漁船転覆で取調べ【業務上過失往来危険罪】
船長が漁船を転覆させ、乗員を死亡・負傷させて取調べを受ける場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
【事例】
宮城県沿岸部に住み、漁師をしているAさん。
漁師仲間数名を自ら所有する漁船に乗せて、漁に出ていました。
ところが運行経路を誤り、岩礁に接触。
船体は大きく損傷して浸水し、ついには転覆してしまいました。
乗員は救命胴衣を着けた状態で海に投げ出されることに。
そのうち一人の乗員が沖に流され、行方不明となってしまいました。
後日、Aさんは海上保安庁から呼び出されて、取調べを受けることとなりました。
(事実をもとにしたフィクションです)
~業務上過失往来危険罪~
宮城県に限った話ではありませんが、時々起こる船舶事故・海難事故。
被害者への損害賠償などの問題が生じうる他、犯罪も成立してしまう可能性があります。
まず、漁船を転覆させたことについて、業務上過失往来危険罪が成立する可能性があります。
条文を見てみましょう。
刑法
第129条1項
過失により、汽車、電車若しくは艦船の往来の危険を生じさせ、又は汽車若しくは電車を転覆させ、若しくは破壊し、若しくは艦船を転覆させ、沈没させ、若しくは破壊した者は、三十万円以下の罰金に処する。
第2項
その業務に従事する者が前項の罪を犯したときは、三年以下の禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
今回のAさんの場合、赤色に塗った部分に該当することになるでしょう。
特にAさんは、船の操縦を1回限り行ったのではなく、漁師・船長として繰り返し行っていたでしょうから、船舶操縦の業務に従事する者として2項の業務上過失往来危険罪が成立し、より重い責任に問われることになるでしょう。
~業務上過失致死傷罪~
今回の事故では行方不明者が出てしまっています。
遺体が見つからないとしても、死亡したのは間違いないとして業務上過失致死罪に問われる可能性もありますが、業務上過失致傷罪の責任を問われるにとどまるということもありうるでしょう。
第211条
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
致傷罪と致死罪は、どちらも刑罰は変わりません。
ただし、実際に言い渡される刑罰に差は出てくるでしょう。
またAさんは、1回の船舶操縦ミスにより、前述の業務上過失往来危険罪と業務上過失致死傷罪を犯しています。
この場合は重い刑罰が定められている業務上過失致死傷罪を基準に刑罰が決められます。
第54条1項
一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
したがって、211条にあるように、5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金の範囲内で処罰される可能性があります。
なお禁錮も懲役と同様、刑務所に入れられますが、刑務作業をするかしないかは自由とされるものです。
もちろん執行猶予が付く可能性もあります。
どういった処分・判決となるかは、今回の事故の原因、ミスの重大さなどの事故原因、死者が出たか、被害者に謝罪や賠償をして示談できたか、反省しているか、などといった要素を総合的に考慮して判断されることになります。
~弁護士にご相談ください~
今後の刑事手続の流れについて、詳しくはこちらをご覧ください。
https://sendai-keijibengosi.com/keijijikennonagare/
弁護士としては、前科が付かずに終わる不起訴処分や、罰金などの軽い処分・判決を目指して活動していくことになります。
犯罪をしてしまって捜査を受けると、どのくらいの刑罰を受けるのか、取調べにはどう対応したらよいのかなど、わからないことが多いと思いますので、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
弁護士事務所での法律相談を初回無料で行っております。
また、万が一逮捕されている場合には、ご家族などから初回接見のご依頼をいただければ、拘束されている警察署等にて、ご本人に面会(接見)し、事件の内容を聴き取った上で、今後の見通しなどをご説明致します。
接見後には、接見の内容などをご家族にお伝え致しますので、それを聞いていただいた上で、正式に弁護活動を依頼するかどうかを決めていただけます。
業務上過失往来危険罪などで逮捕された、捜査を受けているといった場合には、ぜひ一度ご連絡ください。