警察官が被疑者を殴り逮捕

警察官が被疑者を殴り逮捕

特別公務員暴行陵虐致傷罪で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。

【事例】
警察官であるAさん。
被疑者として逮捕した者を取調べしていましたが、被疑者の態度があまりにも悪かったことから、カッとなって顔面をコブシで殴ってしまいました。
被疑者は鼻を骨折してしまい治療を受けるとともに、弁護士にも報告。
弁護士は暴行をした警察官を告訴する手続きを行ったほか、記者会見を開いて事態を世に知らしめました。
暴行の事実がニュースでも取り上げられ、このまま内部処理で済ますわけにいかなくなった県警は、暴行を行った警察官を逮捕しました。
(事実をもとにしたフィクションです)

~特別公務員暴行陵虐致傷罪~

最近ではあまりないと思われますが、昔は警察官などが被疑者に暴行を加えるという事案が度々あり、警察官に有罪判決が下ったこともあります。
具体的には、特別公務員暴行陵虐致傷罪という犯罪が成立してしまいます。

刑法第195条1項
裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、七年以下の懲役又は禁錮に処する。

これが特別公務員暴行陵虐罪の条文です。
「警察の職務を行う者」であるAさんは、取調べという「職務を行うに当たり」、「被疑者…に対して暴行…をした」ということになります。

しかも今回は、被疑者がケガをしてしまったので、より重い特別公務員暴行陵虐致傷罪が成立することになります。

第196条
前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

「傷害の罪と比較して、重い刑により処断する」とありますが、特別公務員暴行陵虐罪と傷害罪の条文で定められた刑罰を比べて、上限も下限も重い方を基準とするということです。すなわち、特別公務員暴行陵虐罪は7年以下の懲役または禁錮、傷害罪は15年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
そうすると、上限は最長15年の傷害罪が重く、下限は罰金刑がない特別公務員暴行陵虐罪が重いです。
したがって、15年以下の懲役ということになります。

ちなみに検察官が殴った場合も同じ条文で処罰されることになります。
また、刑務所の刑務官などの場合は、刑罰の重さは同じですが、195条2項が適用されます。

第195条2項
法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときも、前項と同様とする。

~刑事手続きの進み方~

暴行をしてしまったAさんは詳しいでしょうが、Aさんのご家族にとってはどのような手続が進んでいくのか不安なところかもしれません。

逮捕をされたAさんは、最初に最大で3日間、警察署の留置所等に入れられます。
そして、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるとして検察官が勾留(こうりゅう)を請求し、裁判官が許可すれば、さらに最大20日間の身体拘束がされる可能性があります。

その後、検察官が、被疑者を刑事裁判にかけると判断すれば(起訴)、刑事裁判がスタート。
無罪執行猶予とならない限り、刑罰を受けることになります。

なお、途中で釈放されれば、自宅から警察署や検察庁に出向いて取調べを受けたり、裁判所に出向いて刑事裁判を受けるという流れになることが考えられます。

~まずはご相談を~

このようなニュースで大きく取り上げられる可能性のある事件では、刑事手続の他、マスコミ対策なども必要となる場合があり、荷が重いところと思います。
一度お早めに弁護士に相談した方がいいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
ご家族などから初回接見のご依頼をいただければ、拘束されている警察署等にて、ご本人に面会(接見)し、上記の不安点などについてご説明いたします。
接見後にその結果をご家族にご報告致しますので、報告を聞いていただいた上で、正式に弁護活動を依頼するかどうかを決めていただけます。

また、逮捕されていない場合やすでに釈放された場合には、弁護士事務所での法律相談を初回無料で行っております。

特別公務員暴行陵虐致傷罪などで逮捕された、捜査を受けているといった場合には、ぜひご連絡ください。

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