痴漢事件で余罪取調べ
仙台市若林区に住む会社員のAさんは,勤務先から帰宅するため地下鉄に乗った際,乗客の女子高生の身体を触ったことで他の乗客に取り押さえられ,駆けつけた宮城県若林警察署の警察官によって現行犯逮捕されてしまいました。
Aさんは以前にも同じ路線で痴漢行為をしたことがあったため,警察官に正直に話すべきか悩んでいました。
Aさんは,家族が初回接見を頼み,宮城県若林警察署へ面会に来た弁護士に相談しました。
(フィクションです)
~余罪が刑事処分にもたらす意味~
設例のAさんは痴漢行為を理由に現行犯逮捕されていますが,いわゆる痴漢行為は各自治体が定める迷惑防止条例によって処罰されます。
宮城県の場合,迷惑防止条例第3条の2第1項1号が痴漢行為を規制しており,罰則は「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」と定められています(同条例17条1項1号)。
痴漢事件は余罪が問題となることも少なくありません。
逮捕の有無に関わらず,警察官,検察官は同種の余罪がないか,取調べを行います。
別機会に起こしてしまった事件は別罪として扱われるため,取調べを経て余罪が発覚すると,立件されて捜査の対象になることがあります。
捜査の対象になるということは,すなわち,逮捕や刑事処分がされるリスクが生じることを意味します。
迷惑防止条例違反で現行犯逮捕されたAさんは,逮捕の翌日ないし2日目までに,検察庁と裁判所に行き,検察官と裁判官からも事件について聴取されます。
警察から送られた事件記録やAさん自身の話を聞いて,検察官と裁判官は,その日のうちにAさんを釈放するか,勾留して引き続き留置所に拘束するかの判断を行います。
勾留決定がされなければAさんは釈放されますが,余罪があった場合,後日改めて逮捕される可能性があります。
再逮捕はされなくても,余罪の存在も考慮したうえで勾留決定がされてしまうことも考えられます。
その場合,一律10日間,最大で20日間,留置所から出ることができなくなります。
また,余罪は多ければ多いほど罪が重くなるため,初犯であっても起訴されて刑事裁判を受けなければならなくなることもあります。
このように,余罪の有無は身体拘束や処分内容に影響を及ぼします。
~取調べ対応の正解は?弁護士からの助言の重要性~
それでは,設例のAさんは痴漢行為の余罪について黙秘することが正解なのでしょうか?
確かに,刑事事件の疑いをかけられている人(被疑者と呼びます)には黙秘権が認められており,刑事訴訟法198条2項も「前項の取調に際しては,被疑者に対し,あらかじめ,自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない」と,捜査段階で意思に反した供述が強制されないことを明記しています。
余罪を裏付ける証拠関係が脆弱な場合は,黙秘をすることで,結果的に身体拘束期間を短くしたり,刑事処分を軽くできたりすることもあります。
もっとも,余罪部分に限ってとはいえ,黙秘を行うことは,徒に勾留決定がされるリスクを高めることも否定はできません。
設例のAさんのような場合は,余罪部分についても正直に供述することで,早期の釈放につながることもあり得ます。
また,逮捕の原因となった痴漢行為の被害者と示談ができた場合,余罪の存在を考慮しても,検察官が不起訴処分とすることで,前科を回避できるケースもあります。
このように,余罪一つをとっても,黙秘をするべきか,正直に供述をしていくべきかは,状況によって大きく変わってきます。
そして,どこまで黙秘し,どこまで正直に供述するべきかを,逮捕された方が一人で考え出すことには困難が伴います。
逮捕直後,速やかに刑事事件の経験豊富な弁護士から適切な取調べ対応の助言を受けることができるのであれば,その後の早期釈放や再逮捕リスクの軽減,寛大な処分を求めていくうえでも,大きな違いがあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,刑事事件・少年事件を専門に扱う弁護士事務所として,余罪も含めた適切な取調べ対応によるサポートを行います。
弊所では,逮捕直後,速やかに弁護士からアドバイスが得られるように,初回接見サービスを実施しております。
ご家族が痴漢事件で逮捕されてしまい,余罪対応も見据えたサポートを希望される方は,まずは一度ご連絡ください。
(宮城県若林警察署への初回接見費用36,300円)