一般人による逮捕で暴行罪?

一般人による逮捕で暴行罪?

50代会社員Aは、仙台市地下鉄泉中央駅の駅内のエスカレーターでV1がV2の着衣の上から臀部を触る痴漢行為をしているのを見た。
Aは、V1に対して「やめなさい」と声をかけたところ,V1はエスカレーターを走って逃走しようとした。
V1を逃してなるものかと思ったAは,V1の上着の裾を掴み、その後V1を蹴るなどして引き留めた上でV1を逮捕し、宮城県警察泉警察署に通報して駆け付けた警察官にV1を引き渡した。
Aは、V1を引き留めて逮捕した際の行為が暴行罪などにあたるのではないかと不安に思い、仙台市内の刑事事件に強い弁護士無料法律相談に訪れた。
(事実に基づいたフィクションです。)

~一般人による逮捕~

時折ニュースで、警察官ではない一般の方が犯人を取り押さえて感謝状を渡されたと耳にすることがあります。
逮捕は、警察官の職務として行うイメージが強いと思いますが、日本では、現行犯人であれば、警察官ではない一般人による逮捕が認められています。

まず、逮捕手続きに関してですが、逮手続きは、「令状による逮捕」と、令状(逮捕状)が必要とされない「現行犯・準現行犯逮捕」に分けられます。
「令状による逮捕」には,
・事前に裁判官が「逮捕することを許可する」旨の令状を発付して行われる「通常逮捕
・一定の重い罪を犯したと疑われる場合で逮捕状を請求する時間がないときに、まず被疑者を逮捕しその後直ちに裁判官の令状発付を求める緊急逮捕
とがあります。
これらの逮捕手続きのうち、令状(逮捕状)が必要とされない「現行犯逮捕・準現行犯逮捕」については、一般人も行うことが認められています。

「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる」(刑事訴訟法第213条)。

法律で「何人でも」と定めているため、逮捕権のある警察官など以外の一般人でも、現行犯人を逮捕することができます。
逮捕は、他人の身体を拘束するという、人権を制約する行為です。
そのため、現に犯行を行っているか行い終わったところであり、逮捕して身柄を確保する必要が高い上に、誤認逮捕のおそれがない現行犯人に限って、一般人による逮捕が認められています。

しかし、一般人による現行犯逮捕・準現行犯逮捕には注意すべき点があります。

・犯人が現行犯人であること
一般人による逮捕は、現行犯人でない限り逮捕はできません。
そのため、ポスターに載っている氏名手配犯を見つけても、一般人は逮捕できません。

・一般人による現行犯逮捕・準現行犯逮捕が犯罪になり得る場合があること
逮捕するときの手段やその後の対応次第によっては、逮捕した(逮捕しようとした)一般人が逮捕罪や監禁罪、暴行罪などの罪に問われるおそれがあります。
特に多いトラブルは、被逮捕者に対する行き過ぎた対応による暴行罪、傷害罪です。
逮捕の際に認められる実力の行使は、その際の状況からみて社会通念上逮捕のために必要かつ相当であると認められる限度内であるか否かによって判断されます。
現行犯の犯罪としての軽重、犯人からどのような抵抗を受けたか、犯人に対して行った暴行(有形力)の程度、犯人が負った怪我の程度、などの事情を総合的に判断して違法かどうかが判断されることになります。

逮捕のために必要かつ相当な限度内ということであれば、『正当行為』(刑法35条)として、暴行罪や傷害罪などの犯罪は成立しませんが、そのような限度を超えた場合には、暴行罪や傷害罪などが成立してしまうことになります。
今回の事例に関して、一般人AによるV1の逮捕の可否ですが,AはV2がV1から痴漢されているのを現認しているので,V1は「現行犯人」であるといえると思われます。
しかし,AはV1の上着の裾を掴み、その後V1を蹴るなどして引き留めた上でV1を逮捕しています。
Aのこの行為が,社会通念上逮捕のために必要かつ相当な行為であると認めらない場合、Aに暴行罪などが成立する恐れがあります。

また、ほかに注意すべき点として、一般人による逮捕の場合は,直ちに地方検察庁・区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければなりません(刑事訴訟法第214条)
しかし,これを怠って、逮捕の後、一般人がその犯人を尋問したり、暴力を加えたり、自宅に連れ帰るなどの行為をすると、暴行罪や傷害罪、逮捕罪、監禁罪などに問われる可能性があります。
(なお、目の前で犯罪が起きて一般人による逮捕の後、警察に通報して警察の到着まで犯人を監禁するのは、正当な行為です。)
実際に、犯人を捕まえた後に、警察官らに引き渡すことなく勝手に拘束を続けたとして、監禁罪に問われた裁判例も存在します。

実際の一般人による逮捕の場合で、逮捕した自分が罪に問われないか疑問に思ったら,法律の専門家である弁護士に相談することが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、今回の事例と似た事件の相談も寄せられています。
無料法律相談は、フリーダイヤル0120-631-881までお問い合わせください。

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