児童買春から児童ポルノ製造・公然陳列の罪が発覚②
~前回からの流れ~
Aさんは、出会い系アプリで女子高校生Vさん(16歳)と知り合いました。
Vさんが「今年の春に高校2年生になった」と話していたため、Aさんは,Vさんの年齢を16歳か17歳だろうと思いましたが、Vさんと援助交際をしたいと考えて、Vさんに3万円を渡す代わりに性交することを約束しました。
当日、Vさんと会ったAさんは、渡すお金を1万円増額する代わりにVさんとの性交時の場面を動画撮影させてほしいとVさんに持ち掛けました。
Vさんの了承を得たAさんは、Vさんと性交に及ぶ様子をスマートフォンで動画撮影しました。
帰宅後、Aさんは、その動画をインターネット掲示板に公開しました。
Vさんが宮城県遠田警察署に補導されたことをきっかけに事件が発覚し、Aさんは児童買春の疑いで宮城県遠田警察署に逮捕され、スマートフォンを押収されました。
捜査の結果、Aさんは、20日間の勾留後、児童ポルノ製造の罪と児童ポルノ公然陳列の罪で再逮捕されました。
(フィクションです。)
前回のコラムでは、児童買春の罪について解説しました。
今回からは、児童ポルノに関する罪のうち、主に児童ポルノ製造の罪と児童ポルノ公然陳列の罪について解説します。
~児童ポルノに関する罪~
児童ポルノに関する規制と処罰については、「児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下,法律)」で定められています。
「児童ポルノ」とは、法律2条3項で定義されており、
写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって
①児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿勢(1号)
②他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器を触る行為に係る児童の姿勢であって性欲を興奮させ又は刺激するもの(2号)
③衣服の全部または一部を着けない児童の姿勢であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの(3号)
を視覚により認識できる方法により描写したものを言います。
児童ポルノにかかる行為で禁止されているのは
(1)児童ポルノの単純な所持(7条1項)
(2)児童ポルノの提供(7条2項)
(3)児童ポルノを提供する目的での製造、所持、運搬、日本国内への輸入又は国外への輸出(7条3項)
(4)児童ポルノの単純な製造(7条4項)
(5)盗撮による児童ポルノの製造(7条5項)
(6)不特定若しくは多数への児童ポルノの提供や公然陳列(7条6項)
(7)児童ポルノを不特定若しくは多数へ提供や公然陳列する目的での、製造、所持、運搬、日本国内への輸入又は国外への輸出(7条7項及び8項)
があります。
~児童ポルノ製造の罪とは~
児童ポルノの製造とは、その名前の通り、児童ポルノを作り出すことを言います。
児童の心身に与える有害な影響や、流通の危険性を創出する点から、児童ポルノの製造が禁止されています。
今回の事例のAさんは、16歳のVさんとの性交時の場面を動画撮影しています。
性交時の児童(Vさん)の姿態は法律2条3項1号に当たり、スマートフォンのメモリが電磁的記録に係る記録媒体に当たります。
したがって、スマートフォンのメモリに、Vさんとの性交時の動画を記録・蔵置することは、児童ポルノの製造にあたるといえそうです。
ところで、児童ポルノ製造の罪といっても,法律では,その目的や態様によって適用される条文や罰則が異なります。
児童ポルノの製造については、以下の4種類があります。
①提供する目的での製造(法律7条3項)
②単純な製造(法律7条4項)
③盗撮による製造(法律7条5項)
④不特定若しくは多数へ提供や公然陳列する目的での製造(法律7条7項)
罰則規定は
①~③が3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
④が5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又は併科
と規定されています。
なお、警察庁の統計データによると、平成30年上半期の児童ポルノの態様別の検挙件数では、製造事犯が686件と全体の約5割を占めているようです。
次回のコラムでは、上記の4種類の児童ポルノ製造の解説と、児童ポルノ公然陳列の罪の解説をします。
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(宮城県遠田警察署への初回接見費用:43,220円)