隣人トラブルから殺人未遂罪で逮捕

隣人トラブルから殺人未遂罪で逮捕

マンションの騒音トラブルが原因で殺人未遂事件が起きたとのニュースがありました。

ハンマーで殴り首を圧迫 “音量”トラブル…隣人の男逮捕
Yahoo!ニュース(テレビ静岡提供)

この事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説いたします。

~隣人トラブルから成立しうる犯罪~

この事件は、マンションの隣の部屋から聞こえてくるクラシック音楽の音量を原因として、ハンマーを持参して隣の部屋を訪れた加害者が、被害者をハンマーで数回殴り、首を圧迫するなどして殺害しようとしたとして、殺人未遂の容疑で逮捕されたという事件です。

客観的にみて本当にうるさかったのかはわかりませんが、今回のようにマンションやアパートの騒音トラブルなどから犯罪に発展してしまうケースはよくあると言えます。

一般的に、隣人トラブルを原因として成立しうる犯罪としては、以下のように様々なものが考えられます。

①脅迫罪
苦情の入れ方を間違い、たとえば「ぶっ殺すぞ」などと強い言葉を使ってしまった場合には、脅迫罪が成立する可能性があります。

刑法222条1項
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2項
親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

②強要罪・強要未遂罪
「ぶっ殺すぞ」などの強い言葉を使ったり、暴力をした上で、土下座させるなどの行為をさせた場合には強要罪が成立する可能性があります。
また、土下座などをさせようとしたが、させるに至らなかった場合でも強要未遂罪が成立する可能性があります。

第223条1項
生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
3 前二項の罪の未遂は、罰する。

③暴行罪・傷害罪
相手に暴力をふるい、ケガをさせれば傷害罪が、幸いケガまではしなかった場合でも暴行罪が成立するでしょう。

第204条
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第208条
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

④傷害致死罪
相手を殺すつもりはなかったが、暴力をふるった結果、相手が死亡してしまった場合には傷害致死罪が成立するでしょう。

第205条
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する。

⑤殺人罪・殺人未遂罪
相手を殺すつもりで暴力をふるい、実際に死亡させた場合には殺人罪が、死亡させるに至らなかった場合には殺人未遂罪が成立するでしょう。

第199条
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
第203条
第百九十九条及び前条の罪の未遂は、罰する。

~殺人罪と傷害致死罪・殺人未遂罪と傷害罪の区別は?~

このように隣人トラブルから様々な犯罪が成立することがあります。

ここで、相手が死亡した場合でも殺人罪になる場合と傷害致死罪になる場合とがあります。
また、死亡しなかった場合でも殺人未遂罪になる場合と傷害罪になる場合があります。

これらの区別は、殺すつもりがあったかどうか(故意があったかどうか)によって区別します。
殺人の故意があって殺害すれば殺人罪に、殺人の故意があったが殺害に至らなかった場合が殺人未遂罪になります。
一方、殺人の故意がないのに死亡させてしまうと傷害致死罪に、殺人の故意がなくケガをさせたにとどまれば傷害罪ということになります。

とはいえ、被疑者の犯行当時の内心のことですから、後から裁判で客観的に判断することは難しいところがあります。
そこで、実際には諸事情を総合的に考慮して、故意があったかどうかが判断されます。

たとえば被疑者が自ら殺すつもりであったと認めているかどうかはもちろん重要な事情の1つになります。
また、犯行に使われた凶器が殺傷能力の高いもの(大きなナイフやピストルなど)であれば、命への危険性が高い行為をしていたわけですので、故意が認められやすくなります。
殴ったり刺したりした部位が、頭部や腹部など命にかかわりやすい場所であれば、殺すつもりだったのだろうと判断されやすくなります。
また、執拗に攻撃を続けていたのであれば、やはり殺すつもりだったのだろうと判断されやすくなります。

今回の事件では、逮捕された被疑者が犯行を認めているかどうかは、警察が発表していないということです。
しかし、頭部という重要な部分を、ハンマーという強力な武器で数回殴ったうえ、首を圧迫したというのが事実であれば、殺人の故意があったと認められやすい事情があったといえます。
そこで警察も殺人未遂の疑いで逮捕したといえるでしょう。

~弁護士にご相談を~

あなたやご家族が隣人トラブルなどで何らかの犯罪を起こしたとして警察に逮捕されたり、取調べ受けているといった場合には、今後どうなってしまうのか不安だと思いますので、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスのご利用を、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談のご利用をお待ちしております。

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