他人の落とし物を盗んでしまった場合、どのような犯罪が成立するかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説致します。
【仙台市若葉区の遺失物横領事件】
Aさんは、仙台市若葉区のスーパーマーケットに行った帰り道で、Vさんが落としたポーチをみつけ、交番に届けようとそのポーチを拾いましたが、交番へ届け出ずにAさんの自宅へ持ち帰りました。
なお、Vさんはポーチを落としたことに気付かずに、1週間以上生活しており、ポーチを落としたことにも気づいていませんでした。
ポーチを拾った後のAさんはというと、仕事が忙しかったため、なかなか交番へ行く機会を作れず、いつしか拾ったポーチの存在を忘れていました。
2か月後、Aさんのもとに、宮城県若林警察署から連絡があり、Aさんが拾ったポーチのことで話が聞きたいと取調べを受けることになりました。
不安になったAさんは、刑事事件を扱う法律事務所の無料法律相談を利用することにしました。
(フィクションです。)
【遺失物横領罪】
遺失物等の他人の占有を離れた他人の物を横領した者には、遺失物横領罪(刑法254条)が成立し、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金もしくは科料が科せられます。
刑法 第254条
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
Aさんが見つけたポーチは、他人であるVさんが落とした遺失物といえます。
遺失物横領罪が成立するのは、遺失物等であることを認識しながら、不法領得の意思をもってこれを領得、すなわち、不法領得の意思を発現する外部的行為(例えば、拾得、隠匿等)をした時点です。
不法領得の意思とは、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思をいいます。
Aさんは、Vさんのカバンを見つけて拾った時点では、交番に届けようと思っていました。
したがって、カバンを拾った時点では、Aさんには不法領得の意思は持っておらず、この時点では遺失物横領罪は成立しないものと考えられます。
しかし、Aさんは、Vさんのポーチを2か月間にわたって自宅に置いたままにしていました。
このような保管行為は、所有者でなければ権限なくすることができません。
Aさんは、Vさんの許可を得ていないのですから、Aさんがポーチを自分の占有下に長期間にわたって保管し続ける権限はありません。
したがって、Aさんは不法領得の意思をもってこれを領得したものみなされる可能性があり、遺失物横領罪が成立する可能性があります。
【窃盗罪が成立する可能性も】
今回、Vさんはポーチを落としてから1週間以上経過していたため、Vさんが落としたポーチは、すでにVさんの占有から離れているとみなすことができる可能性が高いです。
ただ、Vさんがポーチを落として、まだそれほど時間が経過していない場合、たとえVさんとポーチの間に物理的な距離があったとしても、そのポーチはVさんの占有下にあるとみなされるケースもあります。
この場合、AさんがVさんのポーチを持ち帰った場合、Vさんの意思に反し、AさんがVさんのポーチを窃取しているとみなされ、Aさんには窃盗罪が成立する可能性があります。
刑法 第235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
このように、落とし物を持ち去った場合、その時の状況や、どれくらいの時間が経過していたのかによって、成立する罪名が変わることがあります。
【落とし物を持ち去ってしまったら】
もし、落とし物を拾って自分のものにしようとしたけれど、警察に正直に話をし、出頭を考えている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談下さい。
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