【事例解説】家出していた高校生を自宅に泊めて逮捕、未成年者誘拐罪における「誘拐」の定義
未成年者誘拐罪と親告罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
参考事件
宮城県富谷市に住んでいる会社員のAさんは、家出していた高校生であるVさんと知り合いました。
Vさんから事情を聞いたAさんは、「それなら家に泊めよう」と自宅にVさんを招きました。
数日後、Aさんの自宅に警察官が訪ねて来て、「未成年者誘拐の件でお話があります」とVさんを保護しました。
そしてAさんは大和警察署に未成年者誘拐罪の容疑で現行犯逮捕されました。
(この参考事件はフィクションです。)
未成年者誘拐罪
「誘拐」は子供を無理矢理連れ去るイメージがありますが、刑法での「誘拐」は一般の認識とは少し違う定義がされています。
刑法第224条には「未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。」とあり、これが未成年者誘拐罪(および未成年者略取罪)を定めている条文です。
この場合の「未成年者」は18歳未満の者です。
AさんとVさんはお互いに同意の上でAさんの自宅に泊まっているため、一見すると「誘拐」には見えないかもしれません。
しかし未成年者誘拐罪における「誘拐」の定義とは、欺罔・偽計・誘惑・甘言などを用いて、未成年者に誤った判断をさせ、現在置かれている生活環境から離脱させ、自己もしくは第三者の事実的支配下に置くことを意味します。
この条文の保護法益は被害者の自由と安全だけでなく、親権者の保護監督権も含んでいます。
そのため参考事件のように被害者との同意があったとして、両親など保護者の同意がない場合も未成年者誘拐罪は成立します。
AさんはVさんに対して「それなら家に泊めよう」と提案しました。
これが誘惑、甘言であり、それによってVさんが保護者の同意なくAさんの自宅に泊まることを決めたため、AさんはVさんを「誘拐」したと判断されます。
また、同条文が定める未成年者略取罪の「略取」は、暴行や脅迫などが用いて未成年者の意思を抑制することを指しています。
親告罪
未成年者誘拐罪は「3月以上7年以下の懲役」のみを定めているため、罰金で事件を終わらせることはできません。
そのため未成年者誘拐罪で起訴されると正式な裁判を受けることになります。
しかし、刑法第229条は「第224条の罪及び同条の罪を幇助する目的で犯した第227条第1項の罪並びにこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ控訴を提起することができない。」と定められているため、未成年者誘拐罪は親告罪です。
そのため被害者が告訴を取り下げれば、起訴されることはありません。
告訴を取り下げてもらうためにも、被害者、この場合はその保護者と示談交渉を進める必要があります。
スムーズに示談を締結するためには、未成年者誘拐罪に詳しい弁護士に、弁護活動を依頼することが重要です。
未成年者誘拐罪に詳しい弁護士
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