項の詐欺罪が成立する可能性もあります。
さらに、正規の預貯金者ではないのにATMから現金を引き下ろした行為については、ATM内の現金を管理している銀行に対する窃盗罪が成立する可能性があります。
なぜ窃盗罪が成立するのか不思議かもしれません。
235条の「窃取」とは、占有者の意思に反して財物を自己または第三者の占有に移転することをいいます。
特殊詐欺の犯人によりATM内の現金が引き下ろされることを銀行は容認していないと言えるので、ATM内の現金の占有者である銀行の意に反して犯人の占有下に現金を移したことになり、窃盗罪が成立しうるわけです。
今回のようなケースで成立する犯罪については、裁判例や学説が固まっておらず、事案の微妙な違いによって適用される条文が変わってくることもあり得ますが、いずれにしろ詐欺罪や窃盗罪の成立が問題となってくるでしょう。
~今後の刑事手続きの流れ~
逮捕されたAさんは、まずは最大で3日間、警察署等で身体拘束され、取調べ等の捜査を受けます。
そして逃亡や罪証隠滅のおそれがあるなどとして検察官が勾留(こうりゅう)を請求し、裁判官が許可すれば、さらに10日間の身体拘束がされる可能性があります。
この勾留期間はさらに10日間延長されることもあります。
その後、検察官が被疑者を刑事裁判にかけると判断すれば(起訴)、刑事裁判がスタートします。
そして裁判で無罪や執行猶予とならない限り、刑罰を受けることになります。
なお、途中で釈放されれば、自宅から警察署や検察庁に出向いて取調べを受けたり、裁判所に出向いて刑事裁判を受けるという流れになることが考えられます。
弁護士としては、本人に有利な事情を出来る限り主張し、早期釈放や罰金・執行猶予などの軽い判決を目指していくことになります。
本人に有利な事情としては、反省している、前科がない、犯行グループの中で従属的な立場にあった、被害金額が少ない、被害を弁償して示談を締結した、などの事情が考えられます。
被害金額や前科の有無は、事件後の段階で変えることができない事情ですが、示談を締結できるかは事件後の交渉次第です。
したがって弁護士は、示談締結に向けて力を入れることになります。
~弁護士にご相談を~
警察に逮捕されると、ご本人やご家族は、いつ釈放されるのか、どのくらいの罰則を受けるのか、取調べにはどう受け答えしたらいいのか等々、不安点が多いと思います。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
ご家族などからご依頼いただければ、拘束されている警察署等にすみやかに接見に伺います。
また、逮捕されていない場合やすでに釈放されている場合は、事務所での法律相談を初回無料でお受けいただけます。
接見や法律相談では、上記の不安点などにお答えいたします。
詐欺罪や窃盗罪などで逮捕された、捜査を受けているといった場合には、ぜひ一度ご相談ください。