放火予備罪で逮捕

放火予備罪で逮捕

宮城県七ヶ浜町在住のAさんは、同町内のVが経営する青果店に店員として勤務していましたが、Vから厳しく叱責されたことに憤慨し、その鬱憤を晴らすため、Vが現に住居として使用している店舗兼住宅を燃やしてしまおうと思い立ちました。
Aさんは、上記放火に使用するため灯油やライターなどを購入し、Vの店舗兼住宅の家屋裏口まで運び、灯油を裏口周辺に撒きはじめました。
AさんがVの店舗兼住宅の家屋裏口に灯油を撒きはじめたところを目撃した人の通報により、宮城県塩釜警察署の警察官は、Aさんを放火予備罪の疑いで逮捕しました。
(フィクションです。)

~放火予備罪~

放火予備罪は、刑法113条に規定されている犯罪です。
「予備」とは、犯罪の実現を目的として行われる謀議以外の方法による準備行為をいいます。
放火予備罪とは、現住建造物等放火罪または他人所有の非現住建造物等放火罪を犯す目的で、その予備行為をする罪です。
つまり、放火罪のなかでも重い放火罪の目的での予備行為のみ放火予備罪とされているということです。
法定刑は、2年以下の懲役ですが、情状により、その刑を免除されることがあります。

放火予備罪という罪名はなかなか聞きなれない罪名ですが、放火予備罪と放火の未遂罪は、いったいどのように違うのでしょうか?

放火の未遂罪(刑法112条)と放火予備罪(113条)の罰則は、現住建造物等放火の未遂罪の場合であれば「死刑または無期もしくは5年以上の懲役」、放火予備罪の場合だと、現住建造物等、非現住建造物等に関わらず「2年以下の懲役」となっています。
放火予備罪は、未遂罪の罰則規定に比べると非常に軽くなっているため、放火予備罪にあたるのか未遂罪にあたるのかは、犯人とされている方にとって大きな違いとなります。

放火の未遂罪と放火予備罪の違いは、放火の着手があるかどうかです。
放火の着手が認められるには、その行為によって具体的な危険が生じた事が必要とされます。
灯油は、可燃性が低く引火しにくい性質を持つため、灯油をまく行為だけでは危険性が認められないと考えられています。
そのため、一般的に灯油をまくだけでは放火の着手が認められないとされています。
(なお同じ燃料でも、ガソリンは、揮発性が高く引火しやすく危険とされているため、家屋の材質や状況によって、まく行為だけで放火の着手が認められる場合もありえます。)

今回の事例のAさんの場合、灯油を撒いただけであるため、具体的な危険が生じたとまでは言えず、放火の着手があるとは認められない可能性が高いと考えられます。

放火予備罪の成立には、放火の実行の意思と、その意思を実行に移す準備としての予備行為(放火材料の準備、放火道具の目的地への運搬など)が必要です。
上記の事例でいうと、Aさんは、放火してVらが現に住居として使用している店舗兼住宅を燃やしてしまおうという目的で(=「放火」という犯罪の実現を目的として)、灯油やライターなどを購入し、Vの店舗兼住宅の家屋裏口まで運び、灯油を裏口周辺に撒きはじめています(=謀議以外の準備行為)。
以上から、Aさんは放火予備罪にあてはまる可能性が高いと考えられます。

なお、「予備罪」とは、すべての犯罪について定めがあるわけではありません。
刑法では、放火予備罪のほかに、内乱予備罪(刑法78条)や通貨偽造等準備罪(刑法153条)、殺人予備罪(201条)、身の代金目的略取等予備罪(228条の3)、強盗予備罪(237条)などがあります。
予備罪の罰則規定については、保護法益に対して未だ具体的な危険が及んでいないことから、未遂罪に比べて処罰規定が軽く定められています。

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(宮城県塩釜警察署への初回接見費用38,800円)

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