無免許運転ひき逃げの身代わりで犯人隠避罪1

無免許運転ひき逃げの身代わりで犯人隠避罪1

先日2月8日、仙台市青葉区で、追突事故を起こしながら現場から逃走した女性と、その身代わりとして警察に名乗り出た交際相手の男性の2人が宮城県仙台北警察署逮捕される事件が起きました。
警察によると、女性は、仙台市青葉区の県道において無免許で乗用車を運転中にバイクに追突し、バイクを運転していた大学生にけがを負わせたにも関わらず、その場から逃走したひき逃げなどの疑いが持たれています。
女性はひき逃げ直後、電話で交際相手の男性を呼び出し、無免許運転の自分の身代わりになることを依頼したと報道されています。
交際相手の男性は、事故処理中の現場に2人で現れ、捜査中の警察官に「自分が運転して事故を起こした」と嘘の供述をした犯人隠避の疑いが持たれているそうです。
2人は容疑を認めていて、女性は「無免許が発覚するのを恐れた」などと供述しているそうです。

今回と次回の二回にわたってこの事件について見てみます。

~無免許運転でひき逃げ~

自動車の運転中に、不注意で人身交通事故を起こして相手に怪我させてしまった場合、過失運転致傷罪に該当する可能性があります。
過失運転致傷罪は、通称自動車運転処罰法5条に定められており、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者」を「7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する」と規定されています。

しかし、自動車運転処罰法6条は、事件当時にその者が無免許であった場合には、法定刑が加重されると定めているため、上記の刑罰より重くなります。
なぜ、無免許運転で人身事故を起こした場合に刑の加重が設けられているかというと、無免許運転は、規範意識を欠いた危険な運転であり、無免許運転をして人を死亡させたり負傷させたりしたということは、それが言わば現実のものになったと考えることができるから、とされています。
無免許運転は、「自動車を運転するには運転免許を受けなければならない」という最も基本的な交通ルールを無視する、とても規範的意識(ルールを守ろうという意識)を欠いたことです。
運転免許を受けたり更新したりする際には、適性(視力等)、技能、知識について試験や講習等がありますが、無免許運転をする者は、このようなチェックを受けて知識を身に着ける機会がなかったため、人を死傷させることにつながる危険性もあります。
そこで、無免許運転で死傷事故を起こしたときには、無免許による刑の加重をすることで、その死傷事故とは別の機会に無免許運転をした場合以上の重い罰則にすることになったとされています。

過失運転致死傷罪を犯した者が、罪を犯した時に無免許運転であった場合、「10年以下の懲役」と刑が加重されることになります(同法第6条第4項)。
罰金の選択刑と禁錮刑がなくなって10年以下の懲役刑にまで刑が引き上げられるため、実刑判決の可能性が極めて高くなります。

無免許での過失運転致傷罪に加えて、ひき逃げに該当すると、さらに刑罰が重くなります。
ひき逃げ」とは、自動車やバイクなどの車両の運転中に、人を死亡させたり人に傷害を負わせる交通事故を起こしてしまった場合に、負傷者の救護や道路上の危険を防止しないまま、また事故について警察に報告しないまま、事故現場から立ち去る行為をいいます。
法律上は「ひき逃げ」という用語はありませんが、人身事故を起こして、道路交通法72条1項前段の救護義務に違反する行為(交通事故を起こした際に負傷者を救護しないで事故現場から離れる行為)がいわゆる「ひき逃げ」にあたります。
(なお、人身事故を起こして、報告義務(交通事故の日時や場所、死傷者の数や負傷の程度、事故の際に講じた措置等を警察官に報告する義務(道路交通法72条1項後段))に違反する行為も「ひき逃げ」という言葉に含まれます。)
救護義務違反の罰則は、10年以下の懲役刑または100万円以下の罰金刑です(道路交通法117条2項)。
ひき逃げを起こしたときには、通常は、道路交通法上の救護義務違反と自動車運転処罰法違反(過失運転致傷罪など)の両方が成立し、両罪は「併合罪」という扱いになります。
併合罪とは、確定裁判を経ていない2個以上の罪をいいます。
併合罪のうちの2個以上の罪について有期の懲役又は禁固に処するときは,その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とされます。
過失運転致傷罪+無免許による加重+救護義務違反(ひき逃げ)であれば、15年以下の懲役に処せられる可能性があります。

なお、今回の事件で、女性の交際相手が犯人隠避罪の疑いで逮捕されています。
女性が交際相手に隠避行為を頼んでいた場合は、交際相手の犯人隠避罪を教唆したとして、女性に犯人隠避罪の法定刑である「3年以下の懲役または30万円以下の罰金」が適用される恐れが出てきます。

無免許運転ひき逃げをしてしまった、身代わりで犯人だと名乗り出て犯人隠避罪の疑いをかけられているという場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
(宮城県仙台北警察署への初回接見費用:34,600円)

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