死亡事故で無罪判決

死亡事故で無罪判決

自動車で死亡事故を起こしたが、無罪判決がなされた事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。

【参考ニュース】
女子高生死傷事故 被告に無罪判決 前橋地裁 予見「認められず」
上毛新聞

このニュースは、運転中に意識障害に陥り、被害者が死傷する事故を起こして過失運転致死傷罪に問われたが、無罪判決がなされたというものです。
意識障害が生じることを予見できなかったとして無罪となりましたが、どういうことなのか解説していきます。

~過失運転致死傷罪が成立する条件~

今回、無罪判決が出されたということは、過失運転致死傷罪の成立条件が満たされなかったということです。
成立条件を確認するために、まずは条文を見てみましょう。

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律
第5条 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

この条文から考えると、

①自動車の運転上必要な注意を怠り
②よって人を死傷させた

という場合に、過失運転致死傷罪が成立することになります。

②の「死傷」とは死亡と負傷をまとめた表現です。
今回の事故では事故により被害者1名が死亡、もう1名が負傷していることに争いはないので、②は明らかに満たされます。

裁判では①を満たすかどうかが争われました。

※ 条文の「ただし」以降は、被害者が軽いケガにとどまった場合に、過失運転致傷罪で有罪だけれども、懲役や罰金を免除できるというものです。今回の事故は死亡事故ですし無罪判決の事例ですので関係ありません。

~「自動車の運転上必要な注意を怠り」とは~

①自動車の運転上必要な注意を怠りという条件は、「過失があったかどうか」という言い方もできます。
この①を満たすためには、簡単に言うと、

(A)事故が起こることが予見(予想)できた
(B)事故を回避する行動を取れたのに取らなった

という、さらなる2つの条件を満たす必要があることになっています。

※ 過失運転致傷罪だけでなく、過失の有無が問題となる犯罪(業務上過失致死傷罪など)はすべて、(A)結果が予見できたか、(B)結果回避行動を取れたのに取らなかったのか、の2つが検討されます。

今回の裁判では(A)、つまり意識障害が生じて事故が起こることが予見できたか、という点が最大の争点でした。

予見できていたのであれば、(A)を満たします。
そして運転しないなどの事故を回避する行動を取れたのに取らなかったわけなので(B)も満たし、結局①が満たされることになります。
そして前述のように②も満たすので、有罪ということになります。

一方、意識障害が生じて事故が起こることを予見できなかったのであれば(A)を満たさず、結局①が満たされないので無罪ということになります。

前橋地裁は、服用していた薬の副作用による急激な血圧低下が原因となった可能性があるが、被告が医師からこのような副作用の説明を受けた証拠はないなどの理由により、意識障害が生じて事故が起こることを予見できず、(A)および①が満たされないという判断をしたことになります。

現時点で検察側が控訴するかはわかりませんが、このような理由により無罪判決が出されたわけです。

※ 条件を満たせば有罪と書きましたが、厳密には、条件を満たしても別途、責任能力がないとして無罪になる可能性があります。今回の裁判では、被告が認知症だったことからこの点も争われていましたが、そもそも上記条件を満たさない時点で無罪ですので、責任能力についての判断はなされなかったと思われます。

~交通事故でお困りの方はご相談ください~

このように、交通事故でも難しい法的判断が必要になることがあります。
仮にそれほど争いがない事故であっても、謝罪・弁償して示談を結ぶ方法や、取調べでの答え方などわからないことが多いと思います。

普段、まったく犯罪に縁がない人でも犯してしまう可能性がある犯罪は交通関係の犯罪です。
もし、あなたやご家族が交通事故を起こしてお困りの際は、弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスを、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談のご利用をお待ちしております。

keyboard_arrow_up

0120631881 問い合わせバナー LINE予約はこちら